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デザインが形になるまで
創造の喜びを丸ごと味わう
あなたは何をつくりますか?

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「日本では古来から、すぐれたつくり手がすぐれたデザイナーでした。陶芸、テキスタイル、宮大工もそう。うちの工房もそうありたいと思っています」 

つくり手であり、デザイナーでもあり、さらにはインテリアショップのブランディングも考えていく。今回紹介するのは、「つくる」ことで生きていきたいと思う人に知ってほしい仕事です。

MATELIER(マテリエ)株式会社は、スチールやステンレスなどの素材を中心に、階段や手すり、門扉、インテリア家具などを制作している会社。

「宙に浮かんだような階段がほしい」「一筆書きをイメージした階段をつくりたい」MATELIERにやってくる仕事は、ひとつとして同じものはありません。

最初のヒアリングから、製図、制作、取付まで。ひとりのスタッフが一貫して担うことで、クライアントの持つさまざまなイメージを形にしてきました。

創業して19年。この夏、長年の夢だった自社店舗をオープンし、自分たちの作品を世に問うことにも取り組んでいきます。

今回新しく加わる人は、建築向けの仕事をベースとしつつ、店舗で販売する家具も設計・制作します。スタッフ4人の小さな組織のため、店舗に立って接客することもあるそうです。

性別・年齢・学歴などは問いません。みずから考え、手を動かす。ものづくりの喜びを味わいながら、まっすぐ向き合い続ける人たちを紹介します。

 

日本仕事百貨のオフィスがある清澄白河から、電車に乗ること45分。羽田空港に向かう人に囲まれながら、大鳥居駅で降りる。

昔ながらの住宅や町工場のあるまちを歩いて5分ほどで、大きなガラス窓が印象的な建物を見つけた。

ここがMATELIERの拠点。1階から工場、店舗、事務所となっていて、ここで制作物をつくり、建築現場に運んでいるそう。

「ガラス窓の部分はもともと壁だったんです。前の工場が窓のない場所だったので、ここでは思い切って壁をなくそうと。窓枠はスタッフが設計・制作したものなんですよ」

そう教えてくれたのは、代表の大住さん。

MATELIERは、外資系のIT企業で働いていた大住さんが「自分の名前で仕事がしたい」と、3年の修行を経て2004年に立ち上げた会社。

得意とするのは階段やインテリア家具などの意匠金物。主なクライアントは建築設計事務所のほか、ゼネコン、工務店など。個人のお客さんから依頼を受けることもある。

細かい設計まで指定されることもあれば、「こんな雰囲気のもの」といった、抽象的な相談も多い。

どんな形だと空間で映えるのか、安全性と機能性を両立させるには、どんな素材でどんな加工が必要なのか。イメージを確実に再現するためには、ミリ単位での高い技術と知識が求められる。

依頼は絶えず、普段はプレーヤーとして現場を飛び回っている大住さん。

「有名建築家と仕事をする機会もあって、そんな発想もあるんだ!と勉強になることも多い。ただ、それだとあくまで他人がデザインしたもののつくり手にすぎない」

「いずれ自社ブランドをつくって、自分たちで考えたもので世に問うてみたいという構想は創業からずっとあって。2020年にこの建物を見つけて、やっと始められるという状況です」

完成したばかりの2階は、まだまだがらんとしている。ひとまず場はできたものの、どんな空間になるのか、社員で決めていく部分も大きい。

空間の使い方のひとつとして、大住さんが考えているのは、溶接のワークショップ。完成品をただ販売するだけではなく、つくる過程を共有することで、ものにもブランドにもより愛着を持ってもらえるかもしれない。

トライアルとして、若手建築家を対象にスチールを溶接するワークショップをひらいたところ、好評だったそう。

「想像の3倍くらい作業時間がかかってしまったので、そこはどうにかしたいですけど。お客さんにはつくる楽しみを。僕らは、一人ひとりがつくりたいものをつくってみる『創造する喜び』を、味わえる場所になったらいいなと思っています」

たとえば、店舗にある石のテーブルは大住さんがデザインしたもの。

接合している柱が石を支えていて、まるで宙に浮いているような不思議な印象。

「この石は彫刻家のイサム・ノグチが晩年愛したもので。彼は代表作のコーヒーテーブルなど、構造を意識させるデザインをいくつも描いています。彼の石を使って、彼がやっていない構造でデザインしようと思ったんです」

「すでにいくつも家具ブランドがあるなかで、うちがやれることがあるとすれば、機能と構造を再検討すること。テーブル=4本脚って固定化されたイメージでは、こんなテーブルは構造的にあり得ないけれど、可動性をなくして、かつ新築ならこんなものをつくることもできます」

大住さんのように0から発想していくことは簡単ではない。まずは家具の知識を共有する機会をつくったり、テーマに沿ってデザインをしてもらったり。ほかの社員も発想しやすい環境を整えていく予定。

「ただ、まだまだ自社ブランドだけで食っていける状況ではないので、しっかり食べていくためにも、建築の仕事は大事です。現場で学ぶノウハウは、ものづくりの基礎にも活きていきます」

「体力的にも厳しいし、決して楽な仕事ではない。どんなものであれ、自分で考えて、自分の手でつくりあげることに挑戦してくれるような人と働きたいです」

 

すべての基礎になる、建築現場での仕事。

ふだんの進め方について教えてくれたのは、入社15年目になるベテランスタッフの佐藤さん。新しく加わる人は佐藤さんの現場についていく場面も多いと思う。

専門学校でプロダクトデザインを学び、内装設計の会社で設計や現場監督の仕事を経験。大工や職人の仕事を手伝うなかで、「やっぱり自分でつくるほうが楽しい」と感じ、MATELIERに転職した。

お客さんの要望を聞いて図面に起こすところから、制作・取付までを一貫して担当している。

「ご依頼をいただく時点で、建物のテーマや予算は決まっていることが多いです。安全性の面から、木造住宅に取り付ける階段はこの寸法など、法律で決まっていることも多くて。その制約のなかでどう遊ぼうか?という視点で設計しています」

たとえば、足場がどっしりとした階段であれば、細い部材で軽さを出してみたり。硬いイメージの建物であれば、手すりを曲線にすることで、有機的なイメージを出してみたり。

お客さんの持つイメージをそのまま実現するだけではなく、建物全体との調和性や使い勝手、安全性とのバランスをとりながら提案している。

お客さんとの相性にもよるけれど、ちょっと冒険したほうがかえって喜ばれることもあるそう。「佐藤さんにお願いしたい」と直接連絡をくれる人も増えてきた。

「大住は自分のデザインをどんどん出していきたいタイプ。僕はそれもありつつ、やっぱりお客さんあっての仕事だと思ってるんで。どれだけ希望に近づけるのか、期待を越えられるかって視点は大事にしています」

設計・制作・取付の時間配分は、おおよそ1:1:1。感覚で言えば「図面が引けたらほぼ完成」というくらい、設計は重要な工程だ。

大住さんは若手に「つくっている場面を何度も具体的に想像してみろ」と話すそう。

階段であれば、1段目は寝転がって取り付けることも多い。その角度で溶接は本当にできるのか、作業を見越した設計が必要になる。

「毎回つくるものが異なるので、新しく加わる方には、現場に行って作業しながら、考えていることを丁寧に伝えていくしかないかなと思っています。だからこそ、つくって終わりじゃなくて、周辺のことにも興味を持って吸収していけるかが大事だと思っていて」

ほかの素材でつくったらどんな印象になるんだろう? ここのデザインを変えてみたらどうなるんだろう?

つくり上げたものをヒントに、次の現場で活かせそうなアイデアを膨らませていく。

「休みの日は展示会に行ったりして、これはなんで格好いいんだろう?と考えるのは好きですね。たとえばインテリアが好きで、普段からインテリアショップに行ったり、雑誌を読んだり。夢中になれることがある人なら、きっと合うんじゃないかと思います」

 

最後に話を聞いたのは、一番若手の藤澤さん。昨年夏に新卒で入社して、佐藤さんに同行しながら、仕事の一連の流れを学んでいるところ。

じっくり、言葉を探しながら話してくれる。

もともと美大で金属加工や彫刻を学んでいた藤澤さん。

「インテリアに興味があったので、就活では最初、設計職を探していました。でも、未経験で採用してくれるところってほとんどなくて。制作も含めて探していたときに見つけたのがMATELIERでした」

まずは工場で制作を手伝うところからスタート。最近は現場で取付にかかわることも増えてきた。

「金属加工の経験はありましたけど、作品と仕事では違いますね。たとえば溶接が不十分だと、最悪事故が起きてしまう。シビアさが求められるなと感じました」

設計・制作・取付。どれも少しずつ学ぶことになるけれど、相互のつながりを考えながら取り組んでいけると、成長も早いと思う。

「やっぱり現場の取付が一番大変かもしれないですね。基本、朝8時開始なので、積み込みして会社を出発するのは7時。冬は寒くて夏は暑い。体力は必要かもしれません」

仕事で、楽しいと感じることはありますか?

「ものづくり自体が好きだから、楽しいというか、落ち着くって感覚が近くて。大学時代、自分のつくりたいものをつくるのも楽しかったけれど、仕事を始めて、ひとの考えたものをつくるのもいいなと」

店舗ができると学生時代のように、つくりたいものをつくる時間もできる。どちらの楽しみも味わえるのは、MATELIERで働く魅力だと思う。

「設計や制作もそうなんですけど、全部できる人ってほとんどいない業界だと思うんです。だいたいみんな入社してから身につけていくから、経験のあるなしにこだわる社員はいないように感じます。ものづくりで生きていくことを考えると、全部を経験できる環境は、ありがたいですね」

藤澤さんいわく、大住さん以外のメンバーは口数は少なめだけれど、バランスが取れていて居心地がいいそう。年齢もバラバラなみなさんが心地よく過ごせているのは、ものづくりへの想いを共有できているからなのかもしれない、と感じました。

 

取材中、印象に残っている大住さんの言葉があります。

「100点のつく建物ってないんですよ。僕らが関わっているのって1回限りのものがほとんどだから、毎回反省が尽きない。階段でも、同じものをつくったほうが、めちゃくちゃ楽なんです。2個目以降は半分くらいの時間でつくれる」

「そのくらい、反復は大事なんです。でも、一つしかないものの良さってありますよね。苦労して、捻り出してつくりだした先の喜び。それに共感してくれる人がいたらいいなって思います」

ものをつくる喜びに、正直に生きたい。そう思う人がいたら、一歩を踏み出すのに、ぴったりの場所だと思います。

(2023/3/23 取材 阿部夏海)

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