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「うちって、フリーランスと会社員のいいとこ取りができる会社なのかなって。自分の裁量で案件を進めながら、必要なときは自然と助け合える。プロとして独立できる実力を持ちつつ、居心地がいいから所属し続けたくなるような母体になれたらと思っています」そう話すのは、株式会社Style&Decoの代表・谷島(やじま)さん。
物件探しやローンの借り入れといった不動産分野から、リノベーションの設計、引き渡しまで。トータルで行うサービス「EcoDeco(エコデコ)」を運営しています。

ハードルが高そうだけど、今いるスタッフも入社してから少しずつできることを増やしていったそう。数年かけてじっくりと実力を身につけていくイメージです。
あわせて、業務委託で設計に関わる人も募集します。プロジェクトの設計段階で、社員とチームを組んで進めていくことになります。
チームで支え合いながら、裁量を持って働きたい。そんな働き方が自分らしいと感じる人に、ぜひ知ってほしい会社です。
恵比寿駅から歩いて5分ほど。
駅前の賑わいも落ち着いてきたころ、大通りから少し入った細い道沿いにEcoDecoの看板を見つけた。

そんなことを考えながら、エレベーターで4階のオフィスへ。ここもまた、落ち着いた雰囲気のなかにちょっと遊び心がある空間だ。
まずは代表の谷島さんに話を聞いた。今は東京と茨城での二拠点生活を送っているそう。
「ビルの共用部や3階にある貸しスタジオは、自分たちでリノベーションしました。このミーティングルームも、みんなで壁を塗ったり床をはったりしてDIYしたんですよ」

「当時は、不動産と設計ってかけ離れたものだったし、リノベーションも全然知られていなかった。『誰もやっていないならわたしがやる!』っていう使命感のような気持ちからのスタートでしたね」
リノベーションの考え方が普及していくなかで、会社も次第に成長。創業10年目を迎えたころ、立ち止まって会社のことを考える機会があったそう。
当時、ボーナスは売上に応じた歩合制で、お互いのことを考えながらチームで協力するという 雰囲気はあまりなかった。
「頑張った人が認められる制は当然だと思いながらも、どこか満たされないというか。誰かが困っていたら、自然と助け合う。そんな会社に生まれ変わりたいなと思ったんです」
「一人じゃできないから、みんなに協力してもらって。一緒に考えて、『お客さんの暮らしだけでなく、自分たちの暮らしも大切にする』という軸にたどり着きました。わたしの会社から、みんなの会社になっていったと思います」
新たな給与体系や働きやすい制度なども、社員全員で考えた。
コロナ禍より前にスタートしたリモートワークは、すでに5年が経過して自由な場所で働くことが当たり前になっているし、業務時間内に自己投資のための勉強や芸術鑑賞ができる制度もある。スタッフ同士がサポートし合う雰囲気も生まれ、定着率も高くなっていったそう。
今回は久しぶりのスタッフ募集になる。
「コロナ禍で住まいについて考える方が増えたことで、問い合わせも多くなって、みんな忙しそうで。自分の暮らしを大切にするためにも、新しいメンバーに来てもらいたいと思っています」
今回募集するコーディネーターは、お客さんから問い合わせを受けたあと、物件探しからローン借り入れの手伝い、その後の設計、引き渡しまで伴走していく。
幅広い経験が必要そうな仕事にも感じるけれど、実際はどうなんだろう?
日本仕事百貨の記事をきっかけに、2017年に入社した谷口さんに聞いてみた。

それまでは、大きな施設づくりの一部に携わるだけだったという谷口さん。もっとお客さんの顔が見える仕事をしたいと思ったのが、入社のきっかけだったそう。
「営業経験もなかったので、ものを売る基本から勉強していきました。CADオペレーター時代は、カレー屋でバイトもしていたんですよ。この間までカレーをお勧めしていたのに、住まいっていう一生の買いものをお勧めする立場になって(笑)。最初はプレッシャーもありましたね」
不動産の仕事は、お客さんから希望の条件をヒアリングし、候補の物件を探して内見に行くところからはじまる。
耐震性や物件の管理状況などについて、資料を取り寄せて読みながら、リノベーション上の制約やできることなど、丁寧に説明していく。

「2年くらい経ったころ、自分なりのやり方を磨いていけば、それにマッチングするお客さんがいるんだと気がついて。それからうまく進むようになりました」
自分なりのやり方。どんなものですか?
「1回目の内見でパッと決めちゃうお客さんもいますし、理想の物件に出会うまで、1〜2年探し続ける方もいて。わたしの場合は、長いおつきあいになる方が多いです。粘り強く探し続けていれば絶対にいい物件が出てくるので、諦めないことを大事にしています」
あるお客さんは、「駅から近いこと」と「一定の広さがあること」が譲れない条件だった。さらに、近隣の物件との距離が離れていることも希望していたそう。
ただ、予算や立地から考えても、そんな物件はなかなか見つからない。
「物件探しをはじめたとき、お客さまはお子さんを妊娠中で。出産前後のお休みも挟んで、トータル1年半ほど探されていました。最終的には、当初の予定とは違うエリアだったものの、希望の条件に当てはまる物件をご紹介して、無事ご購入いただくことができました」

粘り強く、諦めない谷口さんの持ち味が発揮されたんですね。
「物件が見つかったときは、ついにきましたね!って、感慨深かったです。ただ、ときには瞬発力も必要で。人気の物件を内見するときは、前々からお客さんに資料を全部渡しておいて、内見のときにその場で決めてもらう、くらいの勢いも必要なんです」
「じっくり進めるけれど、急に勢いをつけなきゃいけない瞬間もある。それが不動産の仕事のむずかしいところでもあり、おもしろいところだと思います」
物件の購入後は、設計の打ち合わせを進めていく。
一人のコーディネーターが不動産から設計まで一貫して担当することもあるし、設計担当をつけて複数人で進めることもあるという。
谷口さんと一緒に先ほどのお客さんの設計を担当したのが、齋藤さん。谷口さんとは、ほぼ同期入社なんだそう。

打ち合わせで見せてもらったのは、住宅ではなく、アパレルショップや海外のホテルの画像。
キッチンカウンターはこのショップを参考に、水回りは機能面も重視しながらホテルライクになど、細かいこだわりを持っていたそう。
「イメージをそのまま反映しては、予算を大幅に上回ってしまう。教わったショップも見に行って、リクエストを自分なりに噛み砕きながら、希望の雰囲気を表現するシャープな要素を取り入れて設計していきました」

思い描いたものが具体的な形になる。あらためて、すごい仕事ですね。
「怖さもあるけど、それがやりがいでもあります。だから、ただお客さんの要望に寄せるだけでなく、自分も見てみたいと思えるものをご提案するようにしています」
「お客さんも自分もいいと思えるものを、何度もすり合わせながら追求していく。その対話も含めての設計期間ですね。お互い疲れてしまうので、やりすぎもよくないとは思うんですけど」
プランが固まったら、施工がはじまる。
現場にも足を運び、図面化できない部分の微調整を重ねていく。DIYを希望するお客さんも多いので、壁やフローリングの塗装をレクチャーすることもあるのだそう。
完成して引き渡した後、施工事例の取材などで関係性が続いていく人も。「どのお客さんも印象に残っている」と、齋藤さんは話していた。

「まずは新築とリノベーションの違いがありました。新築だと、プランに合わせて構造や設備を考えていくけれど、リノベーションはすでに外の枠組みがあります。それに合わせてつくっていくのがむずかしかったですね」
「あとは会社の雰囲気ですかね。大きな組織のトップダウンとは違う。自分で主体的に考えて動けるのは、小さい組織ならではの面白さだと思います」
基本的に、各自の案件は自分のやり方で進めていくスタイル。自己管理をしっかりできる人じゃないと、むずかしいかもしれない。
「でも完全に独立しているわけでもなくて。メールは全員が見られるようにしているので、お互いの状況もなんとなくわかるし、大変そうだったら声をかけて手伝うこともあるし…」
それを受けて、隣で聞いていた谷口さん。
「協力し合うけれど、“仲間”っていうと強すぎる。ゆるやかにつながっているけれど、それぞれ自分のやり方があって、個々なんです。“同志”もちょっと強いかなあ」

普段は独立して自分のお店を営業しているけれど、集まるときはしっかりと相談して協力する。組合という言葉が、一番しっくりきたみたい。
「もうちょっとおしゃれな表現にしたい気もするけど、しっくりはきてる(笑)。自由な働き方に興味のある人が、組合の一員になってくれたらいいかな」と笑う代表の谷島さん。
熱く一緒に走る仲間というわけではない。でも、こんな話も笑いながら真剣に考えられる間柄。
自分がしっかりあるからこそ、いい距離感でお互いを思いやることができる。Style&Decoのみなさんからは、そんな心地よい関係性を感じました。
(2021/6/24取材 増田早紀)
※撮影時はマスクを外していただきました。