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【オープンハサミ】
人にも機械にもやさしい
産地のメカニック

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

工場で動く機械を見るのは楽しい。

材料をかき混ぜる大きなミキサー。テキパキと動くアーム。整形機やパッケージのマシンを通過した瞬間に、見慣れた商品の形になるのもおもしろい。

とりわけ、機械から受け渡された商品を熟練のスタッフさんがさばいていく姿は、見ていて感動する。

AIや機械に人の仕事が奪われていくという言説は、一部正しいけれど、奪われていくばかりでもないんじゃないか。あうんの呼吸で仕事が進む様子を見ていると、そんなふうに思わされます。

今回紹介するのは、工場の生産ラインに携わる仕事。波佐見焼のメーカー、聖栄陶器有限会社の機械管理担当と、生産管理担当を募集します。

波佐見焼は、長崎県の波佐見町を中心につくられてきた焼き物です。

分業化された産地のなかで聖栄陶器がユニークなのは、原料の調達から焼成まで一貫した生産体制を持っていること。早くから機械化を進めたことによって、産地内では随一の生産量を誇るメーカーへと成長してきました。

この先50年、100年と続いていく企業を目指すため、機械のメンテナンスや改良は欠かせません。さらには2年以内に工場を移転し、生産効率の向上を図ると同時に、観光に訪れた人も見学できるような新しいものづくり拠点にしていく計画もあります。

未経験でも大丈夫。機械いじりに夢中になれる人や、工程や作業環境を整えることに快感を覚えるような人との出会いを待っています。

聖栄陶器は、滞在型インターンシッププログラム「オープンハサミ」の参加企業です。波佐見町に1〜2週間滞在し、さまざまな企業の仕事を実際に体験することができます。

詳細は下記ページよりご覧ください。

聖栄陶器があるのは、波佐見町のお隣の川棚町。

長崎空港を出発し、大村湾沿いの道路を北に向けて車で走ること35分ほど。周囲にはスーパーや国立の医療センター、役場やお店も並ぶまちなかに、聖栄陶器の本社は位置している。

表の通りからだと分かりづらいけれど、敷地面積はとても広い。

波佐見焼は分業のメーカーがほとんど。器の型をつくる型屋、その型を使って生地をつくる生地屋、焼いたり絵付をしたりする窯元など、一社ごとに一工程を担うのが基本だ。

一方で聖栄陶器は、原料づくりから焼成までを一気通貫で手がけており、大型の機械も数多く導入している。そのため、自ずと広い敷地が必要になる。

創業54年と、焼き物のメーカーとしての歴史はけっして長くない。どのように今に至るのだろう?

事務所スペースの2階で代表の木下勇さんに話を聞いた。

「もともとは焼き物の原料のメーカーとして、父が立ち上げた木下陶土という会社だったんです。熊本の天草で採れた陶石が川棚の港に運ばれてくるので、それを持ってきて、自分のところで割って。わたしも小さいころからよく手伝っていました」

国産の陶石の8割を占める天草陶石。砕いて水を加え、不純物を取り除いて水分を抜くことで、焼き物の素材として扱える粘土状になる。

現在はモーター式のミルを使って粉砕しているものの、かつての主流は、水車が動力源のハンマーで、餅つきのようにして砕く方法。その番をするのが勇さんの日課だった。

「水車を使うので、雨の日ほど早く作業が終わるんです。夏休みには、“これだけ割らないと遊べない”というノルマもありました(笑)。もう50年以上も前の話ですけどね」

陶土屋からメーカーへと転身したのは、付き合いのあった窯元からの助言がきっかけ。

とはいえ、焼き物に関してはノウハウも設備もなかったため、最初は窯元から指導者を派遣してもらい、サポートを受けながらはじまったそう。

「先代は、よそよりも安く、いいものをという感覚に優れた社長でした。分業化が進んでいる波佐見にはないつくり方を、ということで、量産の方向に早くから舵をとって。ピーク時は1日に6万ピースのものをつくっていました」

整形機に土を乗せたら自動で形をつくってくれて、シリコンゴムを使ったパッド印刷では、判子を押すように絵付けができる。

釉掛け(くすりがけ)の工程では、素焼きして下絵のついた生地をアームロボットがひょいと持ち上げ、釉薬のなかを次々とくぐらせていく。

そして焼成。長さ数十メートルのトンネル状の窯は、とても迫力がある。その見た目に反して、焼き上げ時の温度差を+―1度以内に収められる繊細さも持っている。

以前に比べて生産量が減った今でも、1日に約1万5千ピースを生産していて、そのうち15%ほどは海外にも輸出しているそうだ。

また、ユニクロや三越など、大手企業からものづくりの依頼を受けることもある。飲食チェーンの丼や食品メーカーのノベルティなど、OEMの実績も多い。

「生地をつくって焼くというのは、岐阜県の美濃地区では主流になってますけども、原料まで自分のところでつくる会社はほとんどない。国内でも数社です」

原料からつくれることの強みって、何かあるんでしょうか?

「陶石は天然の材料なので、常に質が一定ではないんです。そこでなるべく焼き上がりが均一になるように、6種類の粘土を混ぜて使っていて、半年に一回は必ずテストをします。そういった面での管理は、ほかの窯元さん以上に敏感だと思いますね」

たとえば、焼成時の収縮率も原料の状態によって異なる。仮に素焼きの段階で生地の直径が1mmズレると、円周では3mmの誤差になってしまう。

たった3mm?と思うかもしれないけど、その後の絵付けも手描きではなく、パッド印刷。とくに縁周りは、わずかなズレが仕上がりに大きく影響する。

原料からよく理解し、管理を徹底することで、そのズレを最小限にとどめることができる。

「原料や焼き方によって個体差が生まれることも、よさと言えばよさなんですが、量産のなかでは“ムラ”ということになってしまう。いいものを、より安くつくるためには、同じことの繰り返しではいけないんですよ」

職人の経験と勘を頼りに受け継がれてきた焼き物の文化を、数値や理論に落とし込みつつ、未来へつないでいく。今はその転換期にある。

「人の手を介さなければいけない仕事も、当然あります。ただ、産業構造が変わり、担い手も減っているなかで、日本の製造業は少なからず機械化を進めていくことになると思っています。そのなかで一緒にチャレンジしていける人に来てもらいたいですね」

今回募集したいのは、聖栄陶器の量産を支える機械管理と生産管理の担当者。

機械管理は、日々のメンテナンスが基本。定期的に工場を見て回り、異常がないか判断する。

「機械が壊れてから直すには、生産の手を止めることになります。音なり振動なりの変化に、早めに気づいて対応する予防接種的な考え方が必要です」

不具合の内容によっては、部品の交換や修理を行う。

いきなり一人で任されるわけではないし、未経験でも大丈夫。先輩社員が点検や修理をする様子を横で見ながら学んでいける。

「そういった作業が好きで、自分でやってみたいという気持ちが何より大事です」と勇さん。実務経験はなくても、機械の構造や仕組みを知るのが好きな人、機械をいじりはじめたらいつまでも熱中できるような人がいい。

「ベースは大手の機械メーカーさんに頼むわけですけど、自分たち好みに変更も加えます。社員のなかには、CADでの図面作成やプログラミング、旋盤を用いた部品の試作まで、なんでもやる者がいますので。うちのオリジナルを見て、機械屋さんが驚いたぐらいです」

最近とくに力を入れて取り組んでいるのは、部品の統一化。シリンダーや電磁弁など、消耗部品の規格を揃えておけば、在庫を減らすことができる。

まずは目の前の仕事を覚えつつ、ゆくゆくはさらに精度を上げたり、コストダウンや効率化につながる方法を考えて実装したりと、機械まわりのことをまるっと任せられる技術者に成長していってほしい。

「経験は年数よりも、自分でどれだけ考えて行動したか。でも行動すると言ったって、楽しくないと続かないですよね。経験者に来てもらえるに越したことはないですが、元気に明るく、くよくよしないこと。失敗を恐れずにチャレンジすること。それが一番かもしれません」

 

現場で生まれた商品とお客さんとをつなぐ役割を担っているのが、専務の木下光春さん。勇さんと兄弟二人三脚で会社を引っ張ってきた。

機械周りや経営を学んできた勇さんに対して、光春さんが取り組んできたのはデザイン。

壁際に飾られている器をいくつか手にとっては、うれしそうに説明してくれる。

「この唐草模様、手描きに見えるでしょう? じつはパッド印刷なんですよ」

すごい。知らずに見たら、手描きだと思ってしまいそうです。

「絵の具や窯の熱の加減によって、濃淡も表現できるんです。もちろん手で描けないことはないですけど、コストも手間もまったく変わってきます」

「それから、今の売れ筋はこれです」

そう言って光春さんが見せてくれたのは、凹凸のあるお皿。

「これもパッド印刷です。撥水させて、釉薬を吸わない部分をつくることで、わざと表面に凹凸を出していて。このちょっとしたキラキラが、高級感につながりますよね」

量産品だから質が低い、とは限らない。

とはいえ、手間やコストがものすごくかかるつくり方では、採算が合わなくなる。

既存のパーツや技術を活かしつつ、いかに少ない手数でいいもの、売れるものをつくるか。そこが量産メーカーのデザイナーの腕の見せ所になってくる。

そうしたデザインも手がけながら、営業マンのような役割も担っている光春さん。今回募集する生産管理の担当者と連携する機会も多い。

「生産管理は、いわゆる工場長ですよね。受注したものが納期までにしっかり仕上がるように、各工程を統括するような仕事です。現状はわたしや社長が行っていますが、自分がやりたいんだ!って人が来れば、徐々に任せていきたいと考えています」

この工場は、2年後をめどに波佐見町内へ移転を予定しているそう。

聖栄陶器だけでなく、別の商社や窯元と一緒に場づくりをしていく構想もある。自社としての生産ラインを整えて、より効率的にものづくりができる体制をつくっていくとともに、一般の人も訪れられるような場所にしていきたい。

「工場内を見学したり、体験や買い物を楽しめたり。ふらっと来てもらって滞在できる拠点をつくりたいなと思っています。夢は大きいですよ」

機械管理や生産管理の担当者としても、ひとつの山場が2年後に待っている。そのときに向けて、今のうちから力をつけていけるといい。

量産や機械化と聞くと、どこか無機質な光景をイメージしてしまう。

けれどここでは、人と機械が協力して、いいものを生み出している。黙々と進んでいく作業のなかに、温かみさえ感じるような雰囲気が印象的でした。

人にも機械にもやさしく。そんな姿勢が、産地のこれからをつくっていくのかもしれません。

(2022/11/14 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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