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「エコ」「オーガニック」という言葉や情報が街中に溢れるようになりました。自分の体に触れるものや食べるものを、大切に選びたいという人も増えていると思います。私もその一人です。
もちろん環境にも人にも負荷は少ないほうがいい。
でも完全無農薬の野菜だけを食べるには高くて手が出なかったり、天然繊維100%でなく少しだけポリエステルが含まれていても好きなデザインの服があれば買ってしまう。
理想はあれど、自分の暮らしに取り入れにくいものもある。
だから自分が心から気持ちいいと思えて、長く使い続けられるもの選びやライフスタイルをつくっていけたら。無理なく自然と、それがエコにつながっていくんじゃないだろうか。
グリーンオーナーズ会議では、そんなエコのあり方が実践されているように思いました。
グリーンオーナーズ会議は、生活雑貨を中心としたホームウェアやリビンググッズなど、主に天然素材でつくられた製品の卸しをしている会社です。
製品は展示会場や、全国各地にあるものづくりの現場へ足を運んで探している。そして自然食品やエコ製品を扱う会員制宅配サービスのチラシを通してお客さんへと届けられます。
今回募集するのは、取引先とチラシの内容を企画したり、メーカーともやりとりをしながら消費者とつくり手をつなぐ営業の担当者。
理想だけを追うのではなく、自分たちはもちろん、メーカーにとってもお客さんにとっても、きちんと利益を生み出し事業としてエコを継続していくことを考えている会社です。だから、理想や想いだけで働き続けるのは難しいかもしれません。
それでも誠実に、持続可能なエコに関わる仕事をしてみたいと感じたら、ぜひ自分には何ができるだろう?と想像しながら読んでみてください。
地下鉄の市ヶ谷駅を降り、グリーンオーナーズ会議のオフィスに向かう。
10分ほどの道すがら、あたりは一面の桜並木。
「桜、すごかったでしょう。このあとは紫陽花がきれいに咲いたりして、都会でありながら自然に触れられる場所がたくさんあるんですよ。本当に通勤の時間が贅沢だなと思います」
そう笑顔で迎えてくれたのは、常務取締役のバイデュラス未菜子さん。さっぱりとした雰囲気で気さくに話しかけてくれる方です。
グリーンオーナーズ会議は、1997年に代表の山下さんが創業した会社。
山下さんはもともと繊維業界で働いていた。働き始めたのは高度経済成長の真っ只中で、安さや効率ばかりを追い求めるようになった業界に限界を感じるようになったそう。
だんだんと、“次の時代に本当に必要とされるような仕事”を模索するようになる。
ちょうどそのころ、知り合いの紹介で出会ったのが「エコ」の考え方だった。安心で安全、そして健康でいられるエコのライフスタイルが、これからの時代に求められるのではないか。
そんな考えから、よさそうな商品と出会ったら、メーカーのある現地へ直接話を聞きに行って、納得できるものか判断するように。知り合ったメーカーと協力して新商品を企画することもあった。
たとえば、オリジナルのパジャマやルームウェア。生地には、和晒しという製法でつくったガーゼが使われている。
和晒しは、通常の機械化された工場では約一時間程度で行われる洗いの工程を、職人が4日かけて大きな釜で行う。そのため、生地の風合いがとてもやわらかく、何度洗っても硬くならない。通気性と保温性に優れた人気のシリーズなのだそう。
ほかにも洋服、クッションやシェード、キッチン用品など。商品の多くは、自然の力を活かした、人と環境に配慮したもの。
「ただ、私たちはガチガチのエコ会社ではないので、天然素材のものだけにこだわっているわけではありません。一番に大切にしているのは、その商品を購入して使ってくれる人の生活に寄り添うことです」
生活に寄り添うこと。
「たとえばナイロンやポリエステルでできている靴下も扱います。それは運動機能をサポートする商品で、天然由来の素材ではつくれないんです」
「一番の優先順位は、いろんな意味での心地良さ。用途に合わせて、生活の中での悩みを解決できるものを、できるだけご提案したいんですね」
なるほど。エコ商品は想いや背景に共感して買うイメージが強かったから、実用面でも本当に使いやすいものというのに驚いた。それなら自然と生活に取り入れられそうですね。
「こういう商品って、社会や環境にいいことを、という正義感のようなものじゃなくて、『これは面白い』とか『素敵』って思えないと、選ぶ人は増えないと思うんです。そのためにも、つくり手の背景や素材自体の効能、商品そのものの価値を伝えたいと思っています」
今回募集する営業職は、グリーンオーナーズ会議と会員制宅配サービスを運営するクライアント、双方の考え方を理解した上で、仕事を進めていくことになる。
具体的には、それぞれのクライアントを担当し、チラシづくりや紙面で扱う商品の提案、担当メーカーの窓口など。ゆくゆくは一人で数社を担当することになるそう。
「どのクライアントさんにも、月に2枚はチラシを用意します。チラシは、いわばお店の売り場みたいなものですね。そこにどんな商品を並べるか、販売内容の調整やご説明をしに行く係っていう感じかな。営業と言っても、新しい取引先を探すとか、飛び込み営業みたいなことではないんです」
チラシに並べる商品は、営業だけでなく社内全員で共有し選定していく。多い時には月30本ものチラシ製作が同時進行で行われるそう。
一方でクライアントごとに採用される商品の傾向も違うので、担当者が商品の差し替えを提案することも多い。
ほかにも紹介する商品のリストをつくったり、現物を見てもらうためにサンプルを取り寄せたり。月に1回クライアントの担当者さんと打ち合わせをして、意見を聞きながら紙面を練り上げていく。
「誰もが消費者なわけですから、買う側の立場を反映することはできると思います。一方で売る者として、メーカーさんに聞いたり、ときには歴史を紐解いたりしながら『なぜエコ製品がいいのか』一歩踏み込んで理解しようとすることが必要ですね」
メーカーにクライアント、消費者となるお客さん。さまざまな視点から考え、何がベストなのかを自分なりに考え形にすることが求められる。
まさにそんなふうに働いているのが、高島さんです。
取材中も、話が脇道に逸れるとさりげなく引き戻してくれる。やわらかな雰囲気の中にも、冷静に状況を把握している様子が感じられます。
これまでは、服飾資材や洋服の生産管理の仕事をしてきたという高島さん。
グリーンオーナーズ会議への興味を深めたきっかけは、日本仕事百貨の記事の中で紹介されていたチラシを見たことだった。
「チラシの写真を見たときに、情報が詰め込まれすぎてなくていいなと思って。これまでのチラシのイメージとは少し違ったんです。自分はオーガニックなものを特別意識しているわけじゃなかったけれど、こういうことをやれるなら楽しくやれそうって思いました」
入社してから、まもなく丸2年。
今では商品の受発注業務全般や、営業のフォローまでさまざまな仕事をするように。小売店へ直接商品を卸すこともあるので、新商品の紹介やどんな商品が求められているのかリサーチして対応することもある。
いきなりすべてを任されるわけではないけれど、社員は7名と少人数のため、基本的に皆さんマルチタスクだ。
次から次へとやることが出てくるから、苦しくなってしまうことはないのでしょうか。
「ある程度自分の考えで優先順位を決定させてもらえるので、業務が集中したときにはきちんと理由を説明して調整をお願いしています。業務の進め方にしても、その他の社内の議題についても常に自分の意見を持つことを心がけていますね」
グリーンオーナーズ会議では、年功序列もなく自分の意見をしっかりと持っているかどうかが問われる。会社の決めた方針に委ねたいだけの人には難しいかもしれません。
常に、考えを巡らせながら良い方法を模索している高島さん。その姿勢は、新商品の開発にも活かされています。
たとえば、青森ひばを使ったアロマバッグ。木を糸状にしたものを土佐和紙で包み、ひばの消臭、防虫、調湿の効果が生かされている。
原料を自らの足で探し、デザインについても熟考を重ねた。完全オリジナルのデザインではコストが高くなってしまうから、和紙メーカーが持っていた型のなかから選んだそう。
「なかに入れている糸状の木も、昔は緩衝材として使われていたそうです。でも今は需要が減って、削る技術を持っているのはもう日本に一社だけなんです。産業として今後も残してほしいという思いで、削る前の丸太から私たちで手配して加工をお願いしています」
糸状の木を継続して取り扱うことができるようにする一方で、よりお客さんが継続的に買いたいと思えるような商品であり続けるために、商品自体のブラッシュアップも考えている。
「今はシューキーパーやミニサイズなど用途に合わせて3つの形があるんですが、そこはもっと工夫して使いやすいものにできたらなと思います。つくる側の工程も知っているので、使いやすくて作業工程もすっきりさせられる方法はないかなと思って」
使う人だけじゃないし、つくる人だけでもない。双方の間でバランスのとれたものづくりを目指している。さらにきちんとビジネスとしても成り立てば、結果的に昔の知恵や技術を残していくことにもつながっている。
「正解もゴールもないから大変ですけど、自由に考える余地があるので楽しいですね」
話を聞いている間にも、「いま思ったんだけど、チラシで和紙の説明をもっとしっかりしたほうがいいんじゃない?」と早速バイデュラスさんから意見が挙がる。
「たしかに。和紙の放出性の話とか」「ほかにどんな情報があったらいいですかね?」とあっという間に話が進んで、チラシの内容が調整されていく。
動き出すことを渋ることなく、全員がまずは試してみようとする様子が印象的でした。
自由度の高い仕事には、自分に任されているからこそ相応の責任が伴うもの。
だけど歯車の一部としてではなく、いろんな仕事に関わっていきたいと思う人なら、きっと楽しく働けると思います。
エコについて、仕事について。あなたはどんなふうに考えますか?
一つひとつに納得しながら働ける環境がここにはあると思いました。
(2018/3/27 取材 並木仁美)