求人 NEW

ものづくり会社がはじめる
食べものづくり
棚田米からコオロギまで

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

1950年創業の金属加工メーカー、株式会社ウラノ。

航空機などに使われる部品を製造してきたものづくりの会社が、新たに“食べものづくり”をはじめています。その名もURANIWA(ウラニワ)プロジェクト。

棚田で米をつくり、鶏と蜂を飼い、コオロギを育てる。まさに、会社の裏庭から起こったような取り組みです。

はじまりは、プロジェクトチームの個人的な興味関心から。そこに、働き方の見直しや事業の多角化を目指す会社の動き、昆虫食のムーブメントや、耕作放棄地の活用や食の生産過程での環境負荷といった社会課題などがかけ合わさり、少しずつ活動の輪が広がってきました。

今回はこのURANIWAプロジェクトの新しいメンバーを募集します。

天候や各部門の忙しさに応じてサポートし合いながら、棚田での無農薬栽培の米づくりや養蜂、養鶏、コオロギの飼育などをマルチに担える人を求めています。商品企画や広報、事業開拓など、「こんなこともやってみたい!」と自分からアイデアを出せる人だと、なおよさそう。

地域の人たちが師匠となって教えてくれるので、農業の経験は問いません。外仕事や動植物に関わることが苦手だと厳しいかもしれませんが、関わり方次第でいろんな展開がありえる仕事だと思います。

 

長崎県東彼杵(ひがしそのぎ)町。

人口約7600人。かつての長崎街道の要衝で、江戸時代から鯨食文化が根づいている。また、品評会で日本一に選ばれるような、おいしいお茶の産地でもある。

長崎空港のある大村市のすぐ北に位置していて、空港から町内までは車で20〜30分ほど。穏やかな大村湾を見下ろす工業地帯の一角に、ウラノは長崎工場を構えている。

1950年に埼玉で創業したウラノ。航空機をはじめ、さまざまな産業に使われる部品を製造してきた。

長崎に進出したのは2006年のこと。当時の新型航空機「ボーイング787」の部品加工をメインに、7名で立ち上げ、今では220名が働く工場になった。

そんな長崎工場を立ち上げから取りまとめてきたのが、副社長の小林正樹さん。URANIWAの発起人でもある。

ともにプロジェクトを進めてきた妻の結子さんと一緒に話を聞かせてもらう。

「養蜂も養鶏もコオロギの飼育も、最初は個人的な趣味というか。二人とも食いしん坊で、食への関心が強かったんです。自分で育てて食べてみたい、というところがスタートで」

とはいえ、もともとオーガニック志向だったわけではなく、食べること全般が好きだった。ファストフードを手に取ることもあったし、「暴飲暴食を重ねてました」と笑いながら話す。

転機となったのは、佐世保市で自然放牧の養豚をしている「味菜自然村」を訪ねたこと。

「養豚の傍ら、お母さんが無農薬の野菜もつくっていらして。そのお手伝いに行ったり、いろんなお話をしたり。親交を深めるなかで、自分たちの食事や生活も自然とオーガニックのほうに向いていきました」

「自然に寄り添った丁寧な暮らしをされている方々とのお付き合いも増えて。山の師匠と知り合って、猪の肉をもらってくるようになってから、育つ過程のことも自分たちで調べるようになりました。だからといって今、スーパーに並ぶ肉を食べないわけではないんですけど、単純に興味が湧いたんですよね」

5年ほど前から野菜づくりや養蜂をはじめたお二人。当初はウラノの事業とは関係なく、趣味として取り組んでいた。

状況が変わってきたのは、昨年に入ってから。

「もともとワインをつくりたいと思っていて、ぶどう畑用の土地を探していたんですよ。そしたら近所の方が『使っていない田んぼがあるよ』というので、去年の5月ぐらいに見に行って、すぐに貸してもらえることになったんです」

苗やワイナリー備品の見積もりまでとったものの、降雨量の多い東彼杵地域では、ぶどうの自然栽培はむずかしいと断念。そんななか、無農薬栽培の米づくりをしている先輩から苗を譲り受けて育てることになった。

耕作放棄地を整備するところから、田植えや稲刈りまで。試行錯誤しながら進めていくと、無事においしいお米ができた。家族づれで参加する社員も増えて、また来年もやりたいという声が上がるように。

さらに今年は、工場から車で15分ほど行ったところにある棚田も借りて、本格的に米づくりに力を入れていく。背丈以上の雑草が生えた土地をなんとか開墾して、ようやく準備が整ったところだという。

「つくったお米は、ウラノの群馬工場のオーガニック食堂で使ってもらえることになっていて。売り先があるから安心してチャレンジできている部分もあると思います」

コオロギの飼育も、「最初は個人的な興味からだった」と正樹さん。

世界的な人口増大や水産資源の枯渇、畜産による環境負荷など、食の生産にはさまざまな課題がつきまとう。そのなかで、ここ数年、未来のタンパク源として昆虫食が注目を集めていることを知った。

さっそく福岡の会社に問い合わせ、コオロギを購入。社員や妻の結子さんから「羽音がうるさい」と言われながらも、自宅や会社の執務室で育てていると、たまたまやってきた銀行の担当者とコオロギの話で盛り上がった。

なんでも、新規事業への投資に力を入れていて、昆虫食の会社に社員を出向させるほどだという。すぐにその会社を紹介してもらい、昨年の8月には協業契約を結んで、本格的に飼育をスタートすることに。

「3000匹からはじめて、試行錯誤を重ねてきました。全滅しちゃうような時期もありつつ、今は20万匹ほどまで増えています」

20万匹…! すごい数ですね。

「理論値でしかないんですけどね。もともと昆虫食文化があるタイのような国に比べると、日本は遅れていて。アジアやヨーロッパのマーケットが年々伸びているなかで、人件費や光熱費の面でほんとうにうまくいくのかどうか、未知数なんです。大学などと共同研究しながら、いろいろと改善していけたらなっていうのが、今のコオロギの状態ですね」

地元のカフェオーナーやパティシエと一緒に、コオロギパウダーを混ぜ込んだクッキーやチョコレート、フィナンシェなども開発中。

ちょうど地元のカフェとつくった羊羹のサンプルがあるということで、いただくことに。

見た目はふつうの羊羹。続けて一口。おいしい。

結子さんに「ちょっとエビっぽい味がするんです」と言われて、たしかにそんな気がする、というくらいだった。これなら実際に食べてみて、昆虫食へのイメージが変わる人も多そう。

「個人的な動機からはじめたことばかりですけど、いろんなことにつながっていくんです。たとえば養鶏やコオロギの飼育は、食糧廃棄の問題解決にもなると思っていて」

どういうことですか?

「隣町では一日2トンのおからが出ます。大部分は堆肥になっているものの、お金を払って焼却処分もしている。これをなんとかできないかということで、鶏やコオロギに与えてみたところ、ちゃんと食べてくれて」

道の駅やスーパーで廃棄される野菜や米糠も引き取り、飼料に。

ほかにも、養蜂は蜜を採るだけでなく、親子での巣箱づくりのワークショップを開くことで、環境問題が蜂の生態に与える影響を伝えることができる。

コオロギの飼育に必要なガーゼや新聞の裁断作業は、地元の就労支援施設に発注。施設側としても、地域内での仕事を探していたので喜ばれ、さらには金属加工で油を拭き取るウエスの裁断という新たな仕事にもつながった。

生きものを育てるなかで、地域の資源や課題をうまく組み合わせ、自然にも社会的にもいい循環をつくっていく。そんなビジョンが見えてきた。

「これは後付けの部分もあるんですが、機械加工のなかでも0から1を生み出す設計部門の社員はとくに、精神的な負担を抱えることが多くて。農作業を組み込むことで、その解消にもつながらないかなと考えています」

まだ試行錯誤中ではあるものの、少しずつ目指すべき方向性が見えてきたURANIWAプロジェクト。今回はその新しいメンバーを募集したい。

主に担ってもらいたいのは、棚田での無農薬栽培の米づくりや養蜂、養鶏など。コオロギの飼育は専属のスタッフがいるので、時々サポートに入る程度の関わりになると思う。

「わたしたち自身もプロフェッショナルではないですし、農作業は未経験でいいと思っていて。米づくりに関しては、今も教わりながら、ブロフ栽培という新しい方法に挑戦しているところです。自由な発想で『自分はこんなことをやってみたい!』と言ってもらえるような人が来てくれたらうれしいですね」

商品開発や販路開拓、収穫体験やワークショップなどの企画・提案、あるいはSNS運営や情報発信が得意な人だとなおありがたい、とのこと。

URANIWAプロジェクトはどういう取り組みで、何を目指しているのか、社外だけでなく社内に対しても、伝えていく必要がある。楽しく周りを巻き込めるような人だといいかもしれない。

 

「しゃべるのが苦手な人は大変かもしれませんね」

そう話すのは、コオロギの飼育を担当している松田さん。リンリン…と羽音が反響する飼育室のなかで、作業の合間に話を聞いた。

「自分はこの部屋でひとり作業することが多いのであれですけど、棚田は『誰だろう、この人は…?』って人が突然見に来たりするので(笑)。地域の人と関わって、しゃべる機会も結構出てくるんじゃないかなと思います」

農業に関しては、地主さんのお兄さんやその甥っ子さんが教えてくれる。わからないことをまっすぐ聞ける素直さと、真摯に学ぶ姿勢さえあれば、経験は問わない。

その一方で、実際にはひとりで黙々と作業する場面も多い。

「もともと自分は歯科技工士で、ウラノでも金属加工の仕上げを10年やっていました。コオロギの飼育もそうですけど、やることは毎日そんなに変わらないんです。でもマンネリ化するのが一番いやで」

「小さいサイズのコオロギは、すぐ死ぬんですよ。水を一滴、ぽてっと落としてると、飲みたくて集まってきて、全部溺れちゃう。だから雑な人だと厳しいかもしれないですね。生きもの相手だから、よく観察して対応していくことが大事なんだと思います」

雨の日や農閑期など、田んぼの作業がないときはコオロギの飼育を手伝う日も出てくるだろうし、逆に松田さんに助っ人を頼むこともあると思う。

ひとつの作業に留まらず、いろんな現場に携わるのは、大変だけど魅力的なことでもある。

松田さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。

「お互いにサポートし合いながら働けるような人ですかね。ひとりでずっと作業していると改善策も出てこないので、その意味でも、新しい視点を持ち込んでくれる人がいるとありがたいです」

ものづくり会社がはじめた、食べものづくり。

その原点にあるのは、食への伸びやかな好奇心でした。

もともとの専門家でないからこそ、思いきって挑戦できることもある。裏庭で実験するように、プロジェクトを育てていってください。

(2022/3/22 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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