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なんかやりとうなったら
いつでもきいや

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「やってみたらいいやん」を、一つずつ叶えていくこと。

“起業”と聞くと、少し遠い言葉にも思える。けれど、独立してきた先輩たちの話を聞いていると、起業は小さな挑戦を積み重ねてきた結果なのだと感じます。

大きな一歩につながる小さな一歩を、場づくりという方法で応援する。その過程で自分のやりたいことを見つけていく。そんな仕事があります。

高知県北部に位置する土佐町は、人口3,700人の山あいのまち。中央に吉野川が流れる、農業と畜産、林業がさかんな地域です。

まちを見晴らす高台にあるのが、2021年末にオープンした「テレワーク拠点 大屋敷」と呼ばれる施設。

サテライトオフィスとしての機能のほか、地域の人と対話を重ねるなかで、「やってみたい」を形にしていくための機会をつくってきました。

具体的には、商品開発のプロを招いたトークセッションや、まちの事業者さんを対象にした新規事業開発プログラムなど。

地域内外の人を巻き込みながら、まちの人のチャレンジを応援しています。

今回はここの「家守」として、施設の管理をしつつ、イベントの企画運営を担う仲間を募集します。

経験は問いません。これまで企画運営を担ってきた土佐町役場の職員さんと、事業をサポートする、新規事業開発が専門の「アルファドライブ高知」のみなさんとチームになって取り組んでいきます。

いつか地方で暮らしたい。起業したい。漠然とした思いでもかまいません。そんな人ほど、等身大で活躍できる場所だと思います。

 

高知龍馬空港から土佐町までは、高速道路を利用して車で1時間ほど。

最寄りの大豊ICで降り、吉野川沿いに車を走らせていく。深々とした緑の山と川面を見ていると、時間を忘れてドライブしていたくなる。

まちの中心部から、角度のある道をぐっと少し登ると、塀に囲まれた立派な屋敷を見つけた。

これが大屋敷。築50年で、町のなかでもっとも大きな古民家のひとつなのだそう。

中心部ではあるけれど、車の音も聞こえず、高台だから眺めもいい。鳥の声が似合いそうな場所だ… と思っていたら、鳴き声が響いた。

正面向かって左には離れもあり、新しく加わる人はここに暮らすことになる。改修中で中は見られないけれど、立派な2階建ての建物で、ひとりで暮らすには十分広そうだ。

迎えてくれたのは町田さん。

土佐町役場に勤めて13年目、大屋敷の立ち上げからかかわっている方。

とても話しやすい方で、職員さんというよりは、近所のお兄ちゃんのような感じ。

3年前までは、地元の高校に通う、県外からやってきた男子学生向けの寮として使われていた大屋敷。コロナ禍で場所を選ばない働き方が増えたこともあり、テレワーク拠点としてリニューアルした。

さらに、都市圏の企業で新規事業創出のトレンドが起こっていることにも注目。

新規事業開発を得意とするアルファドライブ高知をパートナーに迎え、さまざまなプログラムを実施している。

そのひとつとして、これまでに「大屋敷キャンプ」と呼ばれるイベントを2期開催。

酒造や木工店、小売店など。地域の事業者がもつ経営課題をテーマに、商品開発や採用活動の提案など、さまざまな事業開発にチームで取り組む、合宿型のプログラムだ。

「自分の発想にないアイデアがもらえてよかった」「また相談に乗ってもらった」など、事業者さんの感触は上々。

「地域の人が何かしらのチャレンジをしてみようとか、1歩前に進んでみようと思えるような。大屋敷は、そういうきっかけが生まれる場所になればと思ってるんです」

町田さんには、印象に残っている出来事がある。

「町内に松ヶ丘という地域があるんですけど。住民の方が、地区を存続させるためにも農産品の加工場をつくりたいと、何年も前から声を上げて組織もつくっていたんです」

ただ、誰がやるのか、資金はどう調達するのか、本当にできるのか… 議論を重ねるうちに、「もう辞めようか」という話があがるほど、消極的なムードになっていた。

そんな状況を聞いた町田さん、一度、外部講師を交えたトークセッションを実施しませんか?と提案。

「中山間地域での農産物の商品化の実績がある先生をお呼びして、ほか地域での取り組み事例を発表していただいたんです。住民の方にはなるべく現地に来てねとお願いして」

「このイベントがいい感じにハマったといいますか、そのあとの質疑応答が大盛り上がりで、夜中まで続いて」

もう辞めようか、という雰囲気は一転し、「やっぱりやりたい」「どうしたらいいか」という意見が再燃。今年度末に加工場が立ち上がるまでの勢いになった。

「地域の人間だけではむずかしいことも多くて。やったことがないから、答えを持っている人がいないんですよね。夢物語じゃなく現実の成功例を聞けたことがすごくよくて」

「一歩踏み出してみよう、と思うきっかけになったんだと思うんです」

“新規事業開発” と聞くと、なにから始めればいいのか… という気分になるけれど、実は小さな「やりたい」を肯定するところから始まるのかもしれない。

どうすれば形になるだろう? 考えるきっかけさえあれば、あとはきっと自分たちで走っていける。

 

「大屋敷でやってることって、いわゆる新規事業開発っぽくはないですよね」

隣でうなずくのは、アルファドライブ高知の橋詰さん。町田さんとともに大屋敷の事業を育ててきたひとりだ。

高知で生まれ、長く高知で働いてきた橋詰さん。

「高知の人って、拒絶しないというか。どんな人にもウェルカムな気質なんですが、なかでも土佐町の方はフレンドリーですね。どこでもじゃないですが、玄関の鍵はわりとあいてる気がします(笑)」

玄関で挨拶をしたら、「ちょっとお茶のんでき」となることも。ただ、大屋敷のことはまだまだ認知されていないと感じている。

「町田さんとまちの事業者さんのもとを訪問しているんですけど、まだすべては回りきれていなくて。新しく入る人とも、挨拶から一緒に回りたいと思っています」

大屋敷キャンプなど、定期的に開催しているイベントもあるけれど、まだまだ稼働していない日が多い大屋敷。

新しく加わる人も、まちの人の悩み相談をもとに、どんな企画があるといいか考えていってほしい。

「とはいえ、まちの方も参加してみるまでどんな場所なのかよくわからないと思うんです。大屋敷キャンプに参加された事業者さんでも、キャンプで新規事業開発って何? みたいな。何回も説明はしているんですけど(笑)」

「参加者さんはやる気満々で来られるんです。いわゆる大企業に所属している方も多いので、事業開発やるぞー!って。でも事業を実行するのは事業者の方。受け身じゃなくて、新しいことに挑戦していくぞ、という気持ちが大切だということはお伝えしています」

大屋敷キャンプで出されたアイデアは、実現化に向けて動いているものもある。けれど、本当に利益になる事業は、橋詰さんいわく「1000個のうち3つくらい」。

すべてが実現するとも限らないけれど、それでも参加した事業者さんからは、前向きな感想が寄せられている。

「『参加してよかった』とか、『こんないいことがあるのを知らん人ばっかりやから、もっと知ってもろうて、もっと参加してもらいや』とか」

まずは小さな「参加してよかった」を体感してもらうこと。

新しく入る人自身も、まちの一員。3年後の独立に向けて、どんな企画があったらうれしいか、想像しながら企画を立てていってもらえたら、と橋詰さん。

「土曜日だけカフェやります、とかもいいと思うし、個人的には、もっとふらっと来れる場所になったらいいなと思っています。用はとくにないけど、お茶飲みにきたよ〜みたいな」

縁側で山を見ながら話す。そこでぽろりと溢れる本音のようなものもあると思う。

「まずは1年後、地域の事業者さんとまちの人に『大屋敷ってこんな場所なんだよ』と説明してもらえるようなところを目指したいですね」

 

最後に話を聞いたのは、地域おこし協力隊でデザイナーの仕事をしている高橋さん。

この秋で任期を終えたあとも、独立して土佐町に定住する予定。大屋敷から歩いてすぐの場所に住んでいるとのことで、駆けつけてくれた。

「大屋敷のことなら熟知してますし、協力隊のことならなんでも相談のってくれますよ」と、町田さん。「いやいや、そうでもないので薄めて表現してください」と高橋さん。

ふたりはプライベートでも仲がいいようで、公私ともに頼りになる存在だと思う。

京都生まれの高橋さん。東京で長らく広告デザイン会社に勤めたのち、土佐町へ。

「奥さんが土佐町の生まれで。子どもを育てるなら自然豊かなところがいいとは言われていたものの、僕は最初、無理や… と思って、ことごとく避けてきたんです。それが、35くらいのときに、チャレンジしてもいいかなって気持ちになって」

「東京っていう場所に、伸びしろを感じないというか。ここで成功したとしても、先が見えちゃってる、みたいな感覚になったんですよね」

もしかしたら、ここじゃないのかもしれない。そう直感したときに思い浮かんだのが土佐町だった。

移住してみて、いかがですか?

「やっぱり自然豊かで。冬の寒さには驚きましたけど(笑)。食はめちゃくちゃ質が上がりましたね。日常で食べるものがおいしい。食卓が豊かやなって思います」

「デザインで困っている人は多いし、予想以上に仕事はあるという印象です。そういう意味では伸びしろがあるけれど、模索中です。知らないことも多いですし、地域の方とのかかわりもまだまだ少なくて」

協力隊同士でも職場が離れていると、かかわることはほとんどなかった。つながるきっかけになったのが、大屋敷でおこなわれた「キャリアビジョン・ワークショップ」。

自分自身がどういう軸でキャリアを選択してきたのか、振り返りつつ将来を捉えなおすもので、なかには、これがきっかけで次の進路が決まり、協力隊を卒業した人もいた。

「個人的には、企画した橋詰さんとつながれたことが大きいです。卒業後の事業の相談に乗ってもらっていて。県内で似たことしている方を紹介してくれたり、一緒にアイデアを膨らませてくれたりするのが、心強いです」

新しくなにかをはじめるとき、不安や孤独はつきもの。

一緒に考えたり、人と人をつないだり。経験や知識より、まず大切なのは、目の前の人の役に立ちたいと思えるかどうか。世話焼きなくらいが、ちょうどいいのかもしれない。

「大屋敷は、仲間づくりのできる場所であってほしいと思います。新しく入る人はその真ん中におってほしいですね」と、隣で聞いていた町田さん。

「これまでなにかやってきました、という人より、これからなにかやっていきたいって人が合ってるんじゃないかな。地域の人と一緒に考えて、悩んで、チャレンジして。そんな姿が人を動かしていくと思います」

誰かの背中を押しているつもりが、自分が押されていた。そんな感覚の繰り返しで、自分の3年後が見えてくる。そんな時間になると思います。

大屋敷の広間を、縁側を、笑顔でいっぱいにしてください。

(2023/7/6 取材 阿部夏海)

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