※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
どんなに好きなブランドがあったとしても、クローゼットの中がそれだけで統一されている人はそう多くないと思う。ナチュラルな雰囲気の洋服にちょっとハードなブーツを合わせてみたり、シンプルなコーディネートだけどアクセサリーにかわいらしいモチーフを忍ばせたり。
自分らしい軸を大切にしながらも、ちょっとした遊び心を取り入れて、いつも新鮮な気持ちでファッションを楽しみたい。
今回紹介するのは、そんなふうに服を選ぶ楽しみを伝える仕事。300ものブランドからセレクトしたアイテムが並ぶ、ファッション通販サイト「ナチュラン」のバイヤーを募集します。
アイテムのセレクトはもちろん、撮影用のコーディネートや商品の魅力の伝え方まで、トータルで企画していきます。
合わせて、撮影アシスタントや画像加工などの担当者も募集しているので、ぜひ読んでみてください。
四ツ谷駅を出て、中高一貫の女子校の校舎沿いを歩いていく。5分ほど行くと、ナチュランを運営している宝島ワンダーネットの事務所が入るビルに到着。
エレベーターで2階に着き、大きな会議室のような部屋で待っていると、バイヤーチームの皆さんがやってきた。今日は午前中に会議を終えて、少しほっとしているところなのだそう。
最初に話を聞かせてもらったのは、マネージャーの柿谷さん。丁寧な話し方や、やさしい物腰。ナチュランのイメージそのもの。
柿谷さんは入社6年目。実は前職でも、ナチュラル系のファッションを扱う店舗でバイヤーをしていたという。
「ナチュラルなお洋服を好まれる方って、ファッションだけじゃなくて普段の生活も大事にされているようなイメージがあって。流行にとらわれず扱えるお洋服に関わっていけるっていうのも、この仕事のよさだと思うんです」
ベーシックな色味やスタンダードなフォルム。
トレンドに大きく左右されないというのも、ナチュラル系のファッションの特徴。
そのぶん、素材にこだわったり、風合いを楽しんだり。自分になじむ服と、長く付き合う。ちょっとメンズファッションに共通するような楽しみ方もあるという。
ナチュランのサイトには、そんな視点で選んだ洋服や靴やアクセサリー、バッグなどの服飾雑貨はもちろん、ちょっとした日用雑貨まで幅広く紹介されている。
商品を仕入れるだけでなく、ページに掲載するためのコーディネートまで考えて提案するのがバイヤーの仕事。
「このフロアには私たちバイヤーのほかに、商品の撮影やチェックをする部署の人や、カスタマーサービスに携わる人など、いろんな担当者がいて。何かあればすぐに行き来ができる距離感で仕事をしています」
「だから、何かを決めたり相談したりするときもスピード感がありますね。それは店舗で仕事をしていたときとの大きな違いかもしれません」
一緒に働く人、職場の雰囲気はどんな感じなんだろう。ファッション業界って、すごく忙しいイメージもある。
「おだやかな人が多いと思います。社内も、取引先さんも。いそがしいときにちょっとバタバタすることもありますけど、ギスギスはしない。大きな声が飛び交うことは、ほぼないですね」
「ファッション業界って比較的人の入れ替わりが激しいんですけど、ナチュランで扱う服や雑貨のメーカーさんで人が辞めたっていう話はあんまり聞かなくて。同じ人と長く付き合えるのも、ここでの仕事のいいところだと思います」
今回新しくバイヤーとして入る人にも、できるだけ長く働いてほしいと考えているそう。
バイヤーとしての経験はなくても、他業種で営業などを経験した人であれば、活かせる部分は大きい。
ファッションに対する視点だけでなく、売上など数字を管理する力も必要なバイヤーの仕事。小売でも発注などの経験があれば活かせるかもしれない。
現在、ナチュランのバイヤーとして働いているのは、柿谷さんを入れて6人。
仕入先となる300ものブランドを分担して、扱うアイテムをセレクトしている。
どんなものをナチュランの商品として出すか、社内で協議もするけれど、基本的にはそれぞれの担当に任される部分も大きい。バイヤーそれぞれの視点があるほうが、サイトとしても新しい提案ができる。
柿谷さんの提案は、時どきチームのメンバーに驚かれることがあるのだそう。
「以前リネンのワンピースを提案するときに、ピンクのものを選んできたことがあって」
ナチュランのメインの顧客層は40歳前後。
かわいい色味や柄物は敬遠されやすいので、メインの商材としてはそれまで積極的に仕入れてこなかった。
周囲はピンクというチョイスに少し心配していたものの、柿谷さんは「かわいいから、絶対大丈夫」と信じて入荷。その直感が当たって、すぐに売り切れたのだそう。
「女性って、自分の好きなテイストだけじゃなくて、いろんなものが気になりますよね。ナチュラルという軸のある人も、たまにはトレンドを意識してみたいとか。お客さんのワクワクする気持ちは大切にしたいんです」
「だから、バイヤーもある決まったテイストだけじゃなくて、いろんなものに好奇心を持っていられるといいのかもしれないですね」
たしかに、いろんな企画バナーの並ぶ特集ページで、ベーシックなトーンのなかに華やかな色味があると「お?」と目を引きますね。
店舗だと手を伸ばせない人でも、Webサイトならちょっと覗いてみようかなという勇気が出るかもしれない。
「普段は着ない色味のものでも、シルエットがいつものテイストに近ければ、試してもらえるんじゃないかと思って。さじ加減は難しいけど、そういうチャレンジは楽しいですね」
お客さんが実際に触ったり試着したりできないぶん、シルエットがわかりやすいように動きのある写真を使ったり、質感を細かく言葉で伝えたり。
眺めて満足するだけでなく、自分も着てみたいという実感を持ってもらえるようにコーディネートを工夫するのも、バイヤーの仕事。
「一人ひとりに任せてもらえる部分が大きいし、社内で撮影もカスタマー対応もワンストップで行っているから、自分が思っているものをきちんと打ち出せる。それで成果が出ればうれしいし、ふるわないときは反省することもあって」
「そういうときも、引きずらずに次に生かそうっていう切り替えは大事ですね」
柿谷さんにとっては、仕事で新しい洋服や雑貨を見ることが、一番のリフレッシュになるという。
「展示会にお伺いすると、自分より歳上のメーカーさんやお客さんもたくさんいるんですけど、みなさんすごくお洋服を楽しんでいて。そういう方からは刺激をもらえます。私が歳を重ねたときもそういうふうになりたいです」
おだやかな人と、好きな服に囲まれて。話だけ聞いていると、つい「いいなあ」と心の声が漏れそうですが、バイヤーの仕事には体力勝負な面も。
展示会は年に数回と限られているうえに、複数のブランドで日程が重なることが多く、その日が酷暑でも大雨でも、会場へ向かわなければならない。朝から夕方まで、会場をはしごすることもある。
ここで働きはじめてもうすぐ丸2年になる眞玉(まだま)さんにも話を聞いてみた。眞玉さんは、3歳になる娘さんを育てながら働くお母さんでもあります。
2年前に掲載した日本仕事百貨の記事を見て入社。営業事務からはじめて、1年前から靴や雑貨などの部門でバイイングに携わるようになった。
「私はこの会社に入るまで、ファッションに関わる仕事はしたことがなくて。だから今は、展示会に行ってメーカーさんにいろいろ聞くのが楽しいんです」
海外の職人さんが手作業でつくった服、オリジナルの木型を使ってつくられた靴。奈良は靴下の産地で、製糸が盛んだった群馬では糸を使ったアクセサリーをつくっていて…。
展示会で見聞きしたことを、明るく楽しそうに話してくれる眞玉さん。こんなふうに興味を持ってもらえたら、メーカーさんも話し甲斐がありそう。
「展示会のあとも、メーカーさんとはずっとお付き合いが続きます。ときには納期のことでお願いをすることもあるので、こちらから何かを伝えるときも、一方的にならないようにコミュニケーションは気をつけるようにしています」
展示会でたくさんのものを見ていくとき、眞玉さんはどんなことを基準に服を選んでいるんだろう。
「わたしは普通の買い物の視点に近いかもしれません。まずは『あ、これかわいい!』っていう感じ。それで社内に持ち帰ってみて、他のスタッフにもいいねって言ってもらえたらうれしいんですけど、ときどき『え、それ?』みたいなリアクションもあります(笑)」
「共感してもらえないときは、そういえば自分でもちょっと自信がなかったかもって気づくことが多くて。だから社内ではお世辞じゃなくて正直に、『かわいい』『かわいくない』っていう意見を言ってもらえるほうがいいんです」
もうひとつ眞玉さんが教えてくれたのは、担当している靴や雑貨というジャンル特有の難しさのこと。
洋服に比べて製品納期が長いので、はやいときは半年くらい前から仕掛かりはじめる。真夏に冬のブーツなどずっと先の季節で消費者がどんな気持ちなのか想像することになる。
黒とダークブラウンといった微妙な色の違いでも、数量バランスの読みが外れると品切れしたり余ったり。賭けに近い部分もあるという。
もともとナチュラルというジャンルはトレンドに左右されにくいため、何を基準に決めるか、最終的にはその人の感覚頼みになることも多い。
「そうやって半年後のことを考えながら、明日の撮影の相談をしたり、来月の納期を心配したり。いろんな時間軸でものを考える仕事だなあと思います」
もともと異業種からの挑戦で、自分がファッションの仕事に携われるとは思っていなかったと話す眞玉さん。今の目標を尋ねてみた。
「バイイングだけじゃなくて、別注でオリジナルのものをつくることも興味があります。自分がいいなと思った感覚で、ここでしか買えないものがつくれたらいいなあって」
ファッションの提案は、その服を売るためだけではなく、「この靴を履いて、どこへ行こうかな」とか、「春になってこのスカートが風になびいたら気持ちよさそうだな」という、まだここにない時間の楽しさをイメージさせてくれるもの。
ここに来れば何かが見つかる。そんな期待に応えていく仕事なのかもしれません。
(2019/8/1 取材 高橋佑香子)