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百余年つづく道具店
良い理を
柔軟に楽しく

食べることが好きです。それ以上につくるのも好きです。

料理が面白いのは、同じ材料でも、焼いたり蒸したり調理方法によって味が大きく変わること。

ときにはうまくいかないこともあるけど、それも含めてプロセスを楽しめるものだと思います。

今年で創業118年目の釜浅商店は、「良い道具には、良い理(ことわり)がある」という想いとともに、プロの料理人から家庭用や初心者向けまで、さまざまな料理道具を販売しています。

自分たちの商品を「良理道具」と定義して、流行や見た目のかっこよさに左右されない、道具の本質を大切にしてきました。

今回募集するのは、合羽橋店を拠点に、国内向けの広報を担うスタッフ。

プレスリリースの作成やメディアの窓口対応、料理イベントの企画・開催を通じて、良理道具の魅力を発信します。

自分で考え、行動することが好きな人に向いていると思います。

 

地下鉄銀座線の田原町駅から8分ほど歩くと、合羽橋道具街が見えてくる。

料理道具や食器、食品サンプルの専門店、調理服をあつかうお店がひしめき合う。

その中で、大きな黒色ののれんが風に揺れているお店を見つけた。

ここが、 釜浅商店。

向かって左側が鍋やフライパン、かまど、ボウルなどさまざまな商品をあつかう料理道具売場。今回は、右側の包丁売場へ。

中に入ると、ショーケースや棚に包丁が 整然と並んでいる。

包丁を見つめ、じっくり選んでいる人。店員と相談している人。

よく聞くと、日本語以外も飛び交っている。

どうやら釜浅商店を目指して、来日するシェフもいるらしい。

包丁売場のエレベーターで4階のキッチンスペースへ。

料理教室を開くにも良さそうな空間で、バルコニーからは道具街が見渡せて気持ち良い。

「手入れをしながら、永く使いつづけられる道具かどうかを大切にしています。そういった『良い理』を持つ本物の道具を提供し続けたいですね」

そう話すのは4代目店主の熊澤さん。

「先代の父はモノをつくることが好きな人で。お客さんと意気投合しちゃうと、採算度外視で要望に応えて調理道具をつくることもありました」

「子どものころから見ていて、大人なのに面白いことを本気でやってるなと思っていましたね」

たとえば、ある作業に特化した料理道具。

既製品はないし、一からつくってくれるところもない。

ほかのお店で断られた難しい注文も、先代は「 面白いからやってみよう!」と引き受けていた。

良理道具をお客さんに届けるまでのプロセスを面白がる。

今もこの姿勢が会社に根付いている。

「釜浅商店の『良い理』はスタッフ共通の目標です。でも、 アプローチの仕方はいろいろあっていいと思う。だから仕事のプロセスについても、細かく指示したりしないですね。面白がりながら、柔軟に取り組んでほしいなって」

広報の経験がある人も、これまでのやり方にこだわりすぎず、一つひとつ柔軟に、釜浅商店らしくできる人だと楽しめると思う。

「まずは、釜浅商店が大切にしている『良い理』に共感してくれること」

「広報は、ほかの部署と連携しながら仕事を進めることも多いです。釜浅商店がやるべきことに向けて、協力を仰いだり、人と人をつないでくれる役割だとうれしいですね」

 

店主の熊澤さんの横で頷きながら話を聞いていたのが、全店舗の広報を統括する広報マネージャーの齋藤さん。

釜浅商店はパリとニューヨークにも店舗がある。

事業規模が拡大したため、今回初めて合羽橋店を拠点に、国内向けの広報スタッフを募集することになった。

「わたし、最初はブライダルの会社で働いていたんですよ。業種も異なるし、広報経験もありませんでした」

土日・祝日の出勤も多く、子どもの行事になかなか参加できないもどかしさを感じる。

そんなとき、日本仕事百貨の記事で釜浅商店に出会う。

「行平鍋の写真が、目に留まったんです」

齋藤さんのお父さんは大工さん。家に仕事道具を大切に飾る方だった。

「父の影響なのか、良理道具の写真を見たとき、この仕事、面白そうとピンときたんです」

「広報は、プレスリリースの発信や各メディアの取材対応をしていきます。道具の魅力や使い方を教える良理教室の企画・運営もしますよ。商品のことを正しく伝えるために、まずは売場スタッフとして勤務してもらいます」

入社後は、包丁売場と料理道具売場の両方で働くことからスタート。

販売を通じて、売り場スタッフと交流を深めることができるし、お客さんの声を直接聞く経験になる。

何より商品知識を身につける時間にもなるはず。

「私は、 商品を覚えるのに苦労しました。包丁の写真を撮って、同僚とクイズを出し合いながら、3ヶ月から半年ぐらいかけて徐々に覚えていきましたね」

有名レストランのシェフなど、職人気質なお客さんも来店する。とくにインバウンドのお客さんも多いなか、接客がうまくできるか心配。

「英語は、そんなに得意ではなかったんですよ。ただ、同じような質問が多いので、よく使う単語とかフレーズを先輩に教えてもらいました。どうしても説明できないときは、英語が得意なスタッフに代わってもらいます」

売場スタッフは現在、70代のベテランスタッフもいれば、20代の若手スタッフもいる。

「フランクで親しみやすい人が多いです。料理や食べることが好きな人ばかりなので、休憩室でも最近食べに行ったおいしいお店の話で盛り上がってます」

売場での勤務を終えたあとは、いよいよ広報の仕事がはじまる。

メイン業務は、プレスリリースの発信や取材の対応。

取材内容はさまざまで、最近はインバウンド向けの媒体からも依頼が多い。

「取材を受けるかどうかは、私たちで判断します。判断基準の一つは、単なる日本の料理道具店としてではなく、釜浅らしさをきちんと伝えてくれるメディアかどうかを大切にしています」

もうひとつ重要なのが、月に1回、キッチンスペースで開催する「良理教室」の企画から運営までおこなうこと。

「良理教室」は、道具の正しい使い方や手入れの仕方をプロの料理人から学べる講座。

広報スタッフは、登壇する講師と話し合いながら、道具の選定や月毎のテーマを決めていく。

たとえば、4月のテーマは、「お弁当とたまご焼き器」。

春は新生活の時期。お弁当づくりをテーマに、メインの道具は、銅の玉子焼き器をセレクトし、おかずの定番である玉子焼きをつくることに。

「銅の玉子焼き器ってすぐに熱が入って、ふわふわに焼けるんです。ただ、興味はあっても扱い方がわからない人が多いんですよね」

焦げてしまうのが心配だから、フッ素樹脂加工のものを使う人が多いかもしれない。

でも銅の玉子焼き器だとおいしくつくれるし、扱い方を知っていれば不安になることもない。

「キッチンスペースの稼働率も上げていきたいので、良理道具を使った面白いイベントがもっとできたらなと思っていて。売場スタッフにもイベントをやってみたいという思いがあるので、一緒に考えていける人だといいですね」

社内外でさまざまな人と関わる広報の仕事。齋藤さん自身の仕事の幅が広がったという。

「広報主導で、こども包丁を企画してつくったこともあるんですよ」

きっかけは子どもをもつ社員との会話。

「子ども用包丁は、安全のために切れ味が弱く、食材がうまく切れない」

そんな声から、「釜浅のこども包丁」は生まれた。

切れ味と安全性。

そのどちらも備えた包丁を目指し、子どもの成長とともに永く使い続けられる、“一緒に成長する包丁”を企画。

「手入れをしながら永く使えます。子どもの成長に合わせて、包丁も成長して、大人になるころにはペティナイフのような形になるんですよ」

道具への愛着が湧き、モノを大切にする気持ちも自然と芽生える。

「良理道具のコンセプトは大切にしつつも、面白いと思ったことを柔軟に楽しみながら形にできるのは、釜浅らしさですね」

プロセスを楽しむ。こんな働き方を実現するためにもコミュニケーションは大切だ。

釜浅商店の世界観を考えるブランドマネージャーの湯浅さんも、同じようなことを感じながら働いている。

湯浅さん自身、最初は広報と売場スタッフを兼任し、釜浅商店の事業拡大にともない、いまはブランドマネージャーとなった。前職の経験を活かし、ビジュアルやデザインも手がけてきた。

「過去に熊澤から、かけ出しの料理人向けに道具セミナーをやってみたら面白そうと言われたことがあって」

「ただ、実際に進めるってなったときに、誰を講師にしたらいいんだろうとか自分がなにをどうしたらいいか分からなくなっちゃって」

プロセスを楽しむ、ということは、裏を返せば多くを任せてもらえるということ。

とはいえ、どうしたら良いか迷ってしまうこともあるはず。

そんなときは、もちろん相談したら良い。

たとえば、熊澤さんに壁打ちしてもらったり、売場スタッフに企画について雑談しながら話してみたり。齋藤さんと広報文を一緒に考えたり。相談しながら進めていく。

試行錯誤を楽しめる人に合っていると思う。

「合羽橋道具街には一見さんお断りの道具屋さんもあって、敷居の高さを感じる人も多いと思うんです。自分自身、老舗の釜浅商店もそういうイメージがありました」

「でも一歩お店に入ると、親身になって道具を探してくれるスタッフがいて。今、一緒に働けているのがうれしいんです」

自由だからこそ、ときには迷ってしまうこともあるかもしれません。

それでも本質を見失わず、プロセスを面白がれる人に向いている仕事だと思います。

釜浅商店の歴史は、働く人たちの「楽しい」「面白い」という気持ちがあって、つながれてきたものなのかもしれません。

この続きを、一緒につくっていきませんか。

(2026/5/8取材 小菅綾香)

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