求人 NEW

たしからしさを積み重ねる
カフェではなく
コーヒー会社として

「なんとなくコーヒーを提供するだけなら、明日から誰でもはじめられるんです。でも、コーヒーをつくる一連の流れを突き詰めていくと、個人でできることには限界があると気づく」

「私たちはコーヒーショップではなく、コーヒー会社です」

1990年に創業したスペシャルティコーヒーの専門店、堀口珈琲。

まだ世の中にその言葉が浸透していなかった時代から、感覚に頼りがちだったコーヒーの味づくりを科学的・論理的に体系化し、「コーヒーのおいしさとは何か」を探求し続けてきました。

今回募集するのは、堀口珈琲の総合職。

入社後はまず店舗に立つところからはじまり、いずれは焙煎や流通、生豆の調達など、コーヒーに関わるさまざまな専門性を極めていきます。

まるで研究者のように、コーヒーと向き合う人たちが集まる会社です。

 

横浜の元町・中華街駅から港のほうへ歩いて高速道路沿いに出ると、大きな倉庫が並び、大型トラックがひっきりなしに行き交っている。

その一角に、三角屋根のロースタリーを見つけた。

扉を開けると、コーヒーのいい香りに包まれる。天井全体に木材が使われ、自然光が入るからか、明るい気持ちになる。

見学通路はガラス張りで、一連の作業工程がわかるようなつくり。

「日本に届いたコーヒーの生豆を焙煎し、パッケージング、そして出荷するまでの流れを見ていただけるように設計しているんです」

教えてくれたのが、代表の若林さん。2階のミーティングスペースへと移動し、コーヒーをいただきながら話を聞くことに。

若林さんが堀口珈琲に入社したのは、今から20年ほど前のこと。

当時の堀口珈琲は、将来自分のお店を持ちたいという独立志向の強いスタッフが多く、若林さんもそのひとりだった。

「抽出を学ぶために、堀口珈琲のセミナーに参加したんです。そこで技術云々の前に、『そもそも原料の品質が良くないと絶対に美味しくならない』という話を聞いて。帰りに豆を買って飲んでみたら、今まで飲んできたものと全く違った。その衝撃が、入社のきっかけですね」

日本でスペシャルティコーヒーが認知され始めたのは2000年代以降、いわゆるサードウェーブコーヒーが台頭した2010年代には広く知られるようになった。

堀口珈琲は、それよりずっと前から、おいしいコーヒーとは何かを求め、原料の品質、つまりは生豆の調達などの川上の仕事から向き合いつづけてきた。

「コーヒーの品質は、原料から焙煎、抽出へとバトンを渡していくリレー方式で決まる。原料の時点で品質が落ちているものは、その後にどんなに頑張っても絶対に挽回できないんです」

創業当初は、原料の生豆を問屋から仕入れていた状況だったけれど、豆そのものの品質に自分たち自身でしっかりと責任を持ちたいと、まだネットもない時代に、海を渡り、生産者さんのもとに足を運ぶように。

仕入れた豆は、当時の世田谷店の2階にあった研究所で、焙煎・テイスティングを繰り返す。

風味や味わいを分析し、品質を上げるための要望を包み隠さず生産者に伝える。そして良いものができたら、適正な価格で継続して買う。

創業者の堀口さんが、ひとりで切り拓いてきた品質追求の道。店舗業務の傍ら、若林さんも次第に加わることになっていく。

最初は堀口さんに同行していた生豆の調達も徐々に一人で行うようになり、10年以上かけて新たな生産者との関係を構築し、堀口珈琲の取り扱う生豆の種類と品質を高めてきた。

「仕入れに慣れてきたころ、そろそろ独立してもいいかなと一度だけ考えたことがあって」

「ただ、ふと思いとどまったんです。自分一人でこれだけ質の高い生豆を世界中から揃えて、その上で焙煎や抽出までしっかりとやりきるのは無理だろうなって」

コーヒーの生豆は、気難しい農作物。

たとえば、船で運ぶには、熱によるダメージを防ぐために冷蔵機能のあるコンテナを使う。日本に着いてからも、港に近いロースタリーで適切に温度管理をして、品質を落とさずに焙煎する。

さらに、品質について生産者と対等にコミュニケーションをとるのも、十年二十年という時間の積み重ねがあって成り立つもの。

「考えれば考えるほど、堀口珈琲を超えるコーヒーをつくり続けるのは無理だと痛感したんです」

コーヒーをつくるすべてのプロセスに、個人の枠組みを超えたスケールで関わり、品質を追求し続ける、コーヒー会社として。

若林さんは、この会社でコーヒーを探求する道を選んだ。

根っこにあるのは、世の中のスペシャルティコーヒーの基準を問い続けること。

「スペシャルティコーヒーは歴史が浅いぶん、明確な基準が定まりきっていない側面がある。環境に配慮しているから良いとか、なんとなくで語られてしまうことも多くて」

だからこそ堀口珈琲は、消費者だけでなく、同業者にとっても手本となる発信を続けている。

たとえば日本スペシャルティコーヒー協会のイベントなどでも、あえて「スペシャルティコーヒーとは何か」という根源的な問いを投げかける出展を何年も続けてきた。

「感覚や雰囲気に終始する議論では意味がありません」

「風味や味わいのデータを客観的に積み上げる。多角的な視点から、決してごまかしのない『たしからしさ』を追求する。それが僕らの役割であり、責任だと思っています」

 

そのたしからしさを裏付けるために、生豆の品質チェックの責任を担っているのが、大瀧さん。

「代表の苦労話は知らなかったので、感心しながら聞いていました。コーヒーのおいしさに衝撃を受けて人生が変わったのは、私自身とも重なりますね」

アルバイト先の先輩が淹れてくれたコーヒーがきっかけで、おいしいコーヒーを探すようになり、たどり着いたのが堀口珈琲だった。

入社後は世田谷店で接客を4年経験したのち、焙煎担当として8年。そして現在の品質検査を担当して10年になる。

実際の検査の様子を収めた動画を見せてもらう。

生豆を木製のふるいに投入し、全体を揺らす。豆は網目のサイズに合わせて落ちていき、大きさによって8段階に振り分けられる。それをボウルに取り出し、サイズごとに正確な重量を量る。

黒いマットの上に豆を広げ、一粒一粒を目視で確認していく。虫食いや欠けなど、味を濁らせる欠点豆を徹底的に弾き出し、その種類と粒数をサイズごとに数える。

そしてパソコン上で、グレーディングと呼ばれる品質評価表に数値を叩いていく。

エクセルには、生豆の水分値や、欠点豆の数など、風味に悪影響を及ぼす項目がずらりと並んでいる。

一つのサンプルを調べるのに20分から30分かかり、日によってはこれを20回以上繰り返す。

最後は、実際に焙煎して風味も確かめる。

数値と風味との因果関係を見ながら、風味の基準を論理的に構築していく。

「ここまで精緻にデータ化しているからこそ、妥協のないコミュニケーションがとれる。そうすれば、生産者も納得して品質改善に動いてくれるんです」

たとえば、「小さなサイズの豆に欠点が多い」と明確になれば、生産者に対して、ふるいで分けてから送ってほしいと、歩留まりを上げるための具体的な改善提案ができる。

ほかにも、「未熟な豆がこれだけ混ざっているから、味わいに青臭さが出ている」「水分値が基準より高いので劣化のリスクがある」など。

「自分を通して、買い付け担当や、海の向こうの生産者、その間を繋ぐ輸出入業者など、生豆の品質に関わる方たちにすべてがアウトプットされていきます。だからこそ自分は、できるだけ高性能なフィルターでありたい」

生豆の評価基準については、若林さんに今でも確認をとり、時には厳しい指摘を受けながら自身のブレを修正し続けている。

さらに、ロースタリーで焙煎された製品の品質チェックも担当。お客さんが飲むタイミングを想定して、焙煎から7日後にテイスティングし、現場のロースターとすり合わせる。

「理想の風味に届かなかったときは、なぜかを常に反省する。求め続けている限り、永遠に完成することはないんです」

「一つひとつの仕事は地味ですけど、自分の精度が上がるほど、生産者への有益なフィードバックになり、最終的には誰かにおいしいコーヒーを届けることにつながる。それが楽しいというか、面白いんですよね」

 

生豆の調達、品質管理、そして焙煎を経て。最後にバトンを受けとるのが、小野寺さん。

オンラインストアの特集記事の執筆などを担いつつ、週の半分は店舗に立ち、焙煎や接客も行っている。

もともとは書店員。日本仕事百貨の記事を読み、堀口珈琲に入社した。

「自分の手前に、丁寧な仕事の積み重ねがある。それを一身に背負うわけですから、めちゃくちゃプレッシャーのある仕事ですよ」

そのために小野寺さんが意識しているのは、「コーヒーをつくるように文章を書く」こと。

「品質管理を担う大瀧が一粒一粒の生豆を確認するように。味づくりを担うブレンド担当者が配合を微調整して“おいしさ”をつくるように。細かい部分まで意識を巡らせて言葉を選びます」

「書き上げたあとも、何度も読み返して文章を磨きます。素晴らしいコーヒーをつくる生産者に敬意をもって、表面的で雑な文章ではなく、きちんと“伝わる”文章を書きたいと思っています」

たとえば、コーヒーの「焙煎度」をテーマに特集記事を企画したときのこと。

題材にしたのは、エチオピア産ナチュラルのコーヒー。

販売するのは中浅煎りから深煎りまでの3種類の焙煎度のコーヒーだけれど、記事の執筆にあたり小野寺さんはロースターに頼み、8段階の異なる焙煎度でサンプルを煎り分けてもらった。

それぞれの味わいを確認した上で、なぜ堀口珈琲ではエチオピア産ナチュラルのコーヒーを中深煎り~深煎りで仕上げることが多いのか。フルーティーなエチオピアの豆を深煎りにするとき、焦がさずに果実感を引き出すにはどれほど繊細な技術が求められるのか。

ロースターたちの感覚や知見をヒアリングし、自分のなかに落とし込む。そうすることで、はじめて読者に伝わる記事が書ける。

記事の公開後、お客さんから一通のメールが届く。

「『今まで自分は浅煎りが好きだと思い込んでいたけれど、記事を読み深煎りを飲んでみたらそのおいしさに気づいて、コーヒーを楽しむ選択肢が広がりました』って。ただおいしいコーヒーを飲むだけでも楽しいですけど、背景を知り、知識が加われば、スペシャルティコーヒーの楽しさが2倍にも3倍にも膨らむんです」

「自分の仕事がお客さんの生活を豊かにできたと実感できて、本当に苦労した甲斐があったなと思いましたね」

 

現在、堀口珈琲には41名の社員が在籍している。

そのうち24名が店舗に、14名が製造・流通に関わっている、そのほかに企画広報、総務、営業、そして生豆の調達などを担う社員もいて、店舗や製造・流通と兼務しながら業務に当たっているものがほとんど。それぞれの立場からコーヒーに関わっている。

全員がまずは店舗からスタートしつつ、その先のキャリアや、次のステップへ進むまでの期間は人によってさまざま。

自分の一生を投じてもいいと思えるようなポジションを見つけ、研ぎ澄ましていく。そんな長期的なキャリアを描ける環境だと思います。

(2026/03/03 取材 田辺宏太)

問い合わせ・応募する

おすすめの記事