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新しい場を、仲間と一緒につくり上げていく。そんな言葉にワクワクする人がいたら、この仕事はぴったりだと思います。
日本三大秘境と呼ばれる、宮崎県椎葉村(しいばそん)。来年の夏、この村に新しい交流拠点施設が生まれます。
独自の視点で選書した本が並ぶ図書スペース、3Dプリンタやレーザーカッターが揃ったラボ、テレワーク拠点…。いろんな機能が詰まった複合施設です。
今は、村内外問わず広く使ってもらえる施設を目指して、村役場と地域おこし協力隊が一緒になって準備を進めているところ。
今回は、この施設の“コンテンツストラテジスト”を募集します。
施設でイベントを企画したり、情報を発信したり。村内外から人が訪れ、混ざり合うきっかけをつくるような仕事です。
あわせていくつかのプロジェクトでも協力隊を募集中です。
秘境の村で始まった新たな場づくり。一足先に、楽しみながらチャレンジしている皆さんを訪ねました。
宮崎空港に降りたち、JRのホームへ。海沿いを南北に走る特急に乗って、まずは日向市(ひゅうがし)駅を目指す。
ヤシの並木道に、のどかな海。南国・宮崎らしい風景を眺めていると、1時間ほどで駅に到着した。
ここで車に乗り換えて、西へ進むことさらに1時間半。
細い山道を進んでいくと、視界がひらけて椎葉村の中心部が見えてきた。
待ち合わせ場所に向かうと、集まっていた皆さんが「こんにちは〜」と迎え入れてくれた。
新しい施設の検討委員として、オープンに向けて準備を進めているメンバーだ。
せっかく遠くから来たのだからと、村を一緒に巡りながら話を聞くことに。
皆さん、「宮崎は初めてですか?」「ご飯、どこで食べましたか?」と気さくに話しかけてくれる。
そんな輪の中心にいるのが、協力隊の小宮山剛(つよし)さん。
施設にできる図書スペースの司書として、今年の春、村にやってきた。
「僕らが目指しているのは、椎葉ならではの交流拠点施設なんです」
「まずは村の子どもが気に入ってくれて、大人たちも集まれる。村の人と外から来た人が混ざり合って、新しい交流が生まれて。そんな場を一からつくるぞ!って気持ちでやっています」
どんな仕掛けを用意したらいいか、運営方法はどうするか。施設運営を担う協力隊と役場の皆さんで、オープンに向けて話し合いを重ねてきた。
2万冊の本が並ぶ図書スペース、3Dプリンタなどが揃いプログラミングも学べるファブラボ。Wi-Fiを完備した作業スペースやレンタルキッチンも。
さまざまな機能を持つ複合施設は、来夏のオープンに向けて、今まさに建設の真っ最中。
小宮山さんが担当する図書スペースも、少しずつ準備が進んでいるそう。
「全国でもここしかない、椎葉だけの図書スペースをつくります」
おお、なんだか面白そう。どんなふうにつくっていくんですか?
「一つが棚のつくり方ですね。図書館って、分類番号という全国的なルールに則って本を並べるのが通常なんですが、それに合わせず椎葉オリジナルでやっちゃいましょう!と提案しました」
たとえば椎葉は、民俗学の父・柳田國男ゆかりの地。民俗学や日本の思想史、はたまた古今の妖怪マンガ…と、連想ゲームのように本を並べて“柳田國男”の棚をつくりあげる。
「平家の隠れ里伝説とか、伝統文化の神楽とか、切り口はほかにもたくさんあると思うんです。マンガや一般書が同列に並ぶオリジナルの本棚をつくることで、ここを訪れる人たちのなかに、椎葉に関する知識や興味の広がりが生まれたらうれしいなって」
ほかにも、閲覧室にはテントを張って秘密基地のように読書を楽しめたり、飲食禁止・私語厳禁といったルールを取り払ったり。
従来の図書館の枠にとらわれない、かなり自由な空間を目指しているみたい。
「公共施設でこんなことまでできちゃうんだって、僕自身が驚いています(笑)。施設が面白くなるようにしっかりと考えたアイデアであれば、メンバーが一緒に練ってくれる。意思決定もスムーズなので、どんどん進むのがすごく楽しくて」
「自発的にプレゼンして、予算を組んで形にして。そういうチャンスの大きさと自由度は、新しく来てくれる方にも期待してほしいなと思います」
今回募集するのは、コンテンツストラテジスト。
聞きなれない言葉だけど、どんな仕事なんでしょう。
「平たく言えば、この施設のイベント企画・情報発信スタッフ、というイメージです」
「こういう施設って、誰にも使われていない状況が一番さみしくて。できるだけ多くの人にこの施設に興味を持ってもらって、実際に足を運んでもらえるようなコンテンツを考えて、発信してほしいと思っています」
施設の詳細は、今年10月に村の広報誌で紹介したばかり。村民の多くにとって施設はまだ少し遠い存在で、村外にも知られていないのが正直なところ。
建物を建てて終わりにならないように。これからは、人と施設を結ぶ仕掛けが大切になってくる。
そのための戦略を練って行動に移していくのが、コンテンツストラテジストの役割。
オープン前は、情報発信を通して、施設への興味関心を高めることが仕事になると思う。
施設を使えるようになってからは、たとえば小宮山さんと一緒に椎葉の歴史や文化をひもとく読書会をひらいてもおもしろそう。ファブラボでは、レーザーカッターや3Dプリンタを使って、椎葉の木で雑貨をつくるワークショップなんかもできるかもしれない。
施設に足を運ぶきっかけになるものであれば、自由に提案してほしいという。広報やイベント運営の経験がある人だったら、その経験やスキルを十分に生かせると思う。
「お願いしたい役割ややりたいことのイメージはぼくたちも持っているんですけど、一番はこの施設にワクワクしてくれて、なんでもやりたい!って思ってくれる元気な人が来てくれることなのかなって」
「一人で采配を振るわなきゃ、って気負う必要はないと思うので。 “あったらいいよね”って思うものを、一緒に形づくってくれる方に出会えたらいいですね」
小宮山さんの話を「うんうん」と聞いていたのは、同じく協力隊の上野諒さん。
「僕は、ひそかに施設完成後のイメージを抱いていて」
どんなイメージですか?
「村外の人が、合宿とかリモートワークのために施設に断続的に出入りしていて、遊びにきていた村の子どもが『何してるのー?』って聞いて。それにつられて大人同士のコミュニケーションも生まれるような。そんな場所にできたら、すごくいいなと思うんです」
銀行の営業マンだった上野さん。自分の経験を活かせないかと考えて、村外企業向けの営業を買って出た。
芝生エリアがあるから、アウトドアブランドと絡んだら面白そう。あるいはワーケーションのような、新しい働き方の実践の場になるかもしれない。
「施設にこんなパートナーがいたらいいな」というイメージを持ちながら、声かけを進めている。
「売り込むというよりは、『こんな施設ができるんですけど、何かご一緒できませんかね』ってご相談するような感じで。図書スペースも人気で、『なにそれ、面白いじゃん!』って楽しみにしてくれている企業さんや、ワーケーションの実施を決められた企業さんもありますね」
村外企業と村の人が交流できるイベントをひらいたり、そこで生まれた一コマを発信したり。今回募集する人も、上野さんと一緒にできることがありそう。
「ストラテジストと言うとスマートに聞こえるけど、実際は村の皆さんと仲良くなって、コミュニケーションをとりながら企画を考えて、村外にも発信して…めちゃくちゃ汗をかく仕事だと思います」
「使い方次第で、必ず魅力的な場所になると信じていて。だから僕たちも力になるし、困ったことがあれば頼ってほしいですね」
二人の話を補足したり、ときおり「小宮山くん、猫かぶっとるよ!(笑)」と突っ込んだりしながら場を盛り上げてくれたのは、協力隊の天野朋美さん。
天野さんは、3歳の子を持つお母さん。
テレワーク推進事業や、村で豊かに暮らし働く「ローカルヒーロー」の魅力を伝えるプロジェクト立ち上げなど、さまざまな活動をしてきた。
このプロジェクトにも、施設のコンセプト決定や運営方法の検討などの面から携わっている。
「椎葉は…自然も暮らしもダイナミック。スーパーは1軒だけだしコンビニもないので、みんな外食や買いものをするのに片道2時間とかふつうに運転するんです(笑)。コミュニティの濃さもまだまだ残っていますね」
“日本のマチュピチュ”とも称される棚田に、あたり一面に広がる雲海。
世界一の高さのツリーハウス製作を目指す設計士、スイーツづくりにチャレンジする若き蕎麦屋店主など。
豊かな自然と人に惹かれるように、天野さんたち協力隊をはじめとする移住者や、仕事やプライベートで椎葉村を訪れる人の数も、近年少しずつ増えてきている。
協力隊の先輩として、新しく来る人に伝えたいことがあるという天野さん。
「まだ完成していない施設だからイメージしにくかったり、すでにメンバーのいるプロジェクトに飛び込むのはちょっと勇気がいるんじゃないかな、って想像はしていて」
「でもみんな、一人にはしないと思います。さっきも会議で喧嘩になりそうな雰囲気があったりしたんですけど(笑)。それくらい濃い関係で進めていけたらいいですね」
上野さんと天野さんは、来年3月に協力隊を卒業する。その後も椎葉に拠点を置いて、小宮山さんたち常駐スタッフをサポートしていく予定。
新しい土地での生活や仕事。戸惑いや悩みが生まれることもあるだろうけど、きっと力になってくれると思う。
そんな3人を見守っていたのが、役場の椎葉豊さん。椎葉村には、「椎葉」という苗字の方が多いそう。
豊さんは、施設の担当として計画段階から携わってきた。役場内の職員や協力隊に声をかけて検討委員会を組織したり、小宮山さんたちのアイデアを実現できるように動いたり。
協力隊の皆さんからも慕われていることが伝わってくる。
「人口減少が進んでいてUターン率も低いっていうのが、村の現実的な課題としてあって。この施設は、そうした状況に変化を生むきっかけになるんじゃないか、という思いはあります」
ここで得た刺激や経験が、「椎葉っていいな」と思うきっかけになるかもしれない。この施設があることで、村に残ったり、関わりを持ったりする人が増えたら、という期待もある。
「一方で、施設がどこまで地域に受け入れられるのか、オープン後に人は来るのか。私を含めて、不安や危機感はそれぞれに抱いているはずです」
「でも、彼らならこの場を動かしていってくれるという信頼もあって。いつか、子どもたちや村の外で頑張っている椎葉出身者に『こんな場所もあるから、いつでも帰ってこいよ』って言えるように、いい場所をつくっていきたいですね」
秘境の村に生まれる、新しい場所。
施設はアイデア次第でこれからもっと面白くしていけるだろうし、何より一緒に場を盛り上げていく仲間がいるのは心強いことだと思います。
次に椎葉を訪れたとき、どんな場ができているか楽しみです。
(2019/10/24 取材 遠藤真利奈)