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いのちのてざわり
循環が見える
食べもの

「食べるものは自分の身体に還ってくるもので、身体から出ていくものだから。循環を考えたとき、ここでなにができるか楽しみです」

私たちが食べているのは、命が循環してできたものです。

経済合理性が優先され、いろいろな役割が分けられている今、その循環は見えにくくなっているかもしれません。

自分が日々なにを選択し、食べるのか。それが地球の裏側に暮らす人の生活や自然環境など、さまざまなことにつながっていることは、お皿に盛られた食事からは想像しにくいもの。

そんな命の手触りを実感できるKURKKU FIELDS (クルックフィールズ)という場所が、木更津ではじまります。

KURKKUは小林武史さんが立ち上げたプロジェクト。小林さんは音楽プロデューサーであり、「ap bank」や「Reborn-Art Festival」などを手がけてきた方です。

オープンに向けて準備が進むKURKKU FIELDS は農業や酪農、養鶏などを行いながら、そこでつくった食べものを味わえる場所になる予定。

今回募集するのは、この場所の中核になるダイニング、そしてベーカリーで働く人。合わせて、プロジェクトマネジメントや海外とのやり取りを担当する人も募集しています。

経験は問いません。立ち上げから運営まで、ともに好奇心を持って場を開拓していく人を探しています。

東京から千葉・木更津へは、アクアラインを通ると車で1時間ほど。

看板をたどって坂を登っていくと、急に視界がひらけ、広大な土地が広がった。

東京ドーム6個分の広さがあるというこの土地では、有機農業や酪農、養鶏が行われている。

加えて農場で育てたものを食べるダイニングやベーカリー、シフォンケーキ専門店、地元の猪肉などを扱うシャルキュトリー。宿泊施設になるタイニーハウスや、展示されるアート作品、さらに小川や森づくりも並行して進められている。

案内をしてくれた伊藤雅史さんは、この場所を開拓してきたスタッフの1人。KURKKUと両輪で動いている農業生産法人「耕す」のリーダーでもある方。

「この場所を開墾しはじめた10年前から、小林さんのなかにはKURKKU FIELDS の構想がありました。ようやくここまで来れたんだな、って感じですね」

小林武史さんは音楽活動をしながら、環境や社会に関わるプロジェクトに取り組んできた。

エネルギーや環境の変化も、世界のどこかで起きたテロも、大量につくることが優先になった農業も。ふだんの私たちの生活には関係ないような気がしてしまうけれど、すべてはつながっていること。

私たちが今日なにを買い、なにを食べるのか。ひとつひとつの選択で未来を変えていける。

そんな想いからKURKKUでは、消費のあり方を提案するためのオーガニックな食材を取り入れたレストランやカフェ、ショップなどを展開してきた。

「立ち上げたころから『小さなうねりが世界を変える』っていうのが活動の軸になっていて。頑なに声をはりあげるんじゃなくて、ハードルを下げて、楽しいアプローチしていこう。その姿勢にすごく共感したんです」

この土地では人参や大根などの根菜を中心に育て、有機JAS認証のオーガニック野菜として出荷をしている。

ゼロからはじまった農業も、今では年間200トンもの野菜を出荷できる規模になっているそう。

「求めてる人がいるならたくさんつくって応えたいし、コストを抑えて手頃な価格で販売できる工夫もしたい。パイオニアとして、今世の中にないものをつくっていきたいって思うんですよね」

KURKKU FIELDS のオープンを目指し、訪れた人が野菜づくりを体験できる「エディブルガーデン」の取り組みもはじまっている。

ふだんスーパーで見かけないような野菜も育て、遊びに来た家族連れや一流レストランのシェフなど、さまざまな人に農業の楽しさを伝えられるような場所にしていきたい。

育てた野菜は場内のダイニングでもふんだんに使われるそうだ。

「採れたての野菜を食べて感動してくれるだけでもいいんです。美味しいものを食べたり、生産者と話したり、景色を見たり。壮大な循環を感じて、生き方を考えることもあるかもしれない」

「小林さんは土の微生物から宇宙の裏側まで、すべての循環を視野に入れて、向かう方向を指し示すような存在です。現場には料理人やイベントを担うプロが集まってきているので、ようやくいいチームが出来てきた感じがしています」

10月のオープンに向けて、KURKKU FIELDSの中核になる飲食部門も大きく動き出している。

見晴らしのいい場所にあるダイニングを任されているのが、森本桃世さん。大きな声で笑う、とても気持ちのいい方。

「パティシエとして10年働きました。身体を壊したことをきっかけに、薬をたくさん飲む生活をしてたんです。こんな状態でつくるものを口に入れてもらうって、なんか違うと思うようになりました」

次はバランスのとれる範囲で、自分の店でもやってみよう。そう考えていたとき出会ったのが、吉祥寺にあるレストラン「タイヒバン」だった。

牛に特別な乳酸菌を食べさせ、腸内環境をよくすることで臭わないウンチをつくる。それを肥料に野菜を育て、料理に使う循環型レストラン。

ちょうど人が抜けたタイミングで、森本さんが料理を担当することになった。

「野菜が嫌いだったんですけど、そこの野菜はすごくおいしくて。それから食べることに強く興味を持つようになって、オーガニックな食材や発酵についても勉強しました」

「35日間の断食に挑戦したこともあります。食べること、食べないこと、リセットしたときになにを食べたいか。農薬で育てたものや化学調味料を使ったものを食べると舌がしびれるんですよね。違和感のないものを選んでいきたいと思うようになりました」

タイヒバンで4年ほど働いてフリーランスに。食べるものの原点である母乳に着目して産前産後の食事をつくったり、食を考えるきっかけをつくるようなイベントを企画したりと、さまざまな活動をしてきた。

そのイベントに参加していたのが、KURKKU FIELDSのスタッフだった。メインのシェフを探していると聞き、よく考えた上でその役割を担うことに決めた。

「ダイニングだけでも50席。これほどの規模でどこまでできるか、私にとっても新しい挑戦です。食材の背景が目の前で見えるって、すごく大事ですよね。食べるものの奥になにがあるのか、なにも言わなくても感じられるような料理をここでつくっていきたいと思っています」


「野菜にも個性があって、みんなバラバラなんです。ここで育つ人参も、春夏と秋冬、収穫するタイミングで味が違うんですよ。水分量が多いときには、水分を蒸発させて甘みを増していく調理をしたり。そのときの素材の良さを見抜いて、どう料理するかを常に考えています」

ダイニングのメインになるのは、ここで育てた小麦や野菜、できたてのチーズを使ったピザ。

ジビエを解体するシャルキュトリーでつくるソーセージ。そして、平飼いしている鶏の卵で食べるたまごかけごはんを用意する予定。

季節に合わせて、この場所で育つものを学びながらメニューを変えていくような場所になるそうだ。

「今は別の料理で使ったすだちの皮を塩漬けにして、麹と合わせてピザのペーストにできないか試しているところで。コンポストについて考えているスタッフもいます。食べものが循環していくことを、目で見えるかたちにしていけたらと思っているんです」

「大切に野菜を育てている人とか、一生懸命向き合って肉を解体している人とか。そういう人たちが側にいるから、私もいい料理をしようってワクワクするんです。原動力は、人から受け取る愛なんですよね」

愛を食べる。言葉にすると、少し大げさに聞こえるかもしれない。

けれどこの場所で何ヶ月もかけて育てられる野菜や、大切に飼われている鶏やヤギたちを見ていると、命をいただいていることを実感することができる。

「幸せに働いているからこそ、幸せなごはんがつくれる。それを飲食の当たり前にするために、働く環境を考えることには強い興味があります。現実的な部分も、一緒に働く人と考えていきたいと思っています」

「探究心があって、とことんやってみたい。一筋縄ではいかないような変態性がないと、ここではやっていけないかもしれません。私はそういう人、大歓迎です」

ダイニングに併設されるベーカリーを担当しているのは、藤田麻依さん。

ストイックなパン職人というよりは、おだやかな印象の方。ここに来るまでは、東京でKURKKUがプロデュースしているパン屋さん「pour-kur」の立ち上げから運営を行っていた。

「7年働いて、東京でできることはやり尽くした気がして。自分が背景までわかる食材を使って、もっと自信を持ってお客さんにパンを渡したい。そう思ったとき、木更津ほどいい場所はないと思いました」

「私、パンをつくる工程で嫌なことがひとつもないんですよ。酵母を発酵させているときも、生地を触っているときも、焼いているときも。できたものを自分たちでお客さんに渡せるところも。直接ありがとうって言ってもらえる、パン屋のスタイルが好きなんです」

現在、パンの開発は2人の職人で一緒に行っているところ。ベーカリーで働く人は、3人目としてここに加わることになる。

経験の有無よりも、この場所に対しての好奇心、そして一緒にパンをつくるために感覚を合わせていける柔軟な人を探しているそう。

「私はわりと職人気質なところがあって、もう1人は自由な発想をする人なんです。やり方の違いはあるものの、やりたいことは同じなんだって最近わかってきたところで」

たとえば、この場所らしいシナモンロールを考えていたときのこと。

卵とバターをたっぷり入れてこってりとしたものにするか、ちょっと雑味がありつつも軽くてコクも感られるものがいいか。

出した答えは2人とも後者だったそう。

「この場所でバターの製造をしているなら、バターを全面的に押し出したパンをつくればいいと思うんです。だけどここの自慢である卵はあっさりしているので、それに対してバターが濃いと負けてしまう」

「それにこんな広い土地でつくるなら、かわいいお菓子風のパンよりも、ちょっと雑味が入るくらいのダイナミックなものが合うような気がしているんです。おいしいものを取り寄せるのは東京でもできるけど、この場所だから感じられること、できることを楽しんでいけたらと思っています」

この記事を書いている最中に、台風15号が木更津を直撃しました。KURKKU FIELDSでも鶏舎の屋根が飛んだり、ビニールハウスが壊れてしまったりと大きな被害が出たそうです。10月上旬を目指していたオープンも、少しだけ先になるかもしれません。自然とともに働くことの厳しさが、写真から伝わってきました。

それでもスタッフみんなですぐに修理をはじめたり、野菜を無駄にしないようにと力のつくごはんをつくったり。大変な状況でも、たくましく前向きに取り組んでいる様子。

この場所で気持ちよく働く人たちに、頼もしい仲間が増えるのを楽しみにしています。

(2019/4/9 取材、8/27 追加取材 中嶋希実)

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