求人 NEW

すべての人を、生きやすく
仏教哲学で
社会OSをアップデートする

京都市上京区、今出川駅から歩いて8分ほどで細長い建物が見えてくる。

表には「ホウドウジ」と書かれた看板。あたりは静かな住宅街。

ひと目見ただけでは、どんな場所なのかよくわからない。けれどもここには、名だたる大企業の経営者や起業家、学生や研究者、インフルエンサーや農家など、さまざまな人たちが日々訪れます。

実験寺院・寳幢寺(ほうどうじ)。人々はここに、仏教を学びに来ます。

運営しているのは、2017年に設立された一般社団法人日本仏教徒協会という新しい団体です。特定の宗門・宗派に属さず、仏教を広く公共に届けることを目指して活動しています。

僧院長の松波龍源さんは、「仏教は哲学」だと言います。もちろん宗教でもあるものの、その教えはとてもロジカルで、普遍的。実際のところ20世紀以降の西洋哲学には、仏教思想に接近するような潮流も見られるそうです。

最近は人気音声コンテンツ「コテンラジオ」への出演やNHKでの特集「それ、仏教かも。」の放送などを経て、さらに認知が広まっているところ。問い合わせが増えるなかで、実務面で運営を支える事務局長を募集します。

業務委託契約で、稼働の目安は週30時間程度。寳幢寺での現地対応が必要な業務もありますが、兼業や自宅等でのリモートワークも可能です。

目指すのは、仏教哲学による社会OSのアップデート。この壮大な目標に向かって、自分の能力や経験を最大限に活かして推進していける人を探しています。

 

今出川駅から寳幢寺へ向かう途中で、着物姿の方とすれ違った。

趣ある建物、何代にもわたって継承されているであろうお店、そこかしこに残る史跡。日本で生まれ育った自分にとっても、京都の風景は新鮮に映る。

8分ほど歩いて寳幢寺に到着。以前は西陣織の工場だったらしい。

立派な参道や建造物はない。けれども空間は清潔に保たれていて、心地よい静けさに満ちている。

建物の奥まった階段を降りたところに本堂があり、僧院長の松波龍源さんが迎えてくれた。

一般家庭に生まれ、大学ではミャンマー仏教の儀式を研究。やがて研究者ではなく実践者となることを志し、修行を経て僧侶に。

その過程で常に考えていたことがあった。

「この社会がこのまま進んでいけば、いずれ大変なことになるっていう想いがあったんです。何がおかしいのか? いろんなことを経験していくなかで、社会思想がバグを起こしているんだと思い至って」

「いくら制度をいじったり、個人レベルで調整してもこれは無理だと。現代社会のOSになっているものをアップデートする必要がある。そのための完璧な答えが、仏教にはあると確信しているんです」

その、バグを起こしている社会思想とはどういうもので、それに替わりうる仏教の考え方とはどういうものなんでしょう?

そう尋ねると「3時間もらっていいですか(笑)?」と龍源さん。「宗派ごとにいろんな考えがありますし、あくまで“わたしの立場”からの、限定的な一側面のお話しになりますが」と前置きしたうえで、答えてくれた。

「今の社会って、文化とか福祉とか、そういうものは金があったら好きにできんねんから、まず金稼げっていう基本思想があるじゃないですか。でも一方で、どれだけ稼げばそちらにお金を回せるのかっていう閾値の設定はないわけです」

仏教では「余剰を知り、それを手放したときに豊かさが確定する」と考える。

お金に限らず、何がどれだけあれば自分は満ち足りるのか?という線引きができない限り、人は豊かになれない。そればかりか、より多くの富を求めては得られないことで「苦」が発生し続け、経済合理性にそぐわない領域にはお金も人的リソースも割かれない。結果として文化も福祉も、人の心も荒んでいく。

仏教哲学を導入することで、こうした現代社会のOSをアップデートしていきたいというのが龍源さんの考え。実験寺院・寳幢寺の取り組みもその一環だ。

具体的には、講演や企業研修、対面での問答など「聞いて、話す」ことが活動の軸。さらには各種メディアへの出演や書籍の執筆、概念を体感に落とし込むリトリート合宿の企画などを通じて、仏教哲学の社会実装に取り組んでいる。

また、俗世的な生活を送りながら仏教を実践する「在家修行」のスタイルで、職種も年齢も多様な約60名のお弟子さんが龍源さんのもとで学んでいる。

ちなみに龍源さんは、日本仏教徒協会の経営者ではない。

運営資金を寄付やお布施に委ね、経営面は在家のスタッフによる管理を徹底。そうすることで、出家者と在家者の間に適切な緊張関係が生まれる。

腐敗や私物化を避け、龍源さんは仏教哲学を社会に活かすことに専念できる組織のあり方を、構造的に実現している。

 

「お寺をどんな場にするか。どのように龍源さんと社会との関係をつくっていくか。今の形に至るまでには試行錯誤がありました。その全体のいきさつを、我々は“実験”と言っているんです」

そう話すのは、東京大学東洋文化研究所の教授で、日本仏教徒協会の代表理事を務める藏本さん。龍源さんとともにこの寺院を立ち上げた方だ。

専門はミャンマー仏教をテーマとする文化人類学。ミャンマーにおける出家社会と在家社会の関係と、それがいかに社会システムとして駆動しているのかを研究してきた。

「ただ論文を書くだけじゃなく、実践として、日本でもお寺を下支えする経済的な仕組みづくりが必要だと考えたんです。ちょうどそのタイミングで龍源さんと出会って。この人とだったらおもしろいことができるんじゃないかと思いました」

最初の実験は、ミャンマー仏教のお坊さんのように厳しい戒律を守るというもの。ただ、ミャンマーとは前提となる認識も文化も異なる日本では、このやり方は馴染まなかった。

拠点づくりも実験の連続だった。地道に活動を続けるなかで「もっと人を連れてきたい」「常駐してほしい」といった声が少しずつ寄せられるように。そこでこの西陣織の工場跡地を借りたのが、2017年のこと。

ところがいざ門戸を開いてみても、人はなかなかやってこない。龍源さんの手持ちの資金を切り崩すことで、なんとか耐える日々が2年ほど続いた。

「あと2ヶ月で家賃も払えなくなる、と。撤退も本気で考えたんですよ。でも何も言わずに閉じるっていうのも、これまで関わってくださった方に失礼な話で。こういう状況だということをお伝えして回ることにしたんです」

そこではじめて、外からは運営が順調そうに見えていたことがわかった。状況を開示したことで少しずつお布施も増え、なんとか自転車操業からは抜け出せるように。

 

「で、大きな転機となったのが深井さんとの出会いですね」

歴史をおもしろく学ぶインターネットラジオ「コテンラジオ」の配信や世界史データベースの開発に取り組んでいる、株式会社COTEN代表の深井さん。ちょうどこの日はお弟子さん向けのコンテンツ収録のゲストとして寳幢寺に来ており、少し話を聞かせてもらうことに。

「本だけで勉強できる限界を感じていたんです。空海さんなんか、いっぱい著書があるじゃないですか。でも、何言ってるかマジでわからない。これは先生探さなきゃって思って、人づての紹介で龍源さんに出会ったのがきっかけです」

以来、自身も仏教哲学を学びつつ、さまざまな人たちを寳幢寺へ連れてきている。

寳幢寺としても、深井さんの番組への出演をきっかけに認知がさらに広がり、大企業の経営者や起業家などのビジネスパーソンも多く訪れるようになった。

深井さんが寳幢寺に人を連れてくるモチベーションは何でしょう?

「宗派をつくった偉いお坊さんとか全員、今で言う社会起業家だったと思うんです。世界を救おうと資産も捨ててフルベットでやってきた人たちがいて、その考え方も時代に応じてアップデートされてきている。これが一部の人にでも伝われば、本当に世界が変わると思っているんですよ」

「お金とか、物質的なものはすべて持ってるはずなのに苦しんでるビジネスパーソンもいっぱいいますから。そういう人こそ仏教哲学を知ってほしいし、自分も何回も龍源さんの話が聞ける。それで寳幢寺の運営にも貢献できるならWin-Winだなって」

 

さまざまな縁がつながり、日本仏教徒協会の運営は安定軌道に乗りはじめた。

ただ、仏教哲学で社会のOSをアップデートするという目標の実現には、まだまだ足りないものもある。あらためて龍源さんに話を聞く。

「コアメンバーに経営とかビジネスの感覚を持った人間がひとりもいないっていうのは、法人としての課題ですよね。志は高いけど、能力のレーダーチャートはガッタガタ(笑)。そこをうまく統括してくれる事務局長が必要なんです」

今回募集する事務局長の大事な役割のひとつが、対外折衝。

寳幢寺には日々、さまざまな企業や団体から講演や研修の問い合わせが入る。あるいは龍源さんとの対話のなかで、「こんなことはできませんか?」と話が広がっていくことも。

スケジュールや企画内容の検討、金銭的なやりとりも含めて、実現可能な形に道筋を立てていける人を求めている。

「かなり特殊で難易度が高い仕事だと思います。精神的なレジリエンスがないと、なんでこんなせなあかんの?ってなる場面も多々あるでしょうね」

資本主義的な価値観で事業を営んできたビジネスマンと対峙しながら、仏教的な世界観で生きる龍源さんとの間に橋をかける。それは単なる事務的な手続きではなく翻訳であり、仏教哲学の社会実装という理念の根幹に関わる役割だと思う。

業務委託契約で、稼働の目安は週30時間程度。業務の性質上、月あたり12〜14日は寳幢寺での現地対応が必要になるものの、それ以外は自宅等でのリモートワークも可能とのこと。

育児や介護などのためにフルタイム勤務がむずかしい人や、ほかの事業やライフワークとの兼業で取り組みたい人でも、なるべく働きやすい環境をつくっていきたい。

ある程度自立して業務を捌けるようになるまでは、理事の山﨑さんがメンターとして伴走してくれる。外資系ブランドの日本支社長やビームスの上席執行役員などを歴任し、現在は四国のお遍路文化を次世代につなぐスタートアップ企業を経営している方。

「組織としての大きな方針は、月に一度の理事会で決定します。まずはそこに出席してもらって、何をどう進めるか一緒に考えるところからのスタートでもいいかなと思っています」

「ある意味、龍源さんの話を聞き放題な立場ですし、名だたる企業の経営者のお悩みのような、まずほかでは聞けないお話にも立ち会うわけで。財務資本以外の報酬も大きい仕事だと思いますよ」

 

取材中、実践や実験という言葉がよく出てきたのが印象に残っています。コテンラジオの出演回でも、龍源さんは「仏教を博物館の陳列物にしたくない。生きたものにしていきたい」と語っていました。

仏教哲学を“誰もが使えるもの”として、社会に実装していく。

この実験を、ともに推し進めていける人を待っています。

(2026/08/29 取材 中川晃輔)

問い合わせ・応募する

おすすめの記事