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ryokuensha代表の大山さんは、中学生のころからアクアリウムが趣味でした。
「とくに僕が魅了されたのは、ネイチャーアクアリウム。天野尚さんって方が提唱された、生態系の概念を水槽の中に再現しようとする世界観で」
「水槽にはふちがなく、魚の生息環境がそのまま切り取られた感覚。それがすごく衝撃的でした」
ryokuenshaは、オフィスや住まいなどのグリーンデザインを手がけている会社。最近では、宿泊施設のプロデュースなども行なっています。
リアリティあふれる自然の美しさを追求し、唯一無二のポジションを築いてきました。
今回募集するのは、プランナー。
本人の希望や適性にあわせて、異なるふたつの働き方があります。
ひとつは営業的ポジション。クライアントのヒアリングから始まり、空間のグリーンデザインを提案、庭師や内装会社といった協力業者と連携し、プロジェクトを円滑に進めていきます。
もうひとつは、竣工後のクオリティコントロール。空間デザインを維持するため、協力業者と連携をとって剪定や入れ替えなどの作業をしていきます。
緑や自然に興味がある人にとっては、さまざまな経験をして、視野を広げることができる仕事だと思います。
渋谷スクランブル交差点から公園通りへ。
そのままNHKホール方面に進んでいくと、ryokuenshaのオフィスに到着する。
天井から伸びる蔓、水面から飛び出す木々、苔の生えた壁は岩肌が露になっている。なんだか異世界のような空間に、思わず足が止まる。
植物の種類は豊富な一方で、この植物は本物? フェイク? よく見てみないと違いが分からない。
どんなことを意識して、空間を演出しているんだろう。
奥の階段をあがって、打ち合わせスペースへ移動。
「僕らがデザインするときには、自然の美しさを意識しています」
教えてくれたのは、代表の大山さん。
手がけた空間をさっそく見せてもらう。
たとえば、と挙げてもらったのは藤棚をモチーフにしたコミュニケーションスペース。
よくありそうなオフィスの一角だけど、ここだけ陽の光が差し込んでいるような、まるで野外にいるような感じがある。
ここはオープンイノベーションの場。話す人たちが自然のなかにいるような気持ちで、のびのびと発想してほしいという思いからこのデザインが生まれた。
「僕らが意識しているのは、自然をそのまま切り取ったような空間をつくること。ありのままの自然の美しさを演出したいと思っているんです」
新卒で緑化メーカーに入り、2016年に株式会社緑演舎を立ち上げた大山さん。
オフィスや商業施設、住宅にインテリアなど、幅広く手がけてきた。
最近ではコロナ禍になって、在宅ワークする人が増加。オフィスに行く必要のない人が増えたことで、企業はオフィスで働く社員に何を提供できるのか、考え直す必要が出てきた。
「社員のコミュニケーションが育まれやすい空間とか、お客さんを招く空間とか。オフィスにそういう機能が求められるなかで、どういう環境がいいんだろうってなったとき、グリーンの需要があがったんです」
気持ちよくコミュニケーションをとりたいから、公園のような環境にしたい。お客さんと静かな空間で落ち着いて話したいから、茶室のようなスペースもほしい、など。
「自然の美しさを見たら癒されるじゃないですか。古来、人間は猿であって自然のなかで暮らしていた。本能的に緑を見ることで癒されるわけです」
緑を通して、利用する人に癒しやインスピレーションをもたらす。
コロナ禍でキャンプブームが起きたことからも、緑や自然の効果について再認識して、原点回帰の方向に進んだ人が増えたように思う。
それを都市の空間でも体現するためには、自然のリアリティさが欠かせない。
実は、ryokuenshaがつくり出す空間の85%ほどはフェイクの植物を使用しているという。
理由は雄大な自然を表現・維持するため。植物単品で見れば、本物との違いは見えてくるので、フェイクを使用するときは、必ず生の植物も織り交ぜてつくりあげていく。
昨年末には、会社をリブランディング。
緑演舎をローマ字表記した「ryokuensha」から頭文字を取って、ブランド名を「res」に。
「landscaping & nature scape design」を領域とする会社だと再定義した。
きっかけの一つになったのは、最近依頼のあったあるマンションの案件。
緑が重要なプロジェクトで、日本の気候を理解し、植物を集めて、そこに馴染む森を生み出すために、ryokuenshaに声がかかった。
デンマークの建築チームが建物をデザインしていて、積み木を組んだような形の建物。いたるところに段差が生まれ、そこに緑を当てはめて森を再現するようなイメージだ。
「創業当初から、日本を代表するクリエイターになりたい、そして海外でも仕事をしたいという思いが漠然とあって」
「一昨年ぐらいから、海外のクリエイターを呼んできてプロジェクトを進める機会がすごく増えているんですよね。よりグローバルを意識して、リブランディングをする必要があると思いました」
昨年は、日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESINART TOKYO 2023」の会場でグリーンの演出を担当。宿泊施設のプロデュース、浴室×緑化をコンセプトにした「aq.」や、「sekitei 石庭」など、新しいアプローチも増えてきた。
案件の数や規模も大きくなり、事業が拡大するなか、新しいメンバーを募りたい。
「どちらの仕事も、コミュニケーション能力が高い人がいいと思っています。協力業者さんと会話しながら、思い描いているものを現実の形にしてもらわないといけないので」
建築の企画から関わる案件もある。建築士の資格や経験があれば、ryokuenshaで建築の設計からグリーンデザインまで一気通貫で取り組めて、おもしろそう。英語を話せるなら、海外案件にも積極的に関わってもらいたい。
次に話を聞いたのは、創業メンバーのひとりである槇田さん。
もともとグリーンショップで販売の仕事をしていて、いまはディレクターとして働いている。
ryokuenshaは、少数精鋭のチーム。
主に大山さんがデザインをして、それを社内のメンバーが形にしていく。打ち合わせ、プレゼンテーションから、施工、メンテナンスとバトンが渡されていく。
すでにプロジェクトが動いているところに加わることもあれば、直接施主から相談を受けて、ryokuenshaがチームを組んで動いていくパターンも。
見せてくれたのは、オフィスの平面図。依頼をもらった当初、図面部分は真っ白だったそう。
「わたしたちはグリーンのプロではあるけれど、照明やオフィスづくりのプロではありません。オフィス全体のプロジェクトになると、オフィスデザイナーさんとか、ほかの領域のプロとチームを組んでプレゼンに参加することも多いんです」
「アイデアを伝えるときは、平面図だけだとわかりづらいと思うので、写真を添えたり、場合によってはパースを入れたり。イメージスケッチを加えることもありますね」
デザインが決まると、施工に移る。照明や内装など、さまざまな業者や職人さんとのやりとりが必要になるため、その調整はプランナーの大きな仕事になる。
植物に関する知識や自然を扱う仕事をしていた人だと、馴染みやすいと思う。
「事務所にずっといることはないですね。1週間の半分ぐらいは出先にいる人が多いと思います。現場が始まると2週間くらいオフィスに来ない日もあったりして。材料の仕入れも自分たちで行きます」
「リモートで働ける環境ではありつつ、フルリモートでは難しい業態なんです。対面の打ち合わせでイメージを伝えるほうが齟齬も少ないし、結果として進みが早くなるので」
そのほかにも、日々新しい可能性を模索すべく、植物のサンプルを取り寄せて、みんなで話し合う機会もある。
「人好きで、いろんなことに興味がある人だといいのかなって。自分の仕事はここまでって決めずに、協力して進めていくのが大切な仕事だと思います」
グリーンのデザインは基本的に大山さんが担当しつつ、槇田さんがサポートで入ることもある。
境界を越えた働き方をすることが多いryokuensha。プランナーの川上さんもそのひとりだ。
昨年の2月に入社して、クオリティコントロールと工事部門、どちらも担当している。
「もともと、盆栽のリースをしている会社で5年間働いていました。お手入れもしていたんですけど、僕が一番魅力に感じたのは、盆栽を通して空間演出をすること」
より多方面で経験を積みたいと思い、仕事を探していたところ、日本仕事百貨でryokuenshaの求人を見つけて転職した。
「たとえば、このオフィスの壁には下地があって、場所によって素材も違う。そのうえに苔を付けて、シダ植物を生やして。空間のつくり方を学べて楽しいです」
クオリティコントロールの仕事は、これまでつくってきた空間を維持管理していく役割。
メンテナンスで関わっている案件は約150。室内の物件は月に2回ほど、室外は半年に1、2回ほどのペースで作業を行う。
「実際に手を動かすのは協力業者さんなので、僕が直接現場に行けないときは、必ず写真を送ってもらって状態を確認しています」
「植物は生き物なので、環境に合わなくなって、状態が悪くなってしまうこともある。7年ぐらいメンテナンスしているお客さまも多くいて、デザインのバランスが崩れてしまったりしている場合は、植物を入れ替えることもあります」
すべての空間は一点もの。植物の配置一つひとつに意図があるため、丁寧にイメージを共有して作業してもらう必要がある。
「デザインに関わる場合は、大山さんや槇田さんの確認も入るので、僕の指示でうまく業者さんに伝わらずに作業が進んでしまった場合、全部やり直しになってしまう可能性もあって。それって業者さんにとってかなり負担じゃないですか」
「だから、伝えるときは明確にわかるように、写真のこの部分ですってマークをつけたり、電話で直接話したり。指示の伝え方にはかなり気を遣っています」
はじめはクオリティコントロールの仕事から覚えていき、4か月目以降は工事部門も担当している川上さん。
とくに印象に残っているのは、初めて工事部門で一貫して関わった現場。植物はどれくらい発注しておけばいいか、右も左もわからないなか、まわりに相談しながら進めていった。
「はじめに藤の蔓を乾燥させたものを下地に固定させるんですけど、RCの躯体だけだった空間が、日を追うごとにどんどん変わっていくんです」
「工事自体は3週間ほどで終わりました。出来上がった空間を見たときに、いろいろ手配してきたっていう背景もあるからなんでしょうけど、すごく感動して。ここを使う人たちのことを考えたとき、もっとうれしくなりました」
施主の意図を汲み取って、みんなで空間を演出していく。
関わる人が多いからこそ、調整は大変だと思うけれど、自分の仕事の結果が身に見えてわかるのは、大きなやりがいになると思いました。
(2024/03/15 取材 杉本丞)