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「お元気ですか?」という挨拶。
普段、何気なく使っているけれど、そもそも元気とはなんだろう。
体が健康なこと、心が晴れやかなこと。心配ごととうまく付き合えている状態。その基準は人それぞれに異なるし、自分でもよくわからない。
それでも人に「元気ですか?」と問いかけるのは、なるべく相手の状態に合わせてコミュニケーションをとりたいという、思いやりなのかもしれません。
私の周りにもそれが口癖の人がいますが、思い浮かべてみると、話しやすい雰囲気で聞き上手の人が多い気がします。
今回紹介するのは、地域の「元気」について本気で考えている会社です。
リサーチとコンサルティングの両軸で、地域課題の解決や産業振興、マーケティングなどに取り組む株式会社アール・ピー・アイ(RPI)。
創業から44年と、業界のなかでは老舗ですが、地域の元気度を数値で表す「地域元気指数調査」などユニークな取り組みも多い。まさに「元気ですか?」と問いかけるようなスタンスで、地域と向き合っています。
今回はここでコンサルタントプランナーとして働く人を募集します。
案件の多くは、B to G for Cといって、行政をクライアントとして、その先にいる住民の暮らしや産業を考えること。思いやりを持って、地域と向き合える人を求めています。
神保町駅から歩いて5分ほど、ビルの3階にRPIのオフィスがある。創業当時は、同じ千代田区内の木造アパートを拠点としていたらしい。
そのころから働いているのが、現在代表を務めている長澤さん。直接お会いするのはもう3回目ということもあり、打ち解けた雰囲気で迎えてくれた。
「取材を受けるとき、いつも『今日はどういう質問が来るかな』って、仮説を立てているんですよ」
それは、コンサルタントの職業柄ですか?
「そう。コンサルティングの仕事も、仮説を立てて、実践して、それがあたっているか検証して、次に活かす、その繰り返しですね。我々は創業以来そうやって、ずっと地域課題に取り組んできました」
RPIがコンサルティングの事業で関わる地域は、首都圏から地方都市、山村、離島まで幅広く、テーマも農林水産漁業などの一次産業、商業や観光振興、コミュニティづくりなどさまざま。
地域によって課題が異なるように、正解もひとつではない。
「ただ、その答えはいつも、地域のなかにいる人たちが持っています。私たちは外の目で、当事者には気付きにくい課題や魅力を見つけて、地域と一緒になって解決策を考えていくことが役割だと思います」
「我々が力を発揮しやすいのは、地域のなかに閉塞感や停滞感があるけれど、そうした状況を引き起こしている根源的な要因が何かはよくわからないっていう状態。課題が明白で、決まったことをやるのなら、コストやスピードの面で大手のほうが強いでしょうね」
当事者に寄り添いながらも、冷静に地域の状態を把握し、解決課題や発展課題を提案する。
そのために必要なのは、まず地域のなかにいる人と関係性を築くこと。
長澤さんも昔はよく、地元の人たちと飲みあかしたという。
「やっぱり、役所の仕事で来ている奴らだと思われているうちは、心を開いてもらえない。誠実に地域のことを考えて、一緒に汗をかく。そうすると関係性ができて、何年も継続して仕事ができるようになることが多いです。まあ、別にお酒を飲まなくてもいいんだけどね(笑)」
その地域について、興味を持って調べること。相手の話に傾聴すること。ときには、相手を思って、言いにくいことも伝えること。
課題に対する提案を受け入れてもらえるかどうかは、その前に信頼があるかどうかで変わってくる。
「この前お客さんから、『RPIはホスピタリティが高いですね』って言われたんですよ。痒いところに手が届いて、丁寧な仕事をしてくれるって。この人とならやれる、っていう感覚に近いのかな」
「一方で、我々の仕事は思いだけでは務まらない。税金を原資に仕事をしているわけだから、自己実現とは切り離して、きちんと成果を出すプロ意識を持てる人が加わってくれるといいですね」
RPIには、現在30人ほどのスタッフがいる。もともとは建築系のバックグラウンドを持つ人が多かったけれど、最近は、いろんな業界の経験を経て仲間に加わるメンバーも増えてきた。
昨年の夏に入社した藤原さんも、前職では図書館をサポートする事業に携わっていたという。きれいに整頓されたデスクの隅には、図書館やミュージアムについての本が置いてある。
「ちょうど今、図書館総合展っていうオンラインイベントの準備をしていて。そういう前職とつながりのある業務もありますが、仕事を通して今まで関わりのなかった分野について知ることも多いです。最近もお肉の流通や食肉産業について調べているところです」
「案件によってはアンケートなどの調査をしたり、自分で調べ物をしたり、ワークショップ形式で地域住民の意見を聞きながら成果物をつくったり。業務ごとに、まったく違う仕事をやらせてもらっているような感覚もありますね」
藤原さんが昨年関わっていたのが、八王子市におけるコミュニティづくりの事業。
東京で二番目に広い面積を持つ八王子市は、複数の地域が合併してできたまち。それぞれの地域特性に合わせた取り組みを市民主体で進められるよう、市内に30以上ある中学校区を基準に、複数回のワークショップを開くことになった。
コンサルタントプランナーの役割は、企画や現場運営などを通して、その施策をサポートすること。
「回数を重ねていくうちに、少しずつワークショップに参加している住民の方のなかで地域に対する共通認識ができて、『マルシェをやってみたい』など、具体的な意見が出るようになりました。そういう変化が表れる場に携われるのは、この仕事のやりがいのひとつだと思います」
あくまでも主体はその地域のなかにいる人。それをエンパワーするのがプランナーの役割だと言う藤原さん。
コンサルティングによって地域がエンパワーされた状態、とは、どういうことでしょう。
「そうですね…。たとえば、自分たちの地域の課題が何か、解決のために何ができるか、具体的なイメージを持てる人を地域のなかで増やしていく、みたいな感じかなと思います。ただ、プロジェクトを通してその状態になったからといって、自分たちの働きかけの成果とは限りませんが…」
藤原さんは話を進めるときに、なるべく客観的に、事実が美化されないよう、言葉を選んでくれている気がする。
自分の願望と切り分けて、因果関係を考える慎重さや謙虚さも、コンサルタントプランナーに求められる要素のひとつと言えるかもしれない。
「私は、自分がリーダーとして現場を引っ張っていくよりも、なるべく、さりげなく参加者の行動を促せたらいいなと思っていて。事前にほかの地域の事例を調べるなど、議論のヒントになるような情報提供を心がけています」
相手が知らない情報を提供するだけでなく、自分から相手を知ろうとすることも大切。
図書館で調べ物をしたり、地域に関連するニュースをチェックしたり、都内近郊であれば休みの日に足を運んでみることも。
デスクワークだけでは完結しない仕事だからこそ、RPIでは、テレワークや出退勤の時間を定めない専門業務型裁量労働制など、柔軟な働き方を取り入れている。
「たとえば、図書館に寄るために会社を早めに出て、家に帰ってから残りの仕事を片付けることもあります。家で作業するときも、自分で時間を決められるので、私はいい仕組みだなと思います」
定時がないとはいえ、オフィス勤務の日は10時〜18時勤務をベースにしているスタッフが多いという。
「地域や産業ごとに、働くリズムが異なることも多いので、案件によっては変則的な勤務時間で対応することもあります。たとえば漁村などでは、どうしても都会生活の定時の考え方とは違うリズムがあるので」
そう教えてくれたのは、学生時代のアルバイトから数えて10年目になるという清水さん。
清水さんが入社してから長く関わってきたのは、愛媛県西部のまちで食品メーカーを支援するプロジェクト。
「市内には、昔ながらのこだわりを持って醤油をつくっているメーカーや、業界でも有名なレトルト食品のメーカーなどがあって。それらの販路開拓を中心としながら、事業者間の交流や、人材育成、まちの魅力発信についても考えていくような事業でした」
まずは現地に足を運びながら、地域の特性や課題感を探り、専門家の力も借りながら具体的な手法を考えていく。
出張販売や商談会、バイヤーとの面談など、現場運営ではイベントの裏方仕事も多いという。小規模な自治体の場合は特に、役所側のマンパワーが少ないため、状況に応じて、運営や進行などいろんな役を担うことになる。
「この仕事のほとんどは、コミュニケーションの機会づくりなのかもしれません。だからこそ、怖いですよね」
怖い。
「コミュニケーションの場は、偶然が支配する要素も多いので、計画通りに進まないこともある。経験が増えると、事前の準備やシミュレーションがしやすくなるような気はします」
現場の一員として動きながらも、常に俯瞰して状況を見て、次にやるべきことを考えていく。
「事業を続けていくうちに、同じ市内の事業者さんでも、思いや目標に違いがあることが見えてきました。課題感がまだ明確でなかったり、首都圏よりもまずは四国のなかで販路を増やしたいという思いがあったり」
より具体的な状況や要望が見えてくれば、それに応じて施策を調整していく必要もある。
愛媛県でのプロジェクトも、改善を繰り返しながら6年間、事業に伴走してきた。
もうひとつ現場での助けになるのが、先輩たちの足跡。
RPIには、過去にプロジェクトを通して生まれたツールやノウハウがたくさん蓄積されている。旅行に外食、レジャー、各県の特色調査のリサーチ結果など、さまざまなテーマの記録が、まったく別の地域、分野のプロジェクトに取り組むときの手がかりになることも多いという。
同じチームの人に相談したり、過去の事業に助けられたり。そうやって仕事を進めていけるのは、RPIならでは。
さらに、違う職種に携わっていた人が加わると、チームに新しい得意分野ができて、事業の可能性も広がっていく。
その環境を活かし、最適な答えを見つけるために。粘り強く取り組めるかどうかは、相手を知ろうとする好奇心や思いやりの深さが、鍵となる気がします。
(2022/11/15 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。