「自分たちが盛り上がってないと、外から見ても楽しくない。楽しそうにしてたら、ちょっと見に行こうかな?ってなりますもんね」
そう話すのは、波佐見焼(はさみやき)振興会で事務局長を務める山下さん。
今や全国的な知名度を誇る「波佐見焼」がブランドとして確立していなかったころから、広報・PRや陶器まつりの運営、人材不足の解消などに取り組んできた方です。

日本仕事百貨でも2023〜2025年にかけて、波佐見町での仕事と暮らしを体験するインターンシッププログラム「オープンハサミ」を共同で企画・開催。3年間で合計30名が参加し、そのうち9名の移住・就職につながりました。
ただ、さまざまなことに取り組んできたなかで、見えてきた課題もあります。
より住みよく、楽しいまちを目指して。山下さんたちは一般社団法人ハサミンという新しい組織をつくりました。
今回は立ち上げメンバーとして、企画営業と広報のスタッフを募集します。
シェアハウスの整備や、まち全体を巻き込んだ体験イベントの企画、ファンクラブ構想、中学高校での仕事体験など、やりたいことは盛りだくさん。
経験は問いません。行動力と好奇心さえあれば、きっと大丈夫。
まだ見たことのない景色を、ともにつくっていける仲間が必要です。
長崎県のほぼ中央に位置する波佐見町。
生地屋、型屋、窯元、商社といった企業による分業制で、品質のよい日用食器を400年以上つくり続けてきた産地だ。
工場やショップが並ぶ産地らしい景観を横目に見ながら車を走らせていくと、コミュニティスペース「金富良舎(こんぷらしゃ)」に到着。ここがハサミンの拠点になる。

「もともと銀行だったので、見た目は立派でかっこいいんですけどね。とにかく暖房がきかなくて! 冬はめちゃくちゃ寒いですよ(笑)」
カウンターの向こうから教えてくれたのが、山下さん。ホテルやレストランのサービスマンとして14年ほど働いた経験もあって、この場所がよく似合う。

片付けが落ち着いたところで、今回の募集に至る経緯を聞かせてもらう。
「この20年くらいで、波佐見町の課題がどんどん変わってきていると思っていて」
20年前の課題は、まず波佐見焼を知ってもらうこと。
そもそも「波佐見焼」というブランドは、それまで存在しなかった。産地として400年以上の歴史はあるものの、有田焼の下請けというポジションが長く続いたため、波佐見の名前が表に出ることはなかった。
都市部の展示会に出展したり、陶器まつりをPRしたり。個々の会社の活躍も重なって、波佐見焼の知名度は次第に高まっていく。

「全国のみなさんにある程度認知してもらえるようになって。その反面、今度は焼きものをつくる人材不足の課題が大きくなってきたんです」
およそ10年前に実施したアンケートでは、生地屋97社のうち“15年以内にやめようと思っている”と答えた会社が50%近くあった。
波佐見焼は分業制で成り立っているため、一部の人手不足が産地全体の生産に影響する。いくら知名度が上がっても、人がいなければ器をつくれない。
そこで波佐見焼振興会では、生地職人を育てる研修事業を開始。さらに、産地全体で必要な人材を広く採用するため、日本仕事百貨と共同で1週間の滞在型インターンシッププログラム「オープンハサミ」を企画・運営してきた。

「とくにオープンハサミでは、全国からたくさんの応募がありました。3年間で30名が参加、そのうち9名が就職・移住されて。波佐見焼の仕事に関心のある人がたくさんいることがよくわかりました」
ただその後、移住した9名のうち4名が離職。人材不足を解決するには、その手前のもっと大きな課題に目を向ける必要があるんじゃないか、と山下さんは考えた。
「焼きもの産業の改革も必要だけれども、それ以上に必要なのは、波佐見に住んでいる人たちが職業も年代も立場も超えて、このまちの課題や魅力を再認識できる。そんな場やきっかけなんじゃないかなって」
「それをこう… なんて言うんだろう。一緒にやろうよ! ぐらいのノリでできないかなと思うんです。真剣に重苦しく考えたらどうしたって暗くなるし、楽しくないですもんね」

山下さんたちは新たに一般社団法人ハサミンを立ち上げた。
移住者や中長期滞在者が利用できるシェアハウスの整備や、まち全体を巻き込んだ体験イベントの企画、地元ケーブルテレビやメディアと連携した発信、中学高校での仕事体験など。
今後取り組んでいきたい事業内容は多岐にわたる。

なかでも山下さんが「一番の肝になる事業」だと話すのが、ファンクラブ。登録制のオンラインコミュニティで、波佐見町に関心があれば誰でも参加可能。
地域の最新情報が得られたり、地域行事の手伝いや短期のインターンシップ、まちの課題や魅力をざっくばらんに話す座談会に参加できたり。関わりに応じて地域通貨を発行し、シェアハウスの滞在費やECサイトでの物品の購入、地域での飲食代などに充てられる仕組みもつくるそう。
「町外の人だけじゃなく、町内に住んでいる人にもぜひ参加してもらいたくて。『町民をえこひいきしよう!』って言ってるんです(笑)。イベント参加費の町民割とか、町民向けのプレゼント企画みたいなことをじゃんじゃんやりたい」
波佐見に暮らし、働いている人たちが、誰よりも波佐見のファンであってほしい。その熱量は自ずと外の人にも伝わって、結果的にまちのファンが増えていくことにもつながる。
「インナーマッスルを鍛えるというか。自分たちのなかで燃えているものがあればあるほど、その魅力って外にも伝わっていくと思うんです」
そう話すのは、ハサミン立ち上げメンバーのひとりである小柳さん。波佐見焼の商社「aiyu」の代表も務める方だ。

ファンクラブと並んで力を注いでいるのが、まち全体を巻き込んだ体験イベント。
産地らしい波佐見のまちなみや自然景観を「見る」、焼きものにとどまらない波佐見の人々の営みを「知る」、仕事体験やおいしいものを片手に「遊ぶ」という3つのテーマを掲げている。
「毎年GWの陶器まつりにはたくさんの人に来ていただくんですけど、ものを売り買いするっていうことが主軸になっている。波佐見の人と人とのつながりだったり、ものづくりの裏側を体感して、よりコアな部分に触れられる場にしたいなと」
まちをひらいていく取り組みということで、インターンシップと同じく「オープンハサミ」という名前で企画を進めている。

とくに“体験”を大事にしたい、と小柳さん。
例として挙げたのは、商工会青年部で企画運営してきた小学校での職業体験「わくわくワークDAY」のこと。地元企業のいろんな仕事が体験できる1日限りのイベントだ。
「10社以上のブースがあるなかで、3年間ずっと同じワークショップに参加している子がいて。そこは美容室なんですけど、アンケートには『将来ここに就職する!』みたいなことが書かれているわけです」
「たった1日の体験が深く印象に残って、毎年繰り返すなかでさらに強い想いになっていく。オープンハサミで実現したいのは、まさにこういうことなんですよね」
参加者のなかから就職やインターンにつながる人が出てくるかもしれないし、「自分でもこんなワークショップをやってみたい」という人が現れて、次回は出展者になるかもしれない。
そんなふうに、体験を通じて新たな扉をひらく人が増えていったらおもしろい。

こうした構想を形にしていくため、今回は企画営業と広報のスタッフを募集したい。
シェアハウスなら建設や不動産の会社、教育なら学校、イベントなら商工会など、営業企画の関係先は多岐にわたる。また、ファンクラブをはじめ、どの事業もまちのことに関わるため、行政との連携も欠かせない。
広報は、地域のローカルテレビや波佐見の今を発信するWebサイト「Hasami Life」など、既存のメディアと協力しながらハサミンの取り組みを伝えていく。デザインや広報、取材・編集や動画の撮影・制作など、いずれかの経験があるとよいものの、未経験でも意欲があれば歓迎とのこと。
「変化していくことをおもしろがれる人がいいな」と、隣で聞いていた山下さん。
「今まで見たことのない景色をつくろうとしているので。誰かが準備したものに乗っかって、その浮き沈みに右往左往するんじゃなくて、自分はこれをやる! って決めて、そこに向かっていく。そういう人たちの集まりになれたらいいなと思いますね」
具体的な仕事内容は、固まりきっていない部分も多い。その余白を不安に思うよりも、「自分次第で何でもできる」と捉えて楽しめる人が向いていると思う。
社外からハサミンの活動に関わりはじめている人たちにも話を聞いた。まずはHasami Life編集部の杉田さん。

新卒で入った会社が合わず、休職。日本仕事百貨での募集を通じてHasami Lifeの運営会社である西海陶器株式会社に転職し、3年目になる。
「写真や動画、デザイン、撮影用の料理もやります。でも、もともとは全部未経験だったんですよ。チャレンジしながら成長していけばいいなら、こういうことをやりたい人っていっぱいいる気がします」
波佐見は縁もゆかりもない土地だったそう。住んでみてどうでしたか?
「人のつながりが濃いまちだなと思います。ハサミンのような新しい取り組みでも仲間に入れてもらえたり、普段暮らしていても社内外の人と顔を合わせる機会が多かったり。わたしは知り合いがいなかったので、それがすごくありがたくて」
仕事とプライベートをしっかり切り分けたい人は合わないかもしれない。公私ともにいろんな人と関わるのが好きな人には、魅力的なまちだと思う。
「ウェルカム体制がすごくあるまちですし、あとは地域との関わりが深い仕事柄っていうのも大きい要因かなって思います」
そう話すのは、ふるさと納税支援事業などを手がける株式会社スチームシップの大野さん。

「杉田さんも同じだと思うんですけど、仕事を通じてまちのいろんな人と関わるので、知り合いがめっちゃ増えるんです。で、がんばるほどいろんなところに呼んでいただける。それが楽しくなっちゃって、気づいたら今、みたいな感じはありますね」
もともと波佐見に定住するつもりはなかった。仕事とまちのおもしろさにどっぷりはまり、結婚という転機もあって今に至る。
「デザインとか企画、広報の仕事って、都市部じゃなきゃできないと思われがちですけど、地域にこそ必要だと思っていて。今回もめっちゃおもしろそうな仕事ですよね。波佐見でこういう仕事があるのって、すごくいいなと思います」

ハサミンのまわりに集まっている人たちは、会社の所属や関わり方は違っても、空気感が似ているように感じました。
経験がなくても、まずやってみる。人と関わりながらつくるのが好き。そして、やるならとことんおもしろく。
そんな人たちと、まだ見ぬ景色を一緒につくっていきたい人をお待ちしています。
10/31-11/3にかけて、イベント「オープンハサミ」が開催されるので、まずはそこに参加するのもいいかもしれません。
(2026/09/10 取材 中川晃輔)


