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あれ?これはなんだろう。
カフェの前に置かれた装置から、シャボン玉が次々と出てくる。
風に乗って飛んでいくのを眺める人や、シャボン玉に駆け寄るこどもたち。
これは、2022年のDESIGNART TOKYOで展示されたStudio POETIC CURIOSITYの「ウィンド・ウィスパラー:言葉を風に乗せる」という作品。
想いや感情に耳を傾け、言葉をシャボン玉に変えて、風に乗せて運ぶ。
誰かに打ち明けたい、叫びたい訳ではないけれど、確かに自分の中にある想い。日常を過ごしていると、そんな小さな声と向き合うことは難しい。けれど、デザインとアートを通して見方を変えると、向き合うことができるかもしれない。
普段の暮らしと、デザインやアートとの出会いのきっかけをつくるイベントが、「DESIGNART TOKYO」。
イベントが始まってから7年目、今年も10月20日から10日間、開催されます。
デザイン、インテリア、アート、ファッション、テクノロジー、フードなど、世界中から多彩なジャンルのクリエイターが集まり、都内のさまざまな場所で展示がおこなわれるこのイベント。
今回は、会期前から運営をサポートするインターンと、イベント期間に活動するボランティアを募集します。
どちらもデザインやアートについての経験や知識は問いません。デザインやアート、ものづくりに興味があり、今後仕事にもしていきたいという意欲がある人。そんな人にとって、DESIGNARTの活動は何かを掴むきっかけになると思います。
外苑前駅から歩いて5分。賑やかな大通りから一本入った先、飲食店やインテリアの店が並ぶ落ち着いた通り沿いのマンションに株式会社DESIGNARTのオフィスがある。
オフィスを訪ねるのは昨年から続いて2回目。「また今回もよろしくお願いしますね」と、DESIGNARTディレクターの関戸さんが迎えてくれる。
あらためて、DESIGNART TOKYOってどんなイベントなんでしょう?
「もともと、デザインとアートを横断的に楽しめて、感動のある暮らしを多くの人に体感してほしいという想いからスタートしたイベントです」
「領域を越えて、インテリアやアート、そしてダンスもファッションもフードも。すべてが同じ場で楽しめる。東京のまち自体が美術館になるようなイベントなんです」
前回は国内外の92の出展者が青山、表参道、渋谷、六本木などの65の会場で展示。10日間の会期には、のべ約20万人の来場者が足を運んだ。
「まだエントリーシートの段階ですが、昨年とは展示の雰囲気も変わりそうです。前回を振り返ると、サスティナブルやアップサイクルといった環境に配慮したテーマの作品が多い印象でした」
「今年はそういった環境への視点が当たり前になり、メインテーマとして言及するような作品は少なくなりました。年によって、色があるのはおもしろいですね」
昨年は、建築資材のなかで最も多く廃棄されるLGSを再構築して生まれた家具や、リサイクルガラスを使用したプロダクト、作品を展示する什器に廃棄衣類繊維のアップサイクルボードを使用するなど。時代にあわせた作品が並んだ。
まだ未定ではあるけれど、今年は原点回帰するように、自分の内面や感情を率直に表現したものが多い印象なのだそう。
またDESIGNART TOKYOでは、若手クリエイターのための支援 「UNDER 30」という制度がある。30歳以下の5組のクリエイターが、出展費用が免除され、作品を発表できるというものだ。
「先日、その5組が決まりました。今年はこの枠への応募がとても多かったんです」
チャレンジの場、新製品のプロモーション、海外で成功した展示を日本でおこなう凱旋展示など。普段クライアントワークがメインのデザイナーにとっては、個人制作をするモチベーションとしても、DESIGNART TOKYOは創作発表の場としても活かされている。
「出展者さんや展示会場をご提供いただく方、協賛企業さん、来場するお客さん、もちろん今回募集するスタッフも。かかわる方たちの可能性を広げる場所になっていけるといいなと思っています」
「クリエイターとかかわることで、気づきや考えが変わることもあると思うんです。来場者数やPV数も大切ではありますが、デザインやアートとの出会い、その人自身の体験や変化を大切にしていきたいんです」
作品やクリエイターとかかわることで、自分のなかにある「良い」という感覚を見つめ直すことができる。それは同時に、自分自身の内面や価値観と向き合うきっかけにもつながると思う。
関戸さんと一緒にDESIGNART TOKYOをつくっているのが、プロジェクトマネージャーの坂本さん。
以前は、現代アートのギャラリーで働いていた。そのギャラリーの展示に訪れた関戸さんと偶然出会ったことがきっかけで、DESIGNARTに転職。
「以前は、施工もキュレーターもPRも図録も。ほとんどが社内で完結していました。お客さんもアートに関心がある感度の高い方が多くいらっしゃいましたが、そのぶんアートの展示を見る方も限定的になってしまったのではないかと感じていたんですよね」
「DESIGNARTに来て、まずかかわる人数の多さに驚きました。展示ひとつをつくるために、いろんな人の力を借りているんだな、とか。あとパブリックアートのように、来場者も展示を目指して来るような興味がある人だけではないんだなって、あらためて気づきました」
広く公募し、誰もが見ることができる展示を行うDESIGNART TOKYO。作品を購入できるという点でも、眺めるだけのものから、一歩踏み込んだ視点で作品を見ることができる。
「DESIGNARTって、デザインとかアートをより身近にする活動なんだなって思っています」
「デザインとかアートっていうと、敷居が高いものに思われがちですけど、全然そんなことはなくて。ギャラリーや美術館に行かないと見られないような特別なものではないんです」
部屋に置かれた椅子や、公園のベンチだって誰かがデザインしたもの。まちを歩けばパブリックアートもある。意識していないだけで、誰かの創作物によって日常は彩られている。
「作品が置かれることで、普段通り過ぎていたような場所にも、気づきや意味が生まれる。クリエイターの視点がわかると、まちも面白く見えてくると思うんです」
「ギャラリーで展示をするのとは違う大変さがあります。それこそなんでもやらなきゃいけないので、インターンやボランティアの方々にはさまざまな場面で助けられています。」
最後に話を聞いたのは、前回のDESIGNART TOKYOスタッフ募集記事からアルバイトとして参加した鷹家(たかいえ)さん。
今回DESIGNART TOKYOにかかわる人も、イベント当日の話やその後のキャリアについて、参考になることは多いと思う。
「もともとはアパレル商社で営業をしていました。コロナ禍で業界全体が落ち込んでしまって、このまま続けてていいのかなって悩んでいたときに、空間デザインって分野があるってことを知って」
「勉強するために専門学校に通いはじめたんですが、そこの先生からDESIGNART TOKYOのことを教えてもらったんです」
アルバイトとして活動したのは3ヶ月ほど。「そんなに短かったっけ?」と坂本さんが驚くほど、密度の濃い時間を過ごした。
坂本さんのアシスタントとして、出展者との調整、発行物などの表記を校正したり、会期中に展示会場から配信するInstagram Liveのタイムスケジュール作成など。さまざまな業務を担った。
なかでも印象に残っているのが、三井化学株式会社が開発した新素材「TAFNEX」のベンチとスツールにかかわったクリエイターのインタビューの撮影に同行したこと。
「プロダクトデザイナーの横田さんと、プロダクトの企画立案者の渡辺さんから直接お話を聞かせていただきました。素材のこと、作品への想いとかも聞けて、『デザインするときにどう考えていますか』なんてざっくりした質問にも、真剣に答えてくださって」
「デザイナーや素材をつくるメーカーの方と直接お話しするはじめての機会でした。自分にはないユニークな視点だったり、渡辺さんが自ら横田さんに声をかけてこの作品の完成に至ったっていうストーリーを知れたことも新鮮で。印象に残っています」
プロのカメラマンによる写真撮影もおこなわれ、多くのクリエイターが集まる温度の高い現場となった。
「カメラマンってクールな印象があったんですが、そのときの方は自然光を活かしたほうがいいとか、より良くするための提案をたくさんしてくれたり、自分からどんどん動いて撮ってくれたりして、一緒につくっていくような現場でした」
出来上がったものだけではなく、どんな過程をたどって完成したのかを見ることができるのが、今年のインターンの面白さかもしれない。
当日の展示の監視などがメインになるボランティアは、展示の裏側が見られたり、展示会場にいるクリエイターや来場者との交流を体験することができる。
「撮影の日も、その日に入稿しないといけないものがあったり、毎日が慌ただしかったですね。プレッシャーとかはとくになく、みんなで一緒に頑張ってイベントをつくったなって感じで。終わってみれば楽しかったと、今でも思います」
前回は大学生から20代後半の参加が多く、アルバイト・ボランティア同士、一緒にご飯に出かけたりと、活動後も交流が続いている。
「活動中は集中する業務が多いので、黙々と作業することもありますが、ひと段落つくとみんなで話したりして。学校でも会社でもないところで友達ができたのはうれしかったですね」
最近、空間デザインの会社に転職したという鷹家さん。
転職活動の面接では、DESIGNARTのアルバイトをしていたことを話すと、話が盛り上がることもあった。
「アルバイトでの経験を含め、今につながっているなって感じています」
長期でかかわるインターンも、当日のボランティアも。
まだ先のことははっきりと見えていないけれど、デザインやアートを通して何かを掴みたい、DESIGNART TOKYOの経験を活かしたいという人にとっては、この期間に得るものはきっと大きいと思う。
自分の暮らしにデザインやアートを近づけてみる。それは、自分の人生を豊かにしてくれるように感じました
(2023/6/6 取材 荻谷有花)