性別や雇用形態による差別がなく、十分な収入が得られる。
労働の権利や心身の安全が守られる。
自分の役割があって、お互いに認め合える。
働いてよかったと思える手応えと実感、働きがいのある人間らしい仕事のことを、「ディーセント・ワーク」と呼びます。
障がいのある人もない人も、一人ひとりが組織の中で自分の役割を見つけ、ときには自らつくり、その人らしい役割を持って働ける社会を目指しているのが、NPO法人ディーセントワーク・ラボ。

障がいのある方の就労や企業の障がい者雇用、福祉事業所の工賃向上などを支援しています。ほかにも、コミュニティカフェやフェスティバルの企画運営などを通して、企業・福祉・地域をつなぎ、あらゆる側面から誰もが自分の役割を感じられる場づくりに取り組んでいます。
今回募集するのは、福祉事業所を対象とした伴走型コンサルティング担当者。
新商品の開発やブランディング、販路開拓、利用者の役割づくりなど、それぞれの事業所の課題に合わせた解決策を提案します。福祉業界の知識がなくても、これまでの経験が活きるはず。
誰に対しても公平に接する。相手を信頼する。
そんな気持ちを胸に、読み進めてほしいです。
東急目黒線の大岡山駅。都会の喧騒から離れて、ゆっくりと商店街を歩く。8分ほど進んだところにあるのが「しいちゃんのカフェ」。

障がいのある学生の就労トレーニングや地域の人と交流できるコミュニティカフェで、今年2月にオープンした。スタイリッシュな外観は、福祉を意識しなくてもふらっと入りやすい。
「暑かったでしょう。何を飲まれますか?」とふわり迎え入れてくれたのが三浦さん。5年目に入り、日本仕事百貨の取材も4回目。

ツナメルトとラタトゥイユのパニーニを美味しそうに食べながら話し始める。この日は朝から府中の福祉事業所に行っていたため、お昼ご飯を食べ損ねてしまったそう。
「ディーセントワーク・ラボでは主に、対企業と行政で事業が分かれていて、私は行政から委託を受けてB型事業所さんのコンサルティングの企画運営をおこなっています。悩みや相談を聞いて、どうしたら働きやすくなるのか現場で一緒に考える。工賃の向上も大きな課題です」
B型事業所は、病気や障害などの理由で、一般企業で働くことにむずかしさを感じる人が、スタッフのサポートを受けながら働く場所。
利用者の方は、自分の体調やペースに合わせて自由に働くことができる。ただ、2026年でも、全国の月額平均工賃は2万4000円程度。年々上がっているけれど、働きがいにつながるようにしていきたい。
「ただ工賃を上げればいいのではなくて、福祉事業所さんの特色に合わせた形で、どんなふうに引き上げていけば、働きがいにつながるのかという視点で考えます。工賃をもらって好きなことをしたり、家族に何か買ったり。働いて得た対価がよろこびになる循環をつくりたいですね」
その循環を生み出すために、ある方法を思いついた。
「ある福祉事業所さんから『いい商品ができてもプロモーションが弱く、世の中に響きにくい』とご相談をいただいて。デザインの力で商品をブラッシュアップし、広報や販売戦略を計画していけばいいかも、とデザイン会社とコンサルティング会社との3社共同ブランド『equalto』で一緒にものづくりをすることにしました」
そうして誕生したのがPatchpatch(パッチパッチ)。

「すべて手づくりで、布地も表情も違うけど、ぜんぶ愛くるしい。名前と性格も一つひとつについてるんです。デザイン会社さんと事業所さんのあいだに立って、原価の調整やスケジュールの管理、試作の提案を進めました。とにかく動き回って、いい商品になったのはうれしかったですね」
取材中、とある福祉事業所で製菓指導をしてもらうパティシエさんのロールケーキもいただいた。福祉事業所や障がいのある方に加え、いろんな人との関わりがあるみたい。新しく入るコンサルティングスタッフも、福祉以外の知識や学びが身に付くと思う。
「私たちは誰かと誰かの間に立つことが多くて。色々な考え方におどろくこともどうしようと思うこともあります。そんなときはひとりで抱え込まず、ほかのメンバーに話を聞いてもらう。悩みを笑いに変えられると、気持ちが切り替わって次のアプローチを考えられる。相談しやすい環境かなと思います」

「相手が誰であれ、やわらかく入っていくようにしています。同じ立ち位置で見てるよ、というやわらかさ。福祉事業所の現場支援って、本当に大変な仕事なんです。悲しい日も、嫌なことがあった日も、支援はつづく。職員さんの苦労もなるべくわかりたいなと思っています」
三浦さんは、どんな人を待っていますか。
「自分なりに考えて動ける人でしょうか。私自身、どうやったらもっと障がいのある方の働きがいになるかな、職員さんがいい方向に動いてくれるかな、と常に考えて言葉を選んでいます」
「行政事業と聞くとルーティーンワークのようですが、実際は業務がさまざまで忙しないですよ。『equalto』やイベントの運営など、別事業の仕事もかけ持ちします。マルチタスク能力が求められるかもしれません」
同じく行政チームの佐藤さんは、事業所の伴走支援をしながらカフェやイベントの企画運営も担当している。日本仕事百貨の記事を読んで入社した方で、これから入る人にとっても頼れる存在だと思う。

「2年前に入社するまでは、百貨店でトレンド分析や商品の品揃え計画、販売戦略などをしていました。20年くらい、ものをどうやって売るか考えつづけて。だんだん生産と消費の在り方を自分に問うようになったとき、この子たちと出会ったんです」
大事そうに見せてくれたのは、うさぎのぬいぐるみ「らぶらび」。くたくたになっていて、値札もついたままだ。

「なんとも言えないゆるさに魅力を感じたんです。恵比寿のB型事業所でつくられていると知り、興味が湧きました。大量生産でも趣味でもなく、こんなものづくりの仕方があるのか!と可能性を見た気がして」
百貨店で働きながら、福祉について調べていく。社外でイベントを企画することになり、全国の事業所でつくられた商品の即売会を開いた。
「1回目は40事業所くらいに出品してもらいました。イベントを継続していくなかで『事業所の立ち上げ手伝わない?』と声をかけてもらって。今やっていることに近いかもしれません」
入社してからは、主に雑貨をつくっている事業所の伴走支援とともに「トントゥフェスティバル」にも関わることに。ディーセントワーク・ラボが主催するイベントで、障がいがある人もない人も一緒に楽しめるマルシェやワークショップ、パフォーマンスが盛りだくさん。
「最初は、マルシェエリアの拡大と充実のためアサインされました。私が入社する前は20箇所ほどでしたが、全国各地の事業所にコミュニケーションを取って、今では70から80箇所が参加してくれています」

異業種から転職した佐藤さんだからこそ、気づいたことはありますか?
「いいものづくりをしていてもうまくいかない福祉事業所がいっぱいありました。働かれている職員さんがものの売り方まで学ぶ余裕はなくて、それでも工賃は上げなきゃいけない。そういった葛藤が大きな衝撃でした」
「さまざまな課題に対してそれぞれの想いを持つ人がいます。全員で前に進むための調整力が必要な仕事ですね。ズバッということを求められる現場もあって、ただ寄り添うのではなく、大きな視点で物事を判断できるといいですよね」

課題解決に取り組むとき、事業所の全職員と議論することも。
「伴走支援というと、おだやかなイメージを持たれがちなのですが、相手も真剣ですから厳しい意見も言われますし、不安や不満を受け止める局面もあります。思った以上にハードに感じる人もいるんじゃないかな」
「それでも、信頼関係をコツコツと築きながら進む。タフな気持ちで働ける人が向いているかもしれません」
新しく入る人も、伴走支援はもちろん、佐藤さんと同じようにこれまでの知識と経験から、さまざまな業務に関わっていってほしい。
「トントゥフェスティバルは埼玉県飯能市で開催していますが、他の場所でもやってみたいよね、と話していて。そういう広がりや新しい事業を『仕事が増える!大変そう…』と思うのではなくて(笑)、楽しみながら引っ張ってくれる人が仲間になってくれたらうれしいです」
佐藤さんの言葉をまっすぐに聞いていたのは、入社したばかりの月居(つきおり)さん。このコミュニティカフェを訪れたことがきっかけで働き始めた。働き始めて1ヶ月ほどだけれど、熱い気持ちで話してくれる。

「少し前まで、地元北海道のアイヌ文化施設で働いていました。立ち上げから関わって、運営や接客、なんでもやってましたね。社会的マイノリティについて考えるうちに、次は社会福祉に関わる、人と人をつなぐ仕事がしたいと思うようになって」
ディーセントワーク・ラボは、伴走支援では事業所に関わる人たちの中に入っていき、トントゥフェスティバルではそこに訪れる人たちを巻き込んでいる。複数の事業で人と人をつないでいることに感銘を受け、入社を決めた。

「入ってみて感じたのは、人を人として見ていること」
「福祉の事業といっても『困っている人を助ける』のではなく、一緒になって問題を解決しようとする。訪問に同行していると、福祉事業所の方々は失敗したことや悩みを素直に語ってくれているように感じて。ディーセントワーク・ラボの真剣さが相手にも伝わるから、信頼関係が築けるのではないかと思います」
月居さんは、支援を進める事務連絡のやり取りなどを教わりながら、仕事に取り組んでいるところ。雑貨やお菓子づくり、SNSの運営方針など多岐にわたる悩みごとに耳を傾ける。
解決するには、わからないことや不安なことも出てくる。入社してすぐに、社内のメンバーと1対1で話す時間が設けられているので、まずはなんでも相談してほしい。
「忙しいとは聞いていましたが、伴走支援、カフェの商品開発からトントゥフェスティバルまで、本当にやることがたくさん。最近上司から『製菓の分野で困っている事業所があるから、お菓子づくりの知識をつけてみない?』と言われて。もちろん経験はないけど、やってみようと心に火が灯ったところです」
「これからどんどん任される仕事が増えて、忙しくなると思います。誰かのためとか、社会貢献とか、きれいな言葉じゃ表せない大変さがあるはず。私も、新しく入る方も、ディーセントワーク・ラボが『人』を大切にする場所だと感じながら働いていくことで、忙しさの中によろこびを感じていけると思います」

すべての人が働きがいを持てる社会。その実現は、とても大きな挑戦です。
ディーセントワーク・ラボは、まだその道の途中。
時には、厳しい現実に直面すると思います。
きれいごとだけではたどり着けないその先に、自分の働きがいが待っているはずです。
(2026/07/23 取材 久保泉)


