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実直に
今、ここで生きる人を
書き留める

徳島で取材をしていると、行く先々で『めぐる、』という紙媒体を目にします。

背表紙のある厚さで、手にとるとちょっぴり重みがあって。

パラパラとめくってみると、読み心地のよい文章と写真で、たくさんの人が紹介されていて。

情報が詰め込まれているというよりも、大切なものがぎゅっと包まれているような本。

めぐる、』は季節に1号、「時を継ぐ」や「薫るまち」と題したテーマに沿って徳島で暮らす人たちに会い、その様子をていねいに書き記している“郷土誌”です。

つくっているのは、徳島市で1981年からタウン誌を発行してきた株式会社あわわ

ここで『めぐる、』の編集を担う人を探しています。あわせて、各媒体で企画営業や制作を担当する人も募集中。

妥協せず、編集と向き合える仕事です。

『めぐる、』で紹介してきた写真をお借りして、徳島の風景とともに紹介します。



徳島県徳島市。

飲食店で賑わう徳島駅の前に立つと、正面に眉山(びざん)という低い山が見える。

「写真を撮ってもらうなら、わたしは眉山の麓がいいです」と、連れて行ってくれたのが、『めぐる、』の事業部長の小山亜紀さん。

笑顔で楽しそうに、そしてていねいに話をしてくれる方。

「出身はこのあたりで、大学4年間は京都で過ごしました。就職活動をする前に自分の好きなものを書き出してみたら、徳島、餃子、本って言葉が目に留まって。徳島で友だちと楽しく餃子を食べながら、本をつくればいいんだって思ったんです」

徳島で地域の情報誌を発行していた株式会社あわわに入社。

広告営業として、朝から晩までがむしゃらに働く日々を過ごした。

「ある日曜日、朝の7時に出勤して、誰もいない給湯室でドリップコーヒーを淹れてたんですね。待つ時間がもったいなくて『早くおちろ』って考えていて。ハッとして、やばいなって。これは生活を変えねばと思いました」

自分が本当にやりたいことを仕事にしよう。

そう決めてから、徳島について考えることが増えていった。

「わたしの父は吉野川、母は眉山だと思っているくらい。徳島は好きとか嫌いとかではなくて。徳島から生まれてきた、生えてきたみたいな感覚があるんです」

徳島から生えてきた。

そんな言葉を迷いなく口にするのが、小山さん。

「気づくと、あたり前にあると思っていたお店が閉店していたりして。徳島を形づくってきた場所や光景、風土みたいなものがなくなっていく危機感みたいなものを感じていたんです。徳島の豊かさを残したい。そう思いました」

たくさんの議論と試行錯誤を重ね、会社のあらたな媒体として『めぐる、』を創刊したのは、2020年10月のこと。

B5サイズで112ページほど。

毎号読み心地のよい文章と写真で、徳島県内で暮らし働く人たちに会ってきた様子が綴られている。

3ヶ月に1号発行していて、今は28号の取材や編集がはじまったところ。

「仮にあと30年つくり続けるとしたら、残り120号しか出せない。そう思うとさびしいです。徳島からなくなってしまうものを書き留めきれるのか、危機感はあるけれど悲壮感はないというか。『めぐる、』を通じて、郷土愛を持つ仲間を増やしていきたいです」

創刊当初から、本で伝えるだけでなく、イベントや人が集まる機会もつくりたいと考えてきた。

最近は『めぐる、』が名刺代わりになり、徳島県にとどまらず四国の各所から、冊子の制作や編集などの仕事を相談されることも増えている。

「このあいだうれしかったことがありました。車で2時間かかる自治体の役場に2週間ぶりに行ったら『久しぶり!』って言ってもらえて。まだ日が経ってないと思っていたのに、そんなふうに言ってもらえるなら、もうちょっと来ようかなって」

「それから、いつも車にお風呂セットを積んでいるので、仕事で立ち寄った先の地域にある銭湯に入るんです。そこではどんな人たちが過ごしているのか、ちょっと観察するのが楽しくて」

小山さんの話を聞けば聞くほど、出会った人、お店、地形や風景など、徳島の好きなところが湧いてくる。

「便利なまちができてそこに人が住むのではなくて、人の暮らしが集まってまちになっていくと思っていて。『めぐる、』をきっかけに、社会のことを人のせいにせず、まちに関わっていく人が増えたらいいのになと思っています」

  

創刊号からこれまで、小山さんのパートナーとして『めぐる、』をつくってきたのが、編集長の徳原さん。

家族の事情で春に徳島を出ることが決まり、『めぐる、』からも離れることになっている。

「以前は別の本を編集していました。当時は新しくできたお店の情報を探して紹介して。あんまり深く考えずに、とにかく売れる本をつくることだけを考えていましたね」

『めぐる、』の創刊が決まり、編集を任せたいと声がかかったときは、ほんとうに売れるのか戸惑いがあったそう。

「『はじめから売れんでいい、徐々に上がっていけばいい』って言われたんです。最初はどこを目指せばいいのか、考え方が切り替わらんかって」

まずは自分なりにできることを丁寧に進めていった。

けれど当初は、これでいいと確信を持てていたわけではなかった。

「なんていうんだろうな。自分が共感していないものでも、いい感じに見えるでしょって取り上げていた部分があったのかもしれない。話を理解したうえで、わたしの考えや気づきを入れていないというか。カッコつけてわかったフリをやめたくらいから、ちょっとずつ変わってきた感覚があります」

決まった企画や進め方があるわけではない。

徳島に対する想いも人によって少しずつ違っていたりする。

新たに編集を担う人も、これまでのやり方をなぞるというより、常に一緒に考え、悩みながらつくっていくことになると思う。

情熱的な小山さんとは対象的に、客観的な視点で話してくれる徳原さん。

企画から編集、本屋さんとのやり取りなど、幅広い仕事を担当している。

「1号終わったら、ほんで次どうしましょうねって相談をします。そのとき聞いた話とか、気づいたことを頭のなかにメモするクセがついていて。そのなかから、これとこれ、あれならいけるかもって考えていきます」

テーマにできそうなものを仮説として立てたら、確かめる作業に入る。

人に会って話を聞いたり、調べたりしながら、筋道を立てていく。

そのままテーマとして扱えるものもあれば、見当違いだったと判断して、ゼロから考え直すこともある。

1つのお店を紹介するか決めるために、何度も足を運んだり、周りの人にどんなお店か教えてもらったりもするらしい。

テーマも取材対象についても、ここまでするのかと思うほど、慎重に確認しながら進めていることに頭が下がる。

一緒に記事をつくっていくライターさんは、徳島で育ったり暮らしたりしている方々。

細かに企画を決めて依頼するというよりは、どんなことができそうか、やわらかい相談するところからはじまることが多い。

「投げてみて、向こうの反応を見てやめる取材もあります。これじゃ伝わらんのやなって。その人にちょっとでも意識があることを、機嫌よく取材してほしいんですよ。でないと、結局いいものにならんのですよね」

「記事単位でいうと、自分の想像を超えてきた原稿が届くとものすごくうれしいです。わたし、めちゃめちゃ褒めます。褒めるだけのメールとか送るんです。自分もライターだったら、そうしてほしいなって思うので」

手元にあった『めぐる、』のページをめくりながら紹介してくれたのは、ライターさんが酒米について取材した記事。

「ふつうに読んどったらなんてことない記事なんやけど、よく見ると、何回も取材に行ってることがわかるんですよ。最終的に、想定していなかったつながりが見えるところまで、ライターさんだけでたどり着いてるんです」

徳原さんは、ものづくりの話をとてもうれしそうに話してくれる。

どの号も読み心地がいいですよね、と伝えると、ぱっと笑顔になった。

「主観というか、思い込みは入れないようにしているんです。たとえば『徳島ってこうだよね』っていう、個人の決めつけのような内容が入らないようにしています」

「わたしが読んでいたら、そういうところでちょっと冷めるんです。なんか、いらん感情を動かしたくないなって」

伝えたいことはある。

それでも、読み手をあおったり、考えを押し付けたりはしない。

『めぐる、』の読み心地のよさや安心感のようなものは、きっと、徳原さんが実直に編集に向き合っているからこそ、生まれているように思う。

「ここまで話してきたのは、あくまでもわたしのやり方です。徳島を知ることをおもしろいと思える人に届けていく。それが変わらなければ、アウトプットは同じである必要はないと思っています」

すると、横で聞いていた小山さん。

「徳原さんの代わりを探すつもりはありません。もちろん、徳島出身でなくても。徳島らしいって、明確に言語化しているものはないんです。徳島らしさってなんだろうって話しながら、一緒にどんなものをつくっていけるか考えていきたいです」



最後に話を聞いたのは、『めぐる、』で一部の取材や編集を担当している仲野さん。

ほかの部署の仕事との違いについて聞いてみる。

「『めぐる、』を読んで衝撃を受けました。これまでただの風景として見てきた日常に、新しい視点がインプットされて楽しくなる。そこには歴史や経緯があって、人がいることに改めて気づいて、気になっていくんですよね」

ふだん担当している媒体では、新しい情報を取材者の目線で紹介していくことが多いそう。

うまく取材ができることも増えてきたものの、『めぐる、』らしい取材や書き方は、まだまだ勉強しているところ。

「少し前に、時間がないなかで原稿をどうしたらいいのか迷ってしまったことがありました。徳原さんに相談したら、『今のままでもいいけれど、わたしだったらこうする。そのほうが読者にわかりやすいから』って教えてもらって」

「時間もかかるしほかの原稿だってあるなかで、見逃さない。妥協しないんだなって思いました」

徳島について考え続けて、実直につくる。

3人が仕事と向き合う姿を聞きながら、なんだか背筋が伸びました。

これは自分の仕事かもしれない。そう思えたら、まずはぜひ、『めぐる、』を読んでみてください。

(2026/1/23 取材 中嶋希実)

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