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まちなかの農と
はぐくむコミュニティ
ササハタハツで実験中

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京王線の笹塚・幡ヶ谷・初台駅の頭文字をとって、ササハタハツ。

渋谷区の人口の約4割が住んでいる、この3駅にまたがるエリアは、約2.6kmに渡る「玉川上水旧水路緑道」で結ばれています。

まもなく着工する緑道の再整備工事に向けて、渋谷区では、ここを起点とした住民主体のまちづくりに力を入れてきました。

その中心となっているのは、産官学民の垣根を超えたメンバーで構成されている任意団体「ササハタハツまちラボ」。

今回は、まちラボと協働して活動する、コミュニティマネージャーを募集します。

任せたいのは、「仮設FARM」というコミュニティ農園のプロジェクト。

将来的に緑道の一部を農園として活用していくため、維持管理ルールなどの検証をしようと、1年ほど前から地域住民と一緒に取り組んでいる実証実験です。

野菜やハーブを育てながら、週末には小さなイベントを開いたり、地域のお店とコラボレーションしてみたり。対話を大切に、地域の人たちの「やってみたい」を実現するサポートをしていきます。

1年単位の業務委託契約となりますが、プロジェクトの進捗によって、毎年更新されていく可能性もあります。

ササハタハツに縁がある人、コミュニティ運営に興味がある人、都市で農を通じたプロジェクトに関わってみたい人。この仕事を通じて、いろんな実験ができる環境だと思います。

 

ササハタハツは、渋谷区ではあるものの、新宿から京王線に乗ってすぐのエリア。

取材に訪れたのは、新宿の2駅隣の幡ヶ谷駅。

この日、東京はめずらしく雪の日。道中でちょうど今回の舞台の緑道を通ると、仮設FARMらしきプランターのあるゾーンが見えた。

周囲は住宅街で、そのなかに小さいながらも個性ある飲食店や商店が建っている。歩いていておもしろいエリアだ。

駅から歩いて5分ほど。渋谷区の地域交流センターの一室に、まちラボに関わっているみなさんが集まってくれていた。

20名ほどが所属するまちラボの中心で活動しているのが、まちラボ事務局次長の真柴さん。渋谷区役所のまちづくり第一課に所属している。

「母が笹塚、父が初台の北側地区の本町出身で、ササハタハツのサラブレッドなんです。こういうと、結構地域の人にウケるんですよ(笑)。まちづくりがしたくて区役所に就職したので、今の仕事はすごくおもしろいです」

渋谷区でもっとも人口が多いエリアで、住民主体のまちづくりが必要とされているササハタハツ。地域住民と近い距離でまちづくりを進めていくための組織として、2020年にまちラボが立ち上がった。

渋谷区のほか、京王電鉄や東急不動産、産官学民連携の一般社団法人渋谷未来デザインなどのメンバーが所属している。

ササハタハツエリアで現在進んでいるビッグプロジェクトが、笹塚から新宿近くまでを結ぶ約2.6kmの玉川上水旧水路緑道の再整備。今年度から順次、整備工事に着工する予定となっている。

「緑道が整備されてきれいになっても、使ってくれる人がいなかったら意味がありません。将来、地域住民が緑道を使いこなす状況を今のうちからつくろう、緑道を契機に地域のコミュニティを発展させていこうと、いくつかの実験的な取り組みを進めています」

たとえば、緑道の利活用方法の可能性を探ろうと取り組んでいるのが、「388 FARM β(ササハタハツファームベータ)」。

農に関する社会課題解決に取り組むマルシェや、地元の飲食店の出店、子ども向けのアート教室、車いす体験ができるインクルーシブ運動場など。住民の多種多様な「やってみたい」という想いを、緑道を舞台に実現できるようなイベントを開催した。

「出店者は住民から募集して、参加者が次の回では企画側に入ってくれることもありました。なかには、緑道を飛び出して地域をまわるオリエンテーリングのような企画もあって、徐々につながりと回遊が広がっているなと感じています」

主役はあくまでも地域に住む人たち、と真柴さん。

「地域の方々の気持ちをアクティベートしていくために、まちラボはあります。主催ではあるけれど、バチッと企画を決めているわけではなくて、あくまで地域の人たちと一緒に企画をつくり上げていきます」

空間の利活用の観点から実験している388 FARM βに対して、農という切り口からアプローチしているのが、新しく入る人が担当する仮設FARMプロジェクト。

緑道内で2ヶ所、地域住民とともに農園を運営していて、市民主体という考え方は、こちらのプロジェクトにも通じている。

 

「『FARM』というのが、緑道の再整備コンセプトなんです」

そう教えてくれたのは、再整備事業を進めている渋谷区公園課の峯田さん。業務の発注元として、まちラボと連携しながらプロジェクトに取り組んでいる。

「地域の方のいろんなやりたいことを育む場所、地域コミュニティを育てていく場所っていう意味が込められていて。人が集まって、そういう体験ができるような緑道に整備していこうとしています」

現在も、地域の人たちが緑道を舞台にお祭りやイベントを実施しているそう。それがより行いやすくなるようなフリースペースや、住民が共同管理する農園、子ども向けの遊び場などを設置予定。

今まちラボが進めているプロジェクトについている「β」や「仮」は、数年かけて外していくイメージで、将来は住民主体でまわっていく活動に発展させていきたい。

緑道再整備後は、まちラボはより裏方にまわり、コーディネーターとして住民の緑道の活動をサポートしていく予定。

昨年、仮設FARMの立ち上げにも関わった、峯田さん。

プロジェクトの背景には、都会の農ならではの特徴がある。

「再整備後の緑道に農園ができますって広報したとき、地域の方から不安の声が届いたんです。渋谷っていう都市において、本当に農園の維持管理ができるのか。つくった野菜は盗まれたりしないのかって」

「まずは、今の緑道で仮設の農園をつくって、地域のみなさんと一緒に実験しながら、将来に向けてフィードバックをしていきましょう、ということで仮設FARMの取り組みをスタートしました。公募でメンバーを集めたら、310人から応募がきて、すごく驚いたんですよ」

今は初台と幡ヶ谷の緑道内にある仮設FARMで、選ばれた20名のメンバーとともに活動中。年齢は20代から70代、学生から会社員、地域ボランティアに取り組んでいる人まで、参加者は幅広い。

「ここは区画貸しではなく、すべて共同管理です。農園をみんなで囲みながら会話が生まれるような、コミュニティ醸成を目的としているんです」

まちラボの担当者は、活動に定期的に参加しながら、アドバイザーの先生を招く調整をしたり、備品を調達したり。これからは、SNSの活用やマルシェへの出展など、地域に活動を知ってもらうことにも力を入れていきたい。

なにより大事なのは、参加メンバーの声を聞いて、それを実現できるようなコーディネートをしていくこと。

「こういう野菜が育てたい、プランターだけでなく周りの植栽でも何かしたいなど、いろんなやりたいことが生まれてきます。どうすればそれを実現できるか、一緒に考えて伴走していく役割です」

 

現在、仮設FARMのコミュニティマネージャーを担っているのがまちラボ事務局次長の松石さん。所属は京王電鉄株式会社で、自身もササハタハツの住民なんだそう。

「活動の後にご飯とかお酒とかに行こうという話も多く、一住民としても楽しいですよ。2つのコミュニティの成熟度が違うので、それぞれで何ができるか考えるのは、やりがいがあります」

「1年近く活動している初台の仮設FARMは、メンバー主体でどんどん動いていくので、みなさんの意見を大切に、活動が軌道から外れないようにファシリテートしていく。幡ヶ谷のほうはまだ数ヶ月で、チームが固まっていない大変さはあるけれど、そのぶんいい柔らかさもあるんです」

たとえば先日は、自分たちで育てた大根を収穫して、煮物をつくって食べるイベントを開催。

そのとき、散歩をしていた親子連れに声をかけ、子どもに大根を抜いてみてもらったそう。

「その子のお母さんが、『こういう活動をやっているんだって初めて知りました』って興味を持ってくださって。それが刺激になって、まだ距離感を探っていたメンバー同士が、だんだん賑わいはじめました」

「地域の飲食店でビール飲む会をやりたいから、夏に向けてトマトをつくりましょうとか、盛り上がって。外部からの刺激でコミュニティが育っていく姿が見られておもしろかったですね」

農という共通点はあっても、いざ飛び込むと、ほかのメンバーと何を話せばいいかわからないという声もあるそう。とくに会社勤めの人だと、仕事以外の人との関わり方が探り探りになることが多い。

そんな関係性も、都市ならではだなと思う。

それぞれの声を聞き、うまくつなぎ合わせて。このエリア、この住民ならではのコミュニティを育てていくのは、人と関わるのが好きな人には、とてもやりがいがありそうだ。

 

最後に話を聞いたのは、現在まちラボの一員であり、リージョンワークス合同会社で代表を務めている、後藤さん。左側にいるのは、同席してくれたスタッフの日方さん。

今回入る人は、リージョンワークスに所属しながら、まちラボの仕事に取り組んでいく。

大都市から地方まで、幅広いまちづくりに取り組んできたリージョンワークス。社内のノウハウを、ササハタハツにも活かしていってほしい。

「人が大勢暮らしている場所で、丁寧に新しい仕組みをつくっていく。むずかしくも、やりがいを感じています」と、代表の後藤さん。

住民の入れ替わりが多いエリアのため、なかには孤独や貧困といった課題もあるのが現実。都会で華やかに見えるけれど、それだけではない複雑さを抱えている。

一方、立地柄周囲に大企業も多い。地域と関わりを持ちたいと思っている企業は多いので、うまく連携できれば、活動の幅が広がる可能性は大いにある。

「課題と可能性が近いところにある、ほかのまちではあまり見たことがない事例です。型に当てはめることはせず、好奇心をもって誠実に取り組んでもらえたらと思います」

「まちラボとリージョンワークス、それぞれのメンバーと、チームとして互いにサポートし合う働き方も楽しんでいただきたいです」

リージョンワークスのなかでも、若手スタッフの日方さんは、新しく加わる人にとって身近な先輩になると思う。

日方さんは、このプロジェクトについてどう感じますか?

「コミュニティマネージャーの仕事って、実験しよう、仕掛けてみようってチャレンジして、『あ、違ったな』とか、そういう繰り返しだと思うんです。農を軸にいろんな人と会って試行錯誤していくことで、自分自身も育っていける環境なんだろうなと思います」

都会だから複雑、だけど都会だからこそのおもしろさがきっとある。

将来賑わう緑道の姿をイメージしながら、まずは目の前の地域の人たちと丁寧に向き合っていくこと。

たくさんの人が関わるぶん、簡単ではないと思うけれど、ササハタハツだからこそできるコミュニティづくりを、少しずつ見つけていってほしいです。

(2023/2/10取材 増田早紀)

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