求人 NEW

うなぎ、カモシカ、ゆず畑
97%が森林の村で
木工職人、探し中

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

都会には、いたるところにコンビニがあって、ショッピングできる場所やおしゃれなカフェもたくさんあります。

便利で楽しいような気もするけれど、一生住みたいかと聞かれたら、どうだろう。

どっぷり自然のなかで暮らしたい人もいるかもしれないし、田舎と都会の中間くらいのまちで住むのが心地いい、という人もいるかもしれない。

そんなふうに、田舎での暮らしに興味を持っている人に紹介したい村があります。

高知県馬路村。

人口は約800人。高知県で2番目に人口の少ないこの村には、信号もコンビニもスーパーもありません。

あるのは自然豊かな環境。面積の約97%を森林が占める秘境の村です。

今回は、木工職人として働く地域おこし協力隊を募集します。3年後の働き先も用意されているため、任期後の心配なしに、技術の習得に集中することができます。

田舎暮らしをしながら、手に職つけて働きたい。そんな人は、ぜひ読んでみてください。

 

高知空港でレンタカーを借りて、東の方向に車を走らせる。

海沿いの市街地を走りつつ、途中で山側に方向転換。徐々に道幅は狭くなり、人気の少ない山道に入っていく。

心細い気持ちを鼻歌で紛らせながら、ひたすら山道を進むこと30分。目的地の馬路村に着いた。車を降りて散策してみる。

村のほとんどを森林が占めると聞いていたので、閉ざされた場所なのかと思いきや、広がっていたのは開放的でのどかな風景。空気が澄んでいて気持ちがいいし、遮るものがないぶん、太陽の光が村中を照らしている。

道端では村の人が「おはよ〜」と挨拶を交わすシーンも。なんだかジブリのような世界観に心身も緩んでいく。

村の雰囲気を感じた後、向かったのは馬路村役場。

今回の募集経緯について、山﨑村長に話を聞いた。

「協力隊を募集したい一番の理由はですね、馬路村には材料があるってことです。ぜひ見てもらいたいんですけど、天然木の大きな板がまだたくさんあります。だから、その材料をそのまま腐らすとかそのまま売るとかじゃなくて、自分たちで加工して売っていく量を増やしたいんですよね」

「このままだと木工製品をつくる技術が馬路村から消えてしまう」

全国でも指折りの雨量を記録する馬路村。

豊かな雨と温暖な気候の影響で、良質な杉がたくさん育ってきた。なかでも、高知県の県木に指定されている「魚梁瀬(やなせ)杉」は、色彩豊かで、変化に富んだ木目が特徴。

豊臣秀吉が大仏殿を建てる際に、土佐藩主より献上された記録が残っているほど良質な木材だった。

明治時代には、住宅用の材として多くの魚梁瀬杉が使われ、その需要に合わせて総延長250kmの森林鉄道が駆け巡るほど、村の林業は最盛期。当時はこの秘境の村に映画館もあったというから驚きだ。

その後、国内の木材需要減少に伴って林業も衰退。代わりに、村の気候を活かして取り組んだゆず栽培での村おこしに成功し、一躍全国から注目されるように。

ただ、村の森林資源はまだまだ活かしきれていない。

そこで、自治体と民間企業との共同出資によって生まれたのが、株式会社エコアス馬路村。山﨑村長は、エコアスの代表も兼ねている。

「もともとスーパーで売っている肉や魚用に木のトレイをつくるために出来上がって、今はそれらの技術を使っていろいろつくっているんです」

そのひとつが「monacca」と呼ばれる鞄。

スライサーという大型機械で木材を0.5mmの厚みに削り出し、木目が交互になるように0.5mmの木材を重ね合わせる。金型にセットして、熱を加えながらじっくり時間をかけて曲げることで、独自のフォルムを生み出しているという。

見た目は木の温もりを感じられるし、持ってみるととても軽い。

デザイナーと職人がコラボレーションして製作したこの商品は、世間でも評価され、グッドデザイン賞も受賞している。

「ほかにも、額縁などのニーズもあってですね。極端に言うたら、どんなサイズでもできるんですよ」

どういったところで使われるんでしょうか。

「これがですね、県庁で退職される方がいたときに使ってくれていて。退職記念の際に、賞状を木の額縁に入れて渡したりするんですね。お盆なんかも結婚式の引き出物で依頼がきたり、県内企業向けに木製名刺をつくったり。コロナの影響で営業が全然できていないんですけど、結構ニーズはあると思うんです」

「新しく入る人も、スライサーとかプレスする機械の動かし方を覚えて、後継者になっていただきたいなと。それと工芸のほうもやってもらいたい、額縁とか名刺とかね。道具はあるし、技術を教える人もおる。木の特性をよく分かってる人たちもおる。新しいものに挑戦していきたいって方々に来てもらえたらと思ってます」

 

次に話を聞いたのは、エコアス馬路村で工芸品の製作を担う職人の岩城さん。monaccaの塗装も行なっている。

新しく入る人は、主に岩城さんのもとで木工や塗装の技術を教わりながら働くことになる。

作業場を見せてもらいながら話を聞くことに。

木工の仕事はいつからされているんですか?

「村に戻ってからやき、二十歳ぐらいのときやね。そんなに仕事ってないろ。その当時はね、山がよかって木が動いているときで、つくる品物も結構あったし、木工の職人も村に17、8人おったかな」

岩城さんが木工の仕事をはじめたのは、40年ほど前。当時は、天然木と呼ばれる樹齢何百年の巨木を使って、木工製品をつくっていたという。

「今は工芸の職人は僕1人やきね。そんなに手広くはせんし、今やれ言うたら、名刺。あとはいろいろなサイズの額縁とかたまに入ってくる工芸品をつくったり」

作業場には、いくつかのゴミステーション用の木製ゴミ箱があった。馬路村から依頼を受けてつくっているそうで、定期的に取り替えるぶんを毎年製作しているとのこと。

経験者のほうがスムーズに仕事を覚えていきやすいと思うけれど、本人のやる気次第で挑戦できる門戸は開かれている。

未経験の方は、どんなものからつくっていくのがいいでしょうか?

「うーん…名刺かね。ブロック材を用意してそれをコンマ1.8〜2mmに薄うスライスして。そのスライスした木と木の間に、糊紙を挟んでプレスして好きなサイズにつくっていく」

「工程は単純やけど、それに関しても木目を正確に見たりとかすることを覚えてもらわんと。どっちから突っ込んでも同じように削れるってもんやないき、裏も表もあるし、そこは覚えてもろうて」

木を製材したときに、丸太の外側にあたる面を木表(きおもて)、内側に近いほうを木裏(きうら)と呼ぶ。それぞれ木目の流れが違うため、正しい方向でスライスする機械に入れないと、表面が荒くなってしまうという。

自然を扱う仕事だからこそ、細かなところまで気にかけられる人がいい。

基本的な木工の技術が身に付いたら、3年後もエコアスで働き続けることもできるし、思い切って独立してブランドを立ち上げることもできる。仕事の広げ方はいろいろとありそうだ。

 

岩城さんに話を聞いた後、馬路村役場の方に連れて行ってもらったのは、コミュニティセンターうまじ温泉。村内唯一の宿泊施設で、レストランも併設している。

午後の取材に向けて、お昼休憩。川魚のあめご柚酢丼と近くの川で獲れたカニのお吸い物をいただいた。

ぽつぽつと地元の方らしき人たちもやってきて、談笑しながらご飯を食べている。

村内に飲食店はほとんどないそうで、この場所は交流の拠点になっているのかもしれないな。

 

お昼を終えて、次に話を聞いたのは地域おこし協力隊OGの五味さん。現在は、小物や雑貨を中心に取り扱うブランドを立ち上げたり、村内で写真の仕事をしたりしている。

さっそく話を聞こうとしたところで、村内のスピーカーからどこか懐かしい音楽が。

「朝の6時と正午、夕方の5時と夜の9時に時報の音楽が鳴るんです。朝は、グリーンスリーブスってイングランドの民謡で、正午がたしか村歌だったかな」

「夏休みは10時も鳴るんですよ。子どもたちはそこまでは家で勉強しないといけないらしくて、わたしも移住してから教えてもらいました」

もともと名古屋でグラフィックデザイナーとして働いていた五味さん。あらためて働き方や暮らし方を考えたときに、田舎に住みたいと思うようになった。

ただ、田舎に移住しても仕事がなければ暮らし続けるのはむずかしい。そこで、地域おこし協力隊の制度を使って移住先を探すことに。

「わたしはペーパードライバーだったんですけど、どこの自治体も自家用車必須で。車は持っていないし運転もできないしってなかで、馬路村だけは『自家用車の持ち込みを”おすすめします”』って書いてあって、ここだって思ったんです(笑)」

「来てからも半年ぐらいは車なしで生活してました。村でも生活必需品は揃うんですけど、ちょっと割高なものがあったり種類が少なかったりするので、ネットスーパーで頼んで届けてもらったり、山を下りて買い物しにいくこともあったりして」

山を下りる場合はバスに乗り、帰りはバスに乗るか、運が良ければ仲良くなったおじさんに乗せてもらって帰ってきていたという。

地域おこし協力隊としては、村の情報発信とふるさと納税の返礼品開発を担当していた五味さん。

新しく入る人も、何か暮らしや仕事で困ることがあったら、五味さんに相談してみるのがいいかもしれない。

「わたしもものをつくっているので、新しく入る人とコラボレーションできたら楽しいかなと思いますね」

「たとえば、リングケースをつくってもらってその中身をわたしがつくるとか、スピンドルっていう糸を紡ぐための道具をつくってもらって、糸紡ぎのワークショップを一緒に開催するとか。いろいろ一緒にできることはあるのかなって」

 

現在、現役の地域おこし協力隊として活動しているのは3名。そのうちの一人である平瀬さんにも話を聞いた。

現在は馬路村農協に籍を置いて、ゆずの栽培に従事している。

「ゆずって元は緑色で、寒くなってくるとだんだん熟れて黄色くなるんです。ちょうど先週から収穫がはじまって、12月の1週目ぐらいまで収穫する感じですね」

馬路村に移住する前は、鹿児島の限界集落で農業研修を受けていた平瀬さん。集落には同世代の人もほぼいなかったそうで、より移住者でも暮らしやすい場所を求めて、馬路村にやってきた。

「こっちは、移住自体がそんなに珍しいことではないので、移住者だからって特別扱いされるわけでもなく、程よい距離感で暮らせています」

「ここに来て、動物や自然の豊かさに驚きました。僕自身アウトドアが好きなので、キャンプだったり釣りだったり。ここの安田川にはダムがないので、生態系もすごい豊かで、うなぎも取れるんです。今日は山でカモシカとも遭遇して、あらためて豊かな環境だなって」

村の面積97%を森林が占める馬路村、これだけ豊かな自然が残っているのは、珍しいと思う。

ちょっと不便なところもひっくるめて楽しみたい。

自然と共に暮らし働きたい人に、この村をぜひおすすめしたいです。

(2022/10/31 取材 杉本丞)

※撮影時はマスクを外していただきました。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事