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古物に重ねる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

アンティークや古くからあるものに惹かれてしまう。

「ふるいもの」が重ねてきた年月に、見たことのない時代の記憶を感じるからかもしれません。

古くからあるものを、どうしたら今の生活で使いやすくなるかを考えてつくりなおす。

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茨城県・常陸太田のアンティーク家具をあつかうライジングプレナーで、家具の修理をするリペアスタッフの募集をします。

古いものを歴史あるものとして残しておくだけではなく、今を生きるものに変えていく。その仕事はただの修理ではなく、時を重ねていくための手当てのように感じました。

上野から特急の電車で水戸まで。水戸からは水郡線に乗り換えて、トータル2時間で最寄りの常陸大宮駅に着きました。

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そこからはタクシーで10分程度。

タクシーの運転手さんは場所を知っていて「よくお客さんを乗せることがあるんですよ」とすいすい運転してくれた。基本的にECサイトでの販売のみだが、県外から買い付けに来られる方も少なくないのだとか。

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夏の青い田んぼをずっと眺めていられる道のり。

この場所で、どんなふうに会社ははじまったのだろう。

お会いしたのは、代表取締役の岩間守(いわま・まもる)さん。

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岩間さんは、高校を卒業してすぐに地元の会社で働き始めた。2年ほど働いたころに、会社の中でできることに限界を感じて、自分で事業を立ち上げようと考え始めたそうです。

はじまるきっかけは、骨董屋さんで買った和箪笥でした。

「インテリアが好きで、部屋を和風に変えようと思ったんですよね。和風といえば箪笥じゃないかと思って骨董屋さんに行って、初めて15万円で和箪笥を買ったんです」

100年前の和箪笥を部屋に置いてみると、そのよさにどんどん惹かれて興味が湧いてきた。骨董屋や蚤の市などを見て回るようになり、和箪笥を仕入れて売る販売ビジネスを思いついたそうだ。

「サラリーマンをしながらやってみると、うまくいったんです。これは、と思って会社を辞めて始めました。けれど、本業にした途端にうまくいかなくなってしまったんです。恥ずかしい話ですけれど、サラリーマン時代の仕事の取り組み方が抜けなかったんですね」

サラリーマン時代の仕事?

「毎月しっかり給料は支払われるじゃないですか。でも独立すると、売上がなければどんどんお金はなくなるし、先の見通しも立たない。自分が選んだものが売れないということは、それを選んだ自分が必要ではないことと同じように感じてしまって」

そこから、どうやって変わっていったのだろう。

「何もしないわけにいかないので、栃木の古物や骨董の市場に行ったんですね。そこで、勢いよく売っている人に出会いました」

話が聞いてみたくなり声をかけると、そのまま朝まで付き合ってくれた。

「『商売なんだから、売れるものは何でも扱わないとダメだ。うまくいったら好きな事をやればいい』って言われたんです。それからですね。和箪笥だけじゃなくて、なんでも扱おうと切り替わりました」

自分から発信するよりも、まずはニーズに合わせる。

それから一日中ネットオークションを見て、売れてるものはなにかを観察したそうです。そのときよく売れていたのは、流行りの白い家具。

「和箪笥のように好きな人が限られてくるものではなくて、多くの女性が好むような本棚を売ったんです」

うまく売れてお金が回るようになっていき、アンティーク家具を扱えるようになってくると、同じような事業をしていたお兄さんと会社を立ちあげることに。

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さらに徹底的に売ることを考えたそうです。

それは、お客さんが求めているものに合わせていくことでした。

「はじめはアンティークのもともとの状態で使えるように直して売っていたんです。アンティーク業界ではオリジナルな状態であることに価値があるとされています。ずっとそれに囚われていたんですね」

「けれど、お客様は当時のデザイン性に惹かれつつも、今の暮らしでも実用的に使えることを望んでいるんじゃないかと思ったんです」

それは女性のお客さんやスタッフからの声でした。

「食器棚の天板の上に電子レンジは載せられるんですか、という問い合わせをもらったんです。日本の昔のものは天板の上になにか乗せることがあんまりなかったので、天板は弱いんです。そこで天板を補強したり、使いやすいように棚板を増やしたりしました」

現代の生活に合うように、使う人の声をききながら工夫を重ねてきた。

「やっぱり商品として、アンティークとして良くても、家具としては良くないよね、という話になったんです」

岩間さんはお客さんの声だけでなく、スタッフの声にも耳を傾けるようにしている。

「基本的には社員のアイディアを生かそうとしますね。試してやってみようよ、というスタンスではあります」

アイディアを出したら、試すことができる?

「そうですね。だから、自分で考えてやりたいっていう人がいいですね。将来独立するんだっていうくらい、うちでなにか得ようとしている人」

リペアスタッフの工房は、冷暖房のついたブースがあって、それぞれに道具も充実している。中には、指が触れると刃が引込む安全装置のついた道具もあった。

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「職場って本来楽しい場所じゃないと思うんです。だから、仕事に集中するためのストレスは低くしようと心がけていますね」

積極的に「こうしたらいいんじゃないかな」とアイディアを持てる人や技術を磨いていきたい人にとって、どんどん試して向上していける場所になりそう。

実際、リペアスタッフはどんなふうに働いているんだろう。

お話をきいたのは、ここに来て1年になる中村さん。

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「以前は都心の建築設計事務所で働いていました。けれどパソコンに向かってやるよりも、自分の手でいろいろつくっていきたいなと思って」

「仕事をやめてから、木工職人さんのところでお手伝いする機会があったんです。そこで家具の職人さんや作家さんと知り合って、こういう世界も面白そうだなと思っていたんです」

そんなときに、日本仕事百貨でこの仕事をみつけたそうだ。

印象はどうでしたか?

「やればやるだけやらせてもらえる環境があるのかなって。挑戦しがいがありそうだなと思って応募したんです。じっさい働いてみたら、いろんなことを任せてもらえたりするのでやりやすかったですね」

やりやすい?

「たとえば、ひとつの虫食いがあったとき、どの方法で、どこまで直すかというのは正解がないんです。だからといって答えのないまま相談しても、教える側もどういう状況なのかとか、わからないこともあるんですよ」

「どう進めていくか自分の考えを持った上で聞かないと、向こうも適切に答えられないし、自分も伸びない。つねに考えながらやるっていうのは大変でもありますけど、楽しくもあります」

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仕入れるアンティークの家具は、古いお家から買い取ることが多い。そのため家具の状態や形はさまざま。いつも同じとはかぎらない。

ひとつひとつの家具を丁寧に見て傷みを確認する。どう直していくのか、そのつど考えていく。

ある和箪笥を見せてもらった。

「ぼくは和箪笥を担当してるんですけど、昔の和箪笥って着物とかを入れるので引き出しが横幅180センチと大きいものもあるんです。状態的にはそのまま直して完成にしてしまってもいいものだったんですけど、今の生活でその大きさは使いづらいだろうなと思ったんです」

「そこで大きな引き出しを小さく分けることを提案したら、『やってみよう』ということになったんです」

引き出しの幅を60センチずつに切って、内側には新しい材を使って箱状に。外側にあった鍵穴の部分には古材をはめこんで化粧で隠す。取っ手の飾りもあたらしく付けなおした。

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「すごく手間も増えますし時間もかかったけど、仕上げてみたらとても良くなったんです」

大切なのは、古いものの魅力を生かしつつ、現代の生活に合うようにしていくこと。家のどこに置いて何を収納するかまで想像できると、実用的に使いたいお客様に喜ばれそう。

もくもくと作業する時間も長いから、手を動かしてつくることも好きなひとだといいのかな。中村さんも、はじめのうちは残って作業をする日もあったそう。

どんな人に来てもらいたいですか?

「ぼくは未経験から働きはじめたんです。未経験でもいいということは、たくさん教えてあげるから、たくさん経験してできるようになってね、ってことだと思うんです。だから、アドバイスをもらったときにすっと受け入れられる人がいいんじゃないかな」

「社長は強い思いを持っている方だと思うんです。だからうちのやり方をまずは受け入れて理解できないと、きついかもしれないです」

経験があってもなくても、素直に受け入れてやってみることのできる人がいいのかもしれません。

「そういえば、一度だけ腰を痛めました」

えっ。

「月に一度開かれる骨董市に来ていた整体屋さんに行ったら一回で治ったんですけど」

なるほど。重いものを持つこともあるから、体力も必要なのかもしれませんね。

「骨董市は近くでたくさん開催されているので、そういうのが好きな人は楽しいかもしれないです」

古物が好きだったり、自分の手でつくることが好きだったり。そんな方にはぴったりかもしれません。

「もの」を世に送り出すときは、役に立つかたちで出す。それが「もの」にとっても、プロデュースに関わった人にとっても幸せなのじゃないかな。

なんとなく、そう思う場所でした。

「ふるいもの」は誰かの思いがあってつくられたもの。そこに今の人の手間や「今の生活に合わせて使いたい」という声が重なっていく。それがライジングプレナーの家具を魅力的にしているのだと思います。

気になった方はぜひ一度、サイトをのぞいてみてください。どきどきするような「もの」たちが並んでいるはずです。

(2016/9/26 倉島友香)