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四国の先端で
学びの風になる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

四国の最西端、愛媛県・伊方町(いかたちょう)。

まっすぐ伸びる土地に、周りには海が広がって風が気持ちよい場所です。

今回の舞台はこのまち唯一の高校、県立三崎高校。

「高校魅力化プロジェクト」の取り組みのひとつとして、ここには「未咲輝(みさき)塾」と呼ばれる、まちと高校が2018年に共同で立ち上げた公営塾があります。

生徒数が減少しつつあった学び舎を、なんとか存続させたい。

高校の先生と塾が連携し、学習サポートやキャリア教育を充実させることで、三崎の魅力を高める取り組みをしてきました。

今回募集するのは、地域おこし協力隊として未咲輝塾で学習指導を担うスタッフ。

今年度からは塾での指導だけでなく、三崎高校の「総合的な探究の時間」の授業にも参加することになります。

たとえば、生徒たちと一緒に伊方町の産品を使ったレシピを考えるなど、どのように関わるのか、高校の先生と考えているところです。

取材をして感じたのは、いろんな会話が教室を超えて聞こえる風通しの良さ。

伊方町だからできる教育を学校の先生と一緒に考え、生徒の背中を押してくれる人に届いてほしいです。

 

松山空港から車で約2時間。一本道を西へ進んでいく。

山にはみかん畑、見下ろすと穏やかな海。三崎高校に近づくにつれ、緑が多くなる。

到着して、案内してもらったのは2階の会議室。

まずは地域コーディネーターの石本さんに話を聞く。

昨年の8月に三崎高校に着任し、「総合的な探究の時間」で生徒が課外活動に行くときや、地域の方を講師として学校に来てもらうときの橋渡しをしている方。

「今年度からの“総合的な探究の時間”は、生徒自身が関心を持ちやすい環境づくりや、各教科の内容をつなげることに力を入れたいと思っています」

1年生は自分の興味や得意なことは何か、将来どんな道に進みたいのかを考える「自分探究」。2、3年生から「地域探究」として、生徒自身が興味を持ったテーマを選び、グループで活動する。

アートや防災や商品開発など、6つのテーマに沿って伊方町の地域活性化を目指し、生徒自らが活動内容を考える。

「これまでの例でいうと、伊方町の特産品であるみかんを使った大福を商品化したグループが、全国の場で表彰されることもあって」

「3年生だけは、マイプロ班という個人で探究ができる活動もあります。最近は、アサギマダラっていう、伊方町に飛来してくる蝶の飛行距離を研究をする生徒がいて。発表会で話してくれたときは、よく考えられていて驚きました」

今回来てくれる人は、三崎高校の先生たちとひとつのテーマを担当し、生徒たちや地域の方と関わっていくことになる。

未咲輝塾の講師が「総合的な探究の時間」に参加するのは、今年の6月から。

「未咲輝塾にいる講師のみなさんは、自分が経験してきたことに自信や誇りを持っていて、それをちゃんと生徒に伝えられる熱意がある。それをうまく発揮してほしいですね」

「三崎高校の先生も生徒も、温かくて。外から来た私のこともすんなりと受け入れてくれたので、仕事がしやすい環境だと思いますよ」

未咲輝塾に通う生徒は、教室にいるときとは違う姿を見せることもある。だからこそ、塾のスタッフは、学校の授業でも生徒たちからさまざまなアイデアを引き出す工夫ができると良さそうだ。

 

次は、渡り廊下を通って図書室へ。

公営塾として使用されている教室は3階の空き教室とこの図書室だそう。塾生は100人ほどで、毎日30人から40人が利用している。

話を聞いたのは、今年度から塾長を務め、理科と数学を担当している関本さん。

大学院で5年間、『ウミアメンボ』という昆虫の研究をしていたそう。

5年間のうち、2年は船で世界中の港を周ったり南極に行ったりしながら、アメンボを捕まえる生活をした。

卒業してからは、大学の医学部で研究員をしたこともあれば、山小屋で働いた経験もある。冬場の山小屋は仕事がないため、伊方町でみかん農家のお手伝いをしたことが、大きなきっかけになった。

「その農家さんから『子どもの勉強を教えてほしい』って言われて、家庭教師になったんです。教えていた子が『学校に塾はあるけど、理系の先生がいない』って。そもそも学校に塾があることに驚いたし、何かチャンスかもしれないと思いました」

自身が高校生のときは、学校の先生と打ち解けられたっていう感覚をあまり持てなかった、と関本さん。

「未咲輝塾は生徒も学校の先生も塾のスタッフも距離が近くて、自分もこんな高校生活が送れたらよかったって感じます」

ときには教科を教えること以外に、かつて航海したときの話をしたり、生徒の将来の夢について聞いたりすることもある。

生徒たちにとって、未咲輝塾の講師は学校の先生でも友達でもない、身近で知らないことを教えてくれるおもしろい大人だ。

「指導の仕方は統一してなくて。基本は自習で、わからないところを生徒が聞きに来るというスタイル。心がけているのは強制しないことですね。やる気を尊重するというか、まずは生徒が興味を持つことを大切にしています」

今の塾スタッフは4名。主に担当しているのは数学、国語、物理、化学、生物、日本史。そのほかの教科も塾スタッフや学校の先生たちと連携しながら指導をしている。

スタッフは、週1ほどのペースで科目に特化した講座も開いている。多いときでは1日3コマほど。テスト前など、土日に開塾するときは、別日に休みをとっているそう。

関本さんは6代目の塾長。未咲輝塾は以前から、生徒のやる気を尊重してきた。

これまでの積み重ねもあり、最近は生徒からもいろんな声が上がるように。その一つが、受験生から要望のあった土日の講座の開講。学校の先生たちと話し合って開塾が決まり、受講したい生徒が自主的に参加している。

「以前、やりたいことがわからないって話してくれた生徒がいたんです。そこで、僕が勉強していた生物について話をしたら、だんだん興味を持ってくれて。高校生にはまだ早いような生物学を教えることもありました」

「そうするうちに『大学で理学部の生物系を勉強したい』って言うようになって、受験勉強も頑張ってくれました。すごくうれしかったですね」

やる気を出させるのではなく、自分からやる気になるきっかけをつくる。

関本さんのように世界中を見たり、得意分野を持っていたりする人が生徒たちと関わることで、いい刺激になっているのだろうな。

どんな人に来てもらいたいですか?

「生徒が主体になることを大切にできる人です」

生徒が主体。

「未咲輝塾では、勉強の進め方とか塾での過ごし方を生徒自身が決めているので、そのやり方に共感してくれる人がいいですね」

「僕たち講師は、友達っていう関係性ではないんですけど、お互いに気持ちよく仕事ができていると思うんです。指導も干渉しすぎないことを大切にしている。明らかにまずいなと思うときは言うけど、それぞれのやり方に任せています」

 

「そうですよね?」と横を見る関本さん。

うんうんと頷きながら隣で聞いていたのは、未咲輝塾で国語と日本史を担当している横山さん。

日本仕事百貨の記事を見て応募し、東京から伊方町へ来て2年目。以前は、タイで経理の仕事をしていた。

「ここに来て思ったのは、いろんな経歴を持っている人が集まってくる学校だなって。生徒も“地域みらい留学”という制度を利用して、いろんなところから集まっている。自分も一本道ではない生き方をしてきたので、それをおもしろがってくれる環境なのかなと感じました」

「あと、三崎高校にいる生徒は素直なんです。生徒たちが『ありがとう』とか『楽しい』ってリアクションを率直に伝えてくれます」

塾は放課後から夜の21時まで。部活をしている場合は、部活後の18時半くらいから終わりの時間までヘトヘトになりながら頑張っている生徒もいる。

「疲れて勉強に気が進まなそうだったら雑談して気分転換したり、体調とか疲れ具合を気にかけて、休ませたりすることもありますよ」

塾を見学させてもらうと、講師に一対一で勉強を教えてもらっている生徒以外にも、椅子で本を読んだり、友達と教えあったりする姿も。

学校の中にあるけど、普段授業を受けているクラスとはちょっと違う。疲れていてもここに来るのは、居心地がいいからなのだろうな。

 

最後に話を聞いたのは、三崎高校に着任して8年目の羽田(はだ)先生。

教務課長で、地域みらい留学や高校魅力化プロジェクトについて深く携わっている方。笑顔で物腰が柔らかい印象だ。

「ここ数年、三崎高校は地域みらい留学をはじめたり、公営塾もできたりと、いろんな追い風が吹いていて。元気のある学校だと思います」

「以前の生徒たちは、優しいんだけど物怖じすることも多かったんですよね。自分自身で楽しい時間をつくってほしくて、『みさこうデイ』っていうイベントを5年前から始めたんです」

「みさこうデイ」は月に2回、私服で登校でき、チャイムが鳴らない日。お気に入りの洋服を選んで学校に行くことができる。

一方でチャイムが鳴らないため、生徒たちは時計を見ながら行動する必要があり、学校生活にメリハリが生まれた。

「昨年、文化祭で有志発表の時間を設けたときがあって。そうしたら生徒からの応募が予想よりも多くて、オーディションまでしたんです」

「オーディションに受からなかった生徒も、『やっぱり自分も前に出て表現したい』って声を挙げてくれて。『みさこうデイ』の日にあわせて『ライブハウスみさこう』も開催するようにしました」

クラスメイトとダンスを踊ったりコンビを組んで漫才をしたり。表現したいことを生徒自身が考えるきっかけになった。

「年に数回、塾の先生たちもイベントをしてくれていますよ」

鉄球の加速機や昆虫の標本を生徒たちと一緒につくることもあったそう。

「塾の先生たちは海外で生活したり、社会人としての経験もあったり。いろんなキャリアを積んでこられて、勉強もそれ以外のこともサポートしてくれているので、頼りにしています。職員室にふらっと来てもらってよく話しますね」

どんなことを話しているのでしょう。

「たとえば、学校の先生たちが塾の先生に『いつも元気に発表してくれるのに、今日は目が合わなかった』とか『めずらしく一人でご飯食べていた』とか、ちょっとした変化を共有したりしています」

「三崎高校の職員室は明るい」と来客の人からよく言われるのだとか。

「一番大切な仕事は生徒を成長させていくこと。当たり前なんだけど、そのためには学校も塾も、もっと風通しをよくしたいと思っています」

 

海に向かってまっすぐに伸びた形をしているこのまちには、同じようにまっすぐ、ぐんぐん成長する生徒たちがいます。

それを支えているのは、ときにはそよ風のように優しく、ときには追い風のように背中を押してくれる大人たちでした。

みんなが心地よく混ざり合うこの学び舎で、新たな風になってみてください。

(2023/5/15 取材 大津恵理子)

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