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飾らない私でいること
旅と日常が交ざる広場で
しなやかにはたらく

いろんな方に取材をしていると、仕事とプライベートのオンとオフがない働き方をしている人に出会うことがあります。

常に仕事に追われているわけではなく、休んでいても、ちょっとアイデアが浮かんだらパソコンのスリープモードから立ち上がるような、ごく自然に仕事に向かっている状態。

無理がなく、心にゆとりや余白があるように見えます。

将来の目標を描くよりも、いまを自分らしく過ごすことの積み重ねが、結果的にその人だけのキャリアをつくっていく。

神奈川県の箱根・強羅にあるWPÜ(ワンダーパワードユー)HAKONEは、そんなふうに自分を取り繕うことなくいられる場所です。

国内外から多くの旅人が訪れるこのホテルで今回募集するのは、フロントとダイニングの業務を横断して関わるポジション。経験は必要ありません。

まずは、肩の力を抜いて。この場所に飛び込んだらどうなるだろう?と想像しながら読んでみてほしいです。

 

標高550メートルの強羅駅に降り立つと、初夏なのに空気がひんやりと澄んでいる。改札を抜けてすぐに、WPÜ HAKONE を見つけた。

ロビーには、ほぼ毎月移り変わるアート作品たち。心地よい音楽のなか、ゲストたちが思い思いに過ごしている。

「こんにちは。お待ちしてました」

明るい声で迎えてくれたのは、支配人の岩永さん。飾らないフランクさに緊張もほぐれる。

文房具店の接客スタッフから、WPÜへ転職。フロント、そして支配人へと、WPÜ HAKONE の成長とともに歩んできた。

取材は4回目。どんな思いで新しい仲間を探しているのかを聞いてみる。

「採用を重ねていくなかで、やっぱり私たちらしさって、ここで働く『人』そのものなんだなって、あらためて気づいたんです。条件で選んでもらうのではなくて、ちゃんとその人を見つめて、仲間を探したいんですよね」

過去のフロントスタッフ募集では、カルチャーに深く共感する出会いに恵まれた。

けれど続くダイニングスタッフでは、「この場所に混ざりたい」という想いを持つ人が集まったものの、互いの思い描く働き方やタイミングが合わず、最終的な内定者はゼロという結果に。

「この場所でどんな人が働いているかが伝わることが、私たちの良さを知ってもらう一番の近道だと思っていて。よく言う職種経歴なんかも、その人を形づくっているものだからもちろん大事。でも、それだけじゃないなって」

「私はもっと、その人がなんで働く先にホテルを選んだのか。これまでにどういう経験をして、何を感じて、どんな出会いを通して今のあなたになったんだろう、ということのほうが気になるんですよね」

面接でも、決まった質問は用意していないという。

履歴書を見て、「出身はどちらですか?」とか、どんな人でも話しやすいじぶんごとをおしゃべりのように聞いていく。もちろん、岩永さん自身のこともさらけ出す。

「淀みなく答えられることよりも、飾らない言葉で対話できるかどうか。そして、根底に『人が好き』という気持ちがあるか。そんな感覚のあう人たちが、結果的に今一緒に働いてくれていて」

働く人たちの飾らない在り方は、ホテルのらしさそのものにつながっている。

WPÜ HAKONEには客室や温泉だけでなく、ダイニングレストラン、アートギャラリー、も備わっている。

知り合いの作家さんつながりでアート展示も変わっていくし、スタッフ起点でコーヒーのPOPUPも開かれる。

夜には宿泊客以外もダイニングを利用できるから、地域の人たちと国内外のゲストとの間で自然と交流が生まれていく。

ホテルでありながら、さまざまな人や文化が入り混じる、「広場」のような機能もある。

スタッフのマニュアルもなく、その人らしさが現場でのしなやかな対応につながっていく。

働くスタッフの熱量や興味、得意なところを総合的に見つめながら、適材適所でフロントやダイニングといった職種を横断できる働き方も目指していけたらと考えている。

岩永さんも支配人でありながら、できる限り現場に入ることを意識しているそう。

「よくいうマルチタスクって、人手不足の言い訳みたいだけれど、WPÜで目指すのはそうじゃない。『やらされてる』っていう気持ちにはなってほしくないなと思っていて。オペレーションだからやるっていうよりは、今、目の前にそのお客さまがいるからこれをする。シンプルな気持ちで、無理なく自分らしい仕事の形をつくっていってほしいんです」

 

自分らしい仕事の在り方を探っているのが、フロントスタッフの大西さん。

福岡の大学に通っていたころからホテルのアルバイトを経験。海外からのゲストと関われる場所で働きたいと、WPÜ HAKONEで働き始めることに。

入社して2年と少し。昨年末の募集を経て新しく加わった3名のスタッフに、仕事を教える立場にもなっている。

「前までは私が教えてもらう立場だったんですけど、一気に教える側に立つことになって。毎日試行錯誤です」

フロントの仕事は、ゲスト対応や予約管理だけでなく、クレンリネスやベッドメイクなど多岐にわたる。

フロントのメンバーが充実しているときは、状況を見ながらレストランの洗い場に入り、現場のサポートに回ることもある。

「オールラウンダーには、すごく憧れます。フロントだけでなくダイニングでも顔を合わせることで、ゲストのことをもっと知れる。ソファーよりテーブル席が好きだなとか、エアコンの風が苦手なんだなとか」

「些細なことだけれど、それに気づけたら、『明日の朝食はあの席に案内しよう』って引き継ぎもできるじゃないですか。全体を見渡せるポジションだからこそ、ゲストのことも一緒に働くスタッフのことも、もっと深く知っていけるんだと思います」

ゲストの9割を海外旅行客が占めるなか、英語でのやりとりもすっかり暮らしの一部。はじめはほとんど話せなかったものの、毎日フロントに立つなかで身につけていった。

「以前、フランスから来たご家族で小さなお子さんがいて。とてもシャイで、最初はお父さんの後ろに隠れて、もじもじしていて。けれど言葉や声、表情でコミュニケーションをとるうちに少しずつ心を開いてくれて。チェックアウトのとき、自分で描いた絵をプレゼントしてくれたんです」

「疲れも吹き飛ぶし、こんな瞬間のために日々頑張ろうって思えるんですよね」

日々少しずつ視野を広げながら、大西さん自身も仕事に遊びを取り入れ始めている。

たとえば、ゲストがくつろげるよう、部屋ごとにカセットテープを置き始めた。

「WPÜ SHINJUKUでご縁のあったカセットテープ製作の会社さんや、中目黒にあるカセットテープのお店の方にお声がけしたり、スタッフで選曲して計40本セレクトして。どんな音楽に出会えるかは、お部屋に入ってからのお楽しみです」

いまはアメニティに置くスキンケア用品のアップデートも進めているところ。

「やっぱり自分が使いたいと思えるものがいいなって」と、日々の調べものも楽しそう。

 

今回ダイニングの仕事に携わるにあたり、調理技術や経験はなくても大丈夫。

「技術的なことに関しては、今いるスタッフが支えてくれる。未経験でも、彼らの胸を借りるつもりで、安心して飛び込んできてくれたら」

そう話すのは、ダイニングの店長を務めつつ、ホテルのブランディングにも携わる加藤さん。

「何をつくるかももちろん大事で。それ以上に、なんでつくるかをとことん考えるんです」

「それは、日常にある豊かさを感じられるかどうか。それを表現する方法として料理があるっていう考え方でいいんじゃないかなって、自分は思っているんです」

表現としての料理。

顔に“?”を浮かべていると、実際の料理を例に出しながら説明を続けてくれた。

「たとえば、最近リリースした夏メニューで、温暖湿潤な富士山の麓で育つ箱根西麓三島野菜を使った燻製オイル焼きがあって」

「一つの料理に対して、おしゃれで、美味しそうで、熱そうで、っていう平面的な情報だけで捉えるんじゃなくて。たとえば、その野菜がどこで採れたのかとか、どういったゲストの方がどんなカトラリーで食べるのかとか」

たとえば野菜をグリルして出すときも、カットしてあるほうが食べやすいけれど、あえてそのままのものもあったり。ナイフとフォークを使って、食材を感じながら食べてもらう。

一皿に至るまでの背景や、口に運ぶまでの体験といった奥行きをつけていく過程そのものに、加藤さんは豊かさを感じている。

「世界各国からいろんな旅人たちがやって来るんです。年齢も国籍も、訪れる動機もバラバラ。だからこそ、料理にも幅を持たせやすい」

「うちの料理は、あえて言うなら『多国籍料理』なんです。イタリアンやフレンチベースがあるけど、そこにとらわれすぎないというか」

そう言いながら、加藤さんはカラフルな分厚い本を何冊かテーブルに広げて見せてくれた。

イタリアのカンパニア州の美しい写真や、現地の暮らしが伝わるようなページ。別の本は、各地方に眠る食のルーツを探るような内容。好きで集めている、“食”にまつわる本なんだそう。

「たとえば、『人間は平たいパンで肉を巻く』っていうテーマがあって。穀物って世界中どこでも手に入りやすく保存もきくから、加工してパンにする文化がある。それとそのまま手でお肉を食べると手が汚れてしまうという価値観が相まって、パンで巻いて上品に食べるんですよね」

ブリトーやタコス、肉まんのように、一見違う国の料理でも「パンで肉を巻く」という要素は世界中でつながっている。

「そういう世界共通のルーツを元に、じゃあうちなりに、箱根なりに解釈したらどうなるかなって。いろんな国から来たゲストの方がそれを食べて、自分の国にも似たような料理があるなってノスタルジーを感じてくれたら面白いですよね」

完成されたレシピをなぞるのではなく、なぜその地域でその料理が生まれ、親しまれてきたのか。社会学のようなアプローチで、文脈を紐解いていく。

日本酒と牛乳、生クリームを組み合わせたカクテルなど、お酒のセレクトについても同じように考えている。

いまはこれからのシーズナルメニューの構想の真っ只中。

次回のメニューは、「海・山・大地」という3つのテーマに分けて構成しようと考えているそう。

「海なら相模湾の魚介類、山ならきのこや野菜、大地ならパスタや豆などの穀物といった具合に、自然の要素で分けてみようと思っていて。箱根は神奈川や静岡、山梨などのちょうど中間地点なので、地域や食とつながりを見つけやすい。いまが一番面白いフェーズですね」

「もちろん、メニューはダイニングメンバー全員で決めていきます。新しく入る人も、やわらかい視点でなんでもアイデアをもらえたらうれしいです」

 

誰かが決めたルールや世間の常識に身を委ねるのではなく、一人ひとりが自分の「在り方」を大切にする。

ここで日々を過ごすことは、自分をより伸びやかにしていくことにつながるはず。

自分に素直な仕事をしたいと思うなら。箱根の澄んだ空気を吸いにいってみてください。

(2026/07/01 取材 田辺宏太)

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