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コーヒーの世界は奥深い。
以前は、おいしいかどうか、深煎りか浅煎りか、それくらいしかわからなかったけれど、最近は自分の好みが少しずつわかってきました。
堀口珈琲と出会ってコーヒーの楽しみ方を知ったことで、以前より胸を張って好きだと言えるようになった気がします。
堀口珈琲は、スペシャルティコーヒーの専門店。
世界各国の生産者とコミュニケーションを取りながらコーヒーの生豆を調達し、自社ロースタリーでじっくりと焙煎。日々、最高品質を目指してつくったコーヒーをお客さんに提供しています。
今回募集するのは、東京都内の各店舗で働くスタッフ。まずは基礎的なスキルを身につけ、店長やその後の幅広いキャリアパスも見据えて働いてほしいそう。
コーヒーの専門知識は、入社してから学ぶことができます。コーヒーが好きで、もっと知りたい。そんな気持ちが何よりの原動力になると思います。
訪れたのは、堀口珈琲世田谷店。小田急線の千歳船橋駅から歩いて数分の商店街にある。
開店前のお店では、スタッフのみなさんがフードの下準備や掃除など、テキパキと動いている。
その一角で話を聞いたのは、代表の若林さん。店舗や焙煎、生豆の調達など幅広く経験し、一昨年から代表を務めている。
「スペシャルティコーヒーという言葉がまだ全然浸透していない時代に、初めてここを訪れました。当時でも『グアテマラ産コーヒー5種類飲み比べ』なんてやっていて、一体このお店はなんなんだろう?と思いましたよ」
1990年、現会長の堀口さんがこの地ではじめた堀口珈琲。当時はスタッフもコーヒーの修行にきたような人ばかりの、マニアックな店だった。
より多くの人に知ってもらえるよう、リブランディングに取り組みはじめたのは、2012年。
ロゴやパッケージデザインの一新に加え、「THE NEW COFFEE CLASSIC」というブランドコンセプトを新たに掲げるなど、ブランドのあり方を明確にする活動に取り組みはじめた。
多数あったブレンド商品を先鋭化することで、1から9の番号を振った渾身のブレンドも誕生。今では看板商品となっている。
「商品を手に取ってもらえる機会が増えて、会社も成長していきました。そんななかでも、多くの人に届ける努力をしながら、個人店のような丁寧さと品質を保ちたい。その両立のためにつくったのが、横浜のロースタリーです」
「おいしいコーヒーをちゃんとつくって、品質で勝負する。その堀口珈琲の根幹を、守り続けたかったんです」
そこからが第二の変革期。
商品の味わいをあらためて見直し、WebサイトとECサイトを一新。コーヒーの味わいだけでなく、こだわりを伝えるための発信にも力を注いできたのが、ここ数年のこと。
一つひとつ変革を重ねてきた堀口珈琲。そのひとつの仕上げにあたるのが店舗の強化だと、若林さん。
「コロナ禍も少し落ち着いてきて、Webで堀口珈琲を知ったお客さまが、お店に足を運んでくださる日が絶対に来るはず。これからは店舗の整備に力を入れる段階だと思っています」
「ただ、箱や仕組みを整えるだけでなく、なかで働く人たちの技術やサービス、考え方が伴わないといいお店にはならない。製造の現場から提供するお店までが、滞りなく流れていかなければいけないと思うんです」
スタッフの挨拶や接客、インテリアやカップ、お店に流れる空気感。
こだわりを持ってコーヒーをつくり続けてきた堀口珈琲だからこそ、店舗で提供するすべての体験は、そのコーヒーの良さを相乗的に高めるようなものにしたい。
「そんなお店をつくるために、働く人にはコーヒーはもちろん、堀口珈琲を好きになってもらいたいですね。うちの会社の人間って、うちのコーヒーが好きなんですよ。自分たちが本当に飲みたいと思えるものを提供し続けられているのが、いいところだと思っています」
「それと、いいものを生み出す努力だけでなく、発信することもすごく大切です」
「商売に興味ありません、最高の一杯を追求したいです、ではなくて。お客さんに飲んでもらって対価をいただけるから、最高の一杯にチャレンジできる、おいしいコーヒーを守り続けられる。そんな感覚を持ってコーヒーの楽しみ方を広くシェアしていってほしいですね」
そんな若林さんの言葉を、最前線である店頭で体現しているのが、入社5年目の峯田さん。
学生時代からコーヒーが好きで、前職では営業としてコーヒーに関わっていた。
初めて堀口珈琲を訪れたときのことは、今でもよく覚えている。
「入った瞬間、焙煎した豆の香りにふわっと包まれて。接客してくれた店員さんの知識量がものすごかったし、出てきたコーヒーもすごくおいしくて」
「ブレンドの7番を飲んだんですけど、自分が知っている深煎りと全然違ったんです。苦くなく、飲みごたえがあって甘みもある、きれいな味わい。いろんなお店を訪れたけれど、それまで出会ってきたものにはない説得力を感じました」
よりコーヒーの専門性を高めたいと、転職を考えたときに真っ先に浮かんだのが、堀口珈琲だった。
「あのときの体験が強烈だったから、今日来てくれるお客さんに一人でも多く、自分と同じような体験をしてほしい、という気持ちで働き続けられています」
峯田さんの名刺の裏には、数字の「7」が大きく書かれている。ここには、スタッフそれぞれが好きなブレンドの番号を入れているそう。峯田さんの7には、原点を忘れずに、という想いが込められている。
入社後、接客に加え焙煎豆の出荷も担当してきた峯田さん。3年前から働く世田谷店では、店頭販売を担当することが多い。
届けられる人数に限りがある喫茶と比べると、収益的にも、より広く届けられるという意味でも、焙煎豆の販売は重要視されている。
「どうすれば自宅でより楽しんでもらえるか、このコーヒーの良さはどこなのか、専門知識を持たないお客さまにもわかりやすく伝えることを意識して接客しています」
大切なのは、目の前の相手に合わせた伝え方の工夫。
コーヒー初心者のお客さんには、「比較的苦味が少ないですよ」「すっきりとした味わいです」など、噛み砕いて表現する。一方、コーヒーに詳しそうなお客さんには、産地や精製方法など、専門的な説明を加えると喜んでもらえる。
「ただ、一度覚えたことを言い続けるわけではなくて。毎年入ってくる豆の味わいも違うし、店頭に並ぶラインナップも異なるので、その時々でベストな伝え方を心がけます。高いモチベーションで、どんどん新しい情報や味わいをインプットし続けるのは大変な部分ですね」
お客さんに限らず、スタッフ同士で味わいを共有するのも大切なこと。
スタッフには20〜30代の若手が多く、必ずしも長くコーヒーを嗜んできた人ばかりではない。特にアルバイトスタッフには初心者も多く、知識量も人によってさまざま。
そのため各店舗では毎月、ミーティングや試飲会を通して、コーヒーについて学ぶ機会を設けている。
品種や産地について学んだり、ときには深煎りのコーヒーを飲み比べしたり。知識を身につけるだけでなく、どんなふうに伝えるか?という部分もみんなで話し合う。
「コーヒーの専門的な接客に苦手意識を感じていたスタッフが、試飲会を経てすごく説明が上手になって、お客さんがそれを楽しそうに聞いていたり、一口飲んで『このコーヒーは〇〇ですね』ってわかるようになったり。そういう姿を見るのは、僕もすごくうれしいですね」
「新しく入る人も、峯田さんのように、スタッフの小さな成長を一緒に喜べる人だといいなってすごく思います」
そう話すのは、入社9年目で、世田谷店の店長を務める細山さん。
もともとはコーヒーを含む輸入食品のお店で働いていて、飲食業界で転職先を探していたときに堀口珈琲と出会った。
「当時は、コーヒーは国によって味わいが違う、くらいの認識しかありませんでした。お店を訪れてみると、初心者のわたしにもすごく心地よい接客をしてくれて。お客さんをちゃんと見て話をする会社なんだな、ここで勉強したいなと思いました」
先輩に教わりながら、少しずつコーヒーの知識を習得。とはいえ、毎週のように新しい豆が入荷するので、インプットには苦労したそう。
「行ったことのない産地のことを、自分の言葉に置き換えて説明するのは、今でも大変です。でも、堀口珈琲のコーヒーが本当においしくて、携わる人たちの想いを知っているので、もっと勉強しようという気持ちが湧くんです」
自分が店長になるとは思っていなかった、と話す細山さん。店長になって2年、採用や人材育成、売上管理などに取り組んできた。
「バックヤードで管理するだけでなく、みんなと同じようにお店にも立ちます。現状把握をして改善するのが一番の仕事だと思うので、現場に出るのはすごく大事ですね」
「特に人材育成では、スタッフと丁寧にコミュニケーションをとって、不明点や疑問点は早めに解決すること、成長した部分はしっかり褒めることを心がけてきました」
たとえば、技術の習得が難しいカプチーノを練習中のスタッフがいたとき。「前回よりここが良くなったよ」とこまめに声をかけることで、成功したときに自然と報告してくれるサイクルが生まれ、周囲のスタッフのモチベーションにもつながっていった。
店舗での経験を活かして、仕事の範囲を広げていくこともできる。
商品開発にも携わっている細山さん。
今年の夏は、桃風味のコーヒースカッシュを開発。一般的に副材料に頼りがちなアレンジドリンクも、コーヒー本来の味を楽しめるものに仕上げている。
「お客さまの反応を直に見られるので、すごくやりがいがあります。一度つくって終わりではなく、お客さまの声も参考に、必ず毎年味わいの見直しをして、よりおいしく提供できるようにしています」
堀口珈琲では、店長がゴールではなく、社内の各部署で活躍してもらうキャリアパスを想定している。
今後は、さらに仕事の幅を広げていきたいという細山さん。何か取り組んでみたい仕事はありますか?
「飲食店がすごく好きなので、堀口珈琲だけではなく、卸先さんの力にもなりたいと思っていて。コーヒーの講習会だったり、よりそのお店に合いそうな商品の提案だったり。自分が店舗で学んだことを、営業として還元できたらいいなと思っています」
最後に「一度お店に来てもらえたら」と話していた若林さん。
自信を持ってつくってきたお店を体験してみてほしい、ということですか?と聞くと、こんな答えが返ってきました。
「それも半分あるんですけど、まだまだ不完全だと思っています。新しく入る人には、もっと改善できる部分を見つけて、一緒に店舗をブラッシュアップしていってほしい。チャレンジし続けないと、現状維持もままなりませんからね」
常に最高のコーヒーを求めて、変化し続ける堀口珈琲。
まずは、その姿勢を学ぶところから。そのうえでなお、より良くするには?という視点で、日々仕事をしていってほしい。
多くのスタッフがそうやって取り組んできたから、今日も堀口珈琲が堀口珈琲であり続けるのだと思います。
(2022/6/9 取材 増田早紀)
※取材時はマスクを外していただきました。