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このまちの山・海・里・人
すべてが先生
生きた学びをデザインする

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

大人になってから、「あのとき学んだことが、こんなところで役に立つのか」とはっと気づくときがあります。

たとえば数学。問題を解くなかで培った論理的な思考は、話を聞いて誰かに伝える、一見関係なさそうにも見える今の仕事の土台になっていると感じます。

ここで学んだことがいつか芽吹いて、学生たちの未来を豊かに彩るように。そんな願いを込めて、学びのデザインを続けている人たちがいます。

石川県能登町は、能登半島の北部に位置する人口16,000人の町。世界農業遺産にも認定された豊かな里山里海や、地域ごとに受け継がれてきた「キリコ祭り」で有名です。

町内唯一の高校、石川県立能登高等学校では、2014年に町と高校が協力して県内初の公営塾「鳳雛(ほうすう)塾」を開設したことをきっかけに、基礎学力の向上とまちへの愛着の醸成を目指す「能登高校魅力化プロジェクト」がおこなわれています。

今回募集するのは、能登高校魅力化プロジェクトを推進するスタッフ。理系教科の学習指導ができることが前提ですが、学校・地域と連携する教科外の学習にも積極的に関わっていく役割です。

 

東京から能登空港までは、空路で1時間。空港からは町営のタクシーが出ている。

最初は山の中という感じだった景色も、トンネルを潜るうちにひらけていく。20分ほど走ったあたりで、一気に視野が開けた。

一面に広がる海。港のすぐそばにあるのが、これから向かう能登高校。

「立山連峰は見えましたか? 能登高校の教室からは海越しに山が見えるんですよ。生徒たちは見慣れてるから、普通だよ〜って言うんですけどね」

部屋に入ってそう話してくれたのは能登高校魅力化プロジェクトのコーディネーター、木村さん。

兵庫県出身で、教育系の企業に勤めたのち、2018年に地域おこし協力隊として能登へ。

現在はプロジェクト全体のマネジメントや、学校・地域と連携した学習支援を担当している。

能登高校で魅力化プロジェクトが始まったのは2014年。

町内の学校が統廃合を繰り返し、能登高校が町唯一の高校となるなかで、地域で育つ子どもを絶やさぬようにと、高校と町、地域の人が協力して立ち上げた。

校内に自習のできる公営塾を開くところから始まり、その後は町内に「まちなか鳳雛塾」という公営塾を設置。学習に励む高校生の姿を間近で見られるようにと、小中学生も学ぶことができる場所になっている。

まちなか鳳雛塾のスタイルは、基本的に自学自習。必要に応じてスタッフが支援する。

小さな講義を実施したり、ICT教材を使って指導をしたり。ときに塾生OBや社会人と語らう場を設けたりと、さまざまな方法で学習意欲を刺激し、学習効果が高まるような機会をつくっている。

そして教科学習と並行して力を注いでいるのが、学校や塾を飛び出して地域のことを学ぶ課外学習だ。

「着任した2018年から鳳雛ゼミという活動を企画、運営しています。高校と連携して実施していて、ひとつのテーマで年4回、ゲストを招いて話を聞いたり、ディスカッションをしたりしています。まちの大人や大学生、大学教授も参加してくれるんですよ」

これまで実施したテーマは「海」、「里山」、「ビジネス」など。先日は2021年度の最終回で、能登町の海にある資源を使った新規事業を考えたそう。

鳳雛ゼミから生まれた新たな取り組みもある。

2018年、当時の教頭先生が「学校の授業で地域を知り考える機会をつくれないか」と木村さんに相談したことで始まったのが、「総合的な探究の時間」での地域探究活動。

暮らしのなかから生徒たち自身が課題を見つけて、解決方法を考える。それに必要な考え方のインプットからアウトプットに至るまで長い時間をかけて取り組む授業だ。

能登の魅力を発信するデザインマンホールの設置や、地元の伝統野菜を使ったジェラートの開発・販売など。地域の企業の力も借りつつ、生徒の視点ならではの取り組みが生まれてきた。

「どうしたら生徒たちが楽しく学べるだろう?将来に役立つスキルを身につけられるだろう?と、担当の先生方と何回も何回も話し合いました。探究の授業自体、誰も経験のないことだったので手探りで」

「カリキュラムはかなり形になってきたんですけど、授業をしているときは手応えがないと感じることのほうがまだ多いかもしれない。生徒が楽しめているのか不安になることもしょっちゅうですね」

苦笑いしながら話す木村さん。実は最近うれしいことがあったのだとか。

「先日卒業した3年生が、ちょうど探究学習をはじめた1年目の生徒なんです。ある生徒が大学の2次試験の小論文対策をしていたとき『木村さん、小論文って探究と一緒じゃないですか?』と話してくれて」

小論文で求められているのは、課題文に隠れる理想と現状の差を捉えて、自分なりの解決策を考えて書くこと。探究学習と試験、状況は違っても考え方は同じ。

「だから『もっとちゃんと探究やっておけばよかった〜』って。でももう、それがわかっていれば十分じゃないかと思っていて。僕らがやってきたことは無駄じゃなかったんだと、涙が出るほどうれしかったんです」

やりたいことが見つかる。なにかできることが一つでも増える。プロジェクトが目指すのは、生徒一人ひとりの成績の向上だけにとどまらない。

「能登高校を卒業した生徒たちが、能登町に戻るか戻らないかに関わらず、なんらかの形で生まれ育った地域に貢献している。そんな人を育てることが魅力化プロジェクトの最大の目的であり、僕らスタッフの役割なんです」

 

今回募集するのは、理系科目で大学受験レベルの学習支援をしつつ、教科外の学びにも積極的に関わってくれるような人。

プロジェクトが地域にも広がりつつあるなかで、生徒の興味の幅を広げられるようなアイデアをどんどん提案してほしいとのこと。

いま、まさに取り組んでいるのが、魅力化スタッフの蓮池さん。新しく入る人は蓮池さんとともに数学・理科を担当することになる。

「スタッフの発案で、昨年度からまちなか鳳雛塾ではじめた取り組みがあって。週一回、スタッフが生徒と学んでみたいことを実践する『道草DAY』って時間を設けているんです。僕はそのなかのマスクエストというのを担当しています」

マスクエスト?

「数学にまつわる雑学を一緒に考えるんです。たとえば、蜂の巣は一つ一つの部屋がすべて正六角形なんですが、なぜ正六角形なのかわかりますか?」

ええ、なんででしょう…?

「ってなりますよね(笑)。こうやって話せば興味をもってくれる生徒もいて。日々の勉強とは直接関係ないかもしれないけれど、ここで生まれた興味が勉強する楽しさになって、受験勉強にもつながっていく。そんなきっかけをつくれたらと思っています」

石川県出身の蓮池さん。中高の数学の教員免許を取得していて、教師を志しているそう。

「魅力化スタッフの経験は、将来教員をするにあたってとても貴重な経験になるんじゃないかと思って。大学を卒業してすぐに教師になる人も多いなか、スタンダードではない道を選ぶ怖さもあったけど、まずはやってみようと心を決めました」

ただ、初年度は思うようにはいかなかった。というのも、理系科目の指導ニーズが高く、教科学習のサポートで手一杯に。学校に顔を出すこともできず、先生たちとうまくコミュニケーションをとることができなかったという。

そんな状況を打開するきっかけとなったのが、コロナ禍に伴うオンラインでの学習指導。

「塾ではいち早く実施していたんですが、それを聞いた高校の先生から『まちなか鳳雛塾のオンライン指導を、塾生以外の生徒にも展開していただくことはできませんか?』という相談をいただいたんです」

「ぜひやりましょうと引き受けて、先生方と協力しつつ、カリキュラム通りに授業を終えることができました。高校と塾の連携を実現できたはじめての経験で、自信にもなりましたね」

そのほかにも、副業としてはじめた、学校の消毒作業や先生の業務補助をするスクールサポートスタッフの仕事を通じて、先生や生徒との接点が増えた、と蓮池さん。

「いろいろな状況が重なって、徐々に高校の先生と連携しやすくなりました。いまは補習を手伝うこともあります」

蓮池さんにはこれから挑戦したいことがあるそう。それは、鳳雛ゼミのような高校と連携した探究的な学びの機会を自ら企画すること。

「それを実現するには、高校の先生や地域の方との関係づくりが重要です。ただ、木村さんが先頭に立って探究学習を実践してくれているおかげで、僕たちも後に続きやすいんじゃないかと思っていて」

失敗も成功も、すべて今後の教師人生の糧になると思ってやっていきたい、と蓮池さん。

「生徒たちのためになることであれば、どんどん動いていける環境です。学校の先生や私塾の講師の立場では得られない経験ができる場所だなと思います」

 

受験勉強のための学習支援と、生きる力を身につける総合的な学びの支援の両軸でプロジェクトを進めてきた能登高校と能登町。

地域ともいい関係を育み、着実に根を伸ばしているように感じる。

プロジェクトをともにする高校の先生はどんなふうに感じているんだろう。進路担当として魅力化プロジェクトの窓口を担う丸山先生に話を聞く。

「鳳雛ゼミには毎回参加していて。いろんな方の話を聞くたび、驚きや発見があって楽しいんです。それを生徒にも感じてもらえたらと思っています」

ゼミは土日に開催していることもあり、多くの生徒が参加できるわけではないものの、地域のことに関心がありそうな生徒には直接声をかけている。

印象に残っている生徒がいるんです、と話してくれたのは、現在高校3年生のある生徒のこと。

「1年生のころから公務員になりたいと話していましたが、やりたいことや働きたい場所にこだわりがない生徒で。それが、鳳雛ゼミや探究学習を経験するなかで『能登で働きたい』と、能登町役場を志望するようになったんです」

「この町には何もないと思って育ってきた生徒もいるかもしれないけれど、知ろうとすれば、いいところもたくさん見えてくる。本人もそう感じたんじゃないかなと思います」

能登高校では卒業後、就職の道を選ぶ生徒も多くいる。魅力化プロジェクトは進学だけでなく、就職の選択肢も広げてきたんだと思う。

丸山先生は、どんな人とプロジェクトを進めていきたいですか。

「生徒の関心に寄り添って、いろいろな学びの機会を提供してくれるとうれしいですね。能登高校には農業や水産、ビジネスのコースもあって、海が好きで県外から進学してきた生徒もいます。きっとやりたいことがたくさんあるんじゃないかな」

「生徒とコミュニケーションを重ねていくうち、どんなことを知りたいか、やってみたいか、話してくれると思います。それに対してこれどう?とアイデアをどんどん出してくださる方だと、もっといい学びの環境がつくれると思うんです」

この町のために、この町で育つ子どもたちのために。

コツコツと積み重ねてきたチャレンジは、このまちにしっかり根を張りつつあるように思いました。

(2022/03/23取材 阿部夏海)
※取材時はマスクを外していただきました。

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