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「家に対する価値観ってどんどん変わってきています。人口が減っているのにどんどん住宅が建つから、不動産の相対的な価値はすごく下がっている。昔は人生を懸けて買うような財産だったのに、最近はそもそも買わずに賃貸でいいって人も増えてきている」「だからこそ、この時代に合わせた新しい不動産の事業モデルを考えていきたいんです」
そう話すのは、株式会社ルーヴィスの代表・福井さん。
ルーヴィスはリノベーション物件の設計・施工を主に行ってきた会社。わたしたちのオフィスがあるリトルトーキョーのビルのリノベーションでもお世話になりました。
もとの建物の良さを生かす、懐かしくも新しい雰囲気の空間づくりを得意としています。

リノベーション物件の賃貸など、既存事業の運営をしながら、新しい事業の立ち上げを目指していく。
まだ世の中にないものを生み出すのだから、そう簡単な仕事ではないはず。でも福井さんは「失敗しても会社が潰れるわけじゃないから、とりあえずやってみてほしい」と話します。
失敗を恐れずに、面白そうだと思ったらまず動いてみる。そんな感覚で仕事に取り組んでみたい人なら、さまざまな挑戦ができると思います。
横浜駅から、市営地下鉄で10分の阪東橋(ばんどうばし)駅。
駅を出てあたりを歩いてみると、マンションや小学校、ファミリーレストランが目に入る。人通りの多いみなとみらい周辺とは違い、ここは横浜のなかでも暮らすためのまちという印象を受ける。
約束の時間になり、駅の近くへ戻る。出口から歩いてたった1分ほどの場所に、ルーヴィスのオフィスが入るマンションを見つけた。
年季の入ったエレベーターで7階へ。この階と上の8階がルーヴィスのオフィスになっている。

まずは代表の福井さんに話を聞いた。

もともと実家の不動産業で賃貸管理に携わっていた福井さんが、ルーヴィスを立ち上げたのは15年前。
きっかけは、リノベーション設計の先駆けであるブルースタジオの本を読んだこと。不動産の仕事に携わるなかで、空き家問題を身近に感じていたこともあり、未経験ながらリノベーションの分野に飛び込んだ。
最初は一般的な原状回復などの仕事に取り組みながら、徐々にリノベーション物件専門の施工会社として、できることを増やしてきた。

一方で、それをどうリリースし運営していくかという不動産の事業には、まだ物足りなさを感じているという。
「今のところ、不動産は全体の事業のなかで1割程度。まだまだできることはあるんじゃないかなあと思うんです。もう一度深掘りして、今の時代に合った不動産業を、新しく入る人と一緒につくっていければいいなと思っています」
今の時代の不動産業。
それってどんなものだろう。
「たとえばルーヴィスには『カリアゲ』というサービスがあります。空き家になっている古い物件をオーナーさんから借り上げ、こちらで費用を全額負担してリノベーションし、転貸する事業です」
木造住宅の廊下や扉など、時間が経つことで味わいが出る部分は残しつつ、キッチンなどは機能的に使いやすく。もとの建物の良さをなるべく残しながらリノベーションされた物件が多い。

どうしてその仕組みで運営できるんですか?
「まずは入居率が高いことですね。普通の賃貸物件の平均稼働率は80%くらいなんですけど、カリアゲの物件は95%くらい。リノベーション物件は一戸ごとに個性があるので、決め手になりやすいんです」
「空いても比較的早く次の入居者が決まるし、個性を打ち出すことで、一般の物件よりも少し家賃を高く設定できることも強みの一つです」

「管理や家賃の清算、それ以外にも既存の不動産事業の運営にも関わってもらうと思います。ただ、入居者募集や契約、家賃の督促は協力会社にお願いしているし、設備の不具合なんかへの対応も数ヶ月に一度くらい。今ある仕事だけやるんだったら、正直時間が余ってしまうと思います」
「空いた時間でプラスアルファの新しいサービスを考えてもらって、それに事業投資したほうが会社としてもいいんじゃないかなと思うんです」
とはいえ、入社して早々、まったく何もないところから新しい事業を考えるのは簡単じゃないはず。
福井さんは、何かやってみたいことってあるんでしょうか?
「今の段階で何をやるかはまったく決めていません。従来の不動産の範囲でというよりは、不動産と何かを掛け合わせて、新しいビジネスを考えられないかなと思っています」
「たとえば不動産×家具で何かやってみるとかね。既存の不動産仲介の枠に収まる事業だと同業他社もいっぱいいるし、そもそも収益率も昔よりも下がっている。これからの買い方や借り方を考えて、革新性があるものをつくっていけたらなと」
たしかに、カリアゲも不動産と工務店のノウハウを掛け合わせたことで、強みを発揮できている。
面白そうと感じたものは、予算を決めて試しに事業化し、やりながらどんどん進化させていくのが福井さんの新規事業のつくり方。
「僕、飽きっぽいんで。自分が持っているものを活用して何か新しいことをやりたいなって、いつも思っているんです。だからどんどんやることが増えちゃうんですよね」

とりあえずやってみる。
それは、ルーヴィスという会社自体の成り立ちでもある。
「この会社も、とりあえずやってみようと思ってはじめただけだから。企業の10年生存率が5%くらいなんだから、きっと自分は95%の側だろうなと。どうせ潰れるから、それまでに面白いことをやってみようと思っていたら、なかなか潰れなかったんだよね(笑)」
今はマレーシアに法人を立ち上げ、日本の職人さんを連れていって建築をする事業をはじめようとしている。
さまざまな人種や宗教が入り混じるマレーシアでは、きっと家にもそれぞれの文化や慣習が色濃く反映されるはず。日本の施工技術で、現地の住宅の要望に応えるのはきっと面白い、と考えたのだそう。
福井さんからは、勇気を出して挑戦する“気概”というより、面白そうだからとりあえず進めてみるというような、ゆったりと構えた雰囲気を感じる。
「新しく入る人にも『とりあえずやってみる』ことは大事にしてほしくて。まだ世の中にないことに挑戦するわけだから、そう簡単にはいかない。凹まずに、どんどんトライしてほしいと思います」
続けて話を聞いたのは、部長の神林さん。不動産業界で働いて30年になるベテランだ。
自身の不動産管理会社を経営しながら、2年ほど前からサポート役としてルーヴィスに関わっている。福井さんがルーヴィスを立ち上げたときからの仕事仲間なのだそう。

「一言で言えば、自由な会社ですよね。社員は直行直帰も多いし、表参道のオフィスに出社する人もいるし、福井も誰が何をやっているのか常にチェックしているわけじゃない。みんな無理なく働けているんじゃないですかね」
「サボろうと思えばいくらでもサボれてしまう環境とも言えます。だからこそ、ここで働くなら自分をしっかりマネジメントできる人間じゃないといけないんですよね」
大半を占める設計施工管理のスタッフは、基本的に現場での仕事になるし、不動産事業に関わっている福井さんや神林さんも、外で仕事をしていることが多い。オフィスに常時いるのは事務スタッフと、今回入る不動産担当のスタッフのみ。
誰かから指示をされる機会はめったにないし、監督者もいない環境だからこそ、しっかりと自分を律する必要があると思う。

「その一方で、普通の不動産仲介業務の範囲でどれだけ優秀な人だとしても、新規事業を考えられるとは限らないんですよね。そこは頭の使い方が違うので。今までの経験を生かして、まったく新しいことをやりたいという人が来てくれたらいいなと思います」
不動産業界のあり方に、「もっとこうなったらいいのに」と感じたことがある人。別の業界での経験や、仕事以外の興味関心と不動産を結びつけて新しい事業をつくりたいと考えている人なら、ここで神林さんや福井さんの力を借りながら形にしていくことができるんじゃないかと思う。
最後に、福井さんはこんなふうに話していました。
「工務店としての設計・施工から、不動産屋として貸すところまで一貫してできる。これは今までのルーヴィスの強みです。もう十分な件数を手がけてきたから、新しく入る人には、今まで僕らがやってきたことにはとらわれてほしくないんです」
「突拍子もないアイデアでも、まったく新しいものがいいですね。狭い範囲にとらわれず考えられる面白い人に、一人でも出会えたらいいなと思います」
まだ何の形もないこの事業。
だからこそ自由に考えられるし、それを受け止めてくれる環境もここにはあると思います。
何か閃いたアイデアがあったなら、ぜひ福井さんたちと話をしてみてほしいです。
(2019/9/17取材 増田早紀)