求人 NEW

“らしさ”はつくれる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「東京の街を楽しく走れる自転車があったらいいな」

そんな思いをかたちにするところから、トーキョーバイクは始まりました。

山を走るための自転車がマウンテンバイクなら、東京を走るための自転車はトーキョーバイクです。

15年間、自転車の製造・販売が中心だったこの会社が、昨年から新たに挑戦しているのは観光業。拠点となる”Tokyobike Rentals Yanaka“は、国内外からの観光客の方に「この街の住人のように街を楽しんでほしい」というコンセプトのお店です。

今回はその店舗で働くスタッフと、会社の窓口となる営業事務のスタッフを募集します。

 
日暮里駅で電車を降りて坂道を上っていく。

坂の上に広がるのは谷中霊園。ずっと桜並木が続いていて、春の風景を想像しながら歩いていくと10分ほどで到着した。

古民家のような建物の外にカラフルな自転車が並んでいる。店内には雑貨がたくさん置いてあるし、コーヒーの良い香りもしてくる。

ここは一体なんのお店だろう?

トーキョーバイクを知らずにここを訪れた人はきっとそう思うはず。

出迎えてくれたのは取締役の塚崎さん。店内の奥のほうに座って、その答えを教えてくれました。

「このお店には、自転車を中心とした体験を通じて、トーキョーバイクが大切にしている価値観や生活の楽しみかたを提供したいという思いが込められています」

自転車のレンタルに雑貨の販売、コーヒーやお酒が飲めるカフェ。その3要素が混ざり合っているのが”Tokyobike Rentals Yanaka”。

取材中も、外国人の女性3人組が、一通り雑貨を見た後に自転車をレンタルして出かけて行った。その後には、ふらっと中に入って来て「何のお店?」と尋ねるおじいさん。座ってゆっくりとコーヒーを飲んでいる男性もいる。

さまざまな情景が混ざり合う。これがこのお店の日常。

塚崎さんは印刷会社の営業を経て、日本仕事百貨でトーキョーバイクの求人を発見、4年前に入社した。昨年からは取締役として、会社全体の経営に関わるようになった。

「うちの会社って、きんちゃんの頭の中にあった自転車のアイデアを形にするところから始まってるんです。きんちゃんっていうのは社長のことなんですけど(笑)何か新しいことをするときにも、彼の中でもまだふわっとしているものを、やってみてから考えようってことも多くて。1回試しにやって、それ良いねってなることもあるし」

「だから、方針みたいなものをどこまで決めて、形づくるのがうちの会社にはいいんだろうっていうのを、日々経営陣でも考えながらやっています。トーキョーバイクらしさって何だろうって」

トーキョーバイクらしさ。

「トーキョーバイクと言えばこれ、っていうのがないんですよ。良くも悪くも。そういうふわっとした部分が、僕らのブランドを表現しているとも言えるんですけど。ただあまりに自由だから、悩む社員も多いという…」 

“らしさ”が固まっていないからこその葛藤。トーキョーバイクに入った人の多くが通る道のよう。

1年ほど前に、日本仕事百貨をきっかけに入社したという三好さんもその1人。今はこのお店の店長を務めている。

「長く勤めた思い入れのある会社から転職するときって、これで良かったのかってすごく悩むんですよ。でも悩んだ結果、やっぱり次に行こうって決断して。そういう中で選ぶ仕事だから、ゆっくり時間をかけて自分に合う会社を見つけたいなと思っていて」

「トーキョーバイクの記事を読んだとき、この人たちに会って話してみたいって思ったんです」

三好さんが以前勤めていたのは、大手航空会社。その前は銀行、学生時代は有名コーヒー店でのアルバイトと、大きな会社でしか働いたことがなかった。

「ギャップはありましたね。ここは、指針とか方向性が、社内でもはっきり固まっていなかったりして。迷うことも多かったです」

例えば、このお店のカフェのこと。イメージしていたのは、自転車をレンタルした海外のお客さまが、出発前にさっとコーヒーを飲む姿。だから当初はカフェに椅子を置いていなかった。

「でも実際にオープンしてみると、ご近所のいろんな方がいらっしゃったんです。座りたいっていうリクエストがあったのは予想外だったし。そういうときに、椅子を1つ置くか置かないかでもすごく悩みました」

はっきりした指示はないし、多くのことを現場で判断していい会社。

だからこそ悩むこともある。

「トーキョーバイクらしさって何か教えてもらおうとしても、誰からもはっきりとした言葉では返ってこないし。悩んだよねえ?」

同じく店舗で働く橋原さんが、それに応える。

「悩みましたね。ここのお店って、ごちゃ混ぜなわけですよ。自転車が借りられて、コーヒーや日本酒が飲めて、雑貨があって。このお店のコンセプトを聞かれたときにみんな言うこと違うみたいな」

学生時代、ロンドン留学中にトーキョーバイクの店舗を偶然見つけたという橋原さん。その雰囲気やスタッフの方との話が、すごく印象に残っていたそう。

新卒で勤めていた広告制作会社でCMなどの制作をしているとき、ふとトーキョーバイクのことを思い出した。

「上下関係ガチガチの会社から転職してきたんで、そこと比べると、すごく精神的な自由さがある会社だなと思います。社長をきんちゃんって呼ぶくらいですし、すごくフラットで」

ただ、橋原さんも最初のころは、その自由さに悩んでしまうこともあったという。

「ああしろこうしろ言う人がいないから、指示待ちの状態でいると何もできないまま終わってしまう。自分で自由にやっていいんだって気づくまでに、結構時間はかかったんじゃないかなあ」

橋原さんが自由にやっていいと気づくきっかけになったのは、お店で開催したライブのイベント。

もともと写真や映像が好きだったから、機材を持参してイベントの動画や写真を撮った。

「しれっと撮りましたね。それを編集してみんなに見せたりして。そういう、ちょっとした自由な気持ちを持つことが大事なんですよね。まあ、やっていいのか悩むことは今でもあるんですけど」

人に迷惑のかからないことなら、通常の仕事にプラスしてどんどんやっていいそう。

「それによって自分のポジションが決まっていったり、新しく仕事につながったりっていうのはありますね。僕は、その後もイベントとかでよくカメラを回していたら、結果このお店のインスタグラムの担当をやらせてもらえてるので」

普段の仕事も、”これ”と決まっているものはないそう。

またまた店長の三好さん。

「1日の中で横断的にいろいろな仕事をします。レンタルバイクとカフェと雑貨があって、それぞれ担当は決まっているんですけど、どの仕事もみんなできます。忙しいときにはフォローに入ったり、休憩のときは交代したりするので」

「何か1つの仕事だけやっていればいいっていうことはないです」

自転車のメンテナンスや、美味しいコーヒーの淹れ方も覚えることになる。そんなふうに日々のいろいろな仕事をこなしながら、プラスアルファで新しい雑貨のリサーチやイベント企画などを考えるという。

「これから入る人にも、お店をもっと良くしていくために動いていってほしいです。トーキョーバイクっぽいって何なのか、わからないからできないって言うんじゃなくて。これはOKかな、これは違うかなっていうのを、自分の中で一つひとつ考えてみてほしい」

「いろんなことができる分、大変なところもあります。でも、そこから得られる経験や、高まっていく自分の感性っていうのは、1つのことだけをやる職場とは違う楽しさがあると思います」

 
営業事務の仕事については、あらためて塚崎さんが教えてくれました。

基本的な仕事は、全国にある販売店さんへの対応。注文を受けて倉庫に出荷依頼をしたり、在庫確認や入荷の問い合わせ対応が多いという。

会社の代表窓口として電話やメールを受けるので、社長への取材の依頼、一般のお客さんからの問い合わせ、ときには理不尽なクレームに対応することもある。

「一つひとつの作業は地味なんですけど、相手にとってはうちを知る最初のタッチポイントになるんですね。そこでうちの会社が印象付けられるので、すごく重要な仕事ではあります」

大きい会社ではないので、決められた事務の仕事だけをやっていればいいわけじゃない。経理の補佐や広報の窓口、事務所のメンテナンスなど、業務は多岐に渡る。

「それに、うちの会社ならではの自由さというか、枠が決まってないところはやっぱりあって」

そう言って見せてくれたのは、季節ごとに出しているというトーキョーバイクのカタログ。表面には自転車のラインナップ、裏面にはおすすめの自転車の楽しみかたがイラスト付きで載っている。このイラストを描いたのは、以前勤めていた営業事務の方だというから驚いてしまう。

「できることは幅広いです。このイラストを描いた子も、こういうことがやりたくて入って来てるわけじゃないけど、たまたま描けるからやっただけで。彼女が教えてくれたお菓子を店舗に置いたりもしてますし」

「業務にかかわらず、それぞれが考えてやれば何でもできるのがトーキョーバイクですね」

それは日々の業務をきちんとこなすからこそ認められることだと思う。

「もちろん、毎日面白いことが起きたり、思ってもみなかったイベントがあったりとか、そういうことではないです。基本業務は地味ですし、日々の仕事を淡々と進めていく感じ。その毎日を苦と思わずに楽しめる人がいいですね」

楽しめる人。それはトーキョーバイクでは重要なキーワードみたい。

「谷中のお店も、観光業っていう新しい試みで、僕らにとっても未知の事業。だから現場のスタッフが苦悩してしまう。逆に言えば、お客さんも僕らも楽しめる空間を一から形づくっていける時期なので。そういうのを楽しめるのが大事ですね」

新しいものや面白そうなものに出会ったとき、積極的に首を突っ込んでいくような人が、お客さんにも社内にも多いという。そうやって、楽しむことに貪欲な人が、この場所には集まってくるように感じる。

“トーキョーバイクらしさ”ってなんだろう。

これから入る人も、それを自分なりに考え続けていくことになるはず。

そこに明確な答えはありません。

けれど、”らしさ”にとらわれない自由さと、それを楽しむエネルギーに満ち溢れた場所だったなと思いました。

(2018/2/22取材 増田早紀)

おすすめの記事