求人 NEW

大切なものは里にある
いかしあい、たすけあう
古くて新しい子育てのかたち

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

世界遺産のまち、和歌山県高野町。

人口およそ300人、東部の富貴(ふき)地区。豊かな自然にめぐまれ、里山の風景が広がるこの場所では、地域の人が子どもを見守り、育てる「里育」がおこなわれています。

その主体となっているのが、未就学児童の一時預かり保育をおこなう「くらしのたすけあい ちっちらこ」という任意団体。

今回は、ここで一時預かり保育の専任スタッフとして活動する地域おこし協力隊を募集します。

保育士、学童保育の経験者を求めていますが、資格はなくとも今後取得見込みのある人や、関心を持つ人の応募も歓迎とのこと。

自然のなかで学び、地域の人と関わりあって育つ。それは子どもや親のためだけでなく、地域の未来にもつながっていく。

豊かな自然のなかで、子どもたちの成長をじっくりと見守りたい。そう考えたことのある人にとって、ぴったりの場所だと思います。

 

奈良県と隣接する富貴地区。この日は、南海高野線の橋本駅から車で向かうことに。

山あいの道、深い谷を見下ろす道が続く。30分ほどすると突然ぽっかりと空が広がり、開けた場所に出た。

散歩する人や下校中の小学生とすれ違ってほどなく、小高い丘にある高野山小学校富貴分校に到着。

鳥がさえずり、空気が澄んでいて気持ちがいい。

「ここは標高600mくらいですから、平地と比べると4度~6度気温が低いんです」

そう教えてくれたのは嘉積(かづみ)由彦さん。

7年前、大阪から移住した嘉積さん。富貴で体験型宿泊施設「ファームステイ ちいさなたね」を経営する傍ら、ちっちらこの代表を務めている。

「かつての富貴には映画館や芝居小屋、パチンコなどの娯楽や、スーパーマーケットもあって、たいへんにぎわいのある場所だったそうです。子どもたちもたくさんいたらしくて」

やがて過疎化が進み、地区の保育園は十数年前から休園状態に。時代の流れもあいまって、若い世代はだんだんと市街地へ転出していった。

「どうすればこの悪循環を打開できるだろうかと、行政も交えて、地域住民のあいだで何度も話し合いが続きました」

そのときヒントになったのが、かつて富貴でおこなわれていた子育ての形だった。

「畑を世話をしている人やお店の店番をしている人が、近くを通りがかる子どもたちの様子を見守る。かつての富貴では、まちぐるみで子どもたちを見守ることが当たり前の風景でした。私たちはそれを『里育』と考えていて」

「里育が文化として根付いてきた富貴だからこそ、地域の人みんなで見守るというかたちを実現できるんじゃないかと。富貴に暮らす高齢者のみなさんにとっても、子どもたちを預かることは日々の励みになるはず。そうして、ちっちらこの発足へとつながりました」

ボランティアとして参加しているのは、富貴地区に暮らす人たち。登録スタッフは30人ほど。一時預かりは保育は現在、地区内の3、4歳児の3人が利用していて、週3日、9〜15時の間をシフト制で担当している。

スタッフのなかには元先生や設計技師さん、農家さんなどさまざまな人がいるそう。

絵を描いたり、昔ながらの遊びをしたりすることもあれば、民家におじゃまして季節の果物を収穫しておやつにしたり。釣りの得意な人が担当の日には川釣りに行ったりすることもあるのだとか。それぞれの個性を活かした活動が展開されている。

「スタッフの方自身に楽しんで参加してもらうことが大切で。『困っているから助けてあげる』という仕組みは持続的じゃないんですよね。自分のやっていることが誰かのためになって、結果的に自分のためになっている。相互扶助のあり方を軸にしています」

また、地域外の同世代の子どもたちとも交流を深められるようにと、不定期でイベントも開催している。

「こんにゃくをつくったり、畑で野菜を収穫して大鍋で炊いたり、もみがらで焼き芋したり」

「ここに暮らしていると何気ないことなんですけれど、外から来た人にとっては特別な経験みたいで何度も通ってくださる方もいるんです。地域の人にとっても刺激になっていますね。彼らが喜んでくれると、自分たちの暮らしもなんだか誇らしく感じられるんです」

イベントは好評で、参加者が新たな参加者を呼ぶなどして子育て世帯の移住につながっているそう。これまで、3年で5組の子育て世代が移住、休校状態だった小学校は一昨年から再開されることになった。

 

地域の理解や協力の輪を広げながら、一人ひとりが自分ごととして関わるなかで、少しずつ成果を形にしてきたちっちらこ。

現在、運営を担っているのは、由彦さんとご夫婦の由香里さんと、富貴で長らく暮らす啓子さんのふたり。

新しく加わる人は、由香里さんや啓子さんと一緒に子どもを見守っていくことになる。

まずは由香里さんに話を聞く。

「長年、保育士の仕事をしてきました。衛生面から土に触ることを避けたり、安全面から使用できる遊具が制限されたり。制約の多い保育って、子どもにとってどうなんだろうという思いがありました」

子どもたちにとって、人や自然に存分に触れて育つことにはきっと意味があるはず。そんな思いで、ちっちらこの活動に携わってきた由香里さん。

「スタッフのみなさんが、子どもたちを我が孫のように見守ってくれていて。『一緒にいると元気もらえるわ』って、子どもたちとの時間を楽しんでくれているのがすごくうれしいですね」

「スタッフに限らず、むら全体がそんな感じなんです。怪我をしたら誰かが絆創膏を貼ってくれていたり、危ないことしていたら、そんなことしたら駄目よって本人にも親にもちゃんと言ってくれたり。誰かがちゃんと子どもを見ている、安心感のある地域やと思います」

子育て世帯の移住にもつながり順調に見える一方で、課題も見えてきた。

「とにかく子育て世帯が暮らしやすくなるように走ってきて、一時預かりに関しては『今日一日』で完結するような過ごし方がほとんどだったんです」

どういうことでしょう?

「幼児期の前半までは、一日一日を心地よく過ごすことが大切だけど、4~5歳の年齢になると、昨日から今日、今日から明日って連続性がとても大切になってくるんです」

「昨日がんばったことを今日はもっと工夫してやってみようとか、頻繁にスタッフが入れ替わるいまの体制ではむずかしくて」

ボランティアで運営しているちっちらこでは、一日おきに担当が変わることもあるし、日によっては数時間でスタッフが入れ替わることもある。

可能な範囲で由香里さんや啓子さんが入るようにはしているけれど、ふたりともボランティア活動であり、生業がある以上、ずっと子どもたちの様子を見られるわけではない。

そこで今回募集するのが、一時預かりの専任スタッフ。これまでのボランティアスタッフに加えて、常勤のスタッフに加わってもらうことで、子どもたちがちっちらこで過ごす時間をより充実したものにしていきたい。

「ちっちらこで過ごす子どもたちの姿を、親御さんやスタッフのみんなと語り合いながら見守っていきたいですね。明日のあそび、来月の計画、季節ごとの行事など、新しく加わる人と、ちっちらこならではの計画を一緒に考えてつくっていきたいです」

 

保育のあり方を考えるのと同じくらい大切なのが、ともに見守るボランティアスタッフとの関係づくり。

新しく加わる人も、スタッフの毎月のシフト調整などを通して、地域の人と仲良くなっていってほしいとのこと。

その橋渡し役になるのが、啓子さん。心地のいい関西弁で、気さくに話をしてくれる方。

「普段の会話から、この人、親戚の結婚式が近いけど大丈夫かなとか、もうすぐ田植えの季節やからこの人のシフトは外したほうがいいんちゃうかなとか。いろいろ考えてやってます」

「アナログで面倒くさい作業やけど、そこを大切にしたいと思ってます。ちっちらこのスタッフはボランティアで、仕事じゃない。子どもたちと一緒に過ごす時間を楽しみに来てくれてるんです。だからこそ、難しいときにはちゃんと断ってもらえるような関係性でありたくて」

地域の人との関係性を大事にしてきた啓子さん。初めのうちは、新しく加わる人と一緒にスタッフ一人ひとりを訪ねていきたいとのこと。

話してみるなかで富貴ならではの接し方を体感できると思うし、地域のことを知る大切な時間になると思う。

「地域おこし協力隊やからって、なにかしてあげよう!って気負わんでええと思う。まずはその人自身が楽しく元気で暮らすことがなによりで。そのなかで感じたことを仕事や暮らしに活かしてもらえたら、子どもも楽しんでくれると思います。そうして地域を支え合う一人になってほしい」

 

まずは自分自身が、すこやかに暮らすこと。

移住には苦労もつきものだけれど、暮らしと仕事がつながっていることで救われる側面もあるように思う。

最後に話を聞いたのは、昨年家族4人で富貴へ移住してきたという大谷さん。

「もともと、こういう里山でのびのびと子育てをしたいと思っていて。子どものことをかわいがってもらっている実感が日々あって、うれしいですね。怪我をして絆創膏を貼ってもらっていた子はうちの子です」

移住して一年。ちっちらこをはじめ、日々さまざまなところで地域の人と関わる場面があり、大谷さん自身も地域とのつながりを楽しんでいる様子。

「無人販売所つくってみたいな… ってつぶやいたら、ご近所さんがばーっと棚をつくってくれたり。ほかの方からは『畑から勝手に野菜持ってっていいから』とか言われたり(笑)。気にかけてくれる人が多いですね」

最初のうちはお礼をどうすべきかと戸惑ったけれど、最近はお返しに農作業を手伝っているそう。

「迷った末に直接相談したら、少し遠慮がちに『ほな、トウモロコシのいらん株抜いてくれるか』って言ってもらえて。すると、手伝ったあとにまたトウモロコシをくれるんです。なんだか、感謝の気持ちをやりとりできたような気分になりましたね」

移住してきて本当に良かった、と大谷さん。

移住先で人との距離感がぐっと近くなって戸惑う人もいるかもしれないけれど、好意を受け止めて、自分のペースで関わりをつくろうとすれば、きっと暮らしも楽しくなると思う。

 

最後に、由香里さんからの言葉を紹介します。

「こんなに一人ひとりの子どもに焦点を当てて、成長を見守れる保育の現場ってあまりないと思っていて。泣いたり怒ったり喧嘩したり、3人でも毎日いろんなことが起こるんです」

「将来的に子育てに関する事業をはじめたい、と考えている人だったら、ちっちらこでの経験がすごくいきていくと思う。子ども一人ひとりに寄り添う保育のあり方に興味のある人がいたら、ぜひご一緒したいし、全力でその夢を応援します」

日々変わっていく子どもを見つめ、地域の人々と一緒に支えていく。その繰り返しのなかで変わっていく自分自身も、ゆっくり見つめていける。

挑戦する人の背中をそっと押してくれる、懐の深い場所のように感じました。

(2022/04/19取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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