コラム

新年のご挨拶
新しい年に寄せて(第2回)

2022年もいろいろなことがありました新しい年を走り出す前にスタッフそれぞれこの一年を振り返ってみました

3日間のコラムでご紹介していきます

2日目は、編集者・小河、求人窓口担当・黒澤、編集者・杉本、バックオフィス担当・後藤の4名です。

 

今年の春、公園の遊具や道路沿いにある街灯など、いろいろな公共物の施工を行なっている、システムリバースさんへ取材に伺ったときのこと。

「営業に行くときは、過去の施工例を載せたこんなパンフレットを見せながら話をするんですよ」と、代表の後藤さんが実際に見せてくれた。

どんな施工をしているのか、話を聞きながらページをめくっていると、どこか見覚えのあるタコが。

これはひょっとして、私がよく通る道沿いにある公園の遊具かな?

いや、待て待て。タコ型の遊具はきっと東京にたくさんあるはずだから、違うかもしれない。

…でも、ちょっと気になる。

これって、あの公園のタコですか?

「そうそう。あのタコって絵が書いてあるでしょ。あれをデザインしたの、私なんですよ」

なんと!タコに絵が描かれていたなんて。全然気づかなかった。

取材を終えて家に帰る途中、その公園に立ち寄ることにした。公園沿いの道は何百回と通ってきたのに、公園に入るのは初めてだ。

ベンチに腰掛け、カバンからパンフレットを取り出し、正面にいるタコと見比べてみる。

あ、このタコだ。たしかにかわいらしい魚の絵も描かれている。

取材中に私の頭に思い浮かんだのは、「赤色のタコ」ということだけ。

この公園のタコがどんな顔をしていて、どんなペイントがされているか、しっかりと見たことがなかったな。

久しぶりに公園に来たんだし、ちょっとぼーっとしていこう。

あたたかい日差しが、じーんと体に染み込んで心地いい。風が吹くと、カサカサと葉が擦れ合う音が聞こえてくる。

遠くに目を向けると、公園のトイレを掃除してくれている人が見えた。そして、目の前にいるタコと目が合って、システムリバースさんを思い出す。

普段の生活で、見過ごしているものって意外と多いのかもしれない。

「あれをやろう」「こうしていこう」と、未来に意識が向いてしまうことは多いけれど、当たり前に感じる日常のなかにだって、自分を豊かにしてくれるものがたくさんあるはず。

今を味わって、身近にある幸せをたくさん集めたい。

そんな小さな幸せ探しを積み重ねたら、2023年の1年もきっとハッピーだ。

タコはパンフレットに載っているときより、すこし色褪せてきている。

もしかしたら、またシステムリバースさんが来て、キレイにしてくれるのかもしれないな。

今を感じる余白を持ちながら、当たり前に感謝して2023年も過ごしていこう。

そんなことを感じました。

(小河 彩菜)

 

2022年の年末は、数年ぶりに夢中になって、サッカー観戦をした。

日々パソコンに向き合い、頭と指先ばかり動かしている自分とは対照的に、頭も身体も動かして、目の前の人間に相対している人たちの表情はすごく生き生きしていた。見ているだけでとても楽しかったし、身体全体で喜びも怒りもあらわにする様子に、心動かされた。

自分の1年をふりかえっても、人と直接会って話したり、体験したり、身体性をともなう時間の良さを改めて感じる年だったように思う。

5月に開催した、焚き火を囲む合同説明会「かこむ仕事百貨」では、参加者・クライアントのみなさんと焚き火を囲んで他愛もない話をした夜が、とてもいい時間だった。

オフィスで仕事を終えた後、ガスコンロを持ち出して料理をつくり、一緒にごはんを食べた日もあった。遅くまで語り合った翌日は、ちょっと眠たいけれど仕事のやる気も湧いてくる。

秋には会社のみんなで八ヶ岳の麓へ行って、合宿もおこなった。

輪になって、それぞれが悩みながら会社や自分の進む道について話すなか、ファシリテーターを務めてくださった西村佳哲さんの言葉が印象に残っている。

「頭と身体が統合していると、人は健やかな状態になれる。身体性をともなう仕事は、かけがえのないものになっていく」

日々仕事をしていると、頭ではわかっていても、なかなか手がのびずに後回しにしてしまう仕事と、優先順位に関係なくすぐ手がのびる仕事がある。そういうときは大体、すぐに手がのびたことのほうが、自分が自然に能力を発揮できる仕事なのだろう。どんなことに自分の身体がうごくのか?あらためて意識してみたい。

そういえば、結婚・移住する前は「行きたいと思ったところにちゃんと行こう、会いたい人には会おう」と思って過ごしていた。自分の意識にちゃんと反応していたら、いつのまにか結婚することになって、いつか帰りたいと思っていた地元・長野に住まいを移すこともできた。

これからも自分の心と身体の声をきいて、身体がうごくほうへ、進んでいこうと思う。

(黒澤 奏恵)

 

「私も日々悩むし、私が言うことが正解ではないと思うので。いい意味でブレブレなんです。いつもあれでよかったのかなって、反省しながらの毎日です。でもそれでいいと思うし、それを受け入れてくれる生徒やスタッフがここにはいて。いい環境ですよね」

そう話すのは、高知県立嶺北高校にある教育寮で働く島村さん。寮生活をサポートするハウスマスターとして、日々生徒と向き合っている。

大人ってなんだ。大人になるってどういうことだろう。

学生から社会で働くことへの変化に馴染めず、ここ数年ずっと悩んでいた。

自分なりに大人になるために必要だと思っていたのが、困ったら人に頼ってちゃんと恩を返すこと。

とにかく一人で抱えて何でも自己解決しようとして、うまくいかないことが続いていた。代表のナカムラにも相談した。そこで、横浜から奄美大島まで自転車旅に出ることになった。

ハードな旅だからこそ、ひとりでは完走するのが難しいかもしれない。強制的に、人に頼らざるを得ない状況をつくろうというのが大きな理由のひとつだった。

旅に出て、本当にいろんな人にお世話になった。いろんな生き方・働き方をしている大人に出会った。ステキな人ばかりだった。

存分に甘えたと思う。おかげさまで、奄美大島まで無事に辿り着くこともできた。

旅を終えて、「大人になりたい」と思うことはなくなった気がする。

そもそも大人と子どもって分けて考える必要はないんだ。こうあるべきだと決めつけすぎていたのだと思う。

島村さんに話を聞いたのは、それから数ヶ月経ったぐらい。またちょっと人生に悩んでいた。

「自分はブレブレなんですよ」と言える姿がカッコよかった。

島村さんのほかにも、公設塾スタッフの岡田さんや寮生のカンナちゃんにも話を聞かせてもらった。何か疑問や問題があったとき、話し合う姿勢が印象的だった。ひとつの正解を決めるのではなく、みんなで答えを出していく。上手くいかないときもあるけれど、模索しながら進む姿勢に、勇気づけてもらった。

このときの記事のタイトルは、「大人だってブレブレで だからこそ、試行錯誤の繰り返し」。

記事を通していいご縁につながるよう考えたものだけど、自分に発破をかける意味合いも大きかったと思う。

未だにこうあるべき!という何かを勝手に想像して尻込みする自分へ。情けなさも含めて、歩いてみよ。

(杉本丞)

ここ2年ほどのあいだで、会社の体制も一緒に働く顔触れも、大きく変わった。

振り返ると、あらためてそう感じます。最近は会社全体で、自分たちの会社と、一緒に働くみんなの、いまとこれからについて考える機会も増えました。

私がよく思い出していたのは、これまで一緒に働いてきた人たちにしてもらったさまざまなこと。

たとえば…

「後藤さんはどう思う?」と、自分で考えるきっかけをくれたこと。仕事に行き詰まったとき、どうしたらよくしていけるか一緒に向き合って話してくれたこと。

疑問や違和感を言葉にして伝えてくれたこと。本質に立ち帰らせてくれる問いをくれたこと。

週1回みんなで集まる定例の場をよりよい時間にしようと、いろんなアイディアを試して巻き込んでいってくれたこと。

一見業務とは関係ないように思える余白も、楽しむことで仕事に活かせると示してくれたこと。

してもらったことだけでなく、普段のさりげない様子も思い出す。

「おはようございます」「おつかれさまです」のたったひと言でも、聴いていて気持ちいいあいさつ。

クライアントさんも自分たちも、納得のいく記事にできるように、丁寧なコミュニケーションを諦めない姿勢。

…まだまだ思い出すことはたくさんある。言葉や振るまい、佇まい。共通しているのは、誰に頼まれるわけでもなく、自分がいいと思うことを態度や行動で示していたことだと思う。あえてエネルギーを注いでくれていた。

それに比べて自分はどうだろう?年次は上になったものの何か還元できているかなと、反省の気持ちが先に出てきたりもするけれど、そうやって思い浮かぶ人たちがいるということにも、大切に目を向けたい。

いま一緒に働いている社内外の心強い人たちが、もっと気持ちよく力を発揮できるように。私も自分にできることをしたい。いいと感じる文化のようなものは、残していきたい。

2023年の8月で日本仕事百貨は15周年。昨年の年賀状企画では、書籍化に向けて、これまで記事をきっかけに転職・就職された方を募らせてもらいました。なかには10年以上も前に取材させてもらった方もいたし、虎ノ門時代のリトルトーキョーで市民として活動していたという方、ちがう記事で何度かご縁のあった方もいました。

自分がいま立っている足元に目を向ければ、これまでをつくってきたいろんな人の存在が感じられる。

足元からの力を感じながら、新しい一年を積み重ねていきたいと思います。

(後藤 響子)

 

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