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小さな志をつないでいく

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ひとつの課題を解決したいとき、うまくいかない状況をすこしでも良くしたいとき、成功の鍵を握るのはどんな存在でしょうか。

「現場で輝いてるプレイヤーたちは、たくさんいる。そこで大切になるのが、後押しして支える人です」

ニュースでも日々耳にする「環境問題」。地域で地道な取り組みを重ねる人たちに寄り添い、サポートしながら、大きな仕組みを活かせるように橋渡しをしていく仕事があります。

舞台は中国地方の最大都市、広島。まちの中心部、路面電車が走る大通りに面したビルの中に「中国環境パートナーシップオフィス」、通称「EPO(エポ)ちゅうごく」のオフィスがあります。

環境省がそれぞれの地域の活動と、政府の環境政策をつなぐために設置し、全国に8カ所あるEPO。EPOちゅうごくは中国地方の5つの県にまたがって活動している団体です。

中国地方で環境活動をおこなっている、さまざまな団体のチラシやパンフレットが並ぶオフィス。いま現役で働いている3人に話を聞きました。

 

まずは事務局長の松原さんが、EPOちゅうごくの成り立ちについて話してくれた。

そもそもEPOの役割は、どんなものなんでしょうか。

「環境問題を解決しようと思ったら、自治体や地域だけじゃなくて、みんなで協働しないと解決できないよね、と。たとえば中国山地の問題を解決するためには、広島も島根も鳥取もみんな関わらにゃいけん。わたしたちはつなぎ役なんです」

「EPOちゅうごく」事業がはじまってから約20年。時期によって関わる人や団体が変化しながらも、この地域に少しずつ根を張ってきた。

たとえば、ホームページでの情報収集や発信、セミナーやワークショップの開催、相談窓口など。

「環境省の看板を使いながら、協働プロジェクトを伴走支援しています」

多岐にわたる仕事内容を、3人で分担しながら進めている。それぞれがEPOの仕事に興味を持ったきっかけもさまざまだ。

たとえば松原さんは、もともと20代のころ環境問題に関わるNPOで働いていた。

「僕らの世代は学生時代に環境問題がクローズアップされて、環境に意識が向いていたんです。当時は自然学校とか、環境教育とかをやってました」

「地球を大事にしたい、自然の豊かさを子どもやいろんな人と分かち合いたいと思ってやっていたけど、その活動だけでは少しこう… 問題解決には限界があった、というか」

現場の活動で感じた「足りないもの」の先に、EPOがあった。

「『みんなでもっとうまくやったら、解決できるんじゃないの』って、いろんな社会の問題に共通して思うんです。だからこそEPOがやってるパートナーシップっていうのは、環境だけじゃなくあらゆる問題もつなげて、社会をみんなでより良くしていけるんじゃないかなって」

みんなでうまくやる。

口で言うのは簡単だけど、実際はとても地道なコミュニケーションの積み重ねだと思う。

 

さまざまな関係者が協働でおこなうプロジェクトに数多く伴走してきた岩見さんは、EPOでの仕事は以前やっていた都市計画の仕事とも通ずるところがある、と教えてくれた。

「合意形成をしていく仕事です。環境っていう敷物がちょっと変わっただけで、やってることは同じ。だから環境分野の仕事をやっている意識は、むしろないかもしれない」

「みんなで知恵を出し合って、ああでもないこうでもないって言いながら、手を動かす。それを誰かが一人で主導したら、またやっかみとかがあって。そのときに誰か第三者があいだにちゃんと入って、公平な目線で話を始めないといけないんです」

役場や企業が書面上で使う言葉と、地元で活動する団体の人が意見を伝える言葉は、同じことを言っていても噛み合わないことがある。

対立してうまく話せないこともあるため、誰かがあいだに入って通訳したり、話し合いの場づくりをしたりすることで、前に進むこともある。

たとえば、岡山県倉敷市の水島コンビナートの事例。もともと大気汚染公害があった工業地帯で、いまは環境に配慮したまちづくりが進んでいる。

公害問題をめぐって、かつては対立していた人たち。EPOちゅうごくとして、企業・住民・行政・専門家など、これまでおなじテーブルで話す機会が少なかった人たちを巻き込んで、話し合いの場をコーディネートすることに。

「関係者だけでやったらダメなんですよね。大学の先生、企業のOBさん、地域で環境のことを考えている団体さん、小学校の先生や、関係する自治会も…。声をかけて集まってくると、だんだん場がニュートラルになって、新しい関係性が生まれることがあるんです」

関わり始めて10年が経ったころ、住民の工場見学がはじまるなど、まちに変化が起こってきた。

「基本、黒子に徹するんです。変化を起こす仕掛けを『ひっそり』サポートするみたいな」

「意識していることは、いつまでもそこに関わり続けられるわけではないということ。ゆくゆくは地元の人たちが主体的に問題に取り組んでいくことが一番だと思っています。なので、我々がいなくなった後のことも見据えて活動しています」

そう言いながら、「近くに行ったら、元気?ってちょっと声をかけにいくんだけどね」と笑う岩見さん。

EPOが事業として関わる期間が終わっても、プロジェクトが止まってしまわないように、あくまで仕事では裏方を貫く。

そうやって支えているからこそ、地元の人たちからの信頼は大きい。プロジェクトが完了して仕事として関わることはなくなっても、地域の人たちと個人的に仲良くなることもあるんだそう。

 

情報集約と発信を主に担当している西村さんも、EPOの仕事のかたわら、過去に関わったプロジェクトに個人的に長く関わり続けている。

環境に興味を持ったのは、小さいころの原体験が大きく影響している。

「わたし、ナマズが大好きで。それがずっと根底にあるんです。で、アマゾン川はナマズの聖地なんですよ。世界中のナマズの種類の大半がアマゾンにいるんです。数年前に2週間お休みをとって、夢だったアマゾンに行ってきました」

幼いときの西村さんも、近所の川で生き物をとって遊んでいた。

広島は川が6つも流れる「川のまち」。都市でありながら自然が身近にある。

「ナマズは子どものころから好きで、家の前の川で一番大きな生き物でした。ナマズを獲ったらヒーローです。そんなナマズが減ってきたっていうのを体感してるから、守りたくて。ナマズって食物連鎖の頂点にいるから、環境全体が良くない方向に進んでいることを感じて」

川の環境が変わってしまう様子を目の当たりにしてきた西村さん。今の子どもたちが自然環境と離れてしまっていることに、問題意識を持っている。

「学校の教育方針もあるし、リスク回避で子どもたちを危ないところに連れていっちゃいけないっていうのもあって、山もダメ、海もダメ、川もダメ。自然を知らないから、何が起こってるかわからない子どもが増えている。それで、子どもたちと自然を橋渡しする活動がしたいと思いました」

たとえば数年前に担当したのが、広島県北西部にある三段峡での「Green Gift」プロジェクト。大手企業と地域のNPOが協働し、子どもたちへの環境学習を始めたときに、企業と地域のあいだをつなぐ役割を担った。

「プロジェクトが始まってすぐにコロナ禍になったんですが、オンラインでも続けたら子どもたちに変化が見られたんですよ。そこで一度プロジェクトは終わったんですが、それを基盤に今は現場に子どもたちを呼んで、いろんな環境プログラムを子どもが企画をして、子どもが子どもに環境保全について教えるかたちになりました」

最初はEPOの仕事として関わったプロジェクトだったけれど、休みが合うときに現場のスタッフとしてプログラムに参加するなど、今も関わりは続いている。

全国にあるEPOの拠点のなかでも、EPOちゅうごくにはどんな特色があるんだろう。

「中国地方には、小さな点の活動がたくさんあるイメージです。小さくても皆さんそれぞれすごい志を持っていて、活動や担い手を大切に育てていく風土があるんです」

「EPOちゅうごくは5つの県をまんべんなく回りながら、つながりたいというニーズがある点と点をつないでいく。大きなものをガツンと動かすのではなくて、あくまで地道に寄り添うことから、少しずつ広がっていくんですよね」

志をもった人たちをつなげていくEPOちゅうごくの仕事。それは現場の人たちをつなぐだけではなく、環境省のおこなう大きな取り組みと現場をつなぐ役割でもある。それが仕事のおもしろさになっているのだと、岩見さんは話す。

「環境省側からも、このやり方をどう思うかとか、もっと改善点があるんだったら言ってくれ、って聞かれるんです。そういうやりとりのなかで、数年かけてやりきった事業が、集約されたかたちでアウトプットされる。一人では絶対できないことが、できるのは気持ちいいですね」

横から松原さんも、「環境省とか政策決定者に『カバチたれる』ことができるんですよね(笑)」とつけ加える。「カバチたれ」は中国地方の方言で「文句を言うこと」という意味だそう。

もちろん、ただの文句ではなくて、環境省とも現場の人たちとも対等な信頼関係を築いた上で、必要なことを伝えていく。

どんな人がこの仕事に向いていると思いますか。

「『人の話が聞ける人』っていうのが絶対必須だと思います。あくまで相手の話を一旦受け入れて、反論するときも、イエスバットで返せる人。『なるほど、そういう考えもあるんだね。でもこういうときはどう思う?』って」

新しい人が加わったら、その人の得意不得意に応じて、まずは岩見さんや西村さんと一緒に協働プロジェクトや情報発信などをおこなっていくことになる。経験を積んだら、プロジェクトを主担当していく。

さまざまな仕事があるなかで、各々担当しているものもあれば、イベントごとのように全員で取り組むものもある。

ほかの人の仕事だと割り切るのではなく、EPOの一員としてみんなで目の前の業務を進める感覚が大切。

 

松原さんは、ほかのEPOともつながる全国ネットワークに入るおもしろさについても、こんなふうに言っていた。

「僕自身、EPOの事業に携わっている人たちのおかげで、続けられているっていうのはあると思う。EPOの担い手だけじゃなくて、事業でいろんな人に関わるなかで、いろんな面白い人や、自分が目指したいリスペクトできる人に出会えるから」

一緒に仕事をしていく仲間が全国にいる環境で、地域にいる志をもった仲間たちを見つけ、つないでいく。

すこしでもわくわくしたら、飛び込んでみませんか。

(2024/5/15 取材 瀬戸麻由)

全国各地で地域の環境保全活動を支援している地方環境パートナーシップオフEPOそれらを統括しているのが地球環境パートナーシッププラザGEOC」です。なぜEPOが各地域に必要とされているのか。GEOCから見るEPOについて、コラムで紹介しています。

 

6月25日(火)には、GEOCにて出張しごとバーを開催します。この仕事をしてみたいと思った人も、GEOCやEPOの活動に興味があるという人も。

実際に会って、話ができる機会です。お待ちしています。

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