イベントやミーティングは、こなすこと自体が目的になると、少し味気ない。
生活をただ楽しみたいから、学生が勝手に何かを始めてしまう。
そんな動きが日常のなかで生まれる学生寮が「NODE GROWTH 湘南台」です。
この寮は、慶應義塾大学や日本大学など、複数の大学キャンパスが周辺にある、学生のまち・湘南台で、2018年にオープンしました。

運営するUDS株式会社は、まちづくりにつながるホテル・旅館やコワーキングスペース、飲食施設などの企画、設計施工、運営までを一気通貫で手がける会社です。
全158室に、高校・大学・大学院生まで集う学生寮。ここで、運営スタッフを募集します。
新入生歓迎会や卒業式など、季節ごとのイベントで学生と交流する機会もありますが、メインは、施設管理や入居募集など寮運営全般に関わる仕事です。
だからこそ、学生と向き合う時間が楽しいと思える。自然体であることを大切にする人たちが働いています。
湘南台駅は、新宿から電車で一本、1時間ほどで到着する。小田急線・相鉄線・横浜市営地下鉄の3線が走り、横浜や都心へのアクセスが良い場所だ。
東口から出て、徒歩1分のところにある10階建てのマンションが、NODE GROWTH湘南台。
ちょうど昼下がり、食堂がある1階を覗くと、学生ではない人も利用しているみたい。学食の一般利用は聞いたことがあるけれど、学生寮の食堂を利用できるのはあまり聞いたことがない気がする。

「1階は地域に開いた食堂でもあります。今の時間帯は、近隣の住民の方にもよく使っていただいていますよ」
寮運営スタッフの中川さんが教えてくれる。UDSが運営する、この「Relax食堂 湘南台」は、朝と夜は学生の食堂に、昼から夕方までは一般にも解放されている。

寮ができる前は、もともと鉄道事業者が駐車場として管理していた。後に、沿線の活性化のために、地域の人やものが集う場づくりをしようと、学生寮の構想が生まれる。
「ただ、この地域ではほかにも学生寮があって。従来型の寮では満足してもらえない可能性があったんですよね。そこで、UDSへ声をかけてもらったんです」
UDSは入居希望者が集まり、土地取得から設計、工事発注から管理までを行う集合住宅「コーポラティブハウス」を日本で初めて事業化した企業。
利用者の希望に寄り添った場所をともにつくり上げることを大切にしている。
NODE GROWTH湘南台も、構想段階から近隣の大学生とワークショップを行い、どんな間取りがいいか、意見を取り入れながら設計していった。
「たとえば、『共用部に奥まった席があったほうが、研究の話とか、ディスカッションがしやすい』と学生からアイデアが出て。食堂には、テーブル席だけでなく、ボックス席もつくったんです。昼間はだいたい埋まっている人気のスペースです」

ここで暮らすのは、複数の高校・大学・大学院に通う学生、なかには留学生もいる。さまざまな人がいるからこそ、一人ひとりが居心地良く過ごせる場所でありたい。
その環境を整えるのが、今回募集する運営スタッフの役割。スタッフが主導して場をつくるのではなく、寮生が自ら心地よい関係や過ごし方をつくっていけるようにその土台を整えていく。

そこで頼りにしているのが、一緒に場をつくる学生リーダーの存在。
半期ごとに募集するメンバーで、「ノードコーディネーター」、通称”NC”と呼ばれている。
「名前も学生たちが付けたんですよ」と中川さん。
「寮では、年間を通して定期的にイベントを開催していて。2週に1度、運営スタッフとNCでミーティングをしています。イベントを行う目的は何か、自分たちが楽しめるか、を軸に一緒に考えています。あくまでも主体は学生なので、サポートがメインですね」
毎年行っている新入生歓迎会。今年は、入居者の約8割が参加したという。
歓迎会といっても、入学したばかりで知り合いが少ない人にとっては、気軽に参加できるか不安なもの。そこでNCが、歓迎会前に数日間カードゲームやポーカーなど、ボードゲーム会を開催し、事前に顔見知りになれるようにした。

過去には、食堂を使ってマルシェも開催。周辺の農家さんや、学生のアルバイト先の飲食店が出店した。
学生同士で、必要だと思うことは自然と形になっていく。そういう循環が生まれている。
「いろいろな世代が集まっているのが、この寮の面白いところ。だから年齢や立場にとらわれずに会話できるようにしたいんです」
「一方通行な会話にはしたくない。対等な立場で話すことを意識していますよ」
「お!来たきた」と中川さんの話を聞いている合間にやってきたのが、NCのみなさん。メンバー唯一の高校生もいれば、3年連続NCを務める大学生も。

せっかくなので、みなさんに寮で印象に残っていることを聞いてみる。
「印象に残っていること… 日々の暮らしがかけがえないというか。実家だったら、帰ってご飯を食べて寝て、1日が終わりだったと思うんです。でも、1階に降りれば誰かがいて、遊びに誘ったらすぐに行ける、その距離感がいいですね」
NCのみなさんと一緒に寮を見学していると、屋上で筋トレしている人の話をしてくれたり、備品整理の話題が出たり。
日常をつくっているのは、暮らしている学生たち自身なのが伝わってくる。

NCを長く続けている学生は、こう話してくれた。
「私たちが無理に引っ張らなくても、寮の一人ひとりが自然に心地良く過ごせるようにしたいと考えています」
「たとえば、イベントの後に、NCだけで振り返るより、寮生にも意見を聞いたほうがいいよなとか。そういう話を、スタッフの伊藤さんや中川さんに、ばーって3時間くらい相談することもありますよ」
学生とフラットなコミュニケーションを心がける。
運営スタッフの伊藤さんからも、その姿勢を感じる。
入社1年目。新しくスタッフになる人にとって一番身近な先輩だ。

「僕たちの主な仕事は、学生が豊かに過ごせるように場を整えること。学生の話も聞きつつ、寮の運営と管理もちゃんとやる、オールマイティな便利屋さん的存在だと思います」
業務はシーズンごとに変動する。
秋ごろから、入居希望の対応や、内覧の案内が多くなり、2月から4月の入退去の時期は、退去部屋の清掃など新入居者を迎える準備や、契約締結、入居初日の案内まで行う。そのほか、共用部で使用する備品発注や、設備の劣化があれば手配もする。
入居する学生のほか、食堂のスタッフや保護者、外部のパートナーなど、さまざま人とのコミュニケーションは欠かせない。

また、寮をよりよい場所にするために、学生の暮らし以外も試行錯誤を重ねている。たとえば夜間は、近隣の不動産会社に委託して対応してもらうようにするなど、スタッフの働き方もアップデートしているところ。
「ここにあるもので、どうすれば最大限、寮を魅力的にできるかを一緒に考えられる人と働きたいです」
「島にいたときは、なんでも自力で工夫してやっていく必要がありました。その経験は今の業務にも活きているなと思います」
島?
聞くと、伊藤さんは大学生のころ、休学して島根県の隠岐諸島海士町(あまちょう)と知夫村(ちぶむら)で学生寮の運営をしていた。
「大学3年生のころ、就活の時期とコロナ禍が重なったんです。でも、そもそも一般的な会社で働くことに不安があったんですよね」
「法学部で、一般企業の労働について学んでいたので、知らないもの見たさで、田舎に行ってみようって。勉強はやってきたので教育系なら採用してもらえる可能性があるかなと。そうしたらインターンとして受け入れてもらえたんです」
そこで働いたことが、伊藤さん自身の転機になる。
「大学ではサークルにも入ってなかったですし、親友一人くらいしか関わってこなかった。でも、島で人を知るおもしろさに気づいて。話を聞いたり自分もしゃべったりして、その人がどう生きてきたのかを考えるのが好きだなって」
その後、島でのつながりから関東へ引っ越すことになる。就職先を探すうえで、日本仕事百貨を読んでいた。
そこで目に留まったのが、NODE GROWTH湘南台のスタッフ募集の記事。
「学生寮運営の経験はあるし、人を知ることが好き。自分が自然とやってしまうことが、必要とされたらいいなって」
「僕の履歴書は、一般的な企業だと採用されにくいと思うんです。でもUDSは、面談でしっかり僕の話を聞いて見てくれた印象でした」
業務のほとんどは、施設管理や入居者対応などバックヤードの仕事。だからこそ、 日々の会話や関わる時間を大切に積み重ねたい。
「学生とおしゃべりすることは、僕にとってはご褒美みたいなものです」
「大人数でいるときは明るく振る舞っていても、1対1になると意外と人見知りだったり。学生たちと関わるなかで人間のいろんな側面を知って、それを寮の運営にも活かしていくのが楽しいですね」

学生から自然に話しかけられている伊藤さん。押し付けず、ひとりの人として関わってくれる存在は、学生が自分らしく過ごせることにつながっていると思う。
伊藤さんは、どんな寮にしていきたいと考えていますか。
「たくさん選択肢がある寮でありたいですね」
「たとえば、1人になりたい人には余白も残しつつ、つながりがほしい人には、そういう選択肢を取れるようにしたい。彼らが勝手に豊かになれる、そういう仕掛けを増やしたいです」
多くの人が使う食堂でも、一人席が設けられているのは、そういう配慮があるから。

「僕たちの仕事は、直接何かを教えたり、つなげたりすることが本質ではないと思っていて」
「なるべく沢山の仕掛けをつくり続ける。その仕掛けをとおして、学生が自然と何かをはじめたり、誰かとつながったり。その偶然の積み重ねが、後で振り返ったときに、その人の人生を豊かにしている。そんな場所にできるように、地道に仕事をするのが僕たちの役割だと思うんです」
学生のころに、対等に話せる大人がいてくれる。
学生寮という限りなく日常に近い場所で、そんな人の存在は特別に感じます。
卒業後も人生は続く。それまでの過程を暮らしの側で支えて、送り出す。
うれしさも、さびしさも、人として関わるからより濃く感じられると思います。
(2026/04/17 取材 大津恵理子)


