世界的ブランドの店舗装飾、有名テーマパークのアトラクションの内装、国内外で売られる車のパーツ。
名だたる企業と仕事をするものづくりの会社が岐阜・美濃加茂市にあります。
株式会社美光技研(びこうぎけん)は、「デザイン研磨」という金属や樹脂の表面加工の技術で、日本だけでなく世界を見てもトップクラスの企業。1973年の創業以来、技術を磨き続けています。
そんな美光技研は、今、変革期を迎えているところ。ブランディングや業務のDX化、完全週休2日制への移行など、新しい風が吹いています。
企画営業部の立ち上げもそのひとつ。今回は、新しくできるこの部署で働くスタッフを募集します。
部の立ち上げや営業の仕組み化は社外パートナーも参加し、すでに動き出しているところ。
ここでの「営業」は単に「売る人」ではありません。美光技研の技術を使って、ものづくりの可能性を広げていくような役割です。営業の経験は問いません。
第一線で働く社外パートナーや代表と一緒に仕事をすることになるので、いろんなチャレンジやステップアップができる環境。
地域に根付き、成長していきたい人にはぴったりの仕事です。
名古屋駅から中央本線、太多(たいた)線を乗り継いで1時間ほど。美濃太田駅に到着。
近くには木曽川が流れ、中山道の太田宿がある自然と歴史が豊かな町。
駅から5分ほど車で走ると、美光技研に着く。
最近完成したという社屋には、自社で加工した金属板がつけられている。装飾された板に青空が映ってきれい。
出迎えてくれた代表の和田さんに案内してもらい、2階のショールームへ。
これまで美光技研が手がけてきたものが、ずらりと並んでいる。
0.5mmほどの厚さのアルミ、ステンレスといった金属や樹脂の表面に、2、3ミクロンのキズをつけて模様を描き出す「デザイン研磨」を施す美光技研。
自動車のホイールや内装、エンブレム、家電・スポーツ用品・楽器のデザイン、店舗の建材など。多種多様な業界の製品に使われている。
「みなさんの身の回りにもうちで手がけたものがあるかもしれません。たとえば、携帯ゲーム機の装飾パーツもここでつくったものなんですよ」
これはうちにもあります!
「私が入社した2008年はこの加工ですごく忙しかったんです。とにかく量が多くて、工場もフル稼働。ほかにこういう技術をもつ会社はほとんどないので、大手から中小まで幅広いお客さんがいるんです」
「直線や曲線で模様を描くだけではなくて、こんなこともできるんですよ」
取り出したのは企業のロゴのプレートの後ろにライトがついた装置。
カチッとスイッチを押すと…。
エンブレムに変わる。
薄い金属のパネルに微細な穴があいていて、ライトをつけるとその部分だけ光が透過してエンブレムが浮かび上がる。消したときは、表面の模様に目がいくため、エンブレムは見えない。
「面白いでしょう? これもデザイン研磨ならではなんです。微細な凹凸をつくることで、視覚効果を生み出しています」
「光を当てる角度を変えると模様が動いて見えたり、光の色で模様の色が変わったり。模様が立体的に浮き出て見える加工もできます。凹凸に見えても表面はなめらかで、金属や樹脂の質感を活かせるんです」
「研磨」と一概に言っても、思った以上にいろんな表現ができて面白い。
にこにこと楽しそうにショールームを案内してくれる和田さん。もともとは不動産業界で働き、家業の美光技研を継ぐことは考えていなかったそう。
「社会人1、2年目くらいのときに父から突然電話がかかってきたんです。『継ぐ気はあるか?』って。当時は10人くらいの会社だったんですが、病気とか怪我で3人が一気にやめるタイミングがありました。自分が継がないのなら会社を畳むことを考えていたようです」
「サラリーマンも楽しかったし、まだ一人前でもないので悩みました。けれど決算書を見て、会社の見せ方を工夫したら戦えるなと。そこで家業に向き合う覚悟を決めました」
すべての機械を操作できるよう、最初は工場の現場にはいった。並行して、工場の業務改善に着手。和田さんの弟も合流し、スタッフとともに業務管理、経理業務をアプリで完結する形にしていった。
「2019年に代表に就任した直後にコロナ禍になって。いろんな仕事が止まりました。受身の仕事ばかりでは立ち行かなくなる。そこからブランディングを強化して。ロゴやWebサイトを刷新して、ミッション・ビジョンもつくりなおしました」
会社の体制を整えていこうとする和田さんには、その先に実現したいことがあるという。
それは、美光技研のミュージアムをつくること。
「このショールームには地域の小学生が見学に来ることがあって。BtoBの仕事しかしてこなかった私たちにとって、子どもたちが驚いたり、笑ったり、感動する様子を見られるのはすごくうれしかった。同時に、うちの技術がこんなに誰かの心に響くものなのだとはじめて知ったんです」
「デザイン研磨が一番映える形で、技術を伝えるにはどうしたらいいか。誰より魅力をわかっている自分たちが考えてしっくりきたのが、ミュージアム。自分たちでも気づかない新しい発展につながる場になっていくと思うんです」
地域の子どもにも大人にも、地域外から訪れる人にも開かれていて、美光技研のものづくりに触れられる。地域の産業を知るきっかけにもなるし、働くスタッフの誇りにもなるかもしれない。
「この美濃加茂にミュージアムをつくりたい。50年以上ずっとこの場所で事業をしてきたので、少しでも地域に恩を返せたらと」
「3、4年後には完成させたいと思って動き出しています。もちろん先立つものも必要。そのために売上を上げていきたいんです」
今回の企画営業の募集はその一環。それまで和田さんが兼任していた企画営業を部として立ち上げ、より効率的にチームで働くことを目指す。
「うちの営業は、相手の要望を引き出して提案することが多い。多種多様なクライアントがいるため、仕事の生まれ方もさまざまです」
「一番のクライアントである自動車メーカーでも、デザインのイメージに合わせて提案することもあれば、『新しいこの車種は装飾にアルミを使うらしい』みたいな噂を聞きつけて、その製造会社の人に話を聞きに行き、仕事に至ることもあります」
一緒に考えて形にしていくものもあれば、きっちりと仕様まで決まっている仕事もあるそう。どちらにしても相手の話をよく聞いて、気持ちや要望に寄り添った提案をしていくことが大切。
「うちは自社に営業部がないので、社外パートナーの渡辺さんの力も借りながら、仕組みづくりを進めています」
紹介してもらった渡辺さんは、東京で営業コンサルタントの仕事をしながら、美光技研に関わっている方。オンラインで話を聞く。
今回入る人にとっては、営業部長のような頼れる存在。チャットツールでのコミュニケーションを中心に、月1回のオフラインミーティングの時間も設ける予定。
「『ミュージアムをつくりたい』って美光技研さんの思いがすごくいいなと。応援したい気持ちでお手伝いをしています」
「ものづくりは日本の強みだけれど、子どもたちがそれに触れる機会はあまりありません。美光技研さんのミュージアムをきっかけに、ものづくりにポジティブな印象を持ってくれたらいいですよね」
渡辺さんは根性論で語られがちな営業を、仕組みで成果を出し、再現性を持たせるような体制づくりに伴走している。
業務の進捗管理ができるビジネスアプリケーションの導入を進め、商談の進捗をもとに渡辺さんがアドバイスできる体制を整えようとしている。
「新しく入った人の取り組みが、美光技研さんの営業のベースになっていく。すごく楽しいと思うんです。取れない商談もいっぱいあると思う。ただ、そのプロセスを考えること自体はすごく意味があるし、長い目で見たらすごく大事なことで」
「今回の募集は、人生が変わる、すごいチャンスの求人なんじゃないかな」
人生が変わる、というと?
「今回の募集は、今の美光技研さんだから生まれたポジション。世界的なものづくりをしている会社で、一から部を立ち上げられるってレアな機会だと思います。2年後に同じ求人があっても、きっと1を10に増やしていくフェーズに変わっていると思うので、この仕事は今しかできない」
「あとは私のほかに、もうひとり社外パートナーが、経営企画のようなポジションで関わっています。代表の和田さんも加えたそのチームで密にやりとりしながら働けるのは、大変ではあると思うけれど、刺激的で面白いんじゃないかな」
和田さんや渡辺さんが新しく入る人のための環境をできる限り整えようとしてくれているけれど、すべてが整っているわけではない。
外部パートナーやクライアントとつながりながら、一緒に手を動かしていける人だと、楽しく働けるはず。
実際に働いている人はどんな雰囲気なんだろう。
営業補助の石井さんは、3人の子どもを育てながら、パート社員として働いている。この日は16時に習い事のお迎えがあるそうで、時計を気にしつつ話を聞く。
「代表も同じくらいのお子さんがいるので、子どもの都合で途中で抜けたりしてもいやな顔はされたことがないです。社員は土曜日の出勤がなくなったり、だんだん働きやすい会社になってきたのかなって」
自宅と会社の近さに惹かれ、美光技研を選んだ石井さん。それ以前は事務職として働いてきた。
「現場に仕事を渡すために仕様の整理をするのが、営業補助の仕事。クライアントの仕様書がわかりづらかったりしたときは、私が直接クライアントに連絡して確認します。資材の発注や、売上計上とかの事務処理も担当します」
「大きい会社だと部署ごとに分かれているところを、美光技研ではまるっとやらせてもらえる。そういう仕事の仕方は、自分にはあっていて楽しいです」
社内の平均年齢は30代と若い。
毎年の恒例行事となっているとなっている忘年会は参加率100%で、スタッフも楽しみにしているそう。
「社長と専務が中心になって、ボーリングして、飲み会して、ビンゴ大会して。そこから二次会にも行って(笑)」
「ボーリングやビンゴの景品を現場のスタッフが用意してくれて、私もお店の予約を手伝ったり。準備からみんな本気で、『今年の景品はなんだろう?』って楽しみなんです」
忘年会から帰るときには両手に景品を抱えて帰る。スタッフの距離が近くてなんだか楽しそう。
暮らしの面では車があると便利だけれど、神奈川から移住してきたスタッフは自転車で生活していたり、工場長は愛知県から電車で通ってきていたりしている。
「明るく、コミュニケーションが苦じゃない人が来てくれたらいいなと思います。人と人によるところが大きいから、お互いが気持ち良く話せる人だと私はうれしいな」
岐阜を拠点に、日本全国、世界で通用する技術を持つ稀有な会社。
新たに仲間になる人が楽しんで開拓することで、仕事が生まれ、会社にも地域にも新たな光が当たっていく。
美光技研のこれからをつくる、一端を担ってみませんか?
(2025/03/18 取材 荻谷有花)