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あたたかい食卓を囲む仲間
波佐見で育った
つながりのうつわと

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

日々、ごはんを食べるときに使う食器。

波佐見焼という陶磁器を企画・販売している、東京西海株式会社のみなさんは、商品のことを「人とつながる道具」だと話します。

同じ食卓を囲む家族や、一緒にものづくりをする仲間と。うつわを通してつながりながら生活したり、働いたり。

おいしい食事の時間を引き立てるうつわは、日常のよろこびそのもの。だからこそ、それを届ける自分たちも健やかにありたい。

長崎の波佐見にある陶磁器の商社・西海陶器のグループ会社として2013年にスタートした東京西海。のどかな風土に育まれた食器を届けながら、自分たちも心地よい働き方を探ってきたチームです。

今回は、営業部のスタッフとして働く人を募集します。


東京都世田谷区、用賀駅から歩いて10分ほど。環八通りに面したところに、東京西海のビルがある。

1階はガラスごしにたくさん光が入ってきて、カフェや雑貨屋さんのよう。3階のワンフロアを除いて、各階に東京西海のオフィスや倉庫などが入っている。

5階のショールームで最初に話を聞かせてもらったのは、会社の立ち上げ時から商品開発やブランディングなどに携わっている玉木さん。

現在は長崎の西海陶器の社長も兼務している、代表の児玉賢太郎さんと、1から会社をつくってきた。

「最初は賢太郎くんと、奥さんと3人でオフィスのリノベーションからスタートしたんです。私はもともと、山岳ガイドなどの仕事をしていたこともあって、立ち上げ当初は知り合いの山小屋まで遊びに行きがてら、3人で食器を担いで納品したこともありました」

以前はアウトドア用品の輸入代理店などで働いていた玉木さん。どうやって今の仕事に就いたんですか。

「山岳のガイドとして屋久島にいたことがあって。そのころから波佐見には毎年通っていました。30歳になるちょっと前くらいに、賢太郎くんのお父さんで、西海陶器の会長の盛介さんから、一緒に東京で会社をやってみてくれないかって言われて」

西海陶器は盛介さんのお父さんが、戦後まもないころ、リヤカーにうつわを積んで売り歩いたところからはじまった商社。

型づくりから成形、焼成と、分業で何人もの人の手と技によって出来上がるうつわを、産地から全国に届けてきた。

20年ほど前から、アメリカや中国などにもグループ会社を置き、東京西海では、これまで国内向けに出荷していた和食器ではなく、“HASAMI PORCELAIN”というシリーズを新たな販路で届けていくことになった。

「さらに東京では、国内外のデザイナーと波佐見のつくり手が一緒になって、ロングセラーとなるような商品をつくれるよう、新しいブランドを立ち上げていくことになりました」

最近は雑貨屋さんやカフェなどでも見かけることが多く、モダンなイメージもある波佐見焼。

佐賀県に接する波佐見は、もともと有田焼の産地だったものの、三十年ほど前に産地表記の基準が厳格化されたことで、新たに「波佐見焼」として再出発することになった。

新しい産地なので、これから生まれる商品の一つひとつによって「波佐見焼らしさ」というアイデンティティはつくられていく。

「私たちが一番大切にしているのは、『波佐見焼は、日常の食器である』ということ。気軽に使える形状で、耐久性があって。家族5人分を気軽に揃えられるような価格でありたいと思うので、形や色の制作工程が複雑になりすぎないよう調整することもあります」

使う人の暮らしを思いながらつくられる、新しい波佐見焼。

デザイナーと波佐見のつくり手をうまくつなぐことが、自身の役割だと玉木さんは言う。

「私は自分でものをつくれるわけではないからこそ、つくり手にこっちの都合をお願いするだけじゃなくて、それぞれの流れをちゃんと理解しながら、現場のモチベーションが上がるようにコミュニケーションをとっていく」

「今から振り返ってみると、それは結構大変だったような気もしますけど、はじめた当初は何もかも行き当たりばったり。デザインのことも素材のことも、いろんな人に1から教わりながら覚えていったような気がします」

東京西海が立ち上げた新しい波佐見焼のブランドは、雑誌やテレビのようなメディアで紹介されることも増えてきた。

波佐見のつくり手や、西海陶器の本社で働く人たちも、そのことを一緒によろこんでくれているという。

「新しく入る人も、食器は人とつながる道具だと思って向き合ってほしくて。私が未経験でもやってこられたのは、デザイナーやメーカーなどいろんな人と一緒に、いいものをつくりたいっていう思いを共有できたからだと思います」

東京西海の立ち上げから8年。玉木さんはいま、2人目のお子さんの子育て中で、普段はリモートワークで働いている。

自身もライフステージの変化を経験したからこそ、スタッフが同じ経験をしたときにも会社が融通を利かせられるようにしたいと話す。

「食器ってもともと、家族の団欒とか、そういう関わりのためにあるものだから。自分たちの生活が豊かであることは、商品にも反映されるし、そこは嘘がないようにやりたいなと思っています」

自分たちの暮らしの実感が、提案にも活きてくるように。

東京西海のビルの2階にはキッチンがあり、お昼にはみんなでご飯をつくって、自社製品の食器を使って食べることも多いという。

当番や強制ではなく、やりたい人が自然に手を上げて、続いているのだそう。


営業部入社5年目の今村さんも、今はその環境を楽しんでいる。

「最初は何をつくろうかって緊張していたんですけど、だんだんちょうどいい“適当さ”もわかってきて。社長が生姜焼き美味しいって言ってくれたとか、あの人がつくってくれたレシピ、家でも試してみようとか。楽しめるようになりました」

食器の使用感だけでなく、ご飯を食べながらたわいない話もできる。そんなスタッフ同士の関わりが、仕事のリズムのなかにも自然と入り込んでいるという。

「私は家でもうちの食器を使っています。食洗機にガシャンって入れて手軽に洗えて、子育てでバタバタする毎日の応援団みたいな感じ。丈夫な道具としての頼もしさもあるし、デザインとか料理を盛ったときのバランスもいいんですよ」

自分が本当にいいと思ったものを、お客さんに届ける。その役割を担う営業部は、今村さんも入れて現在2人。

小売店や飲食店のような客先から発注を受けて、商品の出荷手配をするのが主な仕事。

「ありがたいことに、うちはお客さんのほうから声をかけていただいて取引がはじまることが多いんです」

頼まれたものを納めるだけでなく、ときには色選びの相談に乗ったり、売り場や用途にあったアイテムを提案したり。展示会では、ブースに立ってお客さんと話をすることもあるという。

少人数体制ということもあり、今村さんたちは受注から見積もり、出荷の手配や請求のような細かい仕事まで、一人で担当していく。

「注文が重なって忙しくなると、つい、物を売るだけの行為になってしまう。そういうときは、ちょっと立ち止まって波佐見のことを考えるようにしていて」

今村さんは、入社してすぐに波佐見に見学に行った。窯元など、ものづくりに携わる人たちの現場を見ることで、ひとつの器ができるまでの背景を知ることができたという。

今でも陶器市のシーズンには、波佐見に手伝いに行く。

「波佐見に行くといつも、温かく歓迎してくださるんです。会長のご自宅に泊まったときは、奥さまが朝から手料理をつくってくださって。最初から自然に『亜衣ちゃん』って下の名前で呼んでもらえたのも、うれしくて」

会社のことなのに、なんだか実家や地元の話を聞いているみたい。

世田谷で働きながら、新しく波佐見という故郷ができるような感じなのかな。

自分たちが愛着を感じながら働く波佐見のこと。

もっと広く知ってもらうきっかけとして、ワークショップもはじめた。それは、ファクトリーセカンドと呼ばれるB品を使って、オリジナルマグカップをつくるというもの。

「子どもと楽しめるイベントとして、いろんなショップでやってみたり、最近ではみなとラボっていうチームと一緒に気仙沼にワークショップに出かけたり。限られた人数でやるので、一気に増やせないんですけど、できることは少しずつやっていけたらいいなと思います」

ネットワークを活かしやすい東京だからできる届け方。その輪に新しく加わるスタッフは、どんな人がいいだろう。


最後に話をまとめてくれたのは、東京西海の“親戚のおじさん”こと、長谷川さん。

長谷川さんはもともと、フリーランスとして国内外で多くのプロジェクトに関わってきた方。東京西海では相談役として、玉木さんたちと長く仕事をしてきた。

玉木さんが育休中ということもあり、今は部署間の調整や運営の戦略づくりにも関わっている。

おそらく一般的には、マネージャーとかアドバイザーみたいな存在だと思うけど、明確な肩書きがなく、人の相談や悩みを聞くのが上手な長谷川さんは、みんなにとって「親戚のおじさんみたいな人」らしい。

「一番大切なのは、この会社の文化とかつながりのなかで心地よく仕事ができるっていうことだと思います。スキルやノウハウは後から身につけられると思いますし、僕もそこはサポートしていくので」

小さい悩みから仕事の相談まで、人のモヤモヤをすくい上げることが自分の役割だと話す長谷川さん。

業務のことだけでなく、その人のプライベートも含めてうまくいくように応援したいという。

「育児中のスタッフもいますし、みんなで協力しあって。ここでの仕事が、その人のライフスタイルを圧迫するものではなくて、むしろひとつの救いみたいになったらいいなと思うんです」

柔らかくて温かくて。話を聞いていると、そんなチームの姿が浮かんでくる。

それはきっと、会社から与えられるものではなくて、働いている人同士がお互いの役割を尊敬しあったり、協力したり、自分の仕事をまっとうしたりするバランスのなかで守られてきたものだと思う。

「僕は本当に、新しく入る人はパソコンさえ使えれば大丈夫だと思うんです。だけど最後にちょっと欲を言うと、うちの商品を海外に向けて届ける、世界とどうつながるかっていうことにも興味がある人だったらうれしいなと思います」

地元のように温かな波佐見で、仲間とつくったうつわ。自分の暮らしに一緒に伴走してくれるような日常のうつわ。

届ける相手が変わっても、きっと自信を持って、自分の言葉で伝えていける。

波佐見のうつわは、そんな存在なのだと思います。

(2020/3/12 取材、2021/1/7 再募集 高橋佑香子)
※撮影時にはマスクを外していただいております。
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