求人 NEW

【オープンハサミ】
産地に必要とされる
メーカーでありたい

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ものづくりによって栄えてきた「産地」。

そのあり方は、時代とともに常に変化してきました。

トレンドが次々と移り変わり、ライフスタイルも多様化している現代において、ひとつの可能性は小ロット・多品種のものづくりにあるのかもしれません。

一誠陶器は、長崎県波佐見町にある焼き物のメーカーです。

一つひとつ手描きで絵付けする器が人気。3年前には自社で生地の生産をはじめたり、新しいプロダクトライン「ZOË L’Atelier de poterie」を立ち上げて直営店をオープンしたりと、さまざまなチャレンジを続けています。

今回募集するのは、事務担当です。

一日中書類やパソコンに向き合う仕事ではありません。午前中に集中して事務作業を進め、午後は検品や絵付けなどの現場に混ざって働きます。ものづくりのことがよくわかってきたら、企画・デザインなどに携わる余地もあるそう。

頭と体、両方を使って働きたいという人にはぴったりの仕事だと思います。

一誠陶器は、滞在型インターンシッププログラム「オープンハサミ」の参加企業です。波佐見町に1〜2週間滞在し、さまざまな企業の仕事を実際に体験することができます。

詳細は下記ページよりご覧ください。

 

長崎空港から車で50分。波佐見町の中心地から、お隣の佐賀県嬉野町へとつながる道を少しそれたところに一誠陶器の本社がある。

周囲を山にかこまれた土地に、横に長ーい建物。このなかに事務所と工場があって、すぐ近くには別棟の生地工場も稼働している。

静かで落ち着いた環境だなあ。

「社用車に会社の名前も入れないし、看板も立てない。社訓もとくにないんです。会長がもともとそういうものが嫌いだったので」

そう教えてくれたのは、代表の江添(えぞえ)圭介さん。器が並ぶ応接スペースで話を聞いた。

一誠陶器は、もともと焼き物のデザイナーをしていた圭介さんのお父さんが立ち上げた会社。

10名にも満たないメンバーで40年前に創業し、今では産休中の人も含めて40名のスタッフを抱えるメーカーになった。

「わたしが社長を交代したのがちょうど10年くらい前かな。創業から今に至るまで、ずっと拡大し続けているっていう会社ですね」

近年、産業規模としては縮小傾向にあると言われている焼き物産業。

そのなかで成長を続けてこられたのは、なぜだろう?

「手描きの量産というスタイルがよかったのかなと思っています」

手描きの量産。

「機械生産のよさもたくさんあって。ただ、どうしても出てくるのがロットの制約。その点、手描きは200〜300の小ロットから対応できます。世の中の移り変わりが早いなかで、時代にマッチしたんじゃないかと思うんですよね」

もともとのスタイルが、世の中の流れに合っていたということですか。

「自然に合ったというよりは意識的に、ですかね。前に進むときも、たまに振り向いて逆を見るっていうことを、ずっと会長から教わってきて」

「小ロット・多品種が主流になってくると、商社さんの調整ごとが増えるんです。そのなかで、どんな注文でも柔軟に応えてくれるメーカーがあったら、ありがたいでしょう? だったらうちはそういうのをやれるようになりましょうっていう、逆の発想をしながら、会社を大きくしてきたという感じです」

手仕事の温かみを宿しながらも、一定の数をつくり出す。

そんな体制を支えているのが、絵付けの職人さんたちだ。一誠陶器では、社員40名のうち半数以上を絵付け関係の職人が占めている。

高校を卒業したばかりの18歳から、定年後も働き続けている人たちまで、年齢層は幅広い。

「小さいときからずっと変わらずに働いている、友だちのお母さんとか。地域柄、近所の人たちも多いので、どうにかしてあげんといかんねっていう気持ちはすごくあります」

作業場を覗いてみると、コンパクトで明るく、全体がよく見える。

一人で黙々と進める作業が多いなかで、視界に別の人の働く様子が入ったり、ちょっと声をかけやすかったりすることも、働きやすさにつながっているのかもしれない。

「会長自身、現場の作業をわかっているからですね。椅子ひとつから『長く座っとかんといかんちゃけんが』って言って、高さ調整ができるふわふわのやつを全員使っていて。事務も含めて、快適な環境づくりには気を遣っています」

暑い夏も、手先がかじかむ冬も、作業に集中できるように冷暖房を完備。工場のレイアウトなども、つくり手の視点からよく考えて構築されている。

さらに3年前からは、生地の自社生産を開始。

分業制が主な波佐見焼のメーカーとしては、生地から自社でつくっているのはめずらしいことなのだとか。

「自社で使う分だけじゃなくて、メーカーさんから依頼を受けて生地を卸したり、素焼きの状態で商社さんに渡して、『ほかのメーカーさんで焼いていいですよ』っていう形もあります」

メーカーでありながら、生地屋のような役割も担っているんですね。

「生地があったら仕事できるメーカーさんって、結構あるんですよ。でも今は、生地屋がそもそも足りていない。その役割も担っていかないと、産地も盛り上がらんよねって」

「やっぱりこの波佐見、肥前地区っていう焼き物の産地のなかで、地域に必要とされるメーカーになりたいんです」

地域に必要とされるメーカーに。

「ここまで景気が悪くなる前は、出し抜いて稼ぐぞっていうのもありかなと思っていたんですけども。これからは産地をあげてやっていかんと厳しいような気はしますね。自社だけでは戦っていけないというか、やる意味があまりないのかなって」

1年前にオープンしたカフェ&ショップでは、器一点から仕入れられる形をとっているそう。

生地屋や商社に加えて、同業他社であるメーカーとも協力しながら、産地として生き残る方法を模索していきたい。

今回募集する事務担当にとって、主な仕事のひとつが生地の受発注だという。

一誠陶器で扱う生地のうち、3割が自社生産で、残りの7割は外注。商社やメーカー向けに生地を卸すこともあれば、生地屋から仕入れることもある。

裏方の仕事だけでなく、他社との窓口となってやりとりする場面も多い。

「うちは社長といえど、スラックス履いてワイシャツ着て、ってことはなくてですね。みんなに混じって汚れながら仕事しているのが現状です。会長もいまだに絵付けをしてますし、自分もさっきまで生地工場にいて、次の作業の下準備をしていました」

「そのほうが、何か問題が起きたときのフィードバックもすぐにできるんです。役員もみんなの仕事を理解したいっていう気持ちもあって、一緒に作業しています」

現在事務を担当しているのは、ベテランの事務員さんと、圭介さんの妻・優香さんの2人。

午前中に集中して事務作業を終えて、午後は現場で絵付けや検品なども行う。

たとえば、本人の希望次第で企画やデザインなどに携わる余地もあるんでしょうか?

「全然あると思いますよ。事務といっても、一日中パソコンや書類に向き合うようなことはなくて。なんでもこなしてもらえる人のほうが助かります」

事務の経験は、あればありがたいものの、なくても大丈夫。

会社のお金を扱ったり、大事な書類をつくったりする立場でもあるので、しっかりと信頼関係を築いていける人だといい。

一方で、圭介さんはこんなことも話していた。

「これから来る人には、焼き物自体がすごくルーズなものだっていうことは伝えておきたくて」

焼き物がルーズ?

「同じ製品でも、100個焼いて80個とれるときもあれば、60個しかとれないときもある。自然由来の原料ですし、1300度っていう熱加工の負荷もあって、思った通りにはなかなかいかないんですよ」

「きっちり段取り踏んでいれば、まあひどいことにはならないんですけど、人間なんで、やっちゃうときもあるんですね。そこはうちとしても、大目に見てもらいたいです(笑)」

きっちり管理する面もありつつ、焼き物自体のルーズさには寛容であってほしい。

その感覚は、事務と並行して現場に入るなかでだんだんとわかっていくものだと思う。

 

ベテランの事務員さんと二人三脚で事務を担当している、優香さんにも話を聞いた。

短大で陶芸を学び、公開講座の助手なども務めていた優香さん。

その経験を活かして、現在は事務を担当しながら、絵付けの作業にも携わっている。

「事務に関しては、ほとんどゼロからのスタートでした。不得意なんですけど、たまに頭から火も出つつ、教えてもらいながらやっているところです。ベテランの事務員さんはプロなので、経験はなくても一緒に学びながらやっていけると思います」

経理や総務の基礎に加えて必要なのが、焼き物に関する知識。

生地の種類や商品名、関わる企業のことなど。普段なかなか使わない専門用語も多いので、一通りのことを覚えるまでは大変かもしれない。

一日の流れについても聞いてみる。

「午前中になるべく事務の仕事を済ませて、それから現場に入るようにしています。わたしは絵付けのほうで、もう一人の事務員さんは検品とか電話対応とか」

事務と現場作業との両立については、どうですか。

「ずっと数字ばっかり見てると、煮詰まるので。現場で違う仕事をしていてスッキリすることもありますね。一個のことをしたい人はむずかしいかもしれないですけど、いろいろ動けるという意味ではいいかなと」

たしかに、頭と体の両方を使って働けるのはいいことかもしれない。

午前と午後で時間も分かれているから、マルチタスクというよりも、頭と体のいい切り替えになっているんだろうな。

「一緒に働くうえでは、協調性は大事かなと思いますね。みんなと協力して、お互いに嫌な気持ちにならないようにできる方がいいです」

産地内を回るなかで、課題としてよく耳にするのが移住者の定着。

その点、一誠陶器では、移住してきて長く働き続けている人もいるそうだ。

気持ちよく働けるように、作業環境や組織体制を整えているという話もあったし、それも大きな要因のひとつだと思う。そのほかには何か、取り組んでいることってありますか。

「関係あるかはわからないですけど、誕生日にはケーキが出ます。カレンダーに全員名前を書いて、その月ごとにお祝いして。前に組合の方が来られたときは、驚かれました」

「あとは、前は二年に1回社員旅行にもいっていて。ここから貸切バスで、朝6時半に出発なんですね。で、バスが出ようとしたら、もう缶ビールが回ってくるんです。はいはいはい!って。みんな飲兵衛なんですよ(笑)。そういうところも、まとまりがいいというかですね」

普段はみなさん黙々と作業していてあまり想像がつかないけれど、作業場を離れれば、わいわいと楽しむ場面も多いみたい。

そんな温かな空気感は、手仕事にも滲み出ているような気がします。

地域に必要とされるメーカーになるためにも、まず何よりも人を大事にしている会社だなと感じました。

(2022/11/21 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事