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ずっと人間が求めている灯り

家具であれ、服であれ。欲しいものは、なんでも買えるわけではない。

衝動的に新しいものを買うのではなく、それって本当に必要なの?と、ちょっとだけ立ち止まってみる。

壊れたら修理をして、使える限りものの寿命をまっとうする。今あるものを長く大切に使うことはとても豊かな体験なのだと思います。

株式会社エーオーアイ・ジャパンは、もともと水中ライトの開発からスタートした会社です。コードレス照明の技術を生かして、持ち運びできる灯りのプロダクトをつくっています。

そのブランドが、「アンビエンテック」。

ブランドが立ち上がって15年。今では全13コレクション、世界約30ヵ国との取引実績を持っています。

時代に流されないデザイン、長く使えて環境に負荷のない素材、壊れても修理できる仕組み。

この会社のものづくりは、いつもそんな「本質」に向かう問いに導かれてきました。

今回は、来年六本木で新しくオープンするショールーム兼直営店で、接客や営業実務、PRなど総合的に関わるスタッフを募集します。

詳細情報のリリースはまだ先になるとのこと。準備が整う来年の春頃までは、横浜のオフィス兼ショールームでOJTを受けることになります。

日々使っている家具、身のまわりの道具に愛着やこだわりを持つ人に、ぜひ知ってほしい仕事です。

 

アンビエンテックのオフィスは、JR横浜駅から歩いて5分ほど。遊歩道やビルの中を通り抜けて、到着した。

横浜のショールームは2年前にオープン。普段は予約制で、一般のお客さんからインテリアデザイナーなど、さまざまなお客さんが訪れるという。

広々とした空間に、整然と照明が並ぶ。

ショールームの隣には、ガラスパーテーションで仕切られたオフィスがあって開放的。

代表の久野(くの)さんが迎えてくれた。

前回の取材から、4年ぶり。そのときは、しごとバーにも出演してもらっていた。

「4年前のしごとバーも、ちょうどこのオフィスから出演しましたね。あれから、会社としてさまざまなことを経験してきました」

もともとは、カメラメーカーのOEMが事業の中心。デジカメの衰退とともに、水中撮影で使うライトの開発をはじめた。

開発された製品は、徹底した防水機能や、電池を消費しても光量が落ちないなどの高い性能を持っていた。

それらコードレス照明の技術を応用してスタートしたのが、アンビエンテックのプロダクト。

シーリングライトのように部屋全体を照らすのではなく、持ち運びが可能なコードレス照明は、光で空間を自由に演出することができる。

「環境を選ばずに使えるという長所を活かして、販路を広げていこうと。海外の展示会へも精力的に参加しました」

この4年間で、海外の取引先はヨーロッパやアジアを中心に3倍に増えた。

さらなる商品開発も進み、5種類の新作を発表。

そのうちの一つとして紹介してくれたのが、「TURN+(ターンプラス)」。

手元を照らすタスクランプとして2019年に発売された「TURN(ターン)」に対して、空間全体を灯すアンビエントランプとして、「TURN+(ターンプラス)」がつくられた。

「金属のかたまりを削り出したパーツでつくられているので、どの部分にも一切のつなぎ目がないんです。職人さんが磨き上げたクリスタルガラスは、無垢で透き通ったものにするために、相当の労力をかけて実現しています」

朝焼けのような、やわらかな光。

灯りは、食事を楽しむ光、部屋に明るさを足す光などと明度を調整することができる。

さらに屋外やバスルームでも使用できるよう防水性能を備えていて、点灯時間は最長500時間。

壊れたときに修理できる仕組みも充実しているので、一生ものとして暮らしに寄り添ってくれそうだ。

「我々のものづくりにおいて最も大事にしているのは、誠実さです」

「デジタルカメラのOEMを請け負っていたときから、次々と新しい商品が出て、旧モデルが淘汰されていく、そんなサイクルがどうしても合わないと感じていて。我々は、お客さまの暮らしに長く寄り添えるものを、時間をかけて、じっくりとつくりたいんです」

道具としてのスペックを備えつつ、情緒的で感性に訴えかける光をつくるアンビエンテックのものづくり。

「これまでは信頼できるショップのみの取り扱いで、我々はつくることに集中してきました。これからは、お客さまと直接コミュニケーションができる場所をつくりたい」

新しく入る人は、来春六本木にオープンするショールーム兼直営店で働くことになる。

「納得して買っていただき、僕らのものづくりの姿勢に共感していただく。そんなお客さまと出会える場所にしていきたいですね」

見る、触る、持ってみる。話をして、細部の美しさやものの背景を知る。コミュニケーションを重ねて、お客さんが灯りとともに過ごすひとときに向きあっていく。

「六本木は、インテリアやプロダクトデザイン、ファッションなど、さまざまなカルチャーに携わる人が集まる場所。なにか、強くこだわりを持つ人が集まりやすい」

「さらには、海外のお客さまも多く訪れる。グローバルなブランドとして成長していくために、新しい拠点になると思っています」

 

次に話を聞いたのは、入社4年目の内田さん。

会社全体のPRを担っていて、ポップアップや展示会のコーディネートから接客対応、プレス対応、ウェブサイトやSNSの運用まで仕事の幅は広い。

これから入る人のOJTも担当予定。なんでも気軽に相談に乗ってくれると思う。

「これ、僕のお気に入りです。『Sage(セージ)』という植物を模したモデルで、オブジェとしても美しいだけじゃなく、とても機能的なんですよ」

葉の部分は自由に回転させることができるため、デスクに置いて手元を照らしたり、壁に光を当てて間接照明としても使える。

「自宅でも使用しているのですが、使ううちにどんどん愛着が湧いてきています」

もともと大学でプロダクトデザインについて学んでいた内田さん。照明の世界に惹かれたのは、フィンランドでの留学経験がきっかけだった。

北欧では、冬が近づくと日照時間が短くて夜が長い。周囲の暗さに合わせて、ろうそくに火をつけるようにひとつずつ灯りをつけていく文化がある。

「人が本当に心地よいと感じる灯りの取り入れ方をしているんです。そんな北欧の灯りに対する文化を、日本でも浸透させたいと思うようになりました」

日本に帰ってきたあとは、照明メーカーで建築空間の照明計画や企画開発などを経験。2021 年にアンビエンテックへ入社した。

「ぜひ、製品だけの灯りを体感してみてください」と、内田さんがショールームの照明を落としてくれる。

わ、きれい。

「つい見とれてしまいますよね。光の標本箱というテーマで。棚自体、好きな大きさに組み替えることができるので、ポップアップの什器にも使用しています」

長くいいものを使い続けるアンビエンテックのものづくりの考えは、展示方法にも浸透している。

「こちらの灯りも、おすすめですよ」

「『hymn(ヒム)』という、火を再解釈して生まれた製品です。壁際に置くと、揺れている影が壁に映るんです。防水なので、バスルームでもお使いいただだくことができて、空間に広がる光に癒されます」

内田さんの説明を聞きながら、どこに置いてどんな使い方をしようか、想像がふくらむ。

「お客さまにとっては、見たことのないようなデザインの照明ばかりなので。使うシーンを想像してワクワクしてもらえるように、最適な使い方を提案します」

「以前、お家をリフォームされるタイミングで来られたお客さまがいらっしゃって。部屋ごとにご希望の暮らしを伺い、それにあわせた使い方をご提案しました。そんなふうに、暮らしに寄り添い、コーディネートする楽しさがありますね」

六本木にできるショールームでは、来店予約は不要。そのため、建築家やインテリアデザイナーの方が来店されて専門的な関わりをすることもあれば、一般のお客さんがふらっと訪れることもある。

「横浜のショールームに訪れるお客さまでも、お話をしていて、照明について詳しいな? と思ったら建築関係の方だった、みたいな場面がよくあるんです」

製品を置く空間に必要な光量や、インテリアとのバランスなど。幅広いお客さんのニーズに対応するためにも、コミュニケーション力に加えて、建築の知識を身につけることも必要だと思う。働きながら、自然と興味が湧いて身についていくこともあるはず。

「目の前の相手の暮らしを想像して、最適な使い方を一緒に考えていく姿勢がなにより大事です」

「そのために、好きなものやことに対して深掘りができること。そして、それをお伝えすることにやりがいを感じる。そんな方に来てほしいですね」

 

まさにそのやりがいを感じて働いているのが、カスタマーサポートの塚原さん。

お客さんの窓口という点では、これから入る人が働く六本木のショールームとも通じると思う。直接聞いたお客さんからの声を共有するために、コミュニケーションをとる機会は多そうだ。

もともとアパレル業界で12年間、接客販売をしていた塚原さん。販売の仕事は好きだったけれど、働き方を考え直そうと転職を始めることに。

「ホームページで製品を見て、一目惚れしたんです」

「前職の仕事が大好きだったので、次に選ぶ仕事も、自分が好きだと思えるものを扱いたいなと。ここなら、胸を張って働けると思いました」

昨年9月に入社した塚原さん。ふだんは、個人のお客さん、取り扱い販売店、レストランやホテルなどから不具合や修理に関する問い合わせに対応している。

「長く愛用してくださるお客さまが多いです。先日修理のお問い合わせを受けたお客さまは、お子さんが生まれたときに購入されて、10年間お使いいただいたと教えてくださいました」

「修理をして、またお客さまのもとへ戻っていく。暮らしの物語がまた生まれていくことを思うと、とてもうれしくなります。この仕事をしていると、そんなささやかな感動にたくさん出会えます」

使えなくなったら捨て、ではなく、暮らしをつくる道具を長く愛着を持って使いこんでいく。

ものの背景にある想いが自然と伝わっているからこそ、暮らしのすぐそばで灯りを大切にするお客さんが多いんだと思う。

「一緒に働いていて、共感力の高い人が多いなと感じますね。共感し合うことで、誠実なものづくりができているし、お客さまに対して、共感から得た自分の言葉で、照明の素晴らしさを伝えることができているんだと思います」

 

灯りを選ぶことは、どう暮らしたいかを考えること。

人の手で使うものだからこそ、本当の心地よさと、明かりに灯された空間を想像する。

ものに宿す誠実さに、日々向き合える場所だと思います。

(2024/10/18 取材 田辺宏太)

12/4(水)には、代表である久野さんをゲストに迎え、しごとバーを開催します。こちらもあわせてご参加ください。

しごとバー 新しいものは、必要ですか? 人の一生に寄り添う灯り

 

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