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木材、食材、遊び場?
高島の森林資源を
ビジネスに変える

この記事は、高島市地域おこし協力隊募集を行う「オールたかしま」の特集記事です。

「オールたかしま」は、高島のみんなで地域を漕ぎ進めていくプロジェクトです。

木、木、木、木、木、木、木、木、木… 目の前に広がる森林。いったい何本あるのだろう。

日本の面積の67%は森林だといいます。すると、面積の72%を森林が占める滋賀県高島市は、日本の縮図なのかもしれません。

高島市の森林から、あらたな価値をつくる人を地域おこし協力隊として募集します。木材や食材や遊び場が生まれる森に興味ひかれる人が来てくれるとうれしいです。

 

京都駅からJR湖西線に乗って、滋賀県高島市へ向かう。電車の進行方向に向かって右手に琵琶湖が広がり、左手には森林が続く。

最初に向かったのは、JR新旭駅前にあるTAKASHIMA BASE。築50年の空き家をリノベーションし、カフェ、書店、リソグラフスタジオとして運営している。

この空間の建築設計を4年越しで手がける人がいる。STUDIO MONAKAの大塚さんだ。

2025年には、書店の本棚をつくった。約1,000冊の本が並ぶ本棚には、高島のスギが使われている。

外国産の木材を使えば予算を抑えることもできたけれど、せっかく高島で本屋をするのだから、森とつながる想いを込めて高島の木を選んだ。

「相談したのは、高島市森林組合。小ロットでしたが、快く引き受けてくれました。節(ふし)のない高島のスギを、グループ会社の製材所ITOGENで挽いてもらったんです。年輪が絵のようにきれいな板ですよね」

木材市場を通さず、原木を直接流通させるからこそ実現した高島スギの本棚。

この木はどこからやってきて、どんな人たちが関わっているのだろう。川下から川上を訪ねてみたくなり、高島市森林組合へと向かうことに。

車で約15分。県内で2番目に水量の多い安曇川(あどがわ)沿いを進んでいくと、だんだんと山が迫ってきて、やがて朽木地域に入る。

ここに高島市森林組合はある。2,369人の組合員が出資しており、20名ほどが職員として働いている。

事務所で迎えてくれたのは、向井さん。

新卒で働きはじめて4年目。はじめの2年間は森林で木を伐り、今はプランナーとしてはたらく。組合員の所有する森林経営の価値を高める仕事だ。伐採も計画づくりも、どちらも林業だという。

「林業って『木を伐ります。植えます。育てます。』という仕事だと思っていたんですけど。働きはじめてから、それらの前後の仕事がたくさんあることに気づきました」

たとえば、木を伐る前には現場調査を行い、森林の未来構想を描く。その上で提案書をつくり、組合員と契約を交わしてから、ようやく伐採がはじまる。

伐採が終わると、次の苗木を植えて、育てていく。自動車の入れない山の斜面を、50本の苗木を背負って進んでいくこともある。

「大学の教室では学びきれなかったことや教科書には書かれていなかったことが、森林にはあります」

林業を営む家に生まれた向井さん。将来は家業を継ぐ予定で東京の大学に進み、林業を学び、就職先を探していた。一生森林で生きていくのだから、未来の自分を助けてくれるような成長できる職場ではたらきたかった。

高島市森林組合を知ったきっかけは、『森と。杣と。』という広報誌だった。

「ふつうの雑誌みたいに林業のことが書かれていることに驚いたんです」

ここで見せてもらったのは、vol.29。その表紙は、森林の木を伐る風景の空撮写真。

「樹種の違いがわかりますか?右手がスギで、左手はコナラです。木には針葉樹と広葉樹があって、スギやヒノキは針葉樹で、コナラやカシは広葉樹。こうして、針葉樹と広葉樹がミックスされているのが、高島市らしい森林の風景。滋賀の森林は、広葉樹が多いんです」

木炭の原料となるコナラやカシが多いのは、人の手で植えたから。かつて高島は、木炭の一大産地として栄えた。木炭は京都市内まで届けられ、七輪や火鉢、こたつ、お風呂の湯沸かしまで、暮らしを支えた。

「今もコナラやカシの森に入っていくと、ふいに炭窯跡が現れて『えっ、こんなところで木炭をつくっていたの?』と驚かされます。伐った木を運ぶのは大変だから、森のなかで、木炭に加工したんです」

話を聞いていると、高島の森林が「たくさん木のあるところ」から「人の暮らしとつながる資源」へと見え方が変わっていく。

向井さんはさらに続ける。

「森林の役割は、木材の供給だけではありません。雨水を貯めて少しずつ水を川へ流すことで、土砂崩れや水不足を防いでくれます」

なるほど。木は伐ることで価値を生むのではなく、山に植わっていること自体に価値があるようだ。

高島市森林組合では、森林資源の多様な活用方法を実践している。

はじめに林業のど真ん中といえるのが、伐り出した木材の販売。品質や太さ、曲がり具合などに応じてABC材に分類される。くわえて、薪ストーブ用の薪、製紙や燃料用のチップ、しいたけ栽培用のホダ木やおが粉にも活用する。

また、子どもから大人まで幅広い世代の人に、森と木に親しんでもらうイベント「Re-Woods」の開催も行う。さらに2026年から、びわ湖の固有種ビワマスを育む森づくりをはじめている。

 

活用方法が多様だから、生まれる仕事も、はたらく人も多様になる。ここで紹介されたのは、2025年4月に転職した櫻井さん。前職をたずねると、一枚の写真を見せてくれた。

「プロキックボクサーです。ぼくは大阪市東成区というほとんど緑のないまちで生まれ育ちましたが、自分の子どもには、自然ゆたかな環境で育ってほしかったんです」

移住候補地として京都の美山、兵庫の養父や丹波篠山も訪ねた上で、住宅・教育環境を考えて、現在に至る。

せっかく移住するのだから、大阪ではできない仕事をしてみたいと高島森林組合へ。櫻井さんの仕事は、木を伐ること。林業では搬出間伐(かんばつ)といって、木を伐り、運び出していく。

前職も体が資本の仕事とはいえ、対人と対自然では、変化も大きい。

「リングでは『足を止めるな』と言われました。けれど森林では、むだに動き回らないことが大切。足場が急斜面の場合、うっかり一歩動いて、転倒するリスクもありますから」

達成感を感じるのは、木が倒れる瞬間。

「狙ったところに木が倒れると、気持ちいいですね」

今は朽木地域の現場を担当している。一つの現場を仕上げるまでには数ヶ月がかかる。森林に人の手を加えていくことで、数ヶ月後の新しい風景をつくる仕事でもある。

木を伐る仕事は、レベルアップの連続。未経験でも「緑の雇用制度」を活用して、働きながら林業技術を学んで、林業の研修やキャリア支援を受けることができる。櫻井さんは資格取得を進め、重機も扱えるようにチャレンジしているところ。

 

そんな向井さんと櫻井さんを、見守る人がいる。

組合長の清水さんだ。

大学で建築を学んだのち、滋賀県庁へ建築技師として入職。移住促進、福祉のまちづくり、公共施設の木造化などに取り組んできた。

55歳で早期に退職すると、岡山県西粟倉村を拠点とするエーゼログループへ合流。その後は地元の高島市で、森林をはじめとした地域資源を活かす活動にチャレンジしている。

そんな清水さんは、先祖が植えて育ててきた木を伐り、自宅を建てた。

「これってすごく意味があることやなと思ったんです。木材として使えるように残してくれた先祖の思いをちゃんと受けとることができたような気がして」

その経験から、地産地消の家づくりを広げていこうと「安曇川流域・森と家づくりの会」も立ち上げ、まさに森林資源をビジネスにしている人。

今回の地域おこし協力隊募集について聞いてみる。

「森林組合の職員である向井さんと櫻井さんを『ガチ林業勢』とすると、今回募集するのはあらたな視点を持ち、林業に関わっていく人。資格や経験は問いません。プロダクト・ストーリー・DXによる業務効率化など、いろいろな可能性を提案してもらえたら」

ほんとうにどんな人でもよいのだろうか。

「一つだけ!林業・森林・木材がだいすきな人がきてくれたら。ぼくは、森林さえあれば人は生きていけると思っているんですよ。伐り出される木材はもちろんのこと、きのこ、山菜、野草、ジビエといった食材、獣皮、水、燃料、鳥や虫などの生きもの、空気、トレイルや遊び場としての空間、景色、そして安心まで、森林には全てのものがあるんです」

地域おこし協力隊の任期は最長3年間。高島市のゆたかな森林資源をビジネスに変える方法について、取り組んでほしい。

最後に清水さんは「まだ記事には書けないんやけど」と前置きした上で、これからはじまるプロジェクトを紹介してくれた。

高島市内のプロジェクトから、高島市外のプロジェクトまで。一枚の板が必要となるプロジェクトから、何百本もの木材が必要となるプロジェクトまで。

全てのプロジェクトにはある共通点があった。それは、高島市森林組合だけでがんばらないこと。市内、県内、国内と多様なセクターの人たちと出会い、つながることで、ゆたかな森林資源をビジネスに変えようとしている。

その先にあるのは、人も生きものも森林もゆたかな高島だ。

話を聞いているだけなのに、ワクワクしてくる。たまらず「なんだかおもしろそうですね」と口にすると。

「そう!そんな感じで飛び込んでもらえるといいかな」

あなたは、どんなビジネスを形にしていきますか?

オールたかしまは、地域を漕ぎ進める仲間を募集しています。

(2026/8/28 インタビュー 大越 元)

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