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学びのはじまりは話すこと
いい感じにゆるい
まちの塾

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

学生の頃、塾の先生と話す時間が好きでした。

社会のこと、働くこと。学校の先生や親とは違う立場から、広い世界を教えてくれたことを覚えています。

今回の舞台は、高知県立嶺北(れいほく)高等学校の生徒が通う、公設塾「燈心嶺(とうしんりょう)」。

ここでは、日々の学習サポートはもちろん、生徒の「やりたい」を見つけ、広げていくための取り組みをおこなっています。

取材では「雑談」や「日常の延長線上の会話」という言葉がよく出てきました。日々たくさん話すことから、生徒が主体的にやりたいこと、得意なことを見つけてサポートしていく。そんな公設塾のスタッフを募集します。


嶺北高校がある嶺北地域は、土佐町や本山町を含む4町村で構成された、山あいのまち。

高知空港から車を走らせると、あたりはどんどん山に囲まれていく。一級河川の吉野川も流れていて、自然の緑と青が眩しく感じる。

40分ほどで、公設塾「燈心嶺」にたどり着いた。平日の昼過ぎ、生徒はまだ学校に通っている時間。塾のなかでは、スタッフのみなさんがミーティングをしているところだった。

塾の自習スペースを借りて10分ほど待っていると、塾スタッフの岡田さんが「お待たせしてすみません」と声をかけてくれた。

先ほどはどんな会議だったんですか?

「塾のスタッフと寮のスタッフであるハウスマスターとで、生徒の様子や悩みごとを共有していました。週に一度おこなっています。今年の4月にここが完成してからは、寮と塾の関わりがより密接になりましたね」

そもそも寮や塾は、高校魅力化プロジェクトの一環としてスタートしたもの。

高校魅力化プロジェクトは、地域性を活かしたカリキュラムや、行政と高校が連携して運営する公設塾、遠方からの生徒を受け入れる寮などを設置して、中山間地域や離島の高校を存続させるための取り組み。

全国に広がっていて、嶺北高校では4年目を迎える。

地域外から通う生徒も順調に増えたことから、今年新たに「れいほく教育魅力化・交流支援センター」を設置。

嶺北高校から徒歩5分の場所にあるこの建物は、高校の寮や公設塾が一体となっていて、2階の寮には3学年28名の生徒が暮らしている。

「今でこそ、どの学年も30名以上いるんですが、以前は入学者数が今の半数程度のときもあって。地域唯一のこの高校を地域内外の生徒にとってもっと魅力的な場所にしようと、魅力化プロジェクトが始まりました」

プロジェクトの一つめの柱は、高校のオリジナル授業「嶺北探究」。

地域を舞台にした課題解決型の授業で、町長や地域の大人から嶺北の現状について聞き、グループワークやフィールドワークを通じてまちの課題の解決策を考えてきた。

「もう一つの柱が、ここ公設塾です。嶺北高校には、進路も目標も全く異なる多様な生徒が通っている。一人ひとりに寄り添いながら、学習サポートに取り組んでいます」

「塾は平日にひらいていて、毎日20名ほどの生徒が来ていますね。基本的には個別学習で、わからないところがあったら聞きにきたり、こちらからも声をかけたり。定期的に面談をしながら、各自の目標を設定しています」

教科学習の指導を基本としつつ、「燈心嶺学(とうしんりょうがく)」というキャリア教育もおこなっているそう。

「自分のやりたいことを見つけていくための、土台となる時間ですね。まずは、自分の意見をもつこと、そしてそれを表現すること。『この塾ではなんでも言っていいんだ』って思ってもらえるように、ワークショップをおこなっています」

「自分の今の思いをペーパークラフトで表現してみよう」「なんのために勉強するんだろう?」など、正解のないお題や問いを投げかけ、みんなでじっくり対話していく。

「生徒の視野が広がるように、さまざまな分野の方に講演会をお願いしたり、海外の大学生とzoomで会話する企画などを定期的に開催したりしてきました。いろんな世界に触れるなかで、塾スタッフとの関係性もできてくると、『今こういうことに興味があって』と面談で話してくれるようになるんです」

「答えそのものはあまり重要じゃないというか。自分なりに出した言葉を、お互いに尊重して認め合えるような関係性をつくっていけたらいいなと思っています」

正解はないし、どんなことでも話していい。

言葉にする習慣が身につけば、何をやりたいのか、自分から明らかにしやすくなるし、周りにも素直に伝えられるようになっていくんだろうな。

“やりたい”の種を蒔き、出てきた芽に水をやるのも、塾スタッフの役目。

「たとえば、川魚について調査したいっていう子がいて。関連しそうな研究について伝えたら、『実際に会ってみたい』ということだったので、研究者の方とおつなぎをして、実際にこちらに来ていただいたり、本人も一人で研究所まで出向いたり、ということもありました」

「明確なビジョンがない子には、ビジネスアイデアを話してみたり、具体的な事業設計の話をしたりって、こちらである程度ガイドラインをひくこともありますね」

子どものタイプによって、やる気の引き出し方やサポートの仕方は変わる。

一人ひとりと向き合って、今その子に必要なものを常に考えることが必要な仕事だと思う。

「日常の延長線上の会話が楽しいんですよね。放課後、学生たちが入ってきたときにスタートする、とりとめもない会話が僕にとってはやりがいであり、この仕事を続けている魅力かなと思います」

「いいのか悪いのか僕もわからないんですけど、『何が正解かなんて、わからないんだけどね』って学生たちにぽろっと言ってしまうんです。人生や進路には正解なんてないからこそ、自分で意味や価値を見つける力をここで身につけて、羽ばたいていってほしいですね」


そんな話をしていたら、生徒たちが塾に集まってきた。

席に座って黙々と勉強する子や、互いに教えあっている子。塾スタッフに質問している子もいて、思い思いに過ごしている。

公設塾に通う生徒たちは、ここでどんなことを感じているんだろう。教えてくれたのは、静岡県出身で、寮で暮らす高校2年生の天野さん。

「地元の子はみんな幼馴染だから、入学前は輪に入れるか心配だったんですが、『きららちゃ〜ん』ってみんないっぱい話しかけてくれて、すぐに仲良くなれました。すごく人懐っこい子が多いんですよ」

「塾では、塾スタッフの岡田さんとよく話してます。てるさんって呼んでいて。学校の悩みとかを相談してると『わかる!』って共感してくれたり、『正解はわかんないけど』って言いながらも一緒に考えてくれたりして、先生というより親戚の人みたいな感じですね(笑)」

勉強を強制させるのではなく、生徒と話す時間も大切。天野さんの話からは、生徒の気持ちを尊重しているスタッフの様子が伝わってきた。

「ここでは、自分のしたいことを深められる。学校の勉強以外でも、学びたいことがあればそれをずっと調べていてもいい。いい感じのゆるさがあるから、自分の意思で勉強しようって思える場所だなって」

「動物が好きって何気なく話したら、ムササビ観察会や博物館の見学を、塾のイベントとして企画してくれたんです。自分のやりたいことに向けて、知らないうちに学びが深まっている気がします。ずっと動物に関われる仕事を目指してたんですけど、最近は一回その夢をやめようと思っていて」

え、どうしてですか?

「塾では、それぞれの興味にあわせて、いろんなジャンルのイベントや講演会をしてくれるんです。今まで関心のなかったことや知らなかった世界に触れるうちに、自分のいた世界って狭いんだなって思って。いろんな道を示してくれるから、もっといろんなことに挑戦してみたいなって今は考えているんです」

「できるかどうかは別として、やりたいことを実現していくために、背中をおしてもらえると安心します。勉強でもなんでも、私たちと同じ目線で一緒に考えてくれるのが、うれしいなって思っています」


一緒に考えてくれる人の存在が、生徒にとって力になる。

今年の4月に塾スタッフとなったばかりの森下さんも、そんな話を聞かせてくれた。

「最近まで、野球チームに所属して生活してたんです。バッティング方法や体の使い方について、自分の知識を後輩に伝える場面がよくあったんですが、それで力になれるとうれしいなと感じていて」

「野球に区切りをつけて地元に帰ってきたタイミングで、この塾のことを知りました。今度は、生徒たちに勉強の知識をわかりやすく還元していけたらと思っています」

未経験のなか、働いてみてどうですか?

「初日は本当に焦りましたね。高校の数学なんて7年以上触れてなかったので、なにこれ?って(笑)。生徒にも『これはわからんわ…ちょっと一緒に考えよう』って正直に伝えました。僕も隣で考えるなかで、生徒がひらめくこともあると思うので」

普段使用している3色ボールペンも、赤ペンの減りが一番遅いとのこと。

丸つけは生徒自身でやるので、赤ペンの登場機会が少ない。一緒に問題をときながら質問に答えていくので、黒と青が先に切れるのだという。」

新しく入るスタッフも、初めから指導力がなくても大丈夫。一方的に教えるというより、隣で一緒に考える、という姿勢がまず求められるのかもしれない。

とはいえ、高校で学ぶ範囲ってものすごく幅広いですよね。自分だったら、今まさに学んでいる高校生たちの役に立てるかな?という不安も感じてしまうかもしれません。

「たしかに、高校生たちに負けないくらい、自分から学ぶ姿勢は必要だと思います。生徒が来るまでの間は、ぼくもよく勉強していますね」

「あらためて勉強すると、これは前にやったあの単元ともつながってるんだなとか、この練習問題の解き方って、実はひとつじゃなくていろいろあるんだなとか、いろいろ発見があって。学び直す立場から得た学びは、生徒にも還元していきたいなって思ってます」

「生徒とは、最近どう?みたいな雑談もよくしていて。自分のことを何も知らない相手には、進路や真面目な相談なんて話せないじゃないですか。だから、これから徐々になんですけど、もっと深く生徒と関わっていきたいですね」


公設塾で働く皆さんは、何よりも生徒一人ひとりの可能性を信じているんだと思います。それが話しているなかで伝わるから、生徒も「やってみたい」という気持ちになる。

ともに信じ、支えていく仲間を待っています。

(2021/6/1 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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