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日差しをやわらげたいとき、空間をちょっと分けたいとき。
決まった使い道に縛られず、ひとつのサイズで部屋にすっとなじむ。
カーテンでも間仕切りでもない、一枚の布から暮らしを提案しているお店があります。
「ieno textile(イエノテキスタイル)」は、暮らしの布の専門店。
運営しているNAMURA株式会社は、空間に表情を加えるアイテムとして「布」の可能性を探求している会社です。
暮らしのさまざまな場面に取り入れやすい約140cm×230cmの布、「14-23(イチヨンノニイサン)」シリーズを中心に、テキスタイルの企画・販売をしています。
今回は、ieno textileで商品をお客さんに伝え届ける、「14-23アドバイザー」を募集します。
接客やECサイトの運営のほか、SNSでの情報発信、商品企画など。布を届けるだけでなく、その先まで思いを馳せながら、お客さんと一緒に暮らしを彩っていく仕事です。
渋谷駅から井の頭線に乗って15分ほどで、浜田山駅に到着。
駅前の商店街には、昔ながらの花屋さんや薬局、チェーンの飲食店が並んでいて、暮らしがゆるやかに流れている。
そんな商店街から5分ほどのところに、ieno textileはある。
中に入ると、柄が入っているものや、上下半分ずつ色や素材が異なるものなど、さまざまな種類の布が。ランプシェードにも使われていて、灯りをやわらげている。
窓から入る布越しの光も心地いい。
「上下で色や素材が異なる布は、14-23シリーズの一つ『Ufufu(うふふ)』という商品で。たとえば、日差しが強いお宅では透けない部分を上にしたり、外からの視線が気になるお宅であれば逆にしたり。さまざまな暮らしを布からデザインするのが私たちの仕事です」
そう教えてくれたのは、代表の南村弾(なむら だん)さん。ieno textileを立ち上げた、テキスタイルクリエイターでもある。
ieno textileでメインに展開しているのは、約140cm×230cmのテキスタイルを使った14-23シリーズ。
広げてみると、大の字で持ってもまだ余るほど、大きなサイズ。厚みを感じるリネン生地もあれば、光に透かすとキラキラ光る素材のものもある。
「もともと自宅で、窓やテーブルに切りっぱなしの布を使っていたんですよね。10年くらいでしょうか。透け感や柄のバランスを見ているうちに、自然と定まってきたのが140cm×230cmほどのサイズ感でした」
「使い方が自由なぶん、長く使うことができる。たとえば引っ越しをすると、窓の大きさが違っていて同じカーテンを使えないことも多いですよね。14-23なら、窓に合わせて折り返すだけで、新しい場所でも利用できるんです」
クリエイターとして、14-23を商品化した南村さん。生地幅いっぱいで裁断できるため、ハギレも少なくて済む。14-23はつくり手としても無駄が少なく魅力的なんだとか。
さまざまな可能性を伝えていく場として、2014年6月代官山に「ieno textile」をオープン。
「別会社で代官山にお店を出していたんです。当時から14-23も展開していたのですが、オーダーカーテンとして見られることが多くて。でも、カーテンではなく布をデザインすることが自分の仕事だよなって。それが今につながっています」
その後、2019年にNAMURA株式会社を立ち上げ、翌年にieno textileを浜田山へ移転。
「移転して今年で6年目。布をデザインするという想いは変わらず、暮らしへ取り入れやすくなるよう14-23を展開しています」
現在の店舗では、訪れた人の暮らしぶりをヒアリング。布の使い方や色の組み合わせを一緒に考えて、体験しながら商品を選んでもらう。営業日は水・木・金の週3日。予約制にしていて、じっくり時間を使えるようにしている。
移転当初はコロナ禍だったものの、家で過ごす時間が増えたことで、自然と暮らしに目が向くように。その状況も追い風になり、来店するお客さんもこの3年で3倍ほど増加しているそう。
「たったひとつのサイズの布から、暮らしがどんどん豊かになっていく。『布の使い方を提案して暮らしをデザインする』という新しいジャンルが開いてきたなと実感しています」
その実感につながっているのが、「14-23のあるくらし」というWebコンテンツ。
商品を購入したお客さんの自宅へ足を運び、14-23の暮らしへの取り入れ方を共有している。これまでに40以上の暮らしを紹介してきた。
「暮らしのなかにサイズやデザインのヒントもあって。実際にお宅に行ってみると、そういう布の使い方もあるんだって発見があるんです。先ほどの『Ufufu』は、お客さまのお宅へ伺って着想を得て生まれた商品なんですよ」
新しく14-23アドバイザーとして加わる人は、店舗での接客やECサイトの運営など、お客さんと接点を持つことからはじめてもらいたい。
並行して、SNSで情報発信をしたり、ユーザーの暮らしぶりを取材したり。暮らしに広がる布の使い方や楽しみ方を伝えていく。
「なによりも接客を通じて暮らしを一緒に楽しめる。いい意味で、おせっかいな人がいいかもしれないですね。お客さまの暮らしぶりをお聞きしてから提案する姿勢を大切にしています」
現在、NAMURAで働くメンバーは弾さんを含めて5人。それぞれが得意なことを活かしながら、自然と役割が重なり合うような働き方をしている。
「布のある暮らしを届けるには、糸の素材選びや日々の使い心地など、たくさんの情報が必要で。布をつくる入口から届ける出口まで、すべての仕事がつながっていると思うんです。なので、その流れに責任を持つ意識をメンバーには持ってもらいたい。それはこれからも変わらないと思います」
弾さんが試作した新柄は、朝礼で共有。メンバーから意見をもらい生まれるデザインもあるという。
どの仕事も、布のある暮らしにつながっているという実感があるからこそ、無理なく、気持ちよく取り組めるんだと思う。
布のある暮らしが広がっている実感を、社内でも共有できるように。
商品のラインナップ、SNSでの発信や接客の伝え方など、全体を見渡しながらブランドの方向性をかたちにしているのが、入社9年目のブランドディレクターの早坂さん。
「私たちの仕事は、ただおしゃれな布を販売するのではなくて、暮らしに豊かさを与えられる布をお届けすること」
「商品は30種類ほどにとどめていて、新柄は頻繁に出さないんです。同じ布でも、使われ方次第でまったく違う表情になる。だからこそ、新しいものを足す時は、暮らしにどんな豊かさを与えられるのか、本当に必要なのかを考えるようにしています」
提案の仕方も、その考えに通じている。
「お客さまが気になる布が多く悩むときには、まずどれか一つをご自宅で試して、それから買い足してみてくださいっていう提案の仕方をしていて」
「季節によって気分も変わったりしますよね。暮らしも変化をつけることによってより楽しめると思うんです。1度購入したら終わりではなくて、選べる余白を残すというか」
最初の一枚から、日々の暮らしが少しずつ変わり、空間が育っていく。
カタログも使いやすさを優先して、複数人で一緒に見てもらえるように、誰にとってもわかりやすい言葉と構成を心がけている。
「それはオンラインでも同じ。リアルでお客さまとお会いするときと同じ感覚で対話することを大切にしていて」
SNSでは動画やライブ配信で布の使い方を紹介。オンラインショップでは手書きのメッセージを商品に同封するなど、人の気配が感じられることを大切にしている。
「既存のお客さまだと、その後どうですか?ってお話ししたり、新しくご購入された布、以前のものと合いそうですねって感想を伝えたり。そういうやりとりが自然に生まれてくるのがうれしいですね」
早坂さんは、どんな人が向いていると思いますか?
「正解か不正解かを選ぶんじゃなくて、これもいいな、こういうのもおすすめだよって、柔らかくやりとりできる方だと、お客さまとの会話もきっと楽しくなるし、布とも自然に付き合っていけると思います」
最後に話を聞いたのは、入社4年目、14-23アドバイザーの鳥居さん。新しく入る人にとって一番身近な先輩になる。
もともとはグラフィックデザイナーだった鳥居さん。入社のきっかけは自らの暮らしからつながっている。
「入社前は自宅の一部を事務所として使っていて。せっかくなら綺麗に整えたいなと思って。布が好きだったので間仕切りとして使えるものを探していました。生地屋さんに行ったり探し回ったけれど、ピンとくるものがあんまりなかったんですよね」
「偶然、日本仕事百貨でieno textileの記事を見つけたんです。これだ、見に行きたい!って。はじめは求人というより、お店に行きたくて。よくよく募集内容をみてみると、自分の経験が役に立つかもしれないと感じて、応募を決めました」
働いてみていかがでしたか?
「私自身、以前は絵や写真で表現する仕事をしていたので、言葉で伝えることが苦手で。最初は、どこまでお客さまのことを聞いていいのかわからなくて、ガッチガチでした。でもお客さまと同じ目線で暮らしを考えていくうちに、自然といろんなことを聞けるようになってきました」
ieno textileでは、最初から商品の紹介はせず、暮らしの背景を聞いてから、布を提案している。
「どんな家に住んでいて、窓はどの向きで、外にはどんな景色が広がっているのか。お客さまと一緒に想像していくうちに、お客さまにとってぴったりの一枚が見つかるんです」
ECサイトでの発送業務でも、お客さんの暮らしを想像するという鳥居さん。
たとえば、クリップをたくさん購入したお客さんがいれば、窓の大きさを想像したり。お住まいの地域の気候から暮らしを思い描いたり。少しずつ積み重ねた想像が、提案にも活きている。
「最近は、お客さまもWEBコンテンツやSNSを見て、カラーの組み合わせを事前に考えて来られたり、暑い季節に、爽やかな色のものを買い足してくださったり。布を通して暮らしを楽しむことが徐々に浸透しているなと感じます」
さまざまな角度からお客さんと関わる14-23アドバイザーの仕事。そのぶん自分の提案や工夫が届く実感が多く、やりがいにもつながっているんだと思う。
「『14-23のあるくらし』の取材で、自分が担当したお客さまのところに行くこともあります。実際に布を使ってくださっている様子を見ると、自信にもなるんです」
「自分でも取材で見たお宅を参考に、家に布で間仕切りをつけてみて。洗濯物が目に入らなくなるだけで、気分も上がるんですよね。自分の暮らしで感じたことを、誰かの提案につなげていけるのも、この仕事の面白さだと思います」
一枚の布から、光が差し込むように、暮らしがそっとひらいていく。
その人の時間や気持ちにそっと触れながら、日々を少しずつ変えていくような仕事だと思います。
そんな体験を布と一緒に届けてみてほしいです。
(2025/05/13 取材 大津恵理子)