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黒子として働く
何でも屋さんの日常

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「この会社で必要なのは、どんな些細な仕事でも面白がって取り組もうとする気持ちだと思うんです」

そう話すのは、株式会社モリヤマで働く黒田さん。

モリヤマは不動産事業を軸に、横浜にある温浴施設「満天の湯」の運営などを手がけている会社です。最近では、地域で開催されるイベントのお手伝いや、満天の湯とのコラボレーションを通じた地域貢献活動にも取り組んでいます。

今回募集するのは、会社のなかの“便利屋さん”のようなポジション。

仕事の種類は盛りだくさん。モリヤマが管理するビルの清掃や補修、温浴施設の運営補助に、地域団体と連携したイベント運営、事前調整など。さまざまな分野の仕事を横断的に行います。

専門的なスキルは必要ありません。手先を動かしながらまわりをサポートしていく、縁の下の力持ち的な役割が求められるお仕事です。


横浜駅から相鉄線に乗り、10分ちょっと。上星川駅の南口を出ると、すぐ目の前に満天の湯が見える。

ジム帰りの利用者さんとすれ違いながら、ビル4階にあるオフィスへ。案内された会議室で待っていると、副社長の森山さんが来てくれた。

「モリヤマは、もともと捺染(なっせん)と呼ばれる染めの技法を使った染物を製造・販売する会社として、祖父が65年前に創業しました」

かつては染め物のまちとして栄えたという上星川。

モリヤマも、すぐそばを流れる帷子川(かたびらがわ)の水を使い、染色した布を洗っていたそう。しかし時代が進むにつれて、洗い流した染料が川の汚染につながると問題に。

それなら、川の水ではなく井戸水を使うのはどうだろうかと井戸を掘ってみたところ、出てきたのは、なんと茶色い温泉。その温泉を活用するためにつくったのが、温浴施設「満天の湯」だったという。

その後も不動産賃貸など、事業の幅を広げてきたモリヤマ。最近では、地域で開催されるイベントの補助など、地域貢献活動にも取り組んでいる。

「捺染工場だったときから、地域の皆さんには有形無形のご迷惑をかけているはず。そのお詫びの意味も込めて、この町を良くすることを金銭度外視でやっていかないといけない。地域貢献活動には、父のそんな信念が込められているんです」

今回募集する事業支援・地域貢献担当は、モリヤマの地域活動の推進力となるべく、3年前に設置された。

現在では、地域活動はもちろん、満天の湯の運営支援や本社ビルの管理など、モリヤマに複数ある事業を横断し、それぞれの事業に取り組む人たちの手助けをする役割を担っているそう。


具体的にどんな仕事をすることになるのか、これまでそれらの業務を担当してきた黒田さんに話を聞いてみる。

黒田さんは入社して4年目になる方。来年の3月から、育児をきっかけに会社を離れることになったので、新しく入る人は黒田さんの後任として業務を引き継ぐことになる。

「すごく思い入れのある仕事で、離れるのは悲しいんですけど…。今回の募集でいい後任の方に出会えるよう、今日はたくさん話したいと思います」

以前は技術と家庭科の教師として働いていたという黒田さん。日々生徒たちに教えていくなかで、自分は教えるよりも、目の前の作業のために手を動かすことが好きだと気付いたという。

手先の器用さを活かして何かできないかと思っていたとき、たまたま見つけたのが『御用聞きならお任せを』という日本仕事百貨の記事だった。

「地域の便利屋さんになってくださいっていう言葉を見て、これなら器用貧乏の僕でも役に立つことができるんじゃないかと。それで応募することにしたんです」

入社後まず始めたのは、ビルまわりの清掃。毎朝行うことで、空間をきれいに保ちつつ、まちの人とも挨拶やちょっとした会話が生まれるようになった。

一方で、今回募集する事業支援・地域貢献の担当は黒田さんひとり。これを手伝ってほしいなど指示はあるものの、自分の裁量で仕事内容を決める部分が大きく、仕事の組み立てかたに最初は苦労したそう。

「まずは、清掃作業をより効率的に、よりきれいに仕上げる仕組みをつくることにチャレンジしました。あとは、ビルの壁を高圧洗浄機できれいにしたり、ペンキが剥げているところを塗り直したり。気付いているけどそのままにしちゃっている、みたいなところを積極的に作業するようにして」

仕事を待つ受け身の姿勢ではなく、細かいところまで目を配って自分から仕事をつくる。作業をリスト化して、効率よく仕事を進めていく。そんなふうに行動していった結果、いろんな人から仕事の相談をしてもらえるようになった。

今では、施設の清掃だけでなく、設備点検や賃貸の補修作業、駐車場の管理、さらにはサウナの熱波師まで。部署を横断してさまざまな仕事をしている。

ここまで話を聞いていると、「雑用係」ともいえてしまうような気がするけれど、黒田さんはどんなところにやりがいを感じているんだろう?

「たしかに、この仕事って、言ってしまえば誰でもできるような単純作業がほとんどです。だからこそ、常にアンテナを巡らせて、どこで何ができるのかを自分で考える。言われたことをやるだけなら、誰がやっても同じになってしまうので、小さな作業一つひとつのクオリティや効率にこだわるようにしています」

「この会社はそういった表には見えにくい仕事もちゃんと評価してくれて、自分を頼ってくれる。それがとても嬉しいんです」

最近では、イベントで使うサウナハットの製作や、プレスリリースの作成などにも取り組んでいるそう。また、業者の人とも仲良くなって、床やドアの簡単な補修なら自分でもできるようになった。

新しく入る人も、まずは館内清掃やビル管理の仕事から始めることになるそう。その上で、自分のスキルや興味も活かしながら、仕事の範囲を広げていくことになる。

目立たないところでそっと仕事を済ませて、誰かの役に立つのが好き。そんなふうに、黒子的に働くのが得意な人だと、やりがいを持って働けると思う。

また、社内だけではなく、地域に入っていろいろなお手伝いをすることもある。

たとえば、と教えてくれたのは、「ほどがや元気村」の話。

ほどがや元気村は上星川地区唯一の水田がある場所で、どろんこ教室や農業体験など、都会のなかで自然と触れ合える体験を提供している。

黒田さんは地域のことをもっとよく知るために、定期的に顔を出して体験のお手伝いをしていたそう。最近ではすっかり顔馴染みになり、村の実行委員に立候補するまでになった。

「地域の人も、僕のことを『満天さん』って気さくに呼んでくれるようになって。それまでは、仕事の一環として地域活動に参加しているけれど、ちゃんと地域の力になれているのか、不安な気持ちもあったんです」

「でも、地域の人が『ありがとう』って、すごく感謝してくれて。だからそんな小さなことで不安にならずに、しゃきっと胸を張って活動すればいいんだって、気づかされました」

ほかにも、商店街で福引をするときに壊れた福引台を直したり、地域団体が主催する小学生の職業体験を満天の湯で受け入れたり。積極的に地域に入り、困りごとに耳を傾けてきた。

社内の仕事がメインになるけれど、新しく入る人も、まずは黒田さんがつくってきたつながりをうまく活かしながら、地域に入って行ってほしい。


社内の困りごとから、地域の困りごとまで。幅広い仕事をしていくなかで、どんなふうにキャリアを積み重ねていくのだろう。

教えてくれたのは、常務の久下沼さん。

毎日、満天の湯に入ってから出勤するほどの温泉好きで、大学時代は1日に20箇所の温泉を巡ったこともあったそう。

「実は僕も昔、黒田と同じような仕事をやっていたんです」

16年前に入社した久下沼さん。最初は満天の湯で働くことになったものの、入社してすぐの時期に社員の多くが辞めてしまったそう。オープン直後の忙しい時期だったにもかかわらず、社員はなんと支配人と久下沼さんの二人だけという状況だった。

「だからこそ、いろんなことに頭を使いながら、がむしゃらに働きました。そうした取り組みを評価してもらって店長を任せてもらったり、当時運営していたアミューズメント事業も兼任させてもらったり。その人次第でポストもつくってもらえる環境ではありますよ」

現在久下沼さんが担当しているのは、本社ビルのテナント管理や営繕全般と温浴業の責任者。黒田さんと一緒に作業することが多いとのことなので、新しく入る人も関わる機会はたくさんあると思う。

「本当に黒田には、感謝していて。ビルの管理もそうですけど、満天の湯で働くスタッフが接客に専念できるのは、ちょっとした施設トラブルの対応をしてくれたり、地域と施設をつなぐパイプ役を担ってくれたり。彼が後方から支えてくれているからこそだと思っています」

「泥臭いと言われるような仕事が多いかもしれないけど、みんなの手が届かない痒いところを助けてくれる、会社になくてはならないポジションがこの仕事なんですよ」

どんな人が向いていると思いますか?

「仕事の幅は広いですが、人それぞれ得手不得手もあるので、最初から全部できるとは思っていません。ただ、掃除でも部屋の補修でも、まずは自分で手を動かしてやってみようって思えるかどうかが大事だと思っていて。自分のできることを決めてしまわずに、興味を持って仕事を広げていけるような人だといいですね」

「あとは、コミュニケーション能力は求められると思います。社内はもちろん、地域に出れば、商店街、町内会、行政や地域団体など、さまざまな立場の人たちがいる。僕もそのなかで揉まれて、普通の3倍くらいの速さで成長できたと思っているので(笑)。みんなの意見や考えをほどよく受け止めて消化できると、仕事は進めやすいんじゃないかな」


取材が終わり、オフィス内で撮影をしていると、皆さんで何やら話しているみたい。

何を話していたんですか?と副社長の森山さんに聞くと、「これは、物件のデッキの塗料が剥がれてきたので、塗り直そうとしていて。そんな小さいので塗り切れるのって確認してました。どうやら大丈夫そうらしいです(笑)」とのこと。

“何でも屋さん”の仕事は、神輿に担がれるような派手な役回りではないけれど、モリヤマの皆さんはしっかりとその仕事をみてくれています。

縁の下の力持ちとして誰かを支えていきたい人には、働きがいのある仕事だと思いました。

(2021/11/22 取材 杉本 丞)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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