求人 NEW

いつか大人になって
ここで育ってよかったと
思えるように

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

里山里海の素朴な景色がうつくしい、石川県・輪島市。

輪島塗など独自の歴史や文化、産業が根付く北陸のまちが、今回の舞台です。

「このまちには何もない」という子どもたちの声を、「このまちでも夢を描ける、挑戦できる」と前向きなものに変えたい。そんな思いから、2021年に高校魅力化プロジェクトが立ち上がりました。

生徒と地域をマッチングして地域課題を掘り下げる探究型学習に、日々の勉強や進路対策を支える学習センターの運営。

プロジェクトが始動してからの一年半、まちの外からやってきたコーディネーターや講師のみなさんが積極的に関わることで、多くの高校生が世界を広げてきました。

今回は、生徒の学びに伴走する学習センターのスタッフを募集します。

 

のと里山空港を出て、車で輪島市へ向かう。しばらく車を走らせると、少し霧がかった空気のなかに、奥能登の風景が見えてきた。

黒い瓦屋根の日本家屋が並ぶ里山に、川で休むサギ。30分ほどで到着した輪島市の中心部は、雨の日らしい情緒がある。

前回輪島に来たのは、2年前の真夏だった。

日本海に面した港には多くの漁船が並んでいて、地元の中高生が次々に海に飛び込んでいたっけ。田んぼが広がる道を進んだ先には立派なお寺があり、かつて輪島塗の行商人や船主、船乗りでにぎわっていたことを教えてもらった。

里山や里海の至るところに、このまちならではの歴史や産業、文化が根付いていたことを思い出す。

 

輪島高校近くの学習センターで、プロジェクト担当者の卯木(うのき)さんが迎えてくれた。

「2年前は、まだプロジェクトの企画段階でしたよね。その後、この学習センターがオープンして、講師やコーディネーターのみなさんが来てくれて、高校での地域学習のお手伝いもできるようになって。段階を追って形になっています」

2021年、輪島市が立ち上げた高校魅力化プロジェクト。高齢化にくわえて、若者の流出に歯止めがかからない状況を解決したいという思いがはじまりだった。

「輪島市には、輪島高校と門前(もんぜん)高校の2校がありますが、どちらもここ10年以上、定員割れが続いています。私の学生時代は、輪島高校は進学校、門前高校は全国屈指のソフトボール強豪校として人気がありました。でも今は、新たに特長をつくらなければ人が集まらないのが現状です」

高校進学か、卒業のタイミングで、このまちを出て行きたい。

そう考えている生徒は決して少なくない。

「うちの子もそうですけど、『輪島は何もない』と言う子や、魅力に気づいていない子がほとんどだと思うんです。学生時代から、輪島ってこんなすごいんだと気づいてもらえたら、大人になっても輪島愛を持ってもらえるんじゃないかなと思っていて」

「輪島でもいろんな経験ができる。輪島でも安心して勉強できる。夢が見つかれば実現にむけてサポートする大人がいる。そんな体制をつくりたくて、プロジェクトを進めています」

プロジェクトは、2つの柱がある。

1つ目は、生徒と地域のマッチング。専門コーディネーターが各高校に1人ずつ配置され、地域の方と関係性をつくりながら、学校と一緒に探究型授業を設計している。

「たとえば、今年から朝市英語ガイドが始まりました。輪島には日本三大朝市があるんですが、地元の方とも話しながらその魅力を探してオリジナルのマップをつくり、実際に外国人観光客を英語で案内しようという企画です」

きっと、初対面の外国の方と話すなんてはじめての機会。英語を使ったコミュニケーションも新鮮ですよね。

「企画してくれたコーディネーターは海外留学経験のある方で、その方の応援やサポートを受けながら一生懸命話していたみたいですよ。もっと充実したガイドができるように、来年度も取り組んでいく予定です」

ほかにも、企業の経営者だったコーディネーターは、地元信金の協力のもと、起業や創業について学ぶ講座をひらいている。

生徒は地域課題を解決するアイデアを事業計画に落とし込んで、金融のプロにアドバイスをもらったそう。

地元の文化や歴史との出会い、世界の人とのコミュニケーションに、起業。

自分の知っている世界の外にも、選択肢はたくさんある。生徒たちは身をもって体験をしているはずだ。

そして2つ目の柱である学習センターは、2022年5月に開設された。

輪島高校と門前高校は、車で30分ほど離れている。2校の生徒が通いやすいように、学習センターはそれぞれの学校のすぐ近くに、合計2施設オープンしていて、放課後から21時半まで、スタッフと一緒に机に向かうことができる。

「輪島市の学習センターは、進学塾ではありません。今はオンラインの学習支援も発達していますし、民間塾もあります。そのなかで学習センターは何を担うかと考えたとき、大人と話をしたり、勉強の仕方を教わったりしながら学べる場にしたいと思っていて」

「最初は生徒も『この人ら、誰?』という感じだったんですけど、スタッフの皆さんが学校に出向いて挨拶したり、会話したりするうちに、センターで学んでみたいと思ってくれるようになって。今は80名もの生徒が登録しています」

年々、具体的な形になっていくプロジェクト。高校もさらなる魅力化に取り組んでいて、県内の野球強豪校・星陵高校の野球部の元監督を、野球部のアドバイザーとして迎え入れた門前高校は、入学者が11人から28人、46人と伸びるなど、うれしい話題も増えている。

学習センターも、高まる需要に対して人手が足りていない状態。そこで今回は、学習センターのスタッフとして生徒の学びを支える人を募集したい。

「目指すのは、地元の子どもたちが18歳まで輪島で過ごしたいと思えることです。形になってきた一方で、輪島ではこれが学べる、という特色はまだこれからつくっていかないといけない段階だと思います」

「同じ目標に向かって、一緒に頑張ってくれる人に来てもらいたいです。やっぱり生徒が地域やセンターで楽しそうに過ごしているのを見ると、うれしいんですよね。自信をもって、全国に『これが今の輪島です!』と伝えたいです」

 

16時半、学習センターがオープンする。

この日は部活動の新人戦で、多くの生徒が金沢まで出かけているそう。それでもオープンとともに何人かの生徒がやってきた。

スタッフの皆さんは、週末に受験本番を控えている3年生の面接練習中。座って待っていると、男の子が話しかけてくれた。

得意科目や苦手科目のこと、部活動の思い出、大学で深く取り組んでみたいこと。

自分も、高校時代にこんなことを考えていたっけ。懐かしい気持ちになりながら、耳を傾ける。

しばらく経って、スタッフの皆さんがやってきた。男の子も、さっそく「このあいだ話したことなんですけど…」と楽しそうに話しかけている。

 

「面白かった本とか、最近はまっていることとか、とにかく話したい!と思っている高校生がいっぱいいるんです。教科書を持ってきて質問をするんですけど、それ自体はすぐに終わって、待っていましたとばかりに話し出す子もいて」

話を聞いたのは、学習センタースタッフの中川さん。

自衛隊や民間の学習塾など、いろいろな経験をしてきた方。

ご両親の地元である輪島市でいつか働きたい、と考えていたタイミングで学習センターの募集を知り、自分の経験を輪島の子に還元したいと応募したそう。

ここに来るまでは、塾で10年以上、全国の子どもたちを見てきた中川さん。

輪島の子どもたちの印象は、どうですか。

「本当にほかの地域の子どもたちと変わらない、一人の人間だなって思いました。あとは、ポテンシャルが高いなと」

ポテンシャルが高い?

「たとえば、質問を受けたときに『どういうふうに考えたの?』って僕から逆に質問するんです。その会話のなかで、自然と答えに気づけるというか。勉強に向かう時間や習慣がまだないだけで、賢い子たちなんだなとあらためて感じました」

学習センターは、基本的に自学自習のスタイル。生徒はそれぞれの宿題やテキストに取り組むなかで、わからないことを中川さんたちスタッフに質問している。

「生徒と話すなかで、二次関数が苦手な子が多いなとか、学習計画の立て方を学ぶ機会があったらいいだろうなとか、アイデアが浮かぶんです。だいたい月に1回のペースでイベントを企画して、一緒に克服しよう、学んでみようと呼びかけています」

日々の学習のサポートに加えて、受験に向けた対策ができるのも魅力の一つ。中川さんたちは、受験に向けた小論文の指導や、面接の練習、月に一度の個人面談など、生徒一人ひとりの進路に合わせてコミュニケーションをとっている。

「生徒の今の状況や気持ちを聞いて、じゃあ次どうしていこうか、というスタンスでやっています。日常会話ではそこまで深くは立ち入らないけど、自分のなかにストックしていたり、喋らなくても勉強している姿を見て、どういう子なのか考えながら接したり。とにかく話を聞くことを大切にしていますね」

そんな中川さんのことを信頼して、将来のことを相談しに来る生徒も少なくない。

“学校の先生を目指していたけど、多分もう無理だと思う”

“目標がなくて、勉強を頑張る意味が見つからない”

一人ひとりの話に耳を傾け、言葉をかけるなかで「もう一回頑張ってみる」と前を向いてくれた生徒もいる。

「一番のモチベーションは、生徒の変化が見れることなんですよね。極端な話、そこに僕が関わっていなくてもよくて。最近すごく頑張っているなとか、いろんな大人と関わっているなとか。そういう変化を見るのがうれしいんです」

地域の方およそ100人とつながりをつくってきたコーディネーターとも連携して、今後はより地域と生徒をつないでいきたいと考えている。

ただ、現在学習センターに勤めているのは中川さんを含めて2名。コーディネーターの2名も手伝いに来てくれているものの、人手不足は否めない。

「今回来てくださる方がいたら、一緒にやりたいことはたくさんあります。僕らは勉強ができる子を増やしたいわけではなくて、輪島で育ってよかったなって思える子を増やしたいんです」

「仕事という感覚はあまりないんですよね。それよりも、輪島の子たちのために何かしたいなという感覚。こういうことしてあげたいな、あれをやったらいいかなって考えることが好きで。だから今、すごく楽しいです」

取材が一段落して、「自分は、ちょっと勉強を教えられる、話しかけやすい近所のおじさんみたいな存在になりたいかな」と笑っていた中川さん。そんな姿勢が、生徒に信頼されているのだろうな。

 

輪島高校の先生は、中川さんはじめスタッフの皆さんを「世界と生徒をつなげてくれる大人」と話していました。

このまちでも学べる、体験できる。

自分のとなりで伴走してくれる大人を、このまちの高校生は楽しみに待っています。

(2023/11/10 取材 遠藤真利奈)

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事