※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。
箸やお皿、花器に傘。
機能だけを並べたら単なる日用品かもしれない。でもこのお店に並ぶものたちはどれもデザインが個性的で、見ているとなんだか笑顔になる。
アッシュコンセプトが生み出す生活用品は、デザイナーの想いが込められた、ちょっと日常が楽しくなるようなものばかりです。
そんな商品の魅力をバックグラウンドまで含めてお客さんに伝えていく、直営店「KONCENT」。今回は蔵前本店やKITTE丸の内店をはじめとする、東京都内のお店で販売スタッフを募集します。
デザインが好きで、仕事として取り組んでみたいという人は、ぜひ読み進めてみてください。
東京駅を出てすぐの場所にある商業施設・KITTE。広い吹き抜けの空間をぐるっと囲むように、雑貨やアパレルのお店が立ち並んでいる。
エスカレーターで3階に上がると、すぐ目の前にあるお店がKONCENT。
さまざまな種類の生活用品が並ぶ店内は、カラフルで楽しい雰囲気だ。
オープンは11時。少しずつ賑わいはじめたお店の一角で最初に話を聞いたのは寺内さん。スーパーバイザーとしてKONCENTの全7店舗を統括している。
冗談を交えながら話してくれるので、ついこちらも笑ってしまう。こんな上司がいたらきっと楽しいだろうな。
「週のほとんどは各店舗をまわっています。スタッフと一緒にどうお店を良くしていくか考えたり、接客で悩んでいることがあればアドバイスしたり、あとは恋愛相談に乗ったりね(笑)。日々そんな感じです」
デザイナーと共同での商品開発やものづくりのコンサルティングを手がけてきたアッシュコンセプト。
代表の名児耶(なごや)さんが17年前に会社を立ち上げたときから、「デザインを活用して世の中を元気にする」というコンセプトを掲げてきた。
寺内さんは、実店舗であるKONCENTが立ち上がった7年前にアルバイトとして入社し、中核メンバーの一人としてお店を育ててきた。
「入ったときは店舗も蔵前の本店だけだったし、販売スタッフもたった3人。毎日文化祭みたいで楽しかったですよ。ここ数年で一気に店舗が増えたので、自分の役割はアッシュコンセプトの血が薄くならないように、スタッフに伝えていくことかなと思っています」
アッシュコンセプトの血、ですか?
「一つひとつの商品への思い入れっていうんですかね。自分たちがこの商品をつくっているんだ、って感覚はスタッフみんなにも持っていてほしいけど、ものづくりの現場から離れている店舗スタッフは実感しにくいと思うんです」
「なので会社の歴史を話すのはもちろん、どうやってその商品がつくられたのか、一つひとつのエピソードを伝えるようにしていますね。そこが一番お客さんに伝えてほしい部分ですから」
たとえば人気商品のカオマル。これはもともと芸大の卒業制作展で名児耶さんが見つけたものだった。
握ってストレス発散ができるし、飾っても可愛らしいオブジェ。人の顔に興味があり、大学では顔のモチーフばかり制作していたというデザイナーが、さまざまな表情を生み出した。
家業の青果店の仕事から着想し、最新シリーズはフルーツの形をしているんだとか。
一つひとつにストーリーがあるのが、アッシュコンセプトの商品の特徴。
お店には、ぱっと見ただけでは用途がわからない、でもなんだか気になって家に連れて帰りたくなるような商品が並ぶ。
それぞれのバックストーリーを伝えていくのが、販売スタッフの役割になる。
「販売スタッフにはまず楽しく働いてほしくて。お店の顔となるその人たちが商品を楽しんでいないと、お客さんにも伝わらないと思うんです。KONCENTを訪れたお客さんには、面白いな、楽しいなって思ってほしいから」
あらためてお店のスタッフのほうを見てみると、お客さんに商品を実演していたり、親しげに話していたり。丁寧に説明するというよりは、「こんな面白いものがあって」と紹介するような感覚なのかもしれない。
ここで寺内さんに、お店をつくっている人たちを紹介してもらう。
まずはKITTE店のスタッフである永田さん。日本仕事百貨の記事がきっかけで1年半前にアルバイトとして入社し、今年のはじめに社員になったそう。
「今までは、映像制作会社で小道具や装飾を担当したり、映画館のグッズ売り場で働いたり。ずっと好きだった雑貨を販売する仕事がしてみたいなと思って応募しました」
「アッシュコンセプトはもともと好きで。家からはちょっと遠かったんですが、『あそこに行けばきっと面白いものがある』って思えるようなお店でした」
働きはじめたばかりのころは、うまく接客できない時期もあったという。
「じっくり接客をするお仕事ははじめてで、お客さんとうまく話ができなくて。難しいなあ、どうしようって毎日思っていました」
「でもあるときを境に、お客さんと対話ができるようになったんですよね」
対話ができる?
「それまでお客さんには主に商品の説明をしていたんですけど、途中でお客さんの話を引き出したり、そこに自分の話も重ねてみたりしたら、そこから話が膨らんでいって」
たとえばグラスを手に取って見ているお客さんがいたら、普段はどんなものを使っているのか尋ねてみる。
目の前のお客さんに興味を持ち、ライフスタイルを掘り起こしていくと、その人に合いそうな商品が思い浮かんでくる。商品の説明はそのあとでもいいんだと気付いたそう。
「対話ができるようになってから、自分の接客も少し良くなったのかなと思えてきて。ギフト選びの相談で、納得いくものを選ぶことができて感謝してもらえたりして。今はお客さんと話をするのは楽しいなって思います」
永田さんのお気に入りの商品はあるんですか?
「MICHI-KUSAという商品です。ちょうど商品がリニューアルした時期に入社して。たぶん、はじめて教えてもらった商品だったと思います」
カラフルな剣山が中に入った、手のひらサイズのガラスの花器。
道端で摘んだ小さな花も可愛らしく飾れるように。忙しいときでも花を身近において安らいでほしいという、デザイナーの想いが込められているという。
「私、もともとお花を飾る習慣がなかったんです。でもそういう方にこそ手に取ってほしいと思っていて」
私もあまり飾らないのですが、うまく使えますかね…?
「一輪でもさまになるから、慣れていない人でも気軽に飾れると思いますよ。私は自宅でこれを使うようになってから、以前よりもお花が好きになったんです」
「今はお店にディスプレイするお花の選定もしていて。どんな花が合うかな、どんなふうに飾ろうかなって考えるのが楽しいんです。自分で使っていて、その良さがわかっているので、お客さんへの説明もしやすくなりました」
最近は、ほかの商品のディスプレイづくりにも関わっているそう。
「もともと空間づくりの仕事をしていたので、社員になったらディスプレイをやりたいと思っていました。今度の新商品も担当させてもらえることになって、ポップや什器を考えているところです」
「ただ置くだけじゃなくて、どうやって魅力的に見せるか、まだまだ試行錯誤しています。今はKITTE店だけなんですけど、ゆくゆくは全店舗をまとめて見られるようになれたらいいなって」
永田さんのように、過去の経験をお店づくりに活かしているスタッフも多い。これから入る人も、やってみたいことがあるならどんどん発信してほしいと話していた。
そんな永田さんたちスタッフをまとめるのが、店長の高橋さん。みんなからは、下の名前で「晃太郎さん」と呼ばれている。
「これ、ぜひやってみてくださいよ」
ニコニコしながら案内してくれたのは、お店のなかでも通路に面した特に目立つ場所。
砂が敷き詰められたスペースには、寝そべった猫型のオブジェが並んでいる。
“Neko Cup”という新商品だそう。
「この商品は、デザイナーの森井ユカさんがうちに試作品を持ってきてくださったことからはじまりました。カップの中に砂を詰めて、ネコが“量産”できるんです。癒されませんか?」
「森井さんはめちゃめちゃネコが好きなんですけど、飼うと仕事が手につかなくなっちゃうから自分では飼えないらしくて。でもこれなら、ネコの存在を常に感じていられるって」
もともとは砂を詰める用途のみを想定していたものの、打ち合わせを重ねるなかでオブジェとして家の中に置いておくだけでも楽しいものになる、というアイデアも生まれた。
話を聞いてつい試してみたくなって、私もカップに砂を詰めてみる。押し込みが足りずにちょっと不恰好になった自分のネコも、なんだか愛らしい。
「やっぱりね、どれもいい商品なんですよ。それを伝えたくてお客さんとコミュニケーションをとるんですけど、うまくいく確率ってそんなに高くないんです」
そんなときは、どんな対話の仕方が良かったのか、話しかけるタイミングはどうだったのかなど、理由をちゃんと考えて次に活かしていく。
「大事にしているのは、商品を売るためにっていう意識ではなくて、お客さんに『この人と話せて楽しかった』と思ってもらえるように接客をすること。そうすれば、今回は購入につながらなかったとしても、また訪れてくれるかもしれませんから」
デザインに関わる仕事がしたいと入社した晃太郎さん。もともと売る仕事よりもつくる仕事に興味があった。
販売スタッフとして働きつつ、商品開発の部署に移りたいと思っていたこともあったそう。
「もちろん今もやりたいとは思っています。最近は店舗スタッフが商品開発会議に加わって、そこから商品が生まれることもありますし、まったくものづくりに関われないわけではありません」
「ただ今は、売り場づくりやスタッフ教育も、同じように何かをつくり上げていくことだと思っていて。以前とは捉え方が変わりましたね。自分が商品をつくりたいっていう、変なこだわりはなくなりました。純粋にお店の仕事が楽しいから、やりたいんですよ」
実は晃太郎さん、もともと接客は苦手だと思っていたそう。ついさっきも、近くにいた外国人のお客さんに気さくに声をかけていたし、ちょっと意外だった。
「どっちかっていうとコミュニケーションは得意なほうじゃなくて。接客も苦手だと思っていたんですけど、やってみたら楽しく働けているんですよね」
「コミュニケーションが得意じゃないって思っている人、結構いると思うんですけど、意外と思い込みなんじゃないかな。チャレンジしてみたら可能性を広げられるんじゃないかなって思いますね」
販売の仕事は、毎日が出会いの連続。スタッフの永田さんのように、最初からうまくいかなくても、回数を重ねるうちに自分なりのやり方を見つけていけるように思う。
それに、好きなものが集まる空間で仕事ができるって、幸せなことだと思います。スタッフのみなさんの健やかな空気感は、心から好きだと言えるものを扱っているからこそ生まれているものかもしれません。
毎日を、ちょっとおもしろく。デザインの力を信じている人に来てほしいです。
(2019/9/3 取材 増田早紀)