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都市と森をつなぐ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

森のなかを歩くと、不思議と穏やかな気持ちになる。

普段働くまちから少し遠出して、自然に触れたいと思うのは人間としてごく当たり前のことに感じます。

日々森に関わり続ける。そんな仕事を紹介します。

一般社団法人more treesは、「都市と森をつなぐ」をキーワードに、森とのさまざまな関わり方を提案している団体です。

国内外で取り組む森づくりのプロジェクトや、カーボン・オフセットの提案、イベントやセミナー運営、国産材を活かした商品開発など。

森をもっと身近に感じてもらいたい、そして森林の課題や環境問題の現状を広く伝え、前向きにアクションを起こしていこうと活動しています。

今回募集するのは、「渉外」と「PR」それぞれを担う正職員。

渉外は、法人営業のような役割。森づくりのプロジェクトに取り組む企業を、植林地域とつないでいく仕事です。専門家とともに植林計画を考えていくので、林学を学んできた人や、近しい実務経験がある人が好ましいです。

PRは、寄付者向けイベントの企画運営のほか、SNSや広告等を活用して、人と森とのタッチポイントを増やしていく仕事です。

あわせて、事務のアルバイトスタッフも募集中。

学んできた知識を仕事で存分に生かしたい人、なにより自然や森が大好きで、本気でよりよい未来をつくりたいと思う人。ぜひ読み進めてみてください。

 

東京オリンピックの舞台にもなった国立競技場周辺。

JR千駄ヶ谷駅を出て、東京体育館の周りを囲む並木道を歩いて5分ほど。マンションの1階にmore treesのオフィスがある。

中に入ると、さまざまな木製のプロダクトが並ぶ、木の温もりを感じる空間。ペレットを原料に燃えるストーブが暖かい。

大きなテーブルを囲んで、まず話を聞いたのは、法人設立時から事務局長を務める水谷さん。

前職ではインドネシアで植林に取り組むNPOで働き、計20年近く環境分野で仕事をしてきた。わかりやすく、親しみやすく話を進めてくれる方。

more treesは、2007年に音楽家の坂本龍一さんが立ち上げた団体。坂本さんが他界したのちは、外部パートナーとして関わりのあった建築家の隈研吾さんが代表を務めている。水谷さんは、裏方のトップのような立ち位置だそう。

主な事業は、植林活動とその後のメンテナンス。北は北海道、南は九州までの国内20ヶ所と、インドネシアとフィリピンの2ヶ国で、各地域の林業事業者と連携して動いている。

ほかにも、企業が排出したCO2量と森林の吸収量をトレードする「カーボン・オフセット」のサービスや、国産材を有効活用したプロダクトの開発・販売など、森に関わる事業に広く取り組んできた。

長年活動してきたなかでも、ここ数年はとくに社会の関心の高まりを感じているという。

「CO2などの削減を目指す『カーボンニュートラル』。これは長く言われてきたことですが、加えてこの数年で、『ネイチャーポジティブ』という概念が生まれています」

ネイチャーポジティブは、生物多様性の損失を止め、回復を進めていくための国際レベルでの枠組み。

2030年までに世界の30%の陸と海を保護・保全していく目標を掲げている。

「CO2を減らし、生態系も回復させる。これが今、世界の2大目標と言われています。国も企業もそこを意識して、経営課題に組み込みつつある」

「自然にダメージを与え続けるビジネスモデルは続いていかない、という認識が浸透してきています」

たとえば飲料業界でいうと、国内の水が枯渇したり汚染されたりしてしまったら、商売が成り立たなくなる。

天候不良で綿が採れなくなったら、アパレル業界にも支障が出る。魚が獲れなくなったら、食品業界はどうなってしまうだろう。

普段の生活ではあまり意識しないけれど、自然に依拠するビジネスは、世界のGDPの半分以上を占めているという。

イメージ向上やCSRとしてではなく、もう一歩先の現実的な経営課題として、環境問題に向き合う企業が増えてきている。

「植林に取り組みたいという企業さんからのお問い合わせも増えています。その方々と一緒に森づくりをより強化していくために、新たなメンバーを募集することにしました」

渉外担当が主に取り組んでいくのが、企業の寄付をもとに行う「多様性のある森づくり」プロジェクト。

現在、日本の森林の4分の1は、戦後大量に植林したスギとヒノキで構成されている。しかし、本来は各地域の森はもっと多種多様だったはず。

スギやヒノキの伐採跡地で、別の樹種が適していると判断した場所に、気候風土に適した広葉樹を植えていく。

5年前、1社とはじめたこのプロジェクトは、現在20社ほどにまで広がった。

渉外の仕事は、協賛企業と植林する地域をつなげること。営業としての企画提案や資金調達だけでなく、現地に赴いての記念植樹イベントや企業研修などのアテンドも担う。

そのほか、森林についての専門的な知識が求められる場面も。

「どんな木をどれくらいの密度で植えるのが適しているか、獣害対策のネットはどう張るべきか。地域の森林組合や林業事業者と一緒にデザインします。各地の森林事業の全体計画にも関わることになります」

その後のメンテナンスの状況確認、また年に数回、大学教授など専門家との生育調査も仕事に含まれる。

法人営業としての企業とのやりとりと、専門知識が必要な現場の仕事。

どちらか一方ではなく、両軸で動いていく仕事は、さまざまなことが求められるむずかしさがありそうだ。

少数精鋭の組織のため、造林学や森林生態学などを学んだ人や、近い分野の実務経験がある人が即戦力として入社してくれたらうれしい。

「林学を学んだ方って、卒業後は研究者になるか、公務員になって森林部門に所属するケースが多くて。それが叶わない場合、まったく別業種に行ってしまうこともある。その領域で引き続きスキルを発揮できないって、すごくもったいないことだと思っていて」

「現地では最低限の知識があるだけで、よりハイレベルな議論ができる。蓄積してきたものを、ここで日々発揮しまくってほしいと思っています」

 

現在、渉外として働くのが、入社4年目の岸さん。周りの空気を明るくするような雰囲気を持った方。

「専門家の先生ともコミュニケーションをとるし、知識がまったくない企業の担当者の方ともお話する。翻訳家みたいな仕事だなと思うこともありますね」

以前は建築資材のメーカーで営業として勤務。

小学生のころに観たテレビで地球温暖化の問題を知り、森林についてずっと興味を持っていたそう。森林に関わる仕事がしたいという気持ちが強くなり、more treesに転職を決めた。

「『都市と森をつなぐ』っていう言葉にしっくり来て。自分のように潜在的に森が好きだったり、興味を持ったりしている人って結構いると思うんです。なかなか実際のアプローチができない自分のような人を、もっと巻き込みたいと思いました」

当時、森林についての専門知識はなかったという岸さん。専門書や社内勉強会などで、知識を身につけていった。

大変さは感じませんでしたか?

「まったくありませんでした。もともとすごく興味があって入っているので、今も図鑑を片手に森を歩くのが楽しくてしょうがないんです」

普段はどんな働き方をしているんでしょう。

「基本はデスクワークで、企業さんや現地とのやりとり。春と秋は植樹シーズンなので、企業さんのご案内で、毎週のように全国に出張しています。どちらもあるのが、自分にとってはいいバランスですね」

「心がけているのは、企業と地域のいいマッチングができているかどうか。これは常に意識するようにしています」

その企業と関連がある県での植林を提案したり、健康増進の取り組みをしている会社だったら、登山が有名なエリアで研修も合わせて実施したり。

渉外が企業と地域としっかりつながることで、金銭的な支援だけでなく、関係人口としての交流を生み出すきっかけをつくることができる。

「地域があってこそ成り立つ活動なので、地域に寄り添うことを忘れないように。企業さんへの提案も、地域を第一に考えたものでありたいと思っています」

岸さんが昨年10回も訪れたという、奈良県の天川村。「訪れたら毎回ハグする人がいます」と笑って教えてくれた。

すると、隣で聞いていた水谷さん。

「地域を訪れて『おかえり』って言ってもらえるのが、一番痺れるんですよ。認めていただけた証だなって」

 

企業と地域と、狭く深くつながる渉外に対して、より広いつながりを生み出すのがPR。

話してくれたのは、事務局次長の嶋本さん。

システムのコンサルタントや小売業などを経て、前回の日本仕事百貨の募集をきっかけに7年前に入社した。バックオフィス全般と、インドネシアのプロジェクトを任されている。

「民間企業から来るとNPO業界の働き方ってわからないじゃないですか。でも実際に入ってみたら、事業を回していくための日々の業務は何も変わらないんだなと感じました」

「仕事で大切にすべきことと、自分の人生観や価値観が大きく離れていない。長く働き続けられている理由はそれなのかなと思います」

嶋本さんと業務委託のスタッフでPRを担っているものの、サイトやSNSの更新、メルマガの発行など、最低限の業務しか回せていないのが現状。

より効果的な発信、メディアへのアプローチやイベントの企画など、専任として力を発揮してくれる人を求めている。

またここ数年、企業だけではなく、個人からの寄付も伸びているそう。

今後は、寄付者が実際に現地で植樹できるイベントや、森の現状について学ぶセミナーなども実施したい。

顔の見える関係をつくっていければ、より自分ごととして森を捉えて、この活動を広めてもらえるはず。

「森林や林業の課題を知って、自分に何ができるかを考える機会って、あまり提供されていないと思うので。まずは幅広い方とのタッチポイントを増やしていきたいです」

著名な坂本さんや隈さんをきっかけに、団体のことを知ってくれる人もいる。気軽に参加できるイベントからはじめ、より興味のある人はディープな関わりができるような流れをつくっていけるといい。

「森林保全のNPOで働いていると話すと、遠い世界のように思われることもあるんです。けれど、日本って木がすごく身近な国だし、生活のなかにも木製品が溢れている。誰にとっても、身近な問題だと思うんです」

「だから一線を引くことなく、社会人も学生も、老いも若きも。どなたでも関心を持っていただきたい。自分もできるところからやっていきたい、と思ってもらえるアプローチをしたいですね」

 

環境問題という、複雑で大きな課題。嶋本さんも「一気に解決できる方法は存在しない」と話していました。

けれど、取材を終えて一番印象に残ったのは、more treesのみなさんのポジティブな雰囲気。

自分のアクションで未来が少しずつ変わっていく。そんな実感を持って前に進むことができる仕事なのだと感じました。

(2023/12/4取材 増田早紀)

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