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普段何気なく訪れる通りやお店に、ある日突然クリエイターの作品が現れたら。まずはきっと驚くと思う。いつものまちが少し違って見えるだろうし、「これはどんな作品だろう?」と興味を持って調べようとするかもしれない。
アートやデザインは、実はわたしたちの生活に身近なもの。あらためてそのことに気づくきっかけになるのが、DESIGNART TOKYOだと思います。
DESIGNART TOKYOは、現代アートやファッション、プロダクト、インテリア、建築など、さまざまなジャンルのクリエイターが横断的に新作展示を行う、デザインとアートのフェスティバル。東京の街を舞台に行われるこのイベントは、2017年にはじまり、今年で5回目を迎えます。
今回募集するのは、イベント運営をサポートするボランティアスタッフ。Webサイト制作やガイドマップの配布、SNS配信など長期的に事務局を支える人たちと、会期中の運営や設営をサポートする人たちをそれぞれ募集します。
デザインやアートが好きで、その世界の内側に触れてみたい。クリエイティブ業界で働くきっかけを掴みたい。
参加の動機は気軽なもので構いません。熱意を持ってイベントづくりに関われる人であれば、誰にでも門戸は開かれています。
取材に訪れたのは、南青山のマンションの一室にある、DESIGNARTの事務所。
アートピースや関連書籍が並ぶ打ち合わせスペースで、まずは代表の青木さんに話を聞いた。
昨年のDESIGNART TOKYOは、コロナ禍での開催だったんですよね。
「そうなんです。例年と比べて来場者数は減ってしまったんですけど、別の面での手応えはすごくあって。というのも、新しく導入したオンラインの展示が非常に好評だったんです」
360度カメラで展示会場を撮影し、オンライン上で公開。場所にとらわれずどこからでも臨場感ある展示が楽しめる仕組みを構築した。
結果的に遠方の人たちにもアプローチすることができ、Webページへのリーチ数は例年の倍近くまで伸びたという。
「正直、開催することには不安もありました。この状況下で本当にイベントをやっていいものか、スタッフたちとも悩みながら進めていって。とはいえ、オンラインの可能性を感じましたし、同時にライブの高揚感に勝るものはなかなかない、と気づくこともできました」
リアルで触れるからこその感動や発見がある。展示会場で久しぶりに会い、そこから一緒に仕事をすることになった人たちもいたという。
「ひとつの場所に大勢が集まるわけではない、分散回遊型のイベントだからこそ実現できたなと。安全性を担保しながら開催できるように、今年も工夫していこうと思っています」
表参道や代官山、六本木、銀座など、都心のあらゆる街が舞台となる、DESIGNART TOKYO。
特徴的なのは、本来展示用途ではないスペースに、世界中のクリエイターたちの作品が並ぶこと。アパレルショップやインテリアのショールーム、ギャラリー、商業施設や廃ビルなど、会場は多岐に渡っている。
「会場とクリエイター双方から参加者を募って、それぞれをマッチングしている点は、DESIGNARTの特徴のひとつです」
「オーガナイザーとして、我々が意志を持ってキュレーションしていく。毎年苦労する部分ですが、醍醐味でもあります。マッチングによって、僕らが想像した以上の化学反応が起こることも多々あるんですよ」
たとえば2019年には、インテリアブランド「B&B Italia」のショールームを会場に、ファッションブランド「SOMARTA」が展示を行った。
作品に用いたのは、イタリアのブランド「studioart」のレザータイル。通常は、空間に馴染む色合いで壁紙のように使用するところを、発色の強いタイルを立体的に組み合わせることで、特徴的なアート作品が完成した。
「ファッションデザイナーが手がけるとこんなふうになるんだと、僕らも驚きでした。インテリアや建築業界の人だと、この斬新な色合いのコラージュは生まれないと思います。これをきっかけに、イベント後にブランド同士のコラボレーションにも発展しました」
たしかに、ショップの空間も含めて、お互いを引き立てあうひとつの作品に感じられる。
常識や当たり前の延長では交わらないもの同士がつながり、化学反応が生まれる。それはまさにアートやデザインの力とも言えるし、ミックスカルチャーが根強い東京というまちを舞台にしていることも関係していると思う。
「DESIGNARTを巡ることで、いつもと少し違う視点でまちを歩くことになると思います。そうすると、今まで気づかなかったお店とか通りの素敵な植栽とかが、目に入るようになる。展示をきっかけに普段は入らないお店を訪れて、ほしい商品に出会うかもしれないし。そんな予期せぬ気づきがあることが、DESIGNARTの醍醐味なんです」
デザインとアートの魅力を伝えるイベントだと思っていたけれど、そこに留まらず、まち全体を盛り上げるイベントなんですね。
「そうなんです。DESIGNARTは、“フェスティバル”ですからね」
今年のDESIGNART TOKYOのテーマは、「CHANCE! 〜かつてないチャンス〜」。どんな思いが込められているのだろう。
「今って、これまでの既定路線や固定観念がまったく通じなくなっている状況ですよね。そういうとき、リブランディングやリデザインで、新しい境地を見出そうとする動きが生まれます。クリエイターにとっては100年に一度の大きなチャンスでもあるんですよ」
今はこれまでになく、クリエイティブが必要とされている時代、と青木さんは話す。
「若手にもチャンスがまわってきやすいですし、時代に合わせた価値を提供できる人には新しい仕事もまわってくる。このDESIGNARTが、クリエイターたちにチャンスを提供する舞台装置になったらいいなと思っています」
そんなテーマのもとで、どのような展示がされるのか、少しだけ教えてもらう。
「今年のメインのひとつに、『KURADASHI』という企画をやろうと思っています。クリエイターさんのアトリエや倉庫に眠っている、とっておきの代物を展示・販売しようという試みです」
クリエイターがクライアントから依頼を受けて製品をつくるとき、最初に形づくる原型をプロトタイプやアーキタイプと呼ぶ。製品化に向けて、安全性や必要な機能を吟味していくのは大事なステップなのだけど、同時に当初の独自性が薄れてしまうことも多いという。
今回は、世の中に出ることなく眠っていた、フィロソフィーやコンセプトの塊とも言えるような原型を表に出そうという試みなのだとか。
「プロダクトデザイナーの倉本仁さんにキュレーターをお願いして。世界中のデザイナーやアーティストに声をかけてもらって、国内外30名ほどが参加する予定です。どれも一点ものなので、ファンにとってはたまらないんですよね。現地を訪れた人もオンラインで参加する人も、ウェブを通じて購入できる仕組みをつくります」
「UNDER-30のクリエイターさんたちも、実力派揃いで注目ですよ」
今年の展示についてそう語るのは、事務局を統括している篠崎さん。
UNDER-30とは、30歳以下の若手クリエイターを支援する企画。選出された5組のクリエイターは無料で出展することができ、多くの人に作品を知ってもらういい機会になる。
「そのうちの一人が、プロッタードローイングという手法で作品をつくる深地宏昌さんです。50年以上前につくられたプロッターという機械を最先端のデジタルテクノロジーで動かして、グラフィック作品をつくっています。紙のざらつきや鉛筆の硬さによって仕上がりも変わって。それぞれ作用し合うことで、大変興味深い作品が生まれるんです」
「クリエイターはいろんな面白いことを考えているので、どんな想いで作品をつくっているのか、本人の話を直接聞くことができるのも、DESIGNARTの魅力だと思います。そこで作品の購入につながったら、私たちにとってもうれしいことですね」
篠崎さんの言葉からは、クリエイターを尊敬する気持ちが伝わってくる。
実は篠崎さん、昨年のDESIGNARTでのボランティアを経て、今年2月に入社したそう。
前職の金融機関を退職し、大学院でアートマネジメントを学んだ後にボランティアの情報を見つけたのがきっかけだった。
「前職は働きやすい職場だったんですけど、いずれクリエイティブに関わる仕事がしたいとずっと思っていて。思い切って退職して、勉強とネットワークづくりの期間を過ごすなかで出会ったのがDESIGNARTでした」
「クリエイティブ業界でも、マネジメントの仕事内容って普通の会社とあまり変わらないんです。同じような内容の仕事をするなら、自分が好きな業界でやりたいなって」
ボランティアは、アートやデザインを専攻する学生がメインなのかと思っていたけれど、篠崎さんのような社会人もたくさんいるそう。
平日の昼間がメインなので、転職活動中やフリーランスの人が中心にはなるものの、普段はクリエイティブと関係のない仕事をしていて、業界との接点を持ちたいと参加する人も多いのだとか。
「事務局の仕事って、やっぱり事務・運営業務なんですよね。電話応対やコミュニーケーションがきちんとできるとか、ワードやエクセルが使えるとか、一般的なビジネススキルがとても大切になります」
事務局のボランティアとして入る人は、Webページや印刷物の制作をサポートしたり、SNSでのPRを担当したり。篠崎さんたちの右腕として長期的に仕事を担うことになる。
そこまで関わることが難しい人は、会期中のみの参加も可能。
「終日会場の見回りや受付をしたり、設営をしたり、体力勝負ですね。一日で設営を終えなきゃいけないとか、大変な部分もあるんですけど、わたしはその空間づくりに参加しているだけで面白かったですよ」
大人たちが本気でつくる、文化祭のような雰囲気もありそう。
アートやデザインが好き、クリエイティブ業界の仕事に触れたいという思いのある人なら、どんなこともきっと新鮮で面白く感じられると思う。
最後に再び、代表の青木さん。
毎年力を貸してくれるボランティアについて、どんなことを思いますか?
「『好きこそものの上手なれ』って言葉がありますけど、本当にその通りだなと。わざわざボランティアで来てくれる人たちって、行動力と熱意のある人が多い。だからとても信頼しています」
「熱心であればあるほど、得られるものは大きくて。活動するなかで知り合いも増えるし、つながりを持ちたい会社さんがあれば僕が紹介する機会もあると思う。ボランティアの人たちにも、DESIGNARTをきっかけに、いろんなチャンスを掴んでほしいと思っています」
今回、お二人の話を聞いて、アートやデザインをぐっと身近に感じることができました。
DESIGNART TOKYOは、訪れる人たちにもそう思ってもらえるイベントだと思います。
ボランティアだからこそ、自分の気持ちに素直に、貪欲に。このチャンスを掴むことから、何かがはじまるかもしれません。
(2021/8/19取材 増田早紀)
※撮影時はマスクを外していただきました。