「将来自分が何をしたいか、好きなものはなんなのか。まだ見つかっていない人にこそ、フィットする仕事だと思いますよ」
そう話すのは、中目黒でジントニック専門店Antonic(アントニック)を営むサイドカーの武田さん。
メニューをジントニックに絞ることで、バーの敷居を下げ、気軽に蒸留酒を楽しむ人の数を増やしたいと考えています。

武田さん自身、もともと極めたいものがあったタイプではなく「夫婦で一緒に働きながら、豊かに生きていくにはどうしたらいいんだろう?」と考えた結果、今の仕事に行き着きました。
これからどんな仕事をしようかな。どう生きていこうかな。自分の幸せってなんだろう。
迷っている人は「ジンを極めてみる」なんて生き方も、意外とありかもしれません。
まだバーに行ったことがなくても、ジンに詳しくなくても、お酒という文化が好きで、人間として真面目であれば大丈夫。ホールスタッフとバーテンダー、店舗マネージャーの募集です。
知れば知るほど面白いジンの世界に、そしてバー文化の世界に、足を踏み入れてみませんか?
中目黒駅から歩いて10分ほど。繁華街から少しはずれた通り沿いに、ジントニック専門店 アントニックはある。すぐ隣には、サイドカーが運営するボトルキープ専門店 BEEPが並ぶ。

「バーに慣れていない方でも気軽に入っていただけるよう、カフェやアパレルショップのような雰囲気を目指しました。うちの息子の保育園も近いので、家族連れで通りかかったパパ友や、ご近所さんたちが声を掛けてくれることもよくあるんですよ」
そう話すのは、代表の武田さん。洋酒の輸入販売会社を経て、2020年に夫婦でこのお店をつくった。

「蒸留酒って、国や時間を超えたタイムカプセルみたいだなぁと思ってます。バーという空間も、飲食店に来て緊張するという体験含めて、すごく独特で面白い文化だなと思ったんです」
重い扉に薄暗い照明といった本格的なバーには、独特の格好よさや魅力がある。一方で、初めて行くには緊張してしまったり、連れて行ってくれる先輩や上司との付き合いも減っていたりして、若い世代がバー文化に触れるきっかけ自体が少なくなっているのも事実。
そんななかでバー文化全体の活性化に貢献できたら。大好きなお酒を未来へ残していくために、必要なのは「未来の飲み手の裾野を増やすこと」ではないかと考えた。
ジントニック専門店にしようと決めるまでには、3ヶ月ほど夫婦で人生設計について話し合ったという。
「どこで暮らして、どんなことができたら幸せなのか。夫婦別々でいるほうが合っているタイプの人たちもいますが、僕らは3ヶ月話し合っても喧嘩しなかった。一緒に働くほうが合っているね、と気付いたんです」
「やりたいことはたくさんあるけど、まずは看板を掲げたお店をやろうと。妻には不動産業の経験を活かして店舗の物件を探してもらい、とんとん拍子で準備を進めていきました。店舗周りのデザインも妻主導でやってくれています」

大切にしているのは、カジュアルな店構えでありながら、お酒や氷、サービスは一流のものを提供すること。
注文方法や会計も分かりやすく、割合的にはリピーターよりも新規の方が多め。まさにバー文化への一歩目として訪れるような若いカップルや友達連れの方から、お酒好きにも愛される場所になってきた。
今回の募集は、中目黒での評判を受けて渋谷にも出店することになったから。場所は渋谷駅直結の複合施設「渋谷ストリーム」の1階。

大きなコンセプトは変わらず、基本的には中目黒でやっていることを渋谷でも再現したい。さらにメーカー、生産者とのポップアップイベント開催や、ボトルでの販売機能も強化していく予定。
「今のサービスがベストだと信じているので、お客さまとの会話を大切にするスタイルは、席数が増えたとしても守っていきたい部分ですね」
「テラス席もあり、中目黒よりも少し大きなお店になりそうです。これから社員として入っていただく方には、まず中目黒でしっかりと仕事を覚えてもらって、渋谷と行ったり来たりしながら働いてもらえたらと思っています」
求めているのは、自我を出す接客というよりも「アントニックのスタッフ」としての接客。
「お客さまとはベタベタ仲良くならないし、どんなときでも敬語を使って対応します。いうなれば、テーマパークのキャストやホテルマンのような、一流のホスピタリティを提供したいんですよね」
現場で働くスタッフはどんな思いでお店に立っているのだろう。
入社3年目の笠原さんに、ジンとの出会いから尋ねてみた。
「お酒が飲めるようになったタイミングがコロナ禍だったので、バーに行ったことはなかったんですけど。たまたまお土産にジンをもらう機会があって、そこから興味を持ちました」

大学卒業後は医療や治験に関する特殊な営業職をしていたものの、業務時間が長く、病院側と会社側との板挟みに苦労。転職を考えていたタイミングで、サイドカーの求人情報を見つけたという流れ。
「ジンっていっぱいあるんだって驚きましたね。今は世界中から取り寄せた200銘柄以上を扱っていて、ノンアルコールジンだけでもこんなに種類豊富なんですよ」

「お客さまからご希望があればストレートやソーダ割でもお出ししますが、あくまでもジントニックがメイン。ジン自体の個性や味の違いを感じるために分量やレシピはすべて同じですし、シェイカーを振ったりもしないので、バーテンダーといえど提供作業自体はものすごくシンプルです」
「このジンは、私が企画から携わっているオリジナル商品です。仕事や育児に奮闘する女性に向けた香り高いお酒で、私の母を思いながらつくりました。母の誕生日に合わせて発売開始し、本人に美味しいと言ってもらえたのはうれしかったですね」

協働で開発したのは、笠原さんがイベントで出会った富山のつくり手。製薬会社が手掛ける新しい蒸留所で、笠原さんの前職での経験とたまたまマッチングした。
「ジンに対する考え方や熱意で意気投合し、今までに3種類のコラボレーション商品を一緒につくっています。配合されているミモザの選定や、蒸留作業などもお手伝いさせてもらいました」

自分がつくったお酒を、その場でお客さんに提供して、反応を直に見られるのはうれしいだろうな。
「そうですね。やっぱり説明にも熱が入っちゃいます(笑)。だけど商品企画するのはごく一部の業務。日々お店を回していくことがかなり大きい割合を占めています。金土の夜は、レジ入力が間に合わなくなるくらいバタバタなんですよ」
聞けば笠原さんは、中学でハンドボール部、高校のときは応援団に所属していたという体育会系出身者。
「ほかにも元海上自衛隊で今は芸人をやりながら働いているスタッフがいたり、みんな体力はある方かもしれません。上下関係が厳しいわけではないですけど、みんな仕事に対して真面目なのでスタッフ同士の感覚が近くて心地良い。その感覚が近い人がいいですね」

新人スタッフの皆川さんは、結婚式会場のレストランや、ラグジュアリーホテルでのホテルマンを経て、アントニックに入った。
「もともとウィスキーが好きだったので、ほかの蒸留酒も飲んでみたいなと思って来てみたら、ものすごく好みのジンと出会って。なんだこの世界は!と衝撃を受けたんですよね。福島に住んでいたのですが、東京に遊びに来るたびに飲みに通っていました」

家でお酒を飲むことはあっても、バーに通った経験はなかった皆川さん。アントニックが、人生で初めての行きつけになった。
「数回なので、通ったと言えるほどではないかもしれないですが、高揚感があって何度も訪れたくなる体験だったんです。入社してからは飲食経費が使えて、いろんなバーに勉強しに行けるのがとても楽しいですね」
スタッフは月に2万円まで、自由に飲食店に行くことができる。味や接客、店内の雰囲気を観察して、社内レポートにまとめて学び合うという仕組み。代表である武田さんの、洋酒販売時代の経験をもとにつくられた制度だ。
お酒の種類はどうやって覚えていったのでしょうか?
「日替わりでおすすめのジンを決めてお客さまに提案しているので、まずはそこから覚えました。それだけでも1ヶ月で20銘柄。時間がある日は飲み比べてみる。そうやっていくうちに、自然と増えていきましたね」

「オレンジやプラム、マスカット、スパイスなど、ジンにはいろんな素材が使われています。これ前に飲んだ銘柄にも入っていたなとか、どんな素材なんだろう?歴史は?と、調べていくのが面白いんです」
営業中は立ち仕事。訪れた人を席に通して、商品の説明をして、注文を取って、レジ入力をする司令塔と、ひたすらお酒をつくるドリンカーポジションの2人一組でお店を回していく。
トニックウォーターや氷などを運ぶときもあるけれど、一度に運ぶ必要はないので、重いものをたくさん持つということはそこまでない。フードは乾き物だけだからコンロがなく、閉店作業もシンプルだ。
「あと何名きたらどこに通そうとか、その日の売り上げ状況を見ながらラストオーダーでもう一押ししようかな、とか。やっぱり混んでくると焦りますよ。でも考えるより、まず手を動かす。目の前のタスクから一つずつ片付けていくことが重要になってきます」

「お客さまに『この前お兄さんに勧められたジンが美味しくて、自宅用に買っちゃいました』って言われたときはうれしかったですね。おすすめしたバーに行ってみたという報告も、すごく印象に残っています」
社会人になってから、今が一番楽しいと笑顔で話す皆川さん。
「身をもってバー文化を体験することで、興味の幅が広がっていく感覚があって。自分自身、とても豊かになっているな、と感じるんです。なんだか抽象的ですけど、それが1番のやりがいですね」
飲むことや食べることが好きな人であれば、異業種からの挑戦も大歓迎。
自分自身がビギナーだからこそ、お客さんとの目線も合って会話もしやすいと思います。
まずはお店に遊びに行ってみてください。
めくるめくジンの世界、そしてバー文化に触れる体験は、きっと面白いですよ。
(2026/7/7 取材 今井夕華)


