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未来を実践する場所

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

SNSのタイムラインを眺めていると、今日も世界の遠いところでテロがあったことを知る。

どうしてこんなことが起こるんだろう。かわいそう。

一瞬そう思うけれど、タイムラインとともに、その感情もどこかに流れていく。

「今世紀は循環とか共生をしていくことが、ものごとの本質になっていくと思う」

「たとえば難民やエネルギーの課題も。世界で起きていることはすべてつながっているから。自分には関係ないとか、蓋をしておけばいいという訳にはいかないんだよね」

そう話してくれたのは小林武史さん。

音楽プロデューサーであり、「ap bank」や「Reborn-Art Festival」などを進めてきた方です。

プロジェクトを通して伝えてきたことは、人や自然、社会にあるすべては循環していること。

私たちが日々買うもの、選ぶことが、世界の課題とつながっている。

そう気がつくための投げかけを続けてきました。

小林さんの進めるプロジェクトの1つ「kurkku(クルック)」では、今、千葉・木更津の広大な土地を使って、訪れた人が生きる楽しさ、おいしさ、気持ちよさを感じられるような場づくりをしています。

農業や酪農など一次産業を基盤に、食やアートに触れる機会や宿泊施設づくりなど。さまざまな知識や経験を持つ仲間が集まり、1年後のオープンに向けて準備が進んでいます。

今回探しているのは、農業や酪農、家具をつくり空間を育てていく人。そして、海外の先進事例をキャッチしていくような役割を担う人。

それぞれ経験があるに越したことはありませんが、それよりも大切なのは、あきらめずに挑戦し続けることのように思います。

  
東京から木更津へは、アクアラインを渡って行けば1時間ほど。

県道から細い道を登っていくと、太陽光パネルに囲まれた広大な土地が広がった。

ここは農業法人「耕す」の拠点にもなっていて、有機農法で野菜を育てたり、平飼いで養鶏を行ったりしている。

その横では新しい場づくりのために何台ものショベルカーが土を掘り起こしていて、いよいよプロジェクトが本格的になってきたことが伝わってくる。

「壮大なテーマパークをつくることを考えていたんだけど、それは僕らの身の丈にあっているのだろうかと考え直す機会がありました。昨年の秋に方針を変えて、僕たちがどんな未来をつくりたいか実践していく場にしようって」

小林さんにお会いするのは1年ぶり。なんだか以前よりも、やわらかな印象を受ける。

野菜に加えて、酪農をすることによってつくられるチーズを使ったピッツェリアやベーカリー、卵を使ったシフォンケーキ屋。アート作品やタイニーハウスの宿泊施設。農場の真ん中で森を育てるプロジェクトも進んでいる。

農業や料理の専門家であるスタッフに加えて、外部からもさまざまな得意分野のある人たちが関わる場になってきている様子。

「多様な人が関わり合うことによって生まれるケミストリーを楽しんでいく場。そんな想いを込めて、kurkku fields(クルック フィールズ)と呼ぶことにしました」

  
音楽プロデューサーとして活躍してきた小林さんが、このような場をつくることになったのはなぜだろう。

「ずっと音楽をやってきて、いわゆる成功をさせてもらったと思っています。そこでうまれたお金の使い方を考えるのが1つのきっかけになって、坂本龍一さんとMr. Childrenの桜井和寿くんと資金を出し合い、2003年にap bankをスタートしました」

ap bankでは、環境問題や社会課題に取り組む団体に融資する活動を行ってきた。

応援するだけでなく、自分たちでも実践をしていこう。

そこではじまったのが「kurkku」。都市に暮らす人が日常の中で、快適で環境にいいものを選択できるよう、オーガニックな食事を提供するレストランやショップを展開してきた。

ふだんの生活でわたしたちがなにを買って、なにを食べるのか。1つ1つの選択が、巡り巡って社会を変えていく。

「課題を解決しようと閉鎖的に突き詰めるのではなくて、現実の社会にポジティブに関与して、影響が生まれていくような動きをしたい。それが、僕のやる意味だと思うんです」

昨年には「Reborn-Art Festival」を開催。

アートや音楽をきかっけに宮城・石巻までたくさんの人が足を運び、その土地にいる人や自然に出会うきっかけをつくった。

「わざわざ足を運ぶ。不便なんだけど、そこには都市では感じられないことがたくさんあるんです。土地の空気や風、そしてアートが混在する空間ができました」

当時木更津では、食やエネルギーの循環をより多くの人が感じられるような、大きなテーマパークをつくる計画が進んでいた。

石巻で小さな出会いが積み重なることで、その考えは変わっていった。

「伝えたいことをわかりやすく表現するよりも、わざわざその地を訪れた人が、それぞれの感じかたで実を結んでいく姿があった。そのほうがいいこともたくさんあるんだなって気がついたんです」

「だから木更津でも、まずは1人1人、僕らがやるべきことをやっていく。小さな規模でも自然に人が集まっていくほうが、いい循環を生み出せると思うようになりました」

この土地はもともと放牧していたり、残土の受け入れをしたり。都会の開発を支え、用途を都度変えてきたような場所。

ここで土をつくり、野菜や牛、微生物までを含めた命を育てていく。

土地がよみがえり循環をつくっていくためのプロジェクト。そこで起こること、そこで試行錯誤していく人に出会うことで、伝わっていくこともある。

「kurkku fieldsにつくるエディブルガーデンでは、多種多品の目の野菜やハーブ、果樹を栽培します。効率を求めた農業でなく、食べものをつくるベストなやり方で命を育んでみる。自分たちでやるからこそ、命の循環を実感することができると思うんです」

水牛からモッツァレラチーズをつくり、育てた野菜と組み合わせてピザを焼く。

心地よく過ごすことを考えてつくった椅子とテーブルを広げて、おいしいごはんをいただく。

どこかの誰かがつくったものではなくて、自分たちでつくった実感があるもの。納得をしながら進んでいくからこそ、人に届くものができる。

それは小林さん自身が音楽をつくり届けてきたなかで、経験してきたことでもある。

「おもしろいメンバーが集まっています。彼らに出会うことで、きっと訪れる人に感じてもらえるものがある。どんな循環が起こるのか、今から楽しみです」

目標は1年後のオープン。

具体的にどんな場所になるのかは、まだまだ決まっていないことが山ほどある。

「訪れるお客さんや料理人が、ここで育っている野菜から着想を得る。新しい味や料理の可能性が生まれるきっかけができるかもしれない」

「最初からすべてを提示するのではなくて、ケミストリーを楽しむというか。合理性ではなく、循環を活かしていくとなにが起きるのかを考えていきたいんです」

ハム・ソーセージ工房、タイニーハウスを集めた宿泊施設など。同時並行でさまざまなプロジェクトが進んでいる。

  
多様な野菜に出会える「エディブルパーク」と呼ばれるスペースを担当しているのは伊藤さん。

1年前からここで働いている方。

今日の作業は土づくり。

決して農業に適しているとはいえない場所。植物を混ぜ込んで柔らかい土をつくる場所もあれば、太陽光の熱を使って良質な土壌に変えていく場所もあるそうだ。

「やりたいことはたくさんあって、みんなで話していると盛り上がるんです。でも相手は自然ですから。計画通りになんて進まないんですよね」

小さいころから植物に関わる仕事がしたいと思っていた伊藤さんは、アメリカやフィリピンで有機農業に関わった経験がある。

とはいえ、伊藤さん自身が農業のエキスパートというわけではない。

すぐ横で活動をしている「耕す」のメンバーに相談をしながら、試行錯誤をしているそうだ。

「今の私ができることを全力でやればいい。小林さんや一緒に働くみんなに育ててもらってるって思いますね」

「耕す」のメンバーに加え、料理人やパン職人、販売や広報について詳しい人。一緒に働くメンバーも少しずつ増えてきた。

最近はお昼ごはんをみんなで食べることも多いそうだ。

「ファストフードも食べますよ。でも、ここで過ごしているうちにごはんの時間の質が高くなりました。野菜ってこういうふうにできるんだとか、手間を掛けて育てた鶏の卵の味がぜんぜん違うとか。当たり前ですけど、おいしいって幸せなんですよね」

「一緒にごはんを食べておいしい時間をすごすようになってからは、圧倒的に仕事の効率が上がって。一緒に働いている人たちの話を聞くのも、おもしろいんですよ」

  
伊藤さんと同じ時期に入社した新井さんも、試行錯誤を続ける1人。

大学院で自然体験について勉強してきた新井さん。

今ではプロジェクト全体に関わりつつ、敷地の一部をつかった森づくりとタイニーハウスの宿泊施設を主に担当している。

「入ったときは想像もしていなかった仕事をしています。いかに人を多く集めるかを考えていたプランより、ここではじまるプロジェクトに興味を持ち集まった人で一緒に未来を考えていく今のプランのほうがいいなって。ワクワクするほうに進んでいけるのは楽しいです」

ここでどんな過ごし方をすると、よりこの場所の空気を感じてもらえるだろう。

突き詰めて考えていった結果、外部の人たちと協力しながら、タイニーハウスを集めた宿泊施設をつくる計画が進んでいる。

部屋数や回転率からその場所のことを考えるというよりも、滞在する気持ちよさを考えることを優先して考えているそうだ。

「タイニーハウスって、所有しすぎないミニマリスト的な考えが表れているもので。所有しないと人は内で完結せずに外に求めていく。そうすると必然的に外の世界とのコミュニケーションや繋がりが生まれると思うんです。その考え方がkurkku fieldsと合ってるなって」

「小林さんってすごいプロデューサーみたいに思われることも多いけど、すごく人間的だし平等な人なんです。小林さんに学びながらも、負けずにこの場で個性を出していきたいなって。チームの仲間とも、一緒に高めあえたらって思っています」

ここで料理人として働いている方の言葉をかりると、「小林さんやみんなと意見を交えながら、セッションしているみたい」なんだそう。

  
自分の手で未来をつくる。

簡単なことではないかもしれないけれど、世界が循環していることを実感できるはず。

訪れる人にもその実感が伝わっていくことで、あらたな循環がはじまっていく。

それは少しずつ世界を健やかな方向へ変えていくことにもなると思います。

(2018/4/5 取材 中嶋希実)

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