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瀬戸内が舞台の
“ひらかれた”学校で
教育の未来をつくる一員に

教科書を使った学習だけでなく、自分の暮らす地域の魅力を見つけることから学びを得る。

人口減少など、地域の課題を逆手にとって、将来必要となる力を培っていく。

そんな地域をフィールドにした教育が、全国で少しずつ広がりを見せています。

広島県大崎上島町にある大崎海星高校。

ここは、学校が地域や外部の人たちに対して積極的に門戸を開くことで、多様な人の力を取り込みながら学校の魅力を高めていこうと、「高校魅力化プロジェクト」に取り組んできました。

特徴は、地域の特色を活かした「カリキュラムづくり」、生徒たちの学力向上と進路をサポートする「公営塾の運営」、地域外からの生徒を受け入れる「教育寮の設置」の3つを柱に進めていること。

5年目を迎え、多方面との連携も深まってきた今、子どもたちの学習サポートなどを行う魅力化スタッフと、寮生活を支えるハウスマスターを募集します。

 
広島空港から、乗り合いの大型タクシーで竹原港へ。

大崎上島町まではフェリーで30分ほど。船が動き出すと、穏やかな瀬戸内海の景色が迎えてくれる。

温暖な気候に恵まれた大崎上島では、みかんなど柑橘類の栽培が盛ん。水産業や造船業も、主要な産業だ。

古くから海運の拠点として栄えた地域で、木造の和船「櫂伝馬(かいでんま)」に乗って速さを競う行事など、伝統文化や祭りも受け継がれている。

この島にある大崎海星高校は、そんな島特有の自然や文化、歴史を教材に、「大崎上島学」という独自の授業を行っている。

「潮目学」「羅針盤学」「航界学」の3つからなる大崎上島学。

たとえば、時代の流れを読み解く力を身につける「潮目学」では、塩田跡地を活用して牡蠣の養殖業を営む方など、地域の事業者さんをインタビュー。町の産業の課題を知り、先進事例を調べながら、生徒たち自身で解決策を考えて発表する。

ほかにも、2017年からはじまった「みりょくゆうびん局」では、生徒が中心となって、島内外に向けて自分たちの学校や島の魅力を発信する活動を行っている。

学校説明会などのプレゼンテーションでは、原稿を暗記して読み上げるだけでなく、聞き手の顔を見たり、抑揚のつけ方を意識したり。

自ら工夫を重ねる生徒さんたちの姿を見て、「想像以上に成長のスピードが速い」とうれしそうに話すのは、中原校長先生。

印象に残っているという出来事を話してくれた。

「うちの生徒たちは、東京や大阪で行われる合同学校説明会にも参加しとって。2日間、午前午後とプログラムがあるんじゃけど、午前の部が終わったらすぐ自分たちで集まって、発表の振り返りをするんよ」

聞き手の反応を踏まえて、重点の置きどころやキーワードを見直し、ブラッシュアップさせて午後の部に臨む。

終了後にふたたびミーティング。翌日も改善点を反映して発表し、最初と最後ではまったくちがうものになった。

「問題意識やより良いものにしようという意思を持っとる証拠。課題を発見し、改善していく力を身につけていれば、将来どこに行っても活躍できると思うね」

「今年は自分たちで学校のPR動画も作成したんよ。事業者との交渉も生徒自身で進めてさ」

そんな取り組みが注目を集め、島外からの視察団や海外からのゲスト、学生インターンとの活動・交流の機会も増えてきている。

「失敗してもいいから、学校の外に出てさまざまな体験をさせる。それが、生徒たちの視野を広げることにつながる。我々も公営塾のスタッフも、最大の役目は生徒たちの心に火をつけること。それができれば、あとは自分でどんどん学んでいくよ」

 
公営塾「神峰学舎(かんのみねがくしゃ)」は、海星高校の中にある。授業を終えてやってくる生徒たちに向けて、学習サポートをしたり、進路やその先の将来について考える場をつくったり。

目指す方向も学力も異なる生徒一人ひとりが、自分の望む道に進んでいけるよう伴走していく。

ここで2018年4月から働く平岡さん。自身の提案からはじまった企画について教えてくれた。

「生徒と塾スタッフのやりたいことを自由に書ける掲示板をつくりました。賛同した生徒とスタッフ一人ずつの名前が書き込まれたら、プロジェクトが成立して、実行に向けて進めていくというものです」

普段は主に英語の教科指導を担当している平岡さん。

掲示板に「洋書を読みたい」と書き込むと、2年生のある生徒から反応があった。

「その子は、学校の勉強の進度に遅れを感じていて。ただ理解力は優れていて、大学進学も視野に入れつつ、自分に合った勉強方法を探していたところだったんです」

洋書を少しずつ読みながら、その子のペースで理解していけたら、受験に必要な英語力の強化にもつながる。

平岡さんはさっそく、その子にどんな本を読みたいか尋ねてみた。

「彼女があげたのは、エドガー・アラン・ポーという詩人の本。近代推理小説の開祖と呼ばれていて、その子が好きな江戸川乱歩の名前の由来にもなった人物なんだと教えてくれて。自分なりの勉強方法を考えるきっかけにもなったし、ぼくも彼女の今まで知らなかった一面に気づけました」

平岡さんと一緒だったからこそ、その生徒さんは一歩を踏み出せたんだと思う。

公営塾には、学習進度やモチベーションの異なる生徒たちのことをよく見て、それぞれに応じた学習スタイルをつくっていく柔軟性がある。

一方で、裁量が大きい分、難しいと感じることもあるかもしれない。

神峰学舎のスタッフ3年目の牧内さんはこう話す。

「ここは、自分がやってみようと考えたことに挑戦しやすい環境だと思います。ただ、何が生徒にとっていいのかを常に考え、接していかないといけません。外部の研修にも参加して、教育に対するいろんな考え方に触れながら、試行錯誤を繰り返してきました」

生徒が高校の授業中に理解できなかった部分を、ちゃんと復習しやすくするために、自分も一緒に授業に参加してみよう。公営塾でもっと生徒たちの声を拾えるように、振り返りシートをつくり変えてみよう。

そんなふうに工夫を重ねながら目の前の生徒たちと接していくなかで、自分自身も気づきを得たそう。

「生徒たちが進んで行く道はそれぞれちがっていい。大学進学だけが正解ではなくて、一人ひとりが幸福だと感じられる生き方へと向かっていくことがいちばんだと、あらためて思うようになりました」

「卒業後、島に残るという選択肢を取る子も出てきて。船舶免許を取って漁師を目指す生徒が、あるとき船を出して釣りに連れていってくれました。30cmほどもある大きいキスを目の前で釣ってくれたんですよ。そんな関わり方ができていることが、うれしいですね」

地域をフィールドにした学習や、自分の将来について一緒に考えてくれる人の存在が、生徒たちの進んでゆく道に広がりをもたせているのかもしれない。

 
「この島では、いろんな人たちを巻き込んで、全員野球で教育に向き合っています。地元出身の魅力化コーディネーターが仕掛け人となって、学校の先生や地域の人、島外の人をつなぎながら、学びの場をひらいているんです」

そう話すのは、2018年4月から公営塾のスタッフに加わって働いている笠井さん。

今は公営塾での業務のほかに、大崎上島学のサポートも行っているそう。

「大崎上島学には島の方々も協力してくださっています。たとえばみかん農家さんが収穫作業を体験させてくれたり、仕事観を話してくれたり。地域の人たちの生きた知恵や経験を直接学ぶなかで、生徒自身が自分の未来を思い描いていける。そんな時間を過ごしてほしいと思っていて」

「そのために、先生方や魅力化コーディネーターと毎週頭を悩ませながら、授業づくりに向けた話し合いをさせてもらっています」

まちづくりと教育を掛け合わせた仕事をしたいという思いから、大学4年生のときに私塾を立ち上げた笠井さん。今も公営塾での仕事と両立して運営している。

今年度で公営塾での務めは終えるものの、今後も大崎上島学に関わっていくそう。

「大崎海星高校魅力化プロジェクトに携わる人たちは、学びに貪欲なんです。ぼくも、ここで得たエッセンスや経験をほかの地域に還元していきたいし、そうすることで大崎上島にもメリットが生まれるように、活動していきたいと思っています」

 
最後に紹介するのは、生徒たちが生活する教育寮のハウスマスターの一人、伊達さん。

今年度で任期満了となるため、これから加わる人が一緒に働くわけではないけれど、伊達さんの話にはいろんなヒントが詰まっていると思う。

「ハウスマスターの仕事は、勉強や企画ごとのように、自分と生徒の間に介するものがあまりないように感じます」

「だからこそ、一緒に時間を共有するなかで、寮生が『自分に関心を持ってくれている大人がいる』と安心感を持てるような存在でありたい。それが土台となって、寮生たちが大崎上島で自分なりのチャレンジをしていく後押しになるのかなと考えています」

親元を離れて暮らす、多感な時期の寮生たち。

ハウスマスターは共同生活を送りながら、生活指導や精神面でのサポートをしていく。

基本的には、朝の7時から9時までと、17時から22時までが勤務時間。

朝は、起きてこない生徒を呼びに行ったり、朝ごはんを食べたかどうかチェックしたり。欠席遅刻があれば学校に連絡。

夕方には、学校から帰ってくる寮生を「おかえり」と迎え、夕食を一緒に食べたり、生徒とゆっくり話す時間をつくったり、資料作成などの事務作業をしたり。

そうした日々の寮の運営だけでなく、保護者や学校、島の人たちと連携しながら、季節ごとのイベントを企画することもある。

「毎年新しい寮生が入ってくると、雰囲気も変わるんです。今年は、釣りに出かけるのが好きな子や、島で行うマルシェに出店したいという子、自主的にZINEをつくる子もいて。2学期に入ってから寮生の積極性を感じるようになりました」

「目の前にいる生徒たちありきで、『こんなことをしてみよう』と新しい動きをつくっていく。自分自身が一緒にこの暮らしを楽しくするメンバーの一人、という意識でいますね」

家と同じような時間を過ごす場所だからこそ、「いつも元気でいなくてもいいと思う」と伊達さんは話す。

「そのときの素直な感情を出してくれることで、こちらが安心するところもあるので。と言いつつ、実際は人の落ち込みや苛立ちに直面すると、私自身も心が揺れ動くんですけど」

「朝起きてから寮に帰ってくるまで。通学路である地域を行き来する時間、学校で過ごす時間。生徒たちが日常、何を感じているのか。家も学校も地域もすべてつなげて捉えることが大事なんだと、ハウスマスターを務めて実感しました」

 
正解のないなかで試行錯誤を続ける、公営塾のスタッフやハウスマスターたち。

そんな彼らの姿をたくましいと話す、地域の方にも会いました。

学びに対して前向きな人たちが、大崎上島町で待っています。

(2018/12/17 取材、2019/11/06 再編集 後藤響子)

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