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30年先も
愛されるお風呂でありたい

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

ちょっとした贅沢をしたいとき、銭湯や温泉ってちょうどいい存在だと思います。

お湯で温まるだけの日もあれば、マッサージで全身ほぐしてもらったり、湯上がりの一杯と食事を楽しむ日もあったり。

気分にあわせて、一日ゆっくり過ごせるような場所も増えてきました。

お風呂に入るという行為は、日々の習慣でありながら、生活を彩るエンターテイメントなのかもしれない。温浴施設は、さまざまな「楽しい」と掛け合わせられる、可能性ひろがる空間なんだと思います。

そんな温浴施設の企画・設計をしている人たちがいます。

有限会社アクアプランニング。北は北海道、南は沖縄、ときには海外まで。国内でも数少ない、日帰り温泉やスパ・サウナなどの温浴施設を専門とする企画・設計の会社です。

4名という少数精鋭のメンバーで、オーナーと二人三脚で唯一無二の温浴施設づくりを手掛けてきました。今回は、企画・設計を担当するメンバーを募集します。

設計の経験がある人なら、温浴施設の経験がなくても大丈夫。

お風呂やサウナが好きな人はもちろん、設計のスキルを活かして新しいことに挑戦したいと思う人にとっても、面白い仕事だと思います。

 

表参道駅から歩いて5分もすると、アクアプランニングのオフィスのある建物が見えてきた。

中に入ると、代表の中村さんが迎えてくれる。

アクアプランニングは、子どものころから図面を描くことが好きだった中村さんが、33歳のとき立ち上げた会社。

「段ボールでドールハウスをつくったり、毎週のように自分の部屋を模様替えしたりするのも好きで。将来は建築の道に進むつもりでしたが、家庭の事情で一度諦めたんです」

フリーターとして社会人生活を送っていたけれど、建築の道を諦めきれず、地元・名古屋にある設計事務所に直談判。見習いとして雇ってもらった。

「その会社が、店舗設計に加えてサウナも手がける設計会社だったんです。それから40年近く、温浴設計に関わっていますね」

下積みを重ねて5年。その後、上京するタイミングがあり、アパレル系の設計事務所を経て、サウナを販売する商社で設計に携わることに。

そのときの上司が、サウナ単体ではなく、温浴施設全体の計画から設計に関わるスタンスで仕事をしていることに感銘を受けたそう。

「今後、業界で生き残っていくためには、企画の上流から関わることが大切だと感じて。会社にも提案したけれど、リスクが大きくなるからと聞き入れてもらえず。それなら、自分でやりたいことをやろうと、独立することにしたんです」

創業当初は物販店や飲食店など、商業施設全般の企画設計を請け負っていたアクアプランニング。

転機は2003年。飲食店の設計で仕事をともにしたコンサルタントから温浴施設の事業相談を受けたことがきっかけで、設計パートナーとしてチームに加わることに。

それ以降、メンバーからの後押しもあって、温浴施設を専門的に取り組むようになった。

いまでは営業せずとも、日本各地、さらには海外からもさまざまな相談が舞い込んでくるそう。

「僕らは、オリジナルなものをつくることに共感してくれるお客さんとだけ、仕事をするようにしていて。うちを紹介してくださる方もその辺はご理解いただいているので、その分ややこしい仕事を持ってきてくれることが多いです(笑)」

ややこしい仕事、ですか。

「競合が立ち並ぶ郊外エリアで、うちでもスーパー銭湯ができないか、という相談があって。人口規模を考えると、なかなか難しい。悩みに悩んで『泊まれない旅館』をコンセプトに、あえて入館料を倍に設定した企画を提案したんです」

着物姿の女将さんが出迎える、和風旅館を模した温浴施設。当時はまだ「日帰り温泉」が珍しいときで、時代の先駆けになった。

そのほかにも、豊臣秀吉が愛した蒸し風呂を再現したこともあったそう。歴史的資料も少ないなか、細かな温度調整が必要な温泉の香りまで再現したのだとか。

オリジナルな仕事をする、とは言っても、新たなジャンルを切り拓くなど、答えのない挑戦を繰り返すのは、簡単でないと思う。

中村さんは、どんなことを考えているんだろう。

「お客さんの熱って、数字では表せない。企画にかける思いがすごいんですよ。あれもこれも、ってたくさんアイデアを温めていて。コンサルタントが『その規模じゃ事業破綻しますよ』と言っても、それでもやってみたいと思う社長さんだっているわけです」

「数字を盾にして、それは駄目ですと言うことが正解なのか。社長の思いと夢を、少しでも叶えることがいいのか。その感覚は、経営者だからこそわかるものだと思うんですよね」

 

お客さんにとってみれば、建物の完成は終わりでなくスタート。施設の企画・設計はこの先の20年、30年を決めるもの。

何億というお金を動かすかもしれない。そんな責任を感じつつ、経営的な目線から企画を練るのが中村さんの役目だという。

その一方、実際に現場に出て、実務を担っているのが10年目の吉澤さん。在宅勤務中ということで、リモートでつないでもらう。

建築関係の仕事をする親の姿に影響を受けて、建築の道に進んだ吉澤さん。就職氷河期のなか、新卒入社したのは主にマンションを扱う設計事務所だった。

中村さんと仕事をしたことがきっかけで、温浴施設の設計に興味をもったそう。

「マンションと違って、温浴施設はお客さんと直に話せるのが面白いと思いました。前者はたいていクレームでしかやりとりしませんが、温浴施設はお施主さんから直接、施設に対する思いを聞いて形にしていくんです」

ちょうどメンバーを探していた中村さんが、吉澤さんをスカウト。吉澤さんの上司の後押しもあり、アクアプランニングへ転職することに。

実際働いてみて、どうでしたか?

「企画の前提は、事業収支が成り立つことです。となると、考えないといけないことがたくさんあります。どんな施設だと利用者さんはまた訪れたくなるのか。どんな体制だと持続的に運営できるのか」

「単に施設=ハードを設計すればいいのではなくて、ソフト面まで関わるのがアクアプランニングの企画です。インテリア、館内外のサインに館内着など、考えることが多岐にわたって、最初は大変でしたね」

最近の仕事で、印象に残っている施設があるという。

「川崎にある、ゆいるさんですね。4代目社長から、2000円程度の入館料でも集客できる施設に改装したいと相談をいただいたんです」

長年思いを温めてきたぶん、アイデアもたくさんあった。ただ、温浴施設としては小さな約300坪の床面積ですべてを実現するのは、現実的ではない。

思い切って浴槽の数を絞り、こだわりの天然温泉とサウナを満喫できるような施設にすることに。

「当初よりも要素をかなり削ったぶん、実際どうだろうかと心配で。設計も3回、やり直していて。プレオープン時のお客さんとスタッフが楽しそうに運営する姿を見て、これでよかったんだと思えましたね」

「やっぱりお客さんにリピートしてもらうためには、施設の居心地の良さとか、働いてる人の感じのよさが大事だと思うんです」

 

二人の話を聞いていると、完成後の施設を利用する、そこで働く人の姿が見えてくるような気がしてくる。

まさにそんなことを想像して仕事に取り組んでいるのが、坪田さん。吉澤さんと同じく現場に出て実務を担うひとりで、「発想力がすごいんです」との紹介が。

どんな設計をしているんだろう。思い入れのある施設として、長野市にある「コトリの湯」を挙げてくれた。

「2年ほど閉鎖していた温浴施設を全面改装したいと相談を受けて。建物そのものの形は変えられないけれど、内装は自由度高く設計できる。雰囲気をガラッと変えたいと思って、吹き抜けに階段がある本棚をつくってみました」

これは… すごいですね。本選びが楽しそう。

「お施主さまの知人に古本屋の方がおられて、選書してもらえるとのことで。なら、本棚をじっくり見てもらえるような動線をつくろう、と考えて階段状になりました」

「ほかにも、昔ながらの温泉宿を楽しめるように、木でつくった射的や卓球台を置いてノスタルジックなコーナーもつくりました。あとは… ドカンもつくりましたね」

ドカン…?!

「お施主さまと『なにか変なものつくりたいね』という話で盛り上がって。出てきたのがドラえもんに出てくる空き地のドカンでした。大人だって入ってみたいよねって。一番静かなエリアに置いて、大人が思う存分入れるようにしました」

コトリの湯のコンセプトは「巣ごもりができる温浴施設」。

最初から決めていたわけではなく、お施主さんが大切にしたいポイントや話のなかで生まれたアイデアが積み重なって、ひとつのコンセプトにまとまったのだそう。

アイデアベースでコンセプトがまとまるのは、なんだか不思議にも思える。

「大事なのは、どういう状態が利用者さんにとって居心地よく感じるのか。コトリの湯の設計で肝になったのは、滞在時間なんです。延びれば延びるほど、客単価が上がる。居心地のよさが、結果としてお施主さまの利益にもつながります」

大学で建築を学んだ坪田さん。就職活動はせず、卒業設計に全力投球したうえで進路を決めようと考えていたそう。

「ただ、自分のやりたいことができなくて、建築に携わりたくなくなったんです。しばらくプー太郎で」

そのとき、たまたま見つけたのが日本仕事百貨の記事だった。

「それまで温浴施設の設計をするなんて想像したこともなかったけれど、呼ばれた気がしました(笑)。温泉は好きだったし、人口減少社会で新しく住宅をつくることに違和感もあって」

「多くの人を幸せにできる設計ってなんだろう?って考えていて… 老若男女楽しめる温浴施設、ぴったりじゃないか!と思ったんです」

最近のサウナブームも相まって、温浴施設への注目は高まっているように感じる。

選ばれる場所をつくるには、既存の枠に捉われない頭の柔らかさと、アンテナの広さが必要なんだろうな。

坪田さんは、どんな人と働きたいですか?

「やっぱり、お風呂やサウナに興味のある人がいいですね。企画をゼロから考えるのは、産みの苦しみを伴います。好きなものだと踏ん張れますし、課題も見出せると思います」

ここで、隣で聞いていた中村さん。

「うちはお施主さんとキャッチボールしてつくっていくんです。条件だけ与えられて、いいものを出せって言われてもね、できないんですよ。そんな簡単なもんじゃないですよって」

「お客さんも一緒になって考えて、産みの苦しみをともにして、はじめていいものができると思うんです」

あっという間に時間が過ぎ、取材を終える頃にはあたりは真っ暗になっていました。

時間がゆるせば、ずっと話してくれそうなアクアプランニングのみなさん。何十年先も愛される場所をつくろうと、想いを注いできたんだろうな。

そんなふうに話せる仕事を、積み重ねていきたい。帰路に着く足取りはなんだか軽く感じました。

(2022/2/2取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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