求人 NEW

どうつくるか、よりも
どう残すか
古民家を読み解く設計

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

身長を測った柱の傷や、日に当たって色の変わった縁側など。

古い家を訪ねたとき、暮らしの痕跡からそこで流れた時間を感じて、しみじみと暖かい気持ちになることがある。

シミや汚れ、傷など、きれいに直して住み継ぐのもいいけれど、残していくことで生まれる価値もあるんじゃないか。

そんな思いで建物に向き合っているのが、株式会社NOTEのみなさんです。

NOTEは、古民家を活用した宿や飲食施設づくりを手がけてきた会社。地域の人たちに伴走し、一緒に事業を立ち上げるスタイルで、2009年から現在にかけて全国26地域で古民家を再生してきました。

今回は、古民家改修の設計に関わる人を募集します。できれば、木造建築の設計経験があり、管理建築士に登録済み、もしくは今後登録したいという人に来てほしいとのこと。

自身の経験とNOTEのノウハウを掛け合わせて、新しい価値をつくっていきたいという人を求めています。



NOTEの本社があるのは、大阪駅から電車で1時間ほど離れた兵庫県の丹波篠山(ささやま)市。

まちの中心部には篠山城跡があり、周辺は城下町の面影を残している。

駅から車で10分ほど。神社の鳥居からほど近い、元和菓子屋さんをリノベーションしたNOTEのオフィスへ。

このまちを拠点に、古民家などの地域資源を活かしたまちづくりに取り組むNOTE。“なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる”という理念を掲げ、全国各地に眠る古民家を、宿や飲食施設として再生してきた。

2009年からはじまったこの「NIPPONIA」ブランドは、今では全国26地域に展開。古民家の歴史的な価値を活かし、和紙や着物といった地域ごとの文化や産業を取り入れた施設は、国内外問わず人気を集めている。

その立ち上げ当初から関わってきたのが、代表の藤原さん。

藤原さんにお会いするのは、今回で3度目。昨年は経理担当のスタッフを募集して、いいご縁につながったそう。

NOTEのはじまりは、丹波篠山市内にある全12戸の集落ではじめた一棟貸しの宿「集落丸山」。そこから環境も、活用に至る経緯も異なるプロジェクトを、全国で展開してきた。

それぞれの地域ごとの対応や意思決定を柔軟におこなうために、これまでは各現場の担当者に裁量を大きく委ねてきたものの、その運営体制を見直しているタイミングだという。

「これまでは個人事業主の集まりのような組織だったんです。各地域の担当者が独立して動いて事業を進めていたんですが、そのぶん一人ひとりへの責任や負担が大きくなってしまう形になってしまって。今後はもっと本社と連携して、案件ごとにチームを組んで進める形にしたいと考えています」

個々の専門性は活かしつつ、進捗や課題を共有しながら支え合えるチーム体制をつくっていきたい。そのなかでも、今回は設計に強みを持った人を迎えたいという。

「地域に眠っている、価値ある建物や土地の魅力。それを次の世代につないでいく。大げさじゃなく、地域の資源を100年先まで届けていくっていうことに共感してくれる人が来てくれたらうれしいですね」



設計チームは現在2名。今は仕事の進め方やノウハウを整理しているところなのだとか。

今回入る人の同僚となる、設計担当の高橋さんに話を聞いた。

「改善できることしかないので(笑)、変えたいことがたくさんあるんです。今はもっとこうしたいっていうアイデアであふれています」

高橋さんが入社したのは、2年半前のこと。それまで外注していた設計部門を内製化しようと、社内で設計チームを立ち上げた直後だった。

「当時はノウハウの蓄積も少なくて、とりあえず目の前の仕事をなんとかこなして、次へ次へ、っていう感じだったんです」

「ようやく落ち着いてきた今のタイミングで、NOTEらしい設計の考え方や仕事の進め方をきちんと体系化したいと思っていて。整理することで、古民家改修の面白さをもっとわかりやすく伝えていきたいです」

高橋さんが古民家に興味を持ったのは、建築学科の課題がきっかけ。古民家の改修案を考えるというものだった。

「新築はまっさらな土地に何を建てるか、ということから始まるんですけど、すでに建っている建物を使う場合、制約が多いんです。この柱は壊しても問題ないけれど、こっちの柱は動かせない、とか」

「建物のこの部分を変えてしまうと、まちの風景にも影響してしまう、って場合もあって。長く引き継がれてきた建物って、まちと一体化しているんですよね。いろんな制約に配慮しながら設計をするのが、難しいけど面白いなって」

卒業後は島根の設計事務所に就職。3年ほど働いたあと、知り合いに誘われてNOTEへとやってきた。

ここでの設計の仕事は、どんなふうに進んでいくんでしょう。

「案件ごとに、現場で地域の人と事業を進めているエリアマネージャーがいるので、その進捗に合わせて設計の依頼が入ってきます。それから現地調査に行き、古民家の状態や間取りなどを確認して、持ち帰って整理して」

現地で撮った写真やメモをもとに、今度はCADで図面に落とし込んでいく。

工事が始まったあと、定期的に現場を訪れて確認・相談することも欠かせない。特殊な構造や経年劣化の具合など、古民家ならではの制約は、施工がはじまってから見えてくることも多いからだ。

遠方の場合は電話やメールでの連絡が主になるけれど、出張の機会も多いそう。

「最近は、事業が始まった経緯や地域の人の思いを、エリアマネージャーにヒアリングしてから現地調査に行くようにしていて。『え、今までやってなかったの?』って思うじゃないですか?行けばわかるっていう感じで、設計者はいきなり飛び込むことが多かったんですよ(笑)」

設計者にとっては事前の情報共有が重要であっても、現場のエリアマネージャーがその感覚を共有していないと、意味を成さない。社内のコミュニケーションを密にしていくなかで、お互いにとってより良い方法をとることができるようになってきた、と高橋さん。

「その建物が地域にとってどんな存在なのか、地域の人はどんな思いで活用したいと考えているのか。建物を扱う立場として、ちゃんと知りたいと思っていて。知ることで、関わる人の思いをより汲み取った設計をしていけると思うんです」

薄ピンクの砂壁は、地域特有の砂を使っているからだと判明したり、襖に描かれた絵が実は有名な画家の作品だったり。はたまた、実は親戚のおじさんが描いたものだったり。

建物にまつわる逸話や裏話も、古民家が持つ魅力のひとつ。それをどう設計に反映するか、自分も楽しみながら考えていく。

「NOTEの設計って、設計以外の人と関わることがすごく多いんですよ。社内のエリアマネージャーはもちろん、地域のおじいちゃんおばあちゃん、宿の運営者さんやテナントに入ってもらう飲食の事業者さん。私たちの仕事は設計だけど、その前後にいるたくさんの人にも気を配らないといけなくて」

「地域の人はこうしたいけど、法規的な理由があってできない、っていうこともよくあるんです。相手の希望も理解した上で、バランスをとりながら、フラットに考えることが大事なんじゃないかな」



最後に話を聞いたのは、設計チームの田中さん。高橋さんと同じく、2年半前に入社した。

「実家が古民家で。子どもの頃は、正直古民家って暗いし寒いし、友達が遊びに来たらおばけ出そうで怖いって言われるし…(笑)。当時はいやだなって思ってたんですよ」

「けれど、やっぱり歴史を感じる建物は好きだなと、だんだん思うようになって。なんかこう…懐かしさを感じたり、落ち着いてくつろげる感じって、昔の建物だからこそだと思うんです」

古民家への思いを持ちながらも、前職ではホテルの空間デザインに関わっていた田中さん。あるとき、瀬戸内海の島で古民家改修のボランティアに参加したそう。

「島の人と、何をつくったら面白いだろうって考えながら、一緒に手を動かす。島の人たちが喜んでくれて、島の発展にもつながる。私は何がやりたいんだろうって、ずっと迷ってたんですけど、こういうことがしたいんだなって。そのとき気づいたんですよね」

「それからNOTEのことを知ったとき、やりたいことにぴったり合う!と思って。古民家を活用して地域づくりに役立てる仕事には、すごくやりがいを感じています」

設計の経験はなかったので、最初は手探り状態。チームもできたばかりだったので、手を動かしながら学んでいった。

「NOTEの設計って、あえて残すんですよ」

あえて残す?

「古い建物だと、柱や梁に傷とか汚れがあったりするじゃないですか。普通は新しいものに変えたり塗り直したりするけど、そういったものも建物の歴史として、あえて残す」

「そうすると、ああ、ここで子どもの背を測ったんだなとか、ちゃんと暮らしが営まれていたんだなって、積み重ねられてきた時間が感じられる。その価値を伝える場所にするのが、私たちの役割だと思うんです」

経年で色合いが変わった床材は、目の細かいヤスリで丁寧に表面を削り、米ぬかで磨いた上で隙間を埋めていく。傷んだ左官壁も、すべて塗りなおすことはせず、必要最小限の補修にとどめる。

一般的な改修工事とは異なるため、工務店や場を運営していく人たちとのコミュニケーションにも気を遣うそう。

「関わる人たちにも、NOTEの設計を伝えていけたらいいなと思っていて。私たちだけで取り組んでいても仕方なくて、“建物のいいところを残す”っていう考え方を、いろんなところに広げていく。広がることで、日本のいい建物が残っていくと思うんです」

あくまで設計者の仕事は、古民家を活用する事業の一部分。現場のプロジェクトマネージャーや地域の人たちなど、関わる人の理解があってこそ、設計も意味があるものになる。

その関係性をつくるためにも、謙虚な姿勢で取り組むことが大切なんだろうな。

どんな人に来てほしいか、最後に田中さんに聞いてみると、「古民家が好きで、地域の人たちのために役立てたいと思える人」という答えが返ってきた。

いいものを、いかに残していくか。そして残ったもので、地域をどんなふうに盛り立てていくか。

新しくつくる、とは一味違う面白さが、ここでの設計にはあるように感じました。

(2021/6/15 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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