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ふろしきから柔らかに

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一枚の四角い布は、シンプルでありながら、日常使いのバッグから華やかなラッピングまで、包み方や結び方によって自在にかたちを変化させる。

top-2 創業から80年のふろしき専門メーカー・山田繊維株式会社は、暮らしを楽しくするようなふろしきをつくり、提案しています。

どうしてそれができるのか?

お話を聞いていると、ふろしきが持つ可能性を純粋に面白いと感じ、柔軟に挑戦しているからなんだと思いました。

今回は、ふろしき専門店「むす美」の東京店に立つ人を募集します。

 

地下鉄明治神宮前駅を出て、明治通りを原宿方面にまっすぐ5分ほど歩く。にぎやかな通りから右手の道に入っていくと、むす美のショップはありました。

店内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、グリッド状の棚を彩るふろしきたち。

display-hiki 動物が描かれた遊び心のあるものや、絵柄も配色もおしゃれなふろしきなど、一つひとつ近づいて見てみたくなる。

お店のディスプレイを監修しているのは、3代目社長の山田芳生さん。

「お客さんに『こんなデザインもあるんだ!』『こんなふうに使えるんだ!』と、新鮮な驚きに触れてもらったり、気軽に楽しんでもらえるように空間をつくっています」

山田さん その言葉からは、伝統的なものをただ残していこうというより、新しい価値を添えて届けているのが伝わってくる。

山田さんは新卒でアパレル会社に就職。その後、28歳で山田繊維に入社した。

そこから、営業や商品管理、商品開発、物流から経理など、さまざま仕事の経験を積んだ。現在は商品開発を中心に手がけ、今年4月には「むす美京都店」をオープンさせるなど、常に新しいチャレンジをしている。

山田さんは今どんなことを考えているのだろう。

「そうですね。名前こそちがうものの、ふろしきは大昔から世界中にあったと言われています。でも、いまだに使われているのは日本だけらしい」

「理由は定かではありませんが、ふろしきというものは私たちの暮らしにとって大事なものなんじゃないかなと感じているんです」

けれど近年のふろしきの需要は減るばかりで、何もしなければなくなってしまうかもしれない状況だという。

「せっかくふろしきを商売にする環境に生まれたから、自分が関わることで、ふろしきというものにふたたび光を当てたい」

「単なる“日本のもの”というイメージにとらわれず、人々の暮らしのなかにあったらいいなと思ってもらえるものを届けたい。そのために、いろんなかたちで知ってもらう機会をつくっています」

tenjikai 大事なのは、暮らしのなかで使ってもらうこと。

山田さんが入社した当時、描かれているデザインも使い方も、日常で使えるものとは思えなかった。

自分たちを振り返っても、誰もふろしきを使っていなければ、結び方も知らなかった。

そこで社外から講師を招いてふろしきの結び方・包み方を教えてもらうと、面白さを実感した。

どんな商品だとお客さんに使ってもらえるだろうかと考え、ニット素材のものやシワ加工をしたふろしきをつくってみたり、モダンなデザインのものをつくったり、開発に取り組んだ。

自分たちでつくった商品を発信していく場として、ショップも構えた。

それでも、はじめのうちは思うようにお客さんに受け入れられなかったという。

「なかなか『ふろしき=日本のもの』という殻を破れない。それではいつまで経っても、“ふろしきは着物を着るときに持つもの”という評価のまま。もっと気軽に普段から使ってほしいし、現代の服に合うものをつくりたいと思っていました」

そんな山田さんの考えに共感して、デザインや流通などさまざまな分野で活躍する社外の人たちが力になってくれた。

mina perhonen つながりが生まれるなかで、商品も磨かれ、状況は徐々に変わっていった。

「5年前かな。うれしい褒め言葉やなと思ったのが、『このふろしき、着物でも持てる』という言葉で」

「つまり、昔とは真逆で、ふろしきは洋服で持つものだという感覚が先にきている。『やった!そうなった!』と思えたんです」

bag 日本で生まれつつある流れを、今度は世界でもつくっていきたい。

2018年1月にはフランスで展示会を行う。

ここで、「食べものの『パン』って何語だと思います?」と山田さん。

「英語ではないし日本語でもない。ロシア語かな?とか、由来がよくわからないじゃないですか。でも、いろんな国の人たちが好んで食べていますよね」

「ふろしきも、はじめこそ日本のものとして受け止められると思うけど、もともとあった文化だから、眠っているDNAを呼び起こすというか。『いいねぇそれ』と思ってくれる人が世界中にもいるんじゃないかなと」

昔は世界中で使われていたんですもんね。

「そうなんですよ。四角い布を使うという行為を継承していくことが、面白いことなんかなと思うんです。100年先かもしれないけれど、ふろしきって何語?って言われるまでやってみたいですね」

手さぐりの状態で進める不安もきっとある。それでも、軽やかに話す山田さんをみていると、世界中で当たり前にふろしきが使われている未来も想像できるような気がする。

 

続いて話を伺ったのは、店長の高橋陽子さん。

高橋さん-1 大学ではテキスタイルを専攻し、染めについて学んでいたそう。新卒で山田繊維に入社し、受注業務の仕事を経て、商品デザインの仕事を5年担当した。

デザインの仕事をしているころ、社外でイベントを開いたりと、ふろしきについて伝える機会が増えた。訪れた人たちからは、「面白いね!」「ふろしきで何かやってみたい!」という声があがるように。

「そういうなかで、自分はデザインより人と接していくことが好きなのかもしれないと思って、お店のことに興味をもちました」

現在は京都店と東京店とを行き来している。

入社当初と比べて、自分の中のふろしきの捉え方が変わってきているそう。

「最初はふろしきをプロダクトとして面白いなと思っていたんですけど、今は生活に溶け込むというか、実用的なところが魅力だと思っていて。私は毎日愛用しています」

高橋さんは普段、端と端を結ぶだけのシンプルバッグという使い方でふろしきを活用しているという。お弁当や手帳などちょっとしたものを持ち歩くのにぴったりなんだとか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「ほかにもいろんな使い方があるので、自分が実感している日常使いの感覚を、もっとお客さまに伝えられるといいなと思っています」

どんなふうにお客さんに伝えていくのだろう。接客の様子について聞いていく。

「お客さまはホームページなどを見て、目的をもってお店に来られる方が多いです。そのなかでも、サイズ感や肌触りなど、実際に触ってみないとわからないことがたくさんあるので。こんなふうに使いたいというイメージを伺いながら、ご要望に応えられるように提案していきます」

一方的にではなくて、一緒に考えて探していく感じなんだそう。

あるお客さんとのエピソードを話してくれた。

「サイズが70cmくらいのふろしきを探しに来られた方がいて。お話を聞いていくと、旅行のとき荷物を整理するのに使おうと考えていらっしゃったんです」

それなら、大きいサイズのもののほうが結び方によって使い方のバリエーションが増えていいかもしれない。それに撥水加工のものなら雨に濡れずに安心だということを提案したところ、気に入って購入してくれた。

「提案の仕方で、目当てにしていたもの以上にぴったりのものが見つかると、そちらを選んでいただくことが多いです。だからこそ、コミュニケーションが必要になります。お客さんの要望をきちんと汲み取って提案できたときは、すごく楽しいです」

友人へのプレゼントを探していた方が、自分用に買っていくほど気に入ってくれるなんてこともよくあるそう。いいものを見つけられるからと、リピートするお客さんも多い。

staff もちろん、そんなふうによろこんでもらうのは、簡単なことではないと思う。

豊富なデザイン・素材・サイズのなかからどの商品を選ぶか。どんな包み方がいいのか。大きさや形のちがうどんなものでも包めるだけに、お客さん一人ひとりの要望に合った提案をすることは難しいという。

「そこは苦戦するかもしれません。でも、お店は社員とアルバイト含め常に3~4人体制で回していて、協力しながら接客していきます。はじめのうちはわからないことがあったりうまく提案できなくても、一人でかかえ込まなくて大丈夫です」

これからパートタイムスタッフとして加わる人は、まずは商品や包み方を覚えていくことになる。

覚えることがたくさんあって大変に思うかもしれないけれど、今アルバイトとして働いている人も、毎日商品に触れるなかで自然と知識を身につけているという。結び方も練習して、すぐに実践しているとか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「自分の暮らしのなかでもふろしきを使ってくださっています。これから一緒に働く方も、いろんなことに興味を持てる方が来てくださるといいですね。自分がもっと知りたいなと思ったことを掘り下げて伝えていくことで、お客さまにも『ふろしきって面白いね』と言っていただけると思うんです」

「一人でも多くのお客さまに、また来たいなと思ってもらいたいので。笑顔で挨拶がきちんとできること、お話をちゃんと聞いてコミュニケーションが取れること。そういう気持ちのいい接客ができることがいちばん大切です」

代表の山田さんにも、どんな方に来てほしいか聞いてみます。

「今働いている方は、10年以上勤めてくれている主婦の方もいれば、歌を唄う仕事と両立している方もいますし、京都のお店には学生さんもいます。それぞれの世界で精一杯頑張っている人たちとふろしきがつながるということは、お店にとってもいいことなんじゃないかと思います」

「暮らしを豊かにするために、ここで働いてみたいなと思ってもらえたらうれしいですね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 現代の暮らしのなかにどう活かせるか考えたり、日本で大事にされてきたことも、自分次第でどんどん知っていける。

ここには、いろんな可能性にアンテナを張り、広げていける環境があると思います。

興味が湧いたら、ぜひお店を訪ねて、まずはふろしきの面白さを体感してみてください。

(2017/08/30 取材 後藤響子)

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