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自分だけの生業づくり
続々、ラボから出てきて
OBもいっぱい

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「発明ラボの活動は、発明っていうよりも自分の『つくりたい』を見つける感じ。すごく軽やかというか、楽しいもの、制限のないものなんです」

高知県佐川町は、森林率70%の林業のまち。

町内で出る木材や地域資源を活かし、地元の魅力と融合したものづくりを目指しているのが「さかわ発明ラボ」です。

子ども向けのワークショップ「放課後発明クラブ」を開いたり、地域の人から制作物の相談をもらったり。ものづくりを軸に、地域にひらかれた場をつくっています。

今回は、この場の運営を担う、地域おこし協力隊を募集します。

デジタル機器の貸し出し、ものづくりや商品企画のサポート、放課後発明クラブの企画・運営を、メンバーと分担して進めていきます。

活動日は週4日で、残りの3日は自由。いまはつくれるものがなくても、自分で何かを形にしていきたい人にとって、身構えず、飛び込みやすい環境。

卒業後の定着率も高く、地域で活動しているOBOGは10人ほど。

公共空間の設計に携わる人や、作家さん、お菓子づくりとつつじ園の運営を組み合わせる人など。ラボでの経験から、面白い動きが生まれつつあるようです。

 

日本の植物分類学の父、牧野富太郎の故郷である佐川町。

町の中心には、先生の名前にちなんで名付けられた牧野公園があり、地域の人々が種から丁寧に育てた、ゆかりの植物が大切に植栽されている。

高知市内からのアクセスもよく、特急だと約30分。

豊かな自然のほか、白壁の酒蔵通りを歩けば、昔ながらの文化も感じることができる。

さかわ発明ラボは、駅から歩いて15分ほどの場所。

入り口横に設置された、可愛らしいロボットのポストが目印だ。

まずは、地域おこし協力隊OBの山千代さんに話を聞く。

発明ラボの立ち上げメンバーとして2017年に佐川町へ。卒業後も町内で暮らしながらtokotodesign合同会社を立ち上げ、デザインや場づくりの仕事を続けている。

2年前からは発明ラボの運営支援にも携わっているということで、今回は出先からオンラインでつないでもらった。

「佐川町は自伐型林業が盛んな地域なんですね。まちの人が町内産の木材をもっと身近に触れられるようにと、9年前にさかわ発明ラボが立ち上がりました」

ラボには、レーザーカッターやUVプリンタ、3Dプリンターなど。「オープンラボ」と呼ばれる日を週に2日設けていて、町内外の人にこれらの機材を自由に使ってもらっている。

お店の看板や飲食店のメニュー表、卒業記念品づくりなど。ラボのスタッフは、利用者の「こんなものをつくりたい」を聞きながら、イメージを固めて最終的にデータに落とし込んで出力するところまで、二人三脚でサポートする。

もうひとつの軸となる活動が、放課後発明クラブ。デジタル機材だけでなく、プログラミングなどの技術も使い、地域の小中学生とさまざまなものづくりに挑戦している。

「最近は、発明ラボで取り組んでいた、ものづくりを介した場づくりに注目してもらう機会が多くて。tokotodesignとして、公共空間の設計に携わるような仕事が増えていますね」

そのひとつが、2023年にオープンした佐川おもちゃ美術館の内装・設計・製造。

おもちゃ美術館は、おもちゃで遊んで学んでつながる体験型の施設。国産の木材を使ったおもちゃを中心に、木や学芸員とのふれあいを通して、豊かな感性や社会性を育てる場所だ。

「木育に加えて、佐川町のカラーを出したいというご相談をいただいて。植物を身近に感じられたり、自伐型林業家やクリエイターの仕事に触れたりできる、具体的な仕掛けを考えていきました」

たとえば、木の生命力をそのまま感じてもらえるよう、林業家と一緒に山に入って木を伐採し、枝葉や皮をあえて残したまま展示してみたり。牧野富太郎が愛したバイカオウレンの花を採集体験するブースでは、発明ラボのスタッフが、展示するおもちゃのデザイン・制作を手がけた。

「ほかにも図書館での仕事もさせてもらって。チャレンジできる機会はなかなかないですし、実績を積む貴重な機会だなって。ラボはつくる設備が充実しているので、プロダクトの試作もしやすい。それは佐川町の強みだと思います」

発明ラボを卒業して町内で活動を続けているOBOGメンバーは、10人ほど。

建築事務所を営むメンバーや、図書館を使った場づくりに取り組む人、tokotodesignのデザイナー、レザークラフト作家など、卒業後の進路もさまざま。

 

これまでいろいろな地域で取材をして感じていたのは、任期終了後に地域を離れる決断をする人も少なくないということ。一方で佐川町は、町に残り続けている人の割合が多いように感じる。

どうしてそんなに定着しているんだろう。

次に話を聞いたのは、今年の3月末に卒業したばかりの遠藤さん。いまは、協力隊時代から取り組んできたお菓子づくりと販売を生業のひとつにしている。

もともと、千葉と東京で靴下のデザインを手がけていた遠藤さん。フリーランスとして6年ほど働いたころ、あらためて将来について考えることに。

「自分なりの心地いい暮らしを考えたときに、漠然と山で暮らしたいと思って。高知には山も、川も、海もある。人も親切だし」

佐川町に一週間ほど滞在したときには、近くのスーパーや直売所で売られている野菜の元気さにびっくりしたという。

「ピーマンなんか、切ったら飛んでいくんじゃないかってくらいぷりっぷりで」

「自然も文化も、面白いコミュニティもある。これからの暮らしをイメージしたときに、ほしいものが全部そろっていたんです」

1年目は、放課後発明クラブや機器の貸出業務を担当。2年目以降は、施設に寄せられるお客さんからの相談対応に取り組んだ。

「日々やるべき業務はあるものの、機材はそろっているし、時間的には比較的余裕がある。自分のやりたいことを、小さく始めやすかったですね」

はじめは木工や竹細工に取り組んだものの、生業にするにはむずかしいと感じた遠藤さん。

「グルテンフリーのお菓子をつくるのが趣味で。食材も豊かだし、そういったお菓子を求めている人も多くいると感じていたので、ひとつの生業にしようと準備を進めてきました」

業務の合間に3Dプリンタでクッキーの型をつくったり、パッケージを自分でデザインし、UVプリンタで印刷したり。

つくったお菓子を道の駅で販売、さらには食の6次産業化プロデューサーを目指す講座にも参加するなど、基礎的なものづくりのスキルや、地域との関係性をつくりながら、3年後を見据えて活動してきた。

新しく入る人も、役場の人とも相談しつつ、興味関心のある講座は活動費用で受講することもできる。まずは機材の操作を覚えたり、ラボの業務を担当したりしながら、自分の仕事を模索していけるとよさそうだ。

「じつは、町内にあるつつじ園を引き継いだんです。春の1ヶ月のみの開園にはなるんですけど、期間中はお菓子も販売していて。ゆくゆくは山で暮らしも仕事も完結できるようにと、走り出したところ」

「最近は事業承継の相談を受けることも多いです。何がしたいかの選択肢は、意外にたくさんあると思います。1つだけで生きていくのは難しいかもしれないけど、自分なりに組み合わせていけるといいのかなって」

 

まさに卒業に向けて生業をつくろうとしているのが、協力隊3年目の青木さんだ。

「いまは町内の団体さんとコラボしてワークショップを開いていて。これから夏休みに入るので、親子で体験できるTシャツづくりを企画したり、竹水鉄砲をつくったり。ラボの外で場をつくる機会も増えていますね」

青木さんが現在取り組んでいるのは、魚の作品づくり。

きっかけは、着任したてのころに、町の広報誌で4コマ漫画を描いたことだった。

「自己紹介も兼ねて、漫画を描くことになりまして。地元の横須賀の海と高知の海を比較して描いたんですね。そうしたら、まわりから『釣った魚の絵だけ異様にレベル高くない?」と言ってもらったんです(笑)」

「横須賀にいたときは気づかなかったけど、実家が釣り船屋ということもあって魚に対する興味や気持ちが強いという、自分の尖った部分に気づけたんですよね」

自分で描いた魚の絵をレーザーカットして、キーホルダーを制作したり、オリジナルの特製ステッカーをデザインしたり。町内に道の駅ができたタイミングで、販売も始めてみた。

そういえば、視界の端に魚のような置きものがあることが気になっていた。

あれも青木さんの作品でしょうか。

立ち上がる青木さん。「これはフグのラケットなんですよ」と楽しそうに持ってきてくれる。

「子どもたちと一緒に、最強卓球ラケットをつくる会を企画して(笑)。そのときに制作した作品です。石塑粘土でできているので、ちょっと重たいんですよ」

どうやって使うんですか。

「相手の打ったボールをこの口の中に入れるんですね。それで相手のネット前で落とす。するともう相手は返せないっていう、最強ラケットなんです」

「実家の釣り船の名前と同じく、“青木丸”って名付けたんですけど、当日は子どもたちが『青木丸と戦ってみたい』と言ってくれて。人気でうれしかったですね」

過去には、和紙と段ボールでシイラを制作。いい写真を撮るために、海まで出かけて撮影もおこなった。

「町内にはたくさんのOBがいますし、みんなそれぞれ得意な分野を持っている。シイラの制作は、レザークラフト作家さんにも相談に乗ってもらったんです。そうやって自分の幅も広げて、シイラもぜひ生で見てもらいたかったです(笑)」

卒業後の進路は、どんなふうに考えていますか。

「魚の作品づくりを仕事として続けていきたいっていうのが、今後の目標です。その割合をどこまで持っていけるか。今は活動日以外の3日間をつかい、1日は町内の小学校でICTの支援員、残りの2日は作品づくりに充てています」

「県内には漁港も多いので、漁の様子を動画編集して発信するとか。作品と教育をかけ合わせてみるのもいいですね。いろんな方向に広げていきたいと思っています」

 

思い出した、と青木さんが話してくれたことがあります。

「こっちに来て驚いたことがあって。空き家を改修して妻と2人で引っ越したんですけど、近くに住む方が、『あそこに住んでくれたおかげで、地域が明るくなってうれしい』と言ってくれたんですよ」

「住んでくれるだけで喜んでもらえるって、なかなかないこと。地域おこし協力隊って、なにか大層なことをする必要があるかと思っていたんですけど、些細なことでも喜んでもらえる。その安心感は町全体からも感じますね」

佐川町で起きている好循環がどこから来るものなのか、ずっと気になっていました。ものづくりを始めるための資源、機材、技術を教えてくれる先輩、迎え入れてくれる住民の方、行政のサポートなど。

もちろん協力隊の一人ひとりが、自分なりに考え取り組んでいることは忘れてはいけないけど、そういった安心感がここに来る人たちを大きく支えているように感じます。

この場所で花咲く人は、まだまだいるのではないかと思う。そんな予感がしました。

(2025/06/26取材 杉本丞)

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